パララックス・ビュー (2014/03/05) 上坂すみれ 商品詳細を見る |
声優、アジテーター 上坂すみれの3rdシングル。先の2枚のシングル、そして今年の頭にリリースされた1stアルバム『革命的ブロードウェイ主義者同盟』でも数々の豪華なコラボレーション曲を聴かせてくれましたが、今回のタイトルチューンは彼女が敬愛する人物の一人である大槻ケンヂ氏が作詞を提供し、彼のバンド「特撮」での盟友でもあるCOALTAR OF THE DEEPERSのNARASAKI氏が作曲を、そしてSadesper Record(NARASAKI&WATCHMAN)が編曲をそれぞれ手がけた、鉄壁の布陣による1曲。NARASAKI氏のヒリついたギターが刻みまくり、WATCHMAN氏のファストなドラムがガスガス決まる、COALTAR OF THE DEEPERSよろしく激烈なインパクトのキラーチューン(各種ゲームのパロディをゴッタ煮にしてぶち込んだドット絵PVの凝った内容も必見)。すみれ嬢のヴォーカルがこの凄まじい演奏と編曲にマッチしているかと言われると正直微妙ですが、よくよく考えるとCOALTAR OF THE DEEPERSもそこまでヴォーカルをウリにしているバンドというわけではないので、ある意味これで合っているのかもしれません。いずれにろ、コラボレーションとしては文句なしのアツい1曲。また注目すべき点はその詞で、タイアップ元のアニメ「鬼灯の冷徹」にちなんで天国と地獄をテーマにしつつも、筋肉少女帯が'97年に発表した"小さな恋のメロディ"の続編的な内容ともとれる、何とも感慨深いものになっています(そういえばこの曲もアニメのタイアップ曲でしたね。「EAT-MAN」の一度目のアニメ版の主題歌)。同曲ではトロッコに乗った二人の行き先はきっと地獄なんだわと歌われておりましたが、まさかホントに地獄に落ちていたとは。また、"小さな恋のメロディ"は同名映画をテーマにした楽曲でしたが、映画をモチーフにするという手法はこちらでも踏襲されています。アラン・J・パクラ監督が'74年に発表した社会派サスペンス映画「パララックス・ビュー」は、いわゆるB級映画的な評価を与えられているようですが、「視差」をテーマに織り込んだ作品としてカルト的な人気があるとかないとか(※)。2曲目の"すみれコード"は、すみれ嬢がファンだと公言している松永天馬氏率いるアーバンギャルドの提供による歌謡チューン。こちらも念願のコラボであり、楽曲自体は昨年のアーバンギャルドとのライヴイベントで既に披露されております。アーバンギャルドはそのコンセプトも音楽性もかなりサブカル寄りなので、彼女との親和性はやはり非常に高いなあと実感した次第。楽曲タイトルは、「清く、正しく、美しく」をモットーとする宝塚歌劇団員がしてはいけない行動や使ってはいけない言葉の総称である「すみれコード」とも引っ掛けており、成就しそうにない恋を回転数の異なるレコード盤に例えた詞の内容と併せて考えると、楽曲のコンセプトはより見えてくるものがあると思います。通常盤に収録されている3曲目の"無窮なり趣味者集団"は、元アカツキ、現GEEKSのエンドウ氏の作編曲による行進曲調の1曲。"我旗の元へと集いたまえ" "我らと我らの道を"のようなアジテーションソングですが、作詞は上坂嬢が担当しているのがミソ。本人の作詞曲は今回が初だったかと思います。周囲を巻き込んで盛り上げていくアジテーターたる上坂さんのキャラクター性のもと、今後も様々なコラボレーションが展開されていくと思われますが、彼女自身の持ち味が埋もれない程度に舵を取っていって欲しいですね。
●StarChild - 上坂すみれ
●上坂すみれ - Wikipedia
●上坂すみれ - ニコニコ大百科
(※)ちなみに、映画の「パララックス・ビュー」はこの頃のオーケンの琴線に何かしら触れるものがあったようで、WOWOWとツタヤのコラボ番組「100人の映画通が選んだ"発掘良品"」にゲスト出演した際に話題にしていたほか、今年1月にアップされたWEB連載エッセイの第59回で「昨年最も僕の心に引っかかった映画」として取り上げたり、2月末にオンエアされた伊集院光氏のラジオ番組にゲスト出演した際にも同作についてトークを繰り広げておりました。
・「オーケンの、このエッセイは手書きです」バックナンバー 第五十九回 「亡国の死生~おへその国からこんにちは」
・100人の映画通が選んだ"発掘良品"『パララックス・ビュー』大槻ケンヂ×斎藤工 の未放送映像