2015年6月25日木曜日
ジャンルを縦断するユニークな多国籍ヴァイオリン・プログレ・バンド ― ARMONITE『The Sun is New each Day』(2015)
ヴァイオリニストのJacopo Bigiと、コンポーザー/キーボーディストのPaolo Fossiのふたりを中心として'96年に結成され、'99年にデビューアルバム『Inuit』をイタリアの老舗レーベル Mellow Recordsよりリリース。二名のエレクトリック・ヴァイオリン奏者を擁するギターレスの編成で活動するも間もなく解散した、プログレッシヴ・ロック・バンド ARMONITE。なんと先ごろ十数年ぶりに新作アルバムをフリーダウンロードにてデジタルリリースいたしました。しかしこれは再結成ではなく、かつてのバンド名のみを借りての新生、という「二度目のデビュー」的な意味合いが強いようです。新生ARMONITEはJocopo、Paoloのオリジナルメンバーふたりに、PORCUPINE TREEのベーシスト Colin Edwin、オランダのドラマー Jasper Barendregtを迎えての四人編成。結果的に多国籍バンドとなりました。アルバムのプロデュースはMUSEのデビューアルバム『Showbiz』を手がけたPaul Reeve。マスタリングはかのアビー・ロード・スタジオで行われております。
前述の『Inuit』のころはヴァイオリンのクラシカルな響きをフィーチャーしたフュージョン/イージーリスニング色の強いしっとりとしたシンフォニック・ロック作品という印象(クロスオーヴァーな料理の仕方ではクライズラー&カンパニーに通じるところもあります)でしたが、サウンドはあれから格段に変貌を遂げています。冒頭の"Suitcase war" "Connect Four"は、エレクトリック・ヴァイオリンが攻めの姿勢でガンガン切り込む、痛快なモダン・ジャズ/プログレッシヴ・ロックとでもいうようなパワフルさです。シタール&パーカッションをフィーチャーした"Sandstorm"や、デジタルな音色とナレーションも交えた"'G' as in Gears"など、幅の広がりもあるユニークなサウンドになっております。また、スウェーデンのchiptunerである“Goto80”ことAnders Carlssonがゲスト参加しているところも見逃せません。彼が参加した"Insert Coin"は、そのタイトルからも明白なように往年のゲームのSEも交えたトリッキーでユニークなプログレ meets チップチューン。その一方で、"Le temps qui fait ta rose"のような、しっとりとしたシネマティックなサウンドも健在。"Slippery Slope" "Die Grauen Herren"の二曲では、ジャズ・チェリストのMarcello Rosaを迎えて、チェンバー・ロック的な気品と鋭さのある表情も見せてくれます。全体的に聴いていて涼しげな顔が浮かんでくるような楽曲が多いのがミソでしょうか。
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