YouTubeを閲覧していて、ふと関連動画の広告枠を見やると、パンダがいました。……なんでパンダなのか。どうやらSataninchenというドイツのシンガーのプロモらしく、ブラックメタルとみせかけてエピックメタルだったりポップソングだったりフォークだったり、MVで意味不明な悪ふざけをしていたりと、なかなかトチ狂っているなと思いながらも数曲ほど聴いてしまった。どうやら、このパンダ・メタル・パーティーおじさんことサタニンヒェンは、5月末にフルアルバムを出したばかりで絶賛売り込み(?)中の人らしい。これも何かの縁だと思い、バンドの公式通販経由でCDも買ってしまった。今は夏だというのにクリスマスカードを送ってきたうえ、卑猥なオマケもくれました。
サタニンヒェン氏の素性はまったくもって不明なのですが、ドイツやオーストリアの往年のポップソング(日本ではほとんどなじみがない類の)を塩辛いヴォーカルとジョワジョワしたギター、薄っぺらいドラムなどを駆使してブラックメタル風にアレンジするので「Black Metal-Schlager」と他称されているようです。この「Schlager」というのはドイツ語でヒットを意味する言葉であり、つまるところはポップソングであります。活動自体は数年ほど前からやっているようで、2015年末の時点でクラウドファンディングでアルバム制作資金も募っておりました。当初の構想では同国のDie Apokalyptischen Reiterのダニエル・ターメルや、Lord of the Lostのクリス・ハルムス、イスラエルのOrphaned Landのコビ・ファーリなどをフィーチャーする予定だったようですが、この三人の参加は結局実現しなかったみたいです。というか、その豪勢なメンツでよくやろうと思ったなと。ただ、この時同じく参加がアナウンスされていたNEOPERAのニナ・ジアースと、俳優兼シンガーであるルーシー・ヴァン・オルグの二人は参加しています。
2016年には1stマキシシングル「Katzelied」を111枚限定で、2017年4月には、2ndマキシシングル「Panda Metal」をデジタル限定でそれぞれリリースしています。「ピアノver.」「グロウルver.」「1815年ver.」(?)など、別ヴァージョンが充実。デビューアルバムでありながら、いびきと猫の鳴き声と生活音と嘔吐という、なかなか最悪な始まり方をする本作『Panda Metal Party』は、シンセポップバンドNenaの1982年の「Nur Geträumt」、ウド・ユルゲンスの1974年のフォークソング「Griechischer Wein」、EAV(Erste Allgemeine Verunsicherung)の1994年の「Einmal möchte ich ein Böser sein」、言わずと知れたABBAの「Lay All Your Love On Me」などのカヴァーも収めた全17曲。また、アルバムの一部楽曲で威勢のよいコーラスを担当している「HardChor」には、アカペラヘヴィメタルバンド VAN CANTOのバス・ヴォーカル担当であるヤン・モリッツも参加しています。ふざけているようで実はちゃんとアレンジを作りこむというスタンスとしては同国のスーパーヒーローメタルバンドであるGrailknightsに近いのかもな……と思うところもあります。細く長く活動していただきたい。
http://www.sataninchen.de/