2015年7月17日金曜日

軽やかにジャンルを越境する、とびっきり鮮やかなハイブリッド・フュージョン 第二弾 ― maigoishi『Dystopia』(2015)

Dystopia
Dystopia
posted with amazlet at 15.07.16
maigoishi
elegantdisc (2015-07-15)
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 魅力的アーティストを輩出しているエレクトロニカ系レーベル「elegantdisc」から2013年末にデビューを飾った新進気鋭のコンポーザー/トラックメイカー maigoishi。デビューアルバムである『Encounter』では、ジャズ、ソウル、ファンク、エレクトロニカ、プログレッシヴ・ロック、ゲーム・ミュージック、サウンドトラックなどの最良の要素を巧みに取り込み、和の情緒を交え出力した新世代のデジタル・フュージョン・サウンドで、とびっきりの鮮烈な印象を与えてくれました。その後、コンピレーションアルバムや、TV番組や映画、映像作品への楽曲提供も活発に行いながらアルバムのレコーディングがすすめられ、約一年半ぶりの作品となる『Dystopia』が完成。楽しみにしておりました。





 今作ではJukeやFootworkの要素を意識的に取り込んだとのことで、流麗なピアノ/シンセのフレーズに導かれる冒頭曲"背水ノ陣"や、エレピソロが興趣を添える"Human Heart"では、サンプリングとトリッキーなビートの叩き込まれたトラックが鼓膜を心地よく刺激してくれます。"四面楚歌"では、キース・エマーソンを彷彿とさせるタッチのド直球キーボード・プログレを展開。"SHINOBI" "Japanese Metronome" "夏座敷"など、和のエッセンスは本作においてもたっぷりとまぶしこまれており、持ち前の抜けのよいサウンド、カラフルなアレンジもあいまって不思議なジャパネスクを演出しております。部分的に久石譲を想起させるところも。また、今回もギタートラックには外部ミュージシャンが迎えられており、"古神道"の中盤ではシャープなギターソロが挿入されております。柔らかさと人懐っこいメロディが染みこんだ"Steam Punk Scrap" "IHATOV"や、裏拍気味に入る木魚の音色も楽しい"April Dash"、ゆるやかなピアノの上をメリハリの効いたビートが刻み、コントラストの妙を感じる"Omen Break"といったポップ・インストゥルメンタルでは、情景的な志向がよりいっそう強くなったとも感じます。ラストの"Over the Time"はさまざまな情景が鮮やかにフラッシュバックする、締めを飾るにふさわしい印象的な一曲。適度にスキマを設けたアルバム構成もさることながら、スタイリッシュなインストゥルメンタルとしてさらに磨きのかかった快作。雑食的なサウンドを追い求める向きにはこれ以上なくマストな一枚です。






http://maigoishi.jimdo.com/

maigoishi『dystopia』 - elegantdisc
maigoishi interview - elegantdisc
氏のユニークな音楽遍歴について言及あり。

maigoishi『Encounter』(2013)