2013年2月28日木曜日

YES『TALK』(1994)

TALK(紙ジャケット仕様)TALK(紙ジャケット仕様)
(2002/09/21)
イエス

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 プログレッシヴ・ロック・バンド YESの14枚目となるオリジナル・アルバム。『BIG GENERATOR』リリース後、88年にジョン・アンダーソンがバンドを脱退し、元メンバーのビル・ブルーフォード、リック・ウェイクマン、スティーヴ・ハウとAnderson Bruford Wakeman Howe(ABWH)を結成。一方クリス・スクワイアは残ったメンバーとYESの活動を継続…と、分裂状態になります。両グループ間でYES名義の使用権をめぐって揉めたりもするのですが、結局和解し、そのまま両者が合体して"メンバー8人のYES"が誕生。91年に『Union』を発表します。しかし流石にバンドとして機能せず、内外共にミュージシャンの出入りも激しかったため、そこそこのクオリティの楽曲は揃っているものの、今ひとつまとまりを欠くアルバムを残しただけですぐにこの8人YESは瓦解。数年間に渡ったメンバー脱退・合流のゴタゴタは、結局『90125』時のメンバーに戻ったことでひとまず終結を迎えます。

 そして94年にリリースされたのが本作『Talk』。『BIG GENERATOR』の方向性をさらにパワフルに、さらにメロディアスに推し進めた作品であり、ハードでひねりも効いたトレヴァー・ラビンのアレンジ/プレイは前作以上に伸び伸びとダイナミックな冴えを見せています。厚みのあるコーラスが快活なエネルギーに溢れたオープニング曲「The Calling」。ミドルテンポでどっしりとした貫禄のもと展開される「I Am Waiting」「Real Love」。SUPERTRAMPのロジャー・ホジソンとの共作曲であり、サビの甘いコーラスが絶品なポップ・チューン「Walls」。と、楽曲は依然としてメリハリと瑞々しさをたっぷりと感じさせてくれます。そして極めつけは、アルバムのトリを飾る「Endless Dream」。技巧性と疾走感に溢れた痛快なプログレ・ハード・サウンドで幕開けする"(a) Silent Spring"、ジョン・アンダーソンのヘヴンリーなヴォーカルも一層際立つドラマティックな構成の"(b) Talk"、サーっと波のように押しては返す余韻にしみじみと浸らせてくれる"(c) Endless Dream"の三つのパートで構成された15分を越える組曲。この大曲に本作の魅力の全てがここに詰まってると言っても過言ではありません。アルバムとしてのまとまりも見事。

 プレイヤーとしてもアレンジャーとしても非凡な才を遺憾なく発揮したラビンですが、アンダーソンとの確執が深刻化したことにより、結局彼は本作をもって脱退してしまいます。次作『Open Your Eyes』ではスティーヴ・ハウとリック・ウェイクマンが再加入し、全盛期YESメンバーの再集結を果たしたのですが、アルバムは精細を欠く内容でお世辞にも良いとは言い難く、ラビンの抜けた穴がいかに大きかったかを痛感させる結果になってしまったように思います(それでも、次々作『The Ladder』では調子を取り戻し、見事な返り咲きを見せるあたりがYESらしいのでありますが)。YES脱退後、ラビンは映画劇伴作曲者としての活動にシフト。「アルマゲドン」や「ディープ・ブルー」「ナショナル・トレジャー」といった数々の有名映画の劇伴にも携わる売れっ子コンポーザーとして、現在も活躍中であります。




CD版の後に出たCD-ROM版『Talk』に収録されているスタジオライヴ映像と各メンバーのコメント。

○Yes - Talk Radio Promo
Part.1 http://youtu.be/aNVXxbZBKMo
Part.2 http://youtu.be/x71RMCkMSlc
『Talk』をリリースした頃、ラジオでオンエアされたプロモーション番組?らしい。各メンバーが喋っている。

「TALK」- Wikipedia
トレヴァー・ラビン サントラワークス