小山荘のきらわれ者 (1988/2/5) なかじ有紀/百石元 他 商品詳細を見る |
現在は音楽マネージメント/プロダクション会社 F.M.Fに所属するコンポーザー/アレンジャーである百石元(ひゃっこく・はじめ)氏。80年代には杏里や松田聖子、少年隊などのツアーでのサポートギタリストとして活動し、90年代以降は自身のユニットであるEUCLID PRYMEでの活動やJ-POPの編曲なども手がけられ、近年では「けいおん!」や「GJ部」、現在放映中の「繰繰れ!コックリさん」といったアニメ作品の劇伴でより広くその名が知られるようになりました。氏の引き出しは実に幅広く、「けいおん!」の劇伴仕事は特にそれが顕著にうかがえるものでしたが、培ってきたキャリアをみればそれもなるほどとうなづけるものであります。そんな百石氏ですが、80年代末期と90年代の初頭にメインコンポーザーとなって制作した二枚のサウンドトラック作品を残しております。今回紹介するのは'88年に発表されたこちら。なかじ有紀さんの代表作のひとつである漫画作品「小山荘のきらわれ者」(白泉社LaLa連載)のイメージサウンドトラックであります(原作はつい最近、続編の「リターンズ」の連載がスタートしておりますね)。ちょうど連載が半ばを迎えた頃にリリースされた作品です。
小山荘のきらわれ者 1 (白泉社文庫) (2014/08/29) なかじ有紀 商品詳細を見る |
全曲の作編曲を百石氏が担当しており、全11曲中6曲を歌ものが占めているあたりも、力の入りようがうかがえます。女性ヴォーカルで曲はアイドル歌謡的方向性も示しつつ、全体的にしっかりとしたシティ・ポップ/AORサウンドで仕上がっており、百石氏がサポートギタリストとして関わられていたL3C(LOOK LONESOME LANE CLUB)に通じるキャッチーでメロディアスなエッセンスが随所で滲み出ております。なかじさんのライナーノーツでも言及されていますが、甘いヴォーカル/コーラスワークの聴ける"Wink! Wink!"はとても少年隊ライクな1曲。ちなみにこの曲と"Slow Stepでキメてくれ"は、百石氏みずからヴォーカルをとっており、氏の肉声が聴けるという意味では貴重な(?)楽曲とも言えるのではないでしょうか。ブロマンス全開な詞が耳を惹く"Slow Stepでキメてくれ"は爽やかなポップチューン。インスト曲もしっかりとキャラが立っており、"Welcome To The Boarding House Koyama" "Bad Boys"で聴けるギターパートは流石の一言です。
ちなみに、四曲に作詞で参加されている真名杏樹さんは戸川純さんの"極東花嫁"や"ラジャ・マハラジャー"の作詞家(この後BEGINや岡本真夜さんなどへも作詞提供をされ、近年ではMay'nや野水いおりさんの楽曲でもお見かけします)。また、石岡美紀さんはこの後シンガーソングライターとして活発な活動を展開され、現在はフラメンコ舞踏家としての顔も持つお方。二曲で大人びた歌唱を聴かせた伊東じゅんさんは本作がデビューとなったそうですが、本作以外でクレジットが確認されているのは、同年にフューチャーランドからリリースされた西村しのぶ原作の「サード・ガール」のイメージアルバムのみです。
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『小山荘のきらわれ者 オリジナルアルバム』
1. Welcome To The Boarding House Koyama
2. Stand by your chance!
3. Feelin' Good
4. すみれ色のワンピース
5. Wink! Wink!
6. Bad Boys
7. 発熱ハレーション
8. 涙のCongratulation
9. Slow Stepでキメてくれ
10. たった一つのQuestion
11. Everything Alright!
[LD32-5064/1988.2.5]
作編曲:百石元(全曲)
作詩:真名杏樹(②④⑦⑩)/實川翔(⑤⑨)
歌:伊東じゅん(②⑦)/石岡美紀(④⑩)/百石元(⑤⑨)
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◆サウンドクリエイター 百石 元 インタビュー
◆音楽視点で見る「けいおん!」の世界1~「映画けいおん!」BGMの元ネタ集あれこれ - 忘れられた庭の静かな片隅-Forsaken Gardens-
●百石元 - F.M.F CREATORS
●F.M.F - Wikipedia