2010年6月22日火曜日

P-MODEL 全オリジナルアルバムレビュー 【前編】

御大:平沢進氏による、過去のP-MODEL作品からの楽曲をリメイクしたアルバム『突弦変異』が23日にリリースされるということで、旧ブログに3年前に残したP-MODELのオリジナルアルバム関係のエントリをリサイクル、または書き足してまとめてみました。前編となる今回は79年から84年のアルバムまで。



『In A Model Room』(1979)
IN A MODEL ROOM (紙ジャケット仕様)
P-MODEL
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79年の記念すべきデビュー作。前身であるヘヴィ・プログレ・バンド:MANDRAKEのメンバー全員が、そのまま鞍替えする形でP-MODELに参加しています。KING CRIMSONとBLACK SABBATHを足し合わせたようなヘヴィなプログレを演っていたバンドとは思えないほどの華麗なる転身。基本はチープなピッコピコシンセが乱れ飛び、ナンセンスな言葉遊びやアイロニーを散りばめたパンキッシュなスタイルですが、アヴァンギャルドに片足突っ込んだような姿勢も時折見られるせいか、テクノ・ポップという言葉で片付けていいのかチト困る場面もあるのはやっぱり前身が前身だけにというところでしょうかね。「美術館で会った人だろ」「ヘルス・エンジェル」「サンシャイン・シティー」などの倒錯しつつも勢いで押し切るテクノパンクチューンや、淡々としたシーケンスにクセになるコーラスを交えた「子供たちどうも」「ホワイトシガレット」といった楽曲の中、異色なカラーを持っているのが、マンドレイク時代の楽曲のリメイクである「偉大なる頭脳」。"アタマの中のアタマにアタマの中のアタマが" "想いの前の想いに想いの前のよせあつめ"といった歌詞や歌い回しもさることながら、複雑にねじくれるギターワークやリズムが混乱を誘う佳曲。わずか2分で妙なインパクトを与えてくれます。プロデュースは佐久間正英氏、国内テクノ・ポップ/ニューウェーヴ・パンクの金字塔的1枚。






『ランドセル(LANDSALE)』(1980)
ランドセル(紙ジャケット仕様)
P-MODEL
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「可能な限り大きな音でお聴きください」というブックレットの一文も印象的な2ndアルバム。ストリングスとピアノによるしっとりした1曲目「オハヨウ」にいきなり意表を突かれますが、それ以外はおおむね前作の流れを汲む作品。音質も向上したせいか、音がより立体的になりエキセントリックさやチープさは減少、前作と比較するとおおむねノーマルな路線のニューウェーヴ・ポップ/パンクに仕上がっています。しかし"ランドセル"と"売国"をかけたアルバムタイトルにも見られるように、相変わらず毒と皮肉と電波をしたたかに吐き散らしており、それは世間のアレコレだけでなく自バンドのファンに対しても及んでおります。シニカルでたっぷりコーティングしてある分、このスタンスはある意味厄介(笑)また、本作にもマンドレイク時代の楽曲が収められており、11曲目の「異邦人」がそれ。シンプルな中にねっとり異質な雰囲気を醸しています。



『Potpourri』(1981)
ポプリ
ポプリ
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P-MODEL
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べースの秋山勝彦氏が脱退し、平沢氏がベースも兼任する形でメンバー3人で制作された3rdアルバム。ギターの軋みやリズム隊の手数が増え、あっちこっちに跳ね回るアンサンブル、エコー、テープコラージュ、SEが入り混じった混沌とした趣向、トーンを落とした曲調、など、奇抜で強烈な路線へ急転換しています。半ば悪意としか思えない猟奇的ギミック、"躁"状態とでいうようなトびっぷりは聴いてて薄気味が悪いことこの上ない。シャウトにオルガンがのたうちまわる「ブループリント」、アンサンブルと一緒になってヴォーカルも自暴自棄となる「Different≠Anohter」、ヨーデルコーラスにテープコラージュが花盛りという「Another Smell」など、中盤はイクとこまでイってんじゃないかと思うほどキレており、徐々に本性をむき出していくかのよう。シンプルにすっ飛ばしていた1st、2ndと聴き比べると愕然とするギャップですが、あれこれ実験要素を放り込んでいるおかげで初期3作中では最もカオス。



『Perspective』(1982)
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P-MODEL
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秋山氏の後任ベーシストとして、平沢氏が当時講師を務めていたシンセサイザー教室の教え子だったという菊池達也氏が加入した、82年発表の4thアルバム。アヴァンギャルドな流れの中にありながら前3作の名残は全くと言っていいほど残っておらず、本作において展開される空間はまるで突然変異でポッと出来上がってしまったというか、そんなミステリアスなニュアンス。階段での残響を利用した奥行きと音圧のあるマシーナリーなドラムサウンド、そこにデロデロとうねりの入ったシーケンスを奏でるキーボード&ベースが絡みつき、平沢氏は抽象的な歌詞を切羽詰まったように歌い上げたり、刷り込むように囁いたりと、アンサンブルは重さの中にとことん醒めた不気味さを孕んでいます。シンプルなようでいて不安や切迫としたものをひしひしと感じる淡々としたメロディには、乾いた悪意が隠し味的に混じり込んでいるような印象もあり、「HEAVEN」「Solid Air」「のこりギリギリ」の3曲は特にそれが顕著に表れているのではないかと。ついてこれるヤツだけついてこいというミーハーお断りの突き放したスタンスが前作以上に極まった感があり、もはや孤高の境地。ちなみに本作は2007年にリマスターで再発されたのですが、そこにはボーナストラックとして『Perspective』の別テイクを収めたカセット『Perspective II』(これもオリジナルは82年リリース)の音源(全11トラック)が全て収録されています。



『Another Game』(1984)
Another Game(オリジナル帯復刻仕様)
P-MODEL
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田中靖美氏が脱退し、後任キーボーディストとして三浦俊一氏が加入した84年の5thアルバム。「Atom-Siberia」における歌詞の一部(奇形のエリア、不具の辻褄)がレコ倫に引っかかり発売が延期され、平沢氏が精神的にかなり参っていた時期の作品ということで、全体的に雰囲気が病んでます。やけに生々しく際立った底辺のベースサウンド、ダウナーな音作りのシンセを主体にして妙にサウンドがフワッと浮ついているから気味の悪さもたっぷり。幾分か自己セラピーのような曲もあります。「意識を集中して 世界と彼に関するこの礼儀正しいループを貴方の脳活動の中から探しだし、いついかなる場合にもそれを思い出せるようあなた自身のキーワードをつくってください」と、いきなり聴き手にマインドコントロールをかけてくるモノローグ「ANOTHER GAME」、ゾルっとしたシンセに躍動的なドラムの対比が妙味な「Atom-Siberia」、ひたすらフルヘッヘッヘで通し、異常なほど切羽詰った感を剥き出しにしていくヴォーカルが歌い手にも聴き手に緊張感を強いる「フ・ル・ヘッ・ヘッ・ヘッ」、シンセのフレーズにややクラフトワークからの影響が伺える「Floor」、残響するドラム、光明が差すかのようなシンセ、発信音(α波を誘発させる意図があるそうな)で心地よさを演出する「Awakening Sleep」、シド・バレット在籍時のPINK FLOYDナンバー「Bike」のカヴァーも不気味な色合いを発しながらもアルバムの一部として溶け込んでいます。どの楽曲も聴いてるうちに「もうこの場にはいたくない!」とでもいうような逃避感覚に襲われる問題作でありながら、ある種の傑作。自分は本作が彼らのディスコグラフィの中で一二を争うほどスキです。






『SCUBA』(1984/1989)
SCUBA P-MODEL
SCUBA P-MODEL
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P-MODEL
キャプテンレコード
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番外編的1枚。薄暗く躁鬱的な浮遊感に溢れた『Another Game』の同年に発表。当初はカセットブックでのリリースでしたが、89年にキャプテンレコードからCD版(それに際して若干の変更が加えられたとのこと)がリリースされております。バンド体制で制作されておらず (バンドメンバーでは三浦俊一氏しか参加しておりません)、サウンドよりもヴォーカルを押し出しているため、P-MODELというより「プレ平沢ソロアルバム」という趣の仕上がり。本作の「Frozen Beach」「Fish Song」の2曲は平沢氏のソロアルバムにも収録されています。タイトルやアレンジ、さざ波の音色で始まりそして終わるアルバムの構成など、至る所で意識的に海を連想させられるのですが、中でも先の2曲は音数の少ないシンプルなアレンジで雄大な海洋のイメージを抱かせてくれる良曲。曲調に反してシニカルな毒たっぷりという平沢流ポップセンスの光る「BOAT」「七節男」や、ややオリエンタルな味付けを施してユルユルな「オハヨウII」(『LANDSALE』収録「オハヨウ」の続編)など、番外編とは思えないほど面白い成り立ち。95年には楽曲に全面リ・アレンジを加え、さらにブックレットが改訂された(平沢氏ががアルバム制作中に見た夢の記録がそこには綴られております)『SCUBA Recycle』がリリースされています。


【後編】⇒ http://camelletgo.blogspot.com/2010/06/P-MODEL-discography02.html


【参考】
P-MODEL MEMBERS HISTORY
P-MODEL:Wikipedia
NO ROOM

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