2010年8月20日金曜日

月読レコード『黄泉堂 - The HALL HADES -』(2010)


 コンポーザー/アレンジャーの翡翠氏が主宰する同人音楽レーベル:月読レコードの夏コミ新作。翡翠氏が完全ソロ体制で制作した、全4曲収録のミニアルバムで、翡翠氏の作風の特徴のひとつである和のムードは勿論のこと、今回はハモンドオルガン、メロトロン、モーグの音色をいつになく大々的にフィーチャーしており、和洋折衷的プログレッシヴ・ロック作品に仕上がっています。1曲目の「滅紫渡り(けしむらさきわたり)」は、ピアノの響きとファルセット・ヴォーカルの独唱をメインとしたイントロダクション。アクセント的にメトロトンの音色も被さり、より静謐なムード感に溢れた1曲。2曲目「迦樓羅(かるら)」は、ファズがかったうねりのあるバッキングシーケンスに、竜笛/フルートをフィーチャーしたインストナンバー。軽やかに変拍子を交え、シリアスでありながらどこか飄々としたイメージも感じさせます。3曲目「とかげのしっぽ切り」は、前曲の流れを継いだような形で、再びうねりのある1曲。EL&P/キース・エマーソンを思わせるキーボード・プログレで、ジャジーな展開も織り交ぜつつ、ピアノとモーグのうねりに導かれる形で展開。楽曲後半ではコーラスもフェードインし、焦燥感を煽る曲調にますます拍車がかかり、緊迫したムードが高まりを見せてゆきます。そして高められた緊迫感は4曲目「夢、幻、現が境」で一気に爆発。ハモンド、モーグ、メロトロンサウンドに加え、和楽器類、多重コーラスを総動員し、粛々としたムードとダイナミックな厚みを演出。人によっては(…自分のことですが)イメージとしては源平討魔伝が浮かぶやもしれません。起承転結の"結"を強烈に印象付ける、本作のハイライトたる1曲でありましょう。ミニアルバムですが、この路線でフルアルバムも聴きたいと思わせてくれるほどに聴き所の多い一枚。濃ゆいです。


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