2010年8月1日日曜日

Kokoo『Super Nova』(2000)

スーパー・ノヴァ


 尺八奏者一人、17絃&20絃筝奏者二人という編成による和楽トリオ コクーの2ndアルバム。99年に発表された1stアルバム『ZOOM』はオリジナル曲をメインに、確かな経歴と技量に裏打ちされた三者による和楽アンサンブルを存分に展開していたアルバムでしたが、こちらは全編がカヴァー曲によるカヴァーアルバム。選曲はジミ・ヘンドリックス、LED ZEPPELIN、THE BEATLESのロック・スタンダードから、EL&P「Tarkus」、PINK FLOYD「吹けよ風、呼べよ嵐」といったプログレ系、デヴィッド・ボウイ「ワルシャワの幻想」、ピーター・ハミル「Dropping The Torch」、フランク・ザッパ「Peaches En Regalia」といった意外なところ、伊福部昭御大の「ゴジラのテーマ」といった全10曲。やや奇妙なヴァラエティ性を感じさせる選曲ですが、それら楽曲のアレンジャー陣も、ゲルニカの上野耕路、JAGATARAの村田陽一、アルタードステイツの内橋和久、流浪のコンポーザー高橋鮎生、大御所アレンジャー 井上鑑といった錚々たる顔ぶれであることも見逃せないところ。

 いずれも和楽器演奏用に大胆なアレンジがなされており、さながら和製クロノス・カルテットというたたずまいも感じさせるのですが、和楽器アレンジ、しかもトリオ編成での演奏ということで、やはり多少無理が生じている部分もあります。とはいえ、原曲とはまた違った魅力や情緒を見せるカヴァーが多いのも確か。「ワルシャワの幻想」や「Eleanor Rigby」などでの和情緒醸しまくりの優美な調べも素晴らしいのですが、思いのほかヘヴィな筝の低音が効きまくったバッキングの上を身の引き締まるような尺八の音色が駆け抜け、倍音も相まって原曲以上にチェンバー色を強めた「ゴジラのテーマ」は本アルバムの白眉ともいえる非常に迫力のある仕上がりで、ライヴにおいて人気が高いのもうなづけます。純然たるカヴァーアルバムというよりは「カヴァー十番勝負」的な印象が強い内容ではありますが、そのアグレッシヴな姿勢は非常にプログレッシヴでありますし、前作で感じさせた敷居の高さを払拭するかのような内容になっているのは確かであります。1st、2nd共に既に廃盤となってから随分経ってしまっているのは残念に思います。思いがけず見かけたら、手にとって聴いてみてはいかがでしょうか。



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