2017年4月2日日曜日

Jプログレの仕事人による、近年の活動のフィードバック ― Shusei's Project(塚本周成)『Same Dreamer』(2017)

Same Dreamer
Same Dreamer
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Shusei's Project
キングレコード (2017-03-08)
売り上げランキング: 37,830


 プログレッシヴ・ロック・バンド「アウター・リミッツ」「VIENNA」のキーボーディストにして、1990年代には二井原実やDED CHAPLINのツアーサポートや、X JAPANのToshi(現:Toshl)の2ndアルバム『Mission』のアレンジャー/レコーディングメンバーとして、2000年代にはGacktのシングル/アルバムのオーケストラアレンジなどで活躍。近年は塚本音楽学校の学長として後進の育成も行っておられるほか、音楽制作会社「埼玉音楽放送株式会社」の代表取締役として、アニメ「だんちがい」「おじさんとマシュマロ」の楽曲の作編曲と作詞も全面的に担当されている塚本周成(Shusei)氏が新たに立ち上げたソロプロジェクトのデビューアルバム。ヴォーカルオーディションで選ばれた声優の雅絢恵さんと相馬優さんの二人をフロントに据え、アウター・リミッツの盟友 荒牧隆氏(guitar)、VIENNA、DED CHAPLINの盟友 永井敏己氏(fretless bass)、菅沼孝三氏(drums)、そしてFANTASMAGORIAの藤本美樹(violin)さんをバックに迎えて制作されたのが本作。ちなみに藤本さんは「だんちがい」「おじさんとマシュマロ」の劇伴にもレコーディングメンバーとして参加されておりました。

 アウターリミッツの『STROMATOLITE』以来、約十年ぶりのアルバムとなる本作のコンセプトは「夢」。《ユーロ・ロック・プレス》Vol.72での塚本氏のインタビューによると、「おじさんとマシュマロ」における若林伊織 (cv 喜多村英梨)のキャラクターソング"メッセージ"を制作した際に浮かんだアイデアがキッカケだったとのこと。また、一連のキャラクターソングの作詞の制作で培ったノウハウも本作において十分に活かされているようです。「だんちがい」「おじさんとマシュマロ」では、劇伴としての制約や制作サイドからのオーダーとの兼ね合い(キャラソンでプログレ曲を制作したところ、ボツになったそうです)もあり、苦心のあとがうかがえましたが、オリジナルアルバムである本作ではその心配はまったくありません。イントロダクション"夢"で幕開けし、大泣きのメロディを押し出したパワーバラード"Border"、パイプオルガンサウンドとヴァイオリンが織り成す"戦いの中で"などを経て、壮麗なコーラスと各パートのタイトなインタープレイに彩られた祝祭的な大曲"夢の始まり"で終わる本作は、結果的に初期TERU'S SYMPHONIAやSound Horizonに近い「ドラマティックでちょっぴり気恥ずかしい」歌ものシンフォニック・ロック作品となっており、首尾の一貫した快作になっています。




http://www.music-planet.co.jp/
http://kings-rock.jp/news/2017/01/0130-j-shuseis-project38.php


shusei (塚本周成) 『おじさんとマシュマロ Song Collection Vol.1&2』(2016)
shusei (塚本周成) 『だんちがい Music Collection』(2015)
VIENNA『Overture』(1988) / 『Step Into...』(1988) / 『Unknown』(1998)  
TOSHI『Mission』(1994)