2014年11月6日木曜日

百石元『ねこひきのオルオラネ オリジナルサウンドトラック』(1992)

 現在は音楽マネージメント/プロダクション会社 F.M.Fに所属するコンポーザー/アレンジャーである百石元氏。80年代は杏里や松田聖子、少年隊やLOOKなどのツアーでのサポートギタリストとして活動し、90年代以降は自身のユニットであるEUCLID PRYMEでの活動やJ-POPの編曲なども手がけられ、近年では「けいおん!」や「GJ部」、現在放送中の「繰繰れ!コックリさん」、来年頭に放送を控えている「冴えない彼女の育てかた」といったアニメ作品の劇伴やキャラクターソングでより広くその名が知られるようになりました。氏の引き出しは実に幅広く、「けいおん!」での劇伴仕事は特にそれが顕著にうかがえるものでしたが、氏がこれまでに培ってきたキャリアをみればそれもなるほどとうなづけるものであります。

ねこひきのオルオラネねこひきのオルオラネ
(1992/10/25)
アニメ・サントラ、ラバート・サミュエルズ 他

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 百石氏は、80年代末期と90年代の初頭に二枚のサウンドトラック作品を残しております。前回では'88年にリリースされた「小山荘のきらわれ者」のイメージアルバムをご紹介しましたが、今回は'92年にリリースされた「ねこひきのオルオラネ」のOVA版のサウンドトラックをご紹介いたします。原作は夢枕獏氏がデビューして間もない'79年に集英社コバルト文庫より刊行された現代ファンタジー小説('96年にハヤカワ文庫で『猫弾きのオルオラネ 完全版』として連作短篇集として再刊。現在はクリーク・アンド・リバー社より「猫弾きのオルオラネ」「そして夢雪蝶は光のなか」の二短篇がkindleで入手可能)。「猫を弾く」という老楽師のオルオラネ爺さんと彼の猫たちと出逢った人たちとの交流を描いた短篇で、この後に夢枕氏が発表されていく「キマイラ」「サイコダイバー」「餓狼伝」などのシリーズでのヴァイオレンス/伝奇路線とはまったく趣を異にしたロマンティックな傑作であります。ちなみに、OVAは監督:西久保瑞穂氏/脚本:関島眞頼氏、キャストには関俊彦氏、銀河万丈氏、林原めぐみさん、中博史さん、折笠愛さんを迎えて制作されておりました。

猫弾きのオルオラネ猫弾きのオルオラネ
(2013/12/24)
夢枕 獏

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 サウンドトラックのほとんどの作編曲は百石氏によるもの。クリスマスの前後の時期を舞台にしているため、サウンドも冬の澄んだ空気を感じさせるかのような仕上がり。アコースティック・ギター、ストリングス、サックス、アコーディオンなどの暖色系の音色を交えたインストゥルメンタルと、LAVERT SAMUELSNADINE COLLINSの両氏が歌い上げる、アダルティーな魅力を満載した主題歌/挿入歌"Hearts in Harmony" "River of Time"(作詞でクレジットされているRALPH McCARTHY氏は「うる星やつら」の後期主題歌の作詞を手がけた人でもあります)を収録しています。「小山荘のきらわれ者」のイメージアルバムではロック・ギタリストとしての側面も幾分強かった百石氏でしたが、本作の前年にプライベート・スタジオを自宅に構え、セッション・ミュージシャンからスタジオ・レコーディングに活動の比重を高めていったということもあってか、コンポーザーとしての力量をより一層発揮したものになっているのも興味深いポイントになっています。ファンタジックなシンセサイザー・インストゥルメンタル"幻想"や、まさにクリスマスソングな趣の"クリスマス"、スティールパンの響きがユーモラスな興趣を添えた"猫のテーマ"といった落ち着きのある楽曲のなかでも白眉なのは"街外れの出逢い"。ワルツのリズムを奏でるアコーディオンにのせて、シンセとヴァイオリンの旋律の絡みが胸を締め付ける珠玉の1曲です。



 全体的に非常にクオリティが高く、後の百石氏のブレイクをも予感させるに十分な内容となっております。また、演奏メンバーにはLOOKの盟友である山本はるきち氏、AIKE BANDの池頼広氏(今ではドラマ「相棒」シリーズのスコアなどで超売れっ子コンポーザーですね)、80年代末期のSENSE OF WONDERにもドラムスで参加していた小森啓資氏の名前も見られます(今になって考えてみると、KENSOの初代ドラマー(山本氏)と三代目ドラマー(小森氏)がクレジットされているということでもあるなあと)。余談ですが、山本氏は自身が関わった作品のなかで本サントラをオススメの一枚として挙げております。

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1. 幻想 (作編曲:百石元)
2. クリスマス(作編曲:百石元)
3. 街外れの出逢い(作編曲:百石元)
4. オルオラネのテーマ(作編曲:百石元)
5. 猫のテーマ(作編曲:百石元)
6. Hearts in Harmony(作詞:RALPH McCARTHY/作編曲:百石元/歌:LAVERT SAMUELS)
7. River of Time(作詞:RALPH McCARTHY/作曲:石川Kanji/編曲:百石元/歌:NADINE COLLINS)
8. River of Time [Instrumental Version](作曲:石川Kanji/編曲:百石元)
9. 感動(作曲:石川Kanji・澤謙/編曲:百石元)


[POCH-2035/1992.10.25]

Sound Produced by 澤謙
Arranged / Computer Manipulated by 百石元
Words and Written by RALPH McCARTHY
Translate by MARIE COCHRANE
Producer 石田登

NADINE COLLINS(vocal/backing vocal)
LAVERT SAMUELS(vocal)
WANDA CATON/BRUCE BUTLER/KAREEM SHABZZ/MICHAEL CAMPHOX(backing vocal)

小森啓資(drums)
池頼広(bass)
百石元(guitar)
吉川忠英(accoustic guitar)
勝又隆一/山本はるきち(keyboards)
松田幸一(harmonica)
風間文彦(accordion)
元井信(violin)
久保田明宏(cello)
松岡陽平(viola)
Keizo Kamekawa(sax)




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AYA‐時間を紡いで‐AYA‐時間を紡いで‐
(1993/12/21)
久川綾

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 さらに余談になりますが、サウンドトラックの翌年の'93年にリリースされた久川綾さんの1stソロアルバム『AYA‐時間を紡いで‐』には、山本はるきち氏と百石元氏の両氏がほとんどの楽曲の作編曲に参加されています。"Voice in the Paradise" "月の夜に"の二曲は、作曲:百石元/編曲:山本はるきちのタッグで制作されたもので、往年のLOOKもかくやといった感のあるAORナンバーであります。



百石元『小山荘のきらわれ者 オリジナルアルバム』(1988)

サウンドクリエイター 百石 元 インタビュー
オリジナルビデオ アニメ ねこひきのオルオラネ - allcinema

百石元 - F.M.F CREATORS
F.M.F - Wikipedia
夢枕獏 - Wikipedia

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