フィリピン・ケソンシティのインストゥルメンタル ポストメタルバンド Yomi no Kuniのデビューアルバム『Horrors』が先ごろ(11月15日)リリースされました。地元の音楽シーンにうんざりしたのが高じて2013年に結成されたニューカマーであり、ヴァイオリン兼任のキーボーディストを擁する四人組。バンド名の「黄泉の国」はそのまま主たる音楽的イマジネーションにも直結しており、本作のテーマもズバリ「地獄めぐり」。スラッジ、ドゥーム、ヘヴィロック、ポストメタルのエクストリームなフルコースです。バンドの影響元にはKING CRIMSONやPINK FLOYDといった定番どころから、Boris、ISIS the band、Russian Circles、TOOLといったヘヴィネス重点バンド、さらにデヴィン・タウンゼンド・プロジェクトやバルトーク・ベーラなどを挙げています。
この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ、といわんばかりの激重スラッジを叩きつける「Welcome to Yomi」や、太いうねりを伴うなかでフュージョン的な展開が光を射す「Judgement」。10月13日の金曜日に先行シングルとしてリリースされた「Jardin d’Éros」や、本作最長(12分半)を誇る「Eosphoros」、ギタリストのケネス・カスティロのペンによる「...In the Dead of Night」といった大曲では、ギターのメロウなアルペジオや歌うようなベース、そして一服の清涼を与えるヴァイオリンが折り重なって黄昏た抒情性をじっくりと演出してゆく場面もあり、このバンドが単におどろおどろしさやヘヴィネス一辺倒ではないところを雄弁に示しております。キーボーディストのミゲル・エイドリアン・デロス・サントスによる、ピアノと泣きのギターによる小品「Prelude」もまたしかり。メロトロンサウンドや、トリッキーな展開も存分に盛り込まれた「The Dance of Spirits」は堂々たるプログレッシヴ・メタルとして見事なラストチューン。手ごたえのあるデビューを飾ったことを寿ぎたく思います。
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