2015年3月28日土曜日

西木栄二/森村あゆみ『そして、星へ行く船/逆恨みのネメシス イメージアルバム』(1987)

星へ行く船―ロマンチックSF (集英社文庫―コバルトシリーズ 75B)星へ行く船―ロマンチックSF (集英社文庫―コバルトシリーズ 75B)
(1981/01)
新井 素子

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 新井素子さんの〈星へ行く船〉シリーズは、'81年から'87年にかけて集英社のコバルト文庫より刊行された作品。家を飛び出し、宇宙へと飛び出したヒロイン 森村あゆみが遭遇する数々のドタバタと葛藤を描いたSFロマン小説で、シリーズは『星へ行く船』『通りすがりのレイディ』『カレンダー・ガール』『逆恨みのネメシス』『そして、星へ行く船』の全五巻。その後、92年に番外編『星から来た船』(上・中・下)が刊行され、'94年に番外短編「αだより」が書かれています。ラジオドラマ化や漫画化などのメディアミックスにも恵まれ、音楽化では日本コロムビアのコミックス・イメージアルバム企画〈ロマン・トリップ〉シリーズのカタログとして、'83年から'87年にかけて原作タイトルに準拠した四枚のアルバムがリリース。また、'91年3月に同じくコロムビアの〈イメージ・トリップ〉シリーズとして3in2でCD再発もしているのですが、収録時間的な事情ゆえか『通りすがりのレイディ』のみ未収録。そちらは同年6月に単体でCDリリースされているようです。


そして、星へ行く船/逆恨みのネメシスそして、星へ行く船/逆恨みのネメシス
(1987/12/21)
イメ―ジ・アルバム

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 本CDは'87年の年末にリリースされた、『逆恨みのネメシス』('86)、『そして、星へ行く船』('87)の二作品のイメージアルバム。これ一枚にまとめられているのは、原作の二作が連続性の強いものであったことに準拠してのことでしょう。作編曲を手がける西木栄二氏は、70年代にフォーク・グループ「猫」にごく短期間だけ在籍後、小室等&ザ・ファクトリーや、シティ・ポップ・バンド カーニバルのメンバーとして活動歴のあるギタリスト。80年代は作編曲家として本田美奈子や酒井法子、伊藤さやかなど数々のアーティストに楽曲提供をされております。「アニメ三銃士」のオープニングテーマである"夢冒険"や、「トップをねらえ!」のオープニング/エンディングテーマである"アクティブ・ハート" "トライ Again...!"も彼による仕事です。また、本作の演奏を担当するアストライアは、西木氏が主導するバンド、というよりは、おそらくプロジェクト的なものなのでしょう。ライナーノーツでは「坂本君」というキーボーディストが新人で入ったといったようなことが書かれていますが、「坂本君」とは誰なのか、踏み込んだ詳細は一切不明です。





 シリーズ通してイージーリスニング系のインストゥルメンタルとアイドル/テクノ歌謡調の楽曲で構成されており、当時としてもやや古めかしさを感じさせる内容になっているのは否めませんが、"数えきれないPlease"では「こういう感じの曲は和製ポップスというジャンルに入れられて、レコード屋さんの店先に並べられていた時代があったのです」と西木氏みずからコメントしていたり、ビートロック/ブギー調の"パニックビート""憎みきれないお人良し"のような楽曲があったりと、そのあたりはだいぶ意識してやっているフシはあります。それがまた妙な魅力でもあるのです。明らかにQUEENの"フラッシュのテーマ"を意識したイントロで幕開けするハードなテクノ歌謡チューン"Believe"や、シンプルなアレンジで魅せる"Flower - 愛の花束"は佳曲ですし、"空の下は Lonely"は、ニューエイジというかメディテーショナル・ミュージックに寄った感のある仕上がりで、「長尺になりそうだったけど、なんとか五分くらいで収めた(大意)」といったことを述べているあたり、西木氏の地が出た感もある異色の楽曲となっています。全体的には爽やかなタッチでまとめられており、ラストは明快なハード・ポップ・チューン"そして明日へ…"で飾っています。




 その後、西木栄二氏は'93年にビクターよりソロアルバム『デカダンス』をリリースされていることを付しておきます。また、〈星へ行く船〉シリーズの全五巻は、数年前より出版芸術社から書き下ろしを加えて復刊するとアナウンスされておりますが、刊行スケジュールは現在も未定の状態です。諸々の作業は進行しているようなので、気長に待つのがよさそうです。

【2016.9 追記】
ついに刊行が決定いたしました。2016年9月中旬に『星へ行く船』『通りすがりのレイディ』が刊行され、以下続刊とのこと。

星へ行く船シリーズ 全5巻 発売決定! - 出版芸術社
http://www.spng.jp/news/n15960.html


星へ行く船シリーズ1星へ行く船
新井素子
出版芸術社 (2016-09-16)
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星へ行く船シリーズ2通りすがりのレイディ
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新井素子研究会 - MOTOKEN
作品データベースなど、参考させていただきました。

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『ロマントリップ そして、星へ行く船/逆恨みのネメシス』

01. Believe
02. 飛んでも Honey Star
03. 数えきれない Please
04. パニックビート
05. Flower~愛の花束
06. 憎みきれないお人良し
07. 君は Sold out
08. 空の下は lonely
09. 宇宙一の Luckey Girl
10. そして明日へ…


[1987.12.21/CX-7312(LP)|CAY-847(カセット)|32CC-2075(CD)]

原作/新井素子
ジャケット・イラスト/竹宮恵子

作詩/佐藤ありす
作・編曲/西木栄二
歌/西木栄二(①⑦⑨)、森村あゆみ(③⑤⑨⑩)
演奏/アストライア

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 余談になりますが、本イメージアルバムのシリーズを通してヴォーカル曲にクレジットされている「森村あゆみ」は原作小説のヒロインと同姓同名であり、覆面シンガーなのはまず間違いありません。「中の人」の正体はわかっておりませんが、実はこの名義で「ルパン三世PARTIII」('84~'85)のエンディングテーマ"フェアリー・ナイト"をカヴァーした音源があります。同音源は、当時コロムビアから出ていたテーマ曲集『ルパン三世 パーフェクト・コレクション』('94年にCD化)に、ソニア・ローザの歌唱によるオリジナル版に替わって収録されています。なぜヴォーカル差し替え版が収録されていたのかというと、ルパン三世の楽曲著作権がバップに移ったばかりであったことと、当時はレコード会社間の権利関係の処理が難しかったなどの事情があったためです。いわゆる「パチソン」ですが、パチソンはパチソンでも公式に近いところにあったパチソンだったというわけです。




パーフェクト・コレクションパーフェクト・コレクション
(1994/11/21)
TVサントラ

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【関連】
佐久間正英『あなたにここにいてほしい/新井素子 イメージアルバム』(1985)

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