2015年6月7日日曜日
米国のチップチューン・プログレ・バンドによる、アクションADVゲームのサントラ ― Cheap Dinosaurs『High Strangeness』(2015)
8bitゲームと16bitゲームをハイブリッドした“12bit”ゲームを標榜するアクションアドベンチャーとして五月に発表された、ニンテンドーWiiU用ソフト「High Strangeness」のサウンドトラック。メインコンポーザーはフィラデルフィアのサイケデリック・プログレッシヴ・ロック・バンド Cheap Dinosaursのフロントマン Dino Lionettiによるものなのですが、これが実に妖しいプログレテイストのチップチューンでよいのです。Dinoがかつてリーダーを務めていたバンド Chromelodeon(2001~2007)でも、ユニークな音楽性のインディープログレを聴かせてくれたのですが、このCheap Dinosaursの音楽性はプログレ、シンセポップ、ハードコア、マスロック、チップチューンを縦断しており、音楽的影響元としてはTANGERINE DREAM、GOBLIN、YMO、Lightning Bolt、Battles、Tim Follin、Neil Baldwin、Matt Furnissの名前が挙げられています。また、彼らは2012年にGOBLINのカヴァーアルバム『Cheap Dinosaurs Plays Goblin』をフリーダウンロードで発表、同作は「ゾンビ」「サスペリア」「シャドー」などのテーマをチップチューンプログレでアレンジした秀逸な内容に仕上がっています。
さて、この「High Strangness」の歴史は2009年までさかのぼります。ふたりの有志によって立ち上がったプロジェクトは、kickstarterでクラウドファウンディングを募り、最終的に約$1500を集めたことで本格的に始動します。今でこそゲームの制作費をクラウドファウンディングで募ることは珍しくなくなりましたが、当時としては画期的な試みであったといえます。その後、協力者を募り、開発チーム(Barnyard Intelligence Games)を立ち上げながら、六年のあいだに少しずつ制作が進められてゆきます。また、協力者のなかにはカリフォルニアのチップチューン コンポーザー DisasterpeaceことRich Vreelandの名前もあり、彼は2009年に同作のためのサウンドトラックを制作、提供していたことを付け加えておきます(このアルバムは現在、彼のbandcampからname your price(投げ銭)でダウンロードが可能です)。
「High Strangness」サウンドトラックは全17曲。メインテーマこそ古きよきスーパーファミコンのRPGタイトルを彷彿とさせる勇壮なものですが、全体的にトーンは暗く、殊におどろおどろしさの演出に長けている感があります。TANGERINE DREAMやGOBLINからの影響も感じさせるダークなテイストを押し出したシネマティックなサウンド。そして戦闘曲はプログレテイストを前面に押し出したトリッキーなものです。"End Theme"のみ、Disasterpeaceの作曲によるもの(アレンジはDino Lionetti)。エンドタイトルにふさわしい一抹の寂しさを感じさせる慎ましやかな一曲に仕上がっています。
「The original Kickstarter game, High Strangeness, is set for release on May 6」- destructoid.com
http://barnyardintelligence.com/
http://cheapdinosaurs.com/
https://www.facebook.com/cheapdinosaurs
Cheap Dinosaurのオリジナルアルバムはこちら(2014年作品)