2016年2月19日金曜日
惑星ゲイシャに集いし、匠のワザ。エレクトロ・プログレの超新星爆発 ― CARTOON THEORY 『Planet Geisha』(2016)
フランスのエレクトロ・プログレッシヴ・インストゥルメンタル・ユニット カートゥーン・セオリーの、2012年制作のデモ音源集『CARTOON 1.1 THEORY DEMO』に続くデビューアルバム。これまでに二枚のアルバムをリリースしているエクストリーム・マスメタル・バンド QEstreのドラマーであるマクシム・ラティエールと、スペインの一人インストゥルメンタル・ユニット Chernobyl's Flowersのフアン・カルロス・ブリセーニョ・サンチェスによるタッグ。実験的な活動を展開してきたフアン・カルロスの生み出すミクスチャーな作風に、マクシムのパワフルな推進力が加わったことで、空間的広がりのあるエレクトロ/アンビエント色と、細かくスクラッチしながらのdjent/グルーヴ感を融合させたユニークなサウンドが誕生。さらに、日本の「芸者と侍」「伝統とモダン」の二面性に惹かれたという彼らはジャパネスクなムードも織り交ぜており、それらはアルバムタイトルやヴィジュアル、「花見」「花街」「招き猫」といった楽曲名はもちろん、曲中のグルーヴやスキマからも感じ取ることができます。楽曲はフアン・カルロスがギターとベースを、マクシムがキーボード/プログラミングを担当。そして、元Periphery~現Darkest Hourのドラマー トラヴィス・オービンが全面的に叩いております(彼はプロデュースも兼任)。
また、彼らはコラボレーションにも積極的で、同郷リモージュのメタルバンド LizZardのギタリストのマシュー・リコウや、女性ヴォーカリスト Zelie Tible。昨年に日本デビューを果たしたセルビアの気鋭 Destiny Potatoのギタリスト デイヴィッド・マキシム・ミシッチ。オーストラリアのギター・ヴァーチュオーソ Plini、そして彼の右腕的存在であるキーボーディストのルーク・マーティンといったゲストの顔ぶれが、アルバムの推進力をもう一段階高めております。デモ音源集にも収められていた"Hypnotic nova's dance"と"Wizardry Mind"の二曲のリメイクは、ともにPliniのメリハリ鮮やかなプレイでめざましく生まれ変わりました。そしてタイトル曲の"Planet Geisha"は、全五パートからなる大作。Pliniとデヴィッドの二大ギタリストが激突する第一パート"Sacred Geometry"では途中で三石琴乃さんの声が一瞬挿入されるのですが、「イルパラッツォさまバンザーイ!」と聞き取れるところからみると、これは『エクセル・サーガ』からですね。間違いない。第二パート"Hanamachi 花街"はZelieの蟲惑的なヴォーカル/コーラス(ちょっとケイト・ブッシュ風)をフィーチャーした、ゆるやかなエレクトロ・ポップ。ブレイクビーツ/ダブステップの傾向強めな第三パート"Maneki Neko 招き猫"をブリッジにして、煌びやかに流線型を描きながら第四パート"The Art"、第五パート"The Murmuring Of Tokyo's Anthill"と畳みかけ、宇宙的な余韻を残しながらフィナーレを迎えます。気持ちよくスパークする各人の才能の発露とともに、ぜひとも味わってみてください。ダウンロードは€2.99(約400円)と、非常にリーズナブルなのも嬉しい。
「WORLD PREMIERE: “WIZARDRY MIND” 【CARTOON THEORY】」
(from Marunouchi Musik Magazine|2016.02.05)
https://www.facebook.com/CartoonTheoryBand/
http://cartoontheory.bandcamp.com/