2010年6月23日水曜日

P-MODEL 全オリジナルアルバムレビュー 【後編】

御大:平沢進氏による、過去のP-MODEL作品からの楽曲をリメイクしたアルバム『突弦変異』がリリースされるということで、旧ブログに3年前に残したP-MODELのオリジナルアルバム関係のエントリをリサイクル、または書き足してまとめてみました。後編となる今回は、85年から99年のアルバムを。

【前編】
  http://camelletgo.blogspot.com/2010/06/P-MODEL-discography01.html


『KARKADOR』(1985)
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初期からバンドに携わってきた田井中貞利氏が脱退し、後任に荒木康弘氏(ALLERGY)が加入、さらに横川理彦氏(Ba.Violin.Vo/ AFTER DINNER/4-D)、を迎えての6thアルバム。オープニングとエンディングに配された「KARKADOR」「KARCADOR」での民族色も感じさせるフリーキーなヴァイオリンプレイが象徴するように、横川氏の加入によりバンドに奇妙なエッセンスが加わっております。「ダンス素凡夫」「Hourglass」におけるトロピカルな躍動感や、「OAR」のキャッチーな甘みなど、氏が関わった楽曲には明らかにこれまでのP-MODELになかったもので、それらの凝った味付けもひっくるめて予測不可能な動きを見せるテンションが見もの。インダストリアルなシーケンスを絡めて展開にメリハリを効かせた「1778-1985」、悠々とハイキングするかのような上昇的な曲調に象徴的な詞が連なり、小気味の良いドラムと共に絶品の気持ち良さを誇る「Cyborg」、ハッピーに盛り上がったり不気味に盛り下がったりとメロディにひねくれた趣向がクセになるポップナンバー「LEAK」と、平沢御大も負けじとインパクトのある楽曲を放っております。アルバムはこれといって捨て曲らしい捨て曲もなく、中期P-MODELでは『Another Game』と共にオススメしたい一枚。





『One Pattern』(1986)
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三浦氏、横川氏の両氏が脱退、高橋芳一氏(Systems)、中野照夫氏(Ba.Vo)を後任に迎えての7thアルバム。「Oh!Mama!」、中野氏作曲の「LOCORICE LEAF」で掴みはバッチリに始まるものの、楽曲の印象が団子状態になることが多く、文字通りワンパターンな構成になってて正直全曲聴き通すにはツライものがあるかも。P-MODELと平沢ソロを足して2で割ったような作風ですが、決め手に欠けるせいかバンドのネタ切れ/行き詰まりを感じざるを得ないです。とはいえ中盤の楽曲はなかなかで、歌唱が淡々とした演奏の中で映える「Zebra」(後の「夢の島思念公園」「地球ネコ」のベースとなった曲でありましょう)、エキセントリックとシニカルの狭間を行く「おやすみDog」、スカっとした華やかさのある「Another Day」でなんとか一矢報いてます。この後、田井中貞利氏が復帰、さらにキャラが立ちまくりの"キーボード妖怪"ことことぶき光氏が加わり、『MONSTER』というタイトルでアルバムを制作する予定だったそうですがオクラ入りになり、バンドは88年12月を以って、"凍結"と称して2年と数ヶ月の間、しばらく活動を休止します。




ちなみにそのオクラ入りとなったアルバム『MONSTER』の楽曲は、凍結前のラインナップ(平沢/中野/田井中/ことぶき)による演奏を収めたライヴビデオ『三界の人体地図』で聴く事ができます。「MONSTER A GO GO」は秀逸な1曲。



『P-MODEL』(1992) / 『big body』(1993)
ゴールデン☆ベスト P-MODEL「P-MODEL」&「big body」
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P-MODELとして活動凍結中の間、平沢氏は3枚のソロアルバム(『時空の水』『サイエンスの幽霊』『Virtual Rabbit』)を発表するなど精力的に活動しており、決して停滞していたわけではありませんでした。そして満を持してのP-MODEL"解凍"。オリジナルメンバーである秋山勝彦氏が復帰、ドラムスには藤井ヤスチカ氏を迎え、メンバー全員が近未来SFに登場するような衣装を纏い、新生P-MODELとして再び華麗なるカムバックを果たします。バンドセルフタイトルを冠した『P-MODEL』そしてその1年後に発表された『big body』は、内実共にわかりやすい"テクノ・ポップ"を体現しており、ピコピコ&ポップなテクノ・ポップ・チューンが次から次へと飛んでくる様は圧巻。めくるめく平沢ワールドを展開する「Speed Tube」、さながら導師のごときたたずまいすら感じさせる平沢氏のヴォーカル、思わず口ずさみたくなるキャッチーなメロディの開放感が実に気持ちがいい「Wire Self」「Homo Gestalt」など、高揚感と疾走感に溢れた楽曲のオンパレードでありますが、ことぶき光氏が関わった楽曲は一際異彩を放っており、PVも強烈なインパクトを誇る「2D OR NOT 2D」や、「幼形成熟BOX」では眩いまでのピコピコサウンドが文字通り弾け跳んでおり、極めて中毒性が高い。一方で、秋山氏のいくつかの提供曲は対照的に静的なものですが、不思議な味のあるアクセントとなっており、秋山氏自らヴォーカルもとっている「BURNING BRAIN」はその最たる楽曲といえましょう。ちなみに、『P-MODEL』ラストに収録された「Psychoid」で楽曲が一旦終了してから数分後に流れる疾走曲は「No Room」といい、現在の公式サイトのタイトルにもなっています。初期P-MODELの作風を解釈し直したような楽曲で、「美術館で会った人だろ」のフレーズの登場にニヤリとさせられることウケアイ。『P-MODEL』『big body』の2枚は地続きの関係にあるので、是非一度に2枚聴いてほしいところ。この2枚を2in1でカップリングした『ゴールデン☆ベスト』はお値段手ごろながら今でも容易に入手することが可能です。第二の金字塔的作品。






『舟』(1995)
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またもやメンバー総入れ替え。福間創(System 1)、元DADA~4-Dの"和尚"小西健司(System 2)、GRASS VALLEYの上領亘(Algorithm)の3名が加入。小西氏は作詞のほか、アルバムの楽曲の半分の作曲を担当しております。ポップな方向性ではありますが、ピコピコギラギラしていた解凍後の前二作とは対照的に静的なイメージのテクノ/アンビエント色が増加、パレードのように楽しげなムードに満ちた「Welcome」や、壮大なイメージを喚起させる「3/4 (March 4th)」「Tide」など、随所に漂うエスニックでオリエンタルなムードは平沢氏のソロからの流れを強く感じさせます。「夢見る力に」は小西氏のポップセンスが光る佳曲。また、心地良い音の波にたゆたうアンビエント/ニューエイジな「Mirror Game」「HOME」など、耳触りの良い曲も。楽曲はどれもそつなくまとまっているのですが、方向性がいまひとつパッとしないので、アルバムとしては微妙な立ち位置にある作品です。






『電子悲劇/~ENOLA』(1997)
電子悲劇/~ENOLA (+6)
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上領氏が脱退し、平沢、小西、福間の3名によって制作された97年作品。"電子舟P-MODEL号"をコンセプトとしたストーリーに基づいた作品であり、『P-MODEL』『big body』の作風をさらにシリアスに寄せたような内容で、各人がそれぞれ3~4曲ずつ提供しております。前作発表後にリリースされた3枚のマキシシングル(『Rocket Shoot』『ASHURA CLOCK』『LAYER-GREEN』)の楽曲も収録。いきなり疾走感とダイナミックなコーラスがキマる「ENOLA」に象徴されるように、どの曲も一度聴いたら耳から離れなくなるほどに落としどころが明確で、語りどころは非常に多いです。福間氏がヴォーカルを披露し、ミステリアスな展開から平沢氏のヴォーカルを伴ったサビで一気に開けたときの爽快感たるや並々ならぬものがある「Bogy」。小西&平沢のデュエット(?)が聴ける胡散臭いエスニック・エレポップ「ENN」や、ガムラン調のイントロをフィーチャーした「Black in White」など、異国テイストも健在。荘厳な平沢ヴォーカルを存分に聴かせる「Rocket Shoot II」、のたくったバッキングシーケンスがデロデロとにぶい輝きを放ち、ギターも唸りを上げる疾走曲「ASHURA CLOCK (Discommunicator)」、平沢氏のソロからの作風を見事に昇華した感のある「LAYER-GREEN(ver.1.05 Gold)」と、シングル曲は若干のアレンジが加わっているものもありますがどれも強力で、キャラが立っております。ラストのインスト「A Strange Fruit」(小西氏作曲)だけ思いっきり他の曲と毛色が違う爽やかで可愛らしい曲で、"これもP-MODEL!?"と意表を突かれるのですが、ご愛嬌。とはいえ、三者の個性が鮮やかにバランスよく混在した、90年代後期P-MODEL随一の充実作なのは間違いありません。



『音楽産業廃棄物~P-MODEL OR DIE』(1999)
音楽産業廃棄物 〜P-MODEL OR DIE
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P-MODEL活動20周年記念プロジェクト「音楽産業廃棄物P-MODEL OR DIE」の一環でリリースされたアルバム。MP3配信のことを考え、楽曲は3MB~5MBの容量で収めるというコンパクトな作りで仕上げられ、「P-MODELの回収・再生」をテーマに掲げた作品。80年代P-MODELのニオイを感じさせつつ、ソロアルバムや解凍後の流れも汲んだ万遍のないサウンドはキャッチーで心地が良く、『Perspective』の「Heaven」の再解釈的ナンバー(?)「Heaven 2000」や、「論理空軍」「DUSToidよ歩行は快適か?」といったインパクトのある楽曲や、P-MODELにしては珍しい(?)泣きのメロディを織り込んだ「Mind Scape」もあるのですが、どうも縮小再生産的なイメージがつきまとってしまいます。アレンジもどこか画一的なので、微妙な企画アルバムという印象。音楽配信というコンセプトを考えると本作は意義深いと思いますが、音楽的には本作は節目としては今ひとつ締まらなかったのでは?本作発表後、P-MODELは「培養期」(つまり活動休止)に入ります。




【参考】
P-MODEL MEMBERS HISTORY
P-MODEL:Wikipedia
NO ROOM

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