2018年1月27日土曜日

小説、グラフィックノベル、音楽、グッズ……「バーフバリ」プロジェクトをさらに楽しむためのアレコレ



http://baahubali-movie.com/

 つい最近、「バーフバリ」二部作(S・S・ラージャマウリ監督・脚本)を立て続けに観ました(Amazonビデオ&劇場)。凄まじく豪華絢爛、とてつもなく質実剛健。王位継承と嫁姑の問題のこじれを強い「画」と超特大のスケール感とハンパない強度を誇るシンプルなストーリーでウルトラダイナミックに描く様はまごうことなく叙事詩であり神話であり、とんでもなくすごいものを観たという感慨に尽きます。極大の満足感を味わいました。とにかく画の派手さ、美しさで圧倒するのだけれども、ストーリー部分もかなりしっかりしているし、過剰さに寄りかかることなく、緩急もちゃんとしていて、漫然と見せているというようなところは全然ないです。なおかつ、「伝説誕生」も「王の凱旋」も、それぞれが大作ブロックバスター映画3本分のパワーをブチこんだ超高濃度のカタマリとして仕上がっております。


バーフバリ 伝説誕生 [Blu-ray]
株式会社ツイン (2017-07-05)
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バーフバリ2 王の凱旋 [Blu-ray]
株式会社ツイン (2018-02-21)
売り上げランキング: 114


 既にあちこちで言われていますが、「伝説誕生」を観ずに「王の凱旋」から観ても全く問題ないです(最初の数分間でバッチリとフォローがなされます)。ただ、「王の凱旋」でカッタッパが幾分かコメディリリーフになったり、強い国母シヴァガミの振る舞いに翳りが見えたり、二部作を通すとモチーフ含めてまるで円環のようにストーリーが閉じる構成になっているというのは、「伝説誕生」を観ていてこそ味わえる醍醐味だとも思います。余裕があればぜひ「伝説誕生」からどうぞ。本編の語りどころは多々あれど、個人的に気に入っているのは、アマレンドラ・バーフバリのライオンパンチとマヘンドラ・バーフバリのチェーンパンチですね。バーフバリ親子二代にわたるストロングな血筋を感じたのだけど、一方で、バラーラデーヴァがチェーンパンチでブン殴られるのは、母デーヴァセーナを25年間鎖に繋いでいたことへの因果にも感じたので、そういう意味でもバラーラデーヴァは完膚なきまでに打ち負かされているよなと思いましたね。





 ちなみに、バラーラデーヴァのキャラクター造型は「ラーマーヤナ」のラーヴァナと「マハーバーラタ」のドゥルヨーダナ、インド二大叙事詩の登場人物のミックスであるとあちこちで指摘されています。彼の持つチュッパチャップス状のメイスも、棍棒術に長けるドゥルヨーダナに由来するものなのでしょう。さらに言えば、バラーラデーヴァを演じたラーナー・ダグバッティが、役作りにおいてドゥルヨーダナとラーヴァナをしっかりと意識していたとコメントしています。

「Rana Daggubati: My character in Bahubali is as mean as Duryodhana in Mahabharat and Ravana in Ramayan!」
(Bollywoodfire|2015.05.15)


「バーフバリ2 王の凱旋(字幕/吹替)」(iTunes)
2月21日配信予定

バーフバリ2 王の凱旋(DVD&ブルーレイ)(株式会社twin)
国内盤ソフト、2月21日発売。


http://baahubali.com/

 バーフバリの全世界公式サイト、映画はもちろん、ノベライズ、グラフィックノベル、アニメ、ゲーム、VR、マーチャンダイズといった各プロジェクトページに飛べるようになっております。また、サイトコンテンツの一つとしてファンアートやファンレター、ファンビデオをまとめている「Baahubali FAN KINDGOM」というtumblrアカウントまで用意されており、至れり尽くせり。



【ゲーム】
http://baahubali.com/mobile-games

 マヒシュマティ王国で軍隊を編成し、バーフバリやカッタッパ、バラーラデーヴァ、デーヴァセーナたちと協力しながらカーラケーヤと戦っていく。






【アニメ】
http://baahubali.com/animated-series

 舞台設定としては、カーラケーヤがマヒシュマティ王国に侵攻してくる前。13話+スペシャル回1話の全14話をAmazonプライムビデオのインド版で配信。なお、シーズン2の製作が決定しているもようです。







【VR】
http://baahubali.com/vr/

 通称「バーフバリの剣」。S・S・ラージャマウリのプロデュース、Radeon Technologies Groupの協力のもと、Arka Mediaworksが制作。舞台は「王の凱旋」のクライマックスシーン、VR体験者は一人の兵士となり、カッタッパの命でマヘンドラの剣を探し出して本人に届ける、というコンセプト。





【小説】
http://baahubali.com/novel




「Siya Ke Ram」「Chakravartin Ashoka Samrat」といったインド本国のテレビドラマシリーズにも参加している脚本家であり、叙事詩的小説『Asura:Tale Of The Vanquished』『Ajaya: Roll of the Dice』『Ajaya: Rise of Kali』の著者であるアナンド・ニーラカンタンがバーフバリの前日譚小説『The Rise of Sivagami』を、「王の凱旋」の本国公開前の2017年3月に刊行しています。kindle版は約300円でダウンロード購入可能。全三部作を予定しており、コンセプトにはラージャマウリ監督の意向も汲まれています。バーフバリ映画二部作で、全てのキャラクターがそれぞれの正義を果たす様を描き切れなかったことを監督は気にかけており、ニ―ラカンタン氏に各キャラクターのメモスケッチを渡し、彼らのバック・ストーリーを作り、キャラクターを掘り下げてほしいと頼んだとのこと。また、監督のアイデアには、「ロード・オブ・ザ・リング」や「ゲーム・オブ・スローンズ」のミニシリーズのようなイメージもあったようです。


▼チャプター2「Kattappa」の冒頭試し読みが可能。
http://baahubali.com/novel/preview.html


 本作のメインキャラクターは若き日のシヴァガミ。マヒシュマティ王国の王(ビッジャラデーヴァの父ソーマデーヴァ)に裏切者として最愛の父デーヴァラーヤを殺され、孤児となった彼女が、王に復讐を誓う顛末が描かれています。また、カッタッパにもスポットが当てられているのですが、ここである設定が書かれています。父マラヤッパ(Malayappa)の子として生まれ、王家に使える奴隷剣士の家系として育ったカッタッパにはシヴァッパ(Shivappa)という弟がいたということ。マヒシュマティの奴隷制度に反対し、やがて王国に反旗を翻す存在になるシヴァッパを前に、カッタッパは王国への忠誠との間で葛藤する――。それは、なぜカッタッパは映画のあのシーンでアマレンドラ・バーフバリを自らの剣で貫く心境に至ったのか、ということにも間違いなく共鳴するものでしょう。


ASURA: Tale Of The Vanquished (English Edition)
Leadstart Publishing (2012-12-01)




 ニーラカンタン氏のバックグラウンドについてですが、彼はマハーバーラタとラーマーヤナの二大叙事詩に強い影響を受けており、小説第一作『Asura:Tale Of The Vanquished』はラーヴァナ、第二作『Ajaya: Roll of the Dice』はドゥルヨーダナにまつわるものでした。過去のインタビューでは、「ラーマやクリシュナ、アルジュナは既に多くの作家に書かれており、その上でよりよいものを書くのは難しい。ドゥルヨーダナやラーヴァナにスポットを当てるのは刺激的だった」と語ってもいます。一方で、それまでのパターンから脱却したいと思っていたそうで、シヴァガミをメインキャラクターとする小説版のオファーをラージャマウリ監督から受けたことは、またとないチャンスだったようです。

http://anandneelakantan.com/

「JLF 2017: Rajamouli, Rana Daggubati unveil Baahubali book, promise surprises」
(hindustantimes|2017.01.21)

「The story of the 'Rise of Sivagami'」
(from THE HINDU|2017.04.03)

「The rise of Sivagami」
(from the pioneer|2017.05.14)
著者インタビュー。


【グラフィックノベル】
http://baahubali.com/graphic-novel




『Baahubali: Battle of the Bold』はバーフバリの薄い本、もとい公式グラフィックノベル。あらすじは、若きアマレンドラとバラーラデーヴァの二人の王子が、シヴァガミとマヒシュマティ王国の威信をかけて、世界各国からやってきた猛者たちと、とある「卵」をめぐって争うという話。ペルシャの猛者 イブン・イ・ザッハーク、ヒムヴァンシの猛者 ルドラ・シン、北欧の猛者 ウヴィク・スロハマー、モンゴルの猛者 ガンゾル・カーン、コンゴの猛者 ンザンビといった新キャラクターが出てくるのもちょっとしたスパイスです。さらに、バラーラデーヴァの思惑、そして、謎の覆面女性の正体とは? 短編コミックとしてしっかり読ませる内容でありました。あとは読んでのお楽しみ。物理書籍版はインド本国からの取り寄せとなるため時間はかかるものの、いちおうAmazonのマーケットプレイス経由で手に入れることが可能です。また、kindle版 (English Edition)もあります。価格は199円(kindle unlimitedなら無料)。サクっと買って読めますよ。





【音楽】

≪1/30 追記≫
「バーフバリ」ヴォーカルアルバム&サウンドトラック徹底攻略の手引き
http://camelletgo.blogspot.jp/2018/01/baahubali-music-complete-guide.html


 バーフバリの音楽を手がけるM・M・キーラヴァーニは、90年代よりコンポーザーやヴォーカリストとして活動し、これまでに100作以上のサウンドトラックに携わっているヒットメイカー。同じくS・S・ラージャマウリ監督の「あなたがいてこそ」(2010)、「マッキー」(2012)の音楽も彼が担当しています。キーラヴァーニ氏のスコアはspotifyに相当数が置いてあり、確認できるだけでも70タイトル以上あります。

 インドは多言語国家なので、バーフバリのヴォーカルアルバムはテルグ語、タミル語、ヒンディー語、マラヤーラム語の四種が存在(プレイバックシンガーも、たいていは言語ごとに異なります)しており、テルグ語とタミル語版アルバムは「Lahari Music」「T-Series」、ヒンディー語版アルバムは「Zee Music Company」、マラヤーラム語版アルバムは「Manorama Music」からそれぞれリリースされています。日本版iTunes storeでは「伝説誕生」「王の凱旋」のヒンディー語版・マラヤーラム語版アルバムが、日本版Amazon MP3では「伝説誕生」のマラヤ―ラム語版が購入可能。また、spotifyにはマラヤーラム語版アルバムが置いてあります。そして、Google Playはほとんどを網羅しています(BaahubaliもしくはBahubaliで検索)。ところで、Lahari Musicは映画二部作の各アルバムの権利獲得に莫大な額を支払っており、「王の凱旋」における支払金額は4.5カロール=4500万ルピー(約7700万円)。これは同社の40年近い歴史のなかで最大規模だったとのこと。この点においてもバーフバリは規格外であります。

「A song for the record」
(from THE HINDU|2017.03.20)

「伝説誕生」ヒンディー語版(iTunes)
「伝説誕生」マラヤーラム語版(iTunes)
「王の凱旋」ヒンディー語版(iTunes)
「王の凱旋」マラヤーラム語版(iTunes)
「伝説誕生」マラヤーラム語版(Amazon MP3)
「伝説誕生」マラヤーラム語版(spotify)
「王の凱旋」マラヤーラム語版(spotify)


 多数のプレイバックシンガーが参加しておりますが、その中で日本人にわりあいピンとくる人物を挙げるならば、「王の凱旋」のバーフバリ大賛歌「Saahore Baahubali」(テルグ語版)/「Bale Bale Bale」(タミル語版)/「Jiyo Re Bahubali」(ヒンディー語版)の3ヴァージョンに参加しているダレル・メヘンディ氏でしょう。氏は一時期ネット上で多数のMADが生み出された“トゥルトゥルダダダ”こと「Tunak Tunak Tun」を歌っていた人です。画質の悪いMVが数多く出回っていたのもすっかり過去になり、現在はSony Music Indiaの公式チャンネルで画質の良いMVが観られるので、隔世の感があります。





 一方、バーフバリ二部作のインストゥルメンタル・スコアを収録したサントラは5~6曲収録のEPの形で海外版iTunesで続々と配信されています(第1弾が2018年1月4日に、第2弾が1月7日に、第3弾が1月14日に、第4弾が1月21日にそれぞれ配信を開始)。これらは日本版iTunesからは購入できないのですが、Google Playにはだいたいあります。また、サントラのリリース元であるLahari Musicが公式YouTubeアカウントでサントラEPの全曲をプレイリストにしてアップしています。





※下記、各タイトルのリンク先はGoogle Play

Baahubali OST Vol.1 EP
(2018年1月4日リリース)




公式YouTubeプレイリスト

01. Mahendra Baahubali Must Live
02. The Mask and the Soldier
03. Tattoo
04. Bhalla and Bison
05. Volcanic Words
06. Man and Woman



Baahubali OST Vol.2 EP
(2018年1月7日リリース)




公式YouTubeプレイリスト

01. Mahishmathi.. Brace Yourself
02. Undying Glory
03. Rage 1
04. Rage 2
05. The King and His Sword



Baahubali OST Vol.3 EP
(2018年1月14日リリース)




公式YouTubeプレイリスト

01. Baahubali - The Story(Mohana Bhogaraju)
02. Sivagami
03. True Colours
04. Kaalakeyas
05. Old Tools New Plan
06. Wkkb(Geethamadhuri & Adithya Aiyengar)



Baahubali OST Vol.4 EP
(2018年1月21日リリース)




公式YouTubeプレイリスト

01. Agni Prasthham
02. The Saviour
03. Poison
04. Sniffer Dog
05. The Tour
06. Compensation



【マーチャンダイズ】
http://shop.baahubali.com/

 Tシャツ、スマホケース、ラップトップスキン、フィギュア、ポスター、ステッカー、マグカップなどなど、ズバリ、充実しています。協賛している企業の多さも強みですね。その中のひとつ「paintcollar」のサイトで一際目を引くバーフバリのポップなデフォルメイラストは、インドのグラフィックデザイナー Santhosh Reddy氏によるものです。氏のイラストをあしらったグッズにはTシャツ、スマホケース、ラップトップスキン、ポスターがあります。

「Baahubali Indian Movie Minimal Illustrations」





 また、Amazon Indiaで販売されている商品ですが、バラーラデーヴァ愛用のメイスや、戦車の図解をあしらったポスターは見事な着眼点だと思いましたね。
https://www.amazon.in/dp/B06ZYML3HJ
https://www.amazon.in/dp/B071R76YNH





 Amazon Indiaにはちょっとした便乗商品もあり、バラーラデーヴァの人間芝刈り戦車っぽい工作キットが関連商品として引っかかってきます。商品説明いわく、レオナルド・ダ・ヴィンチのアレンジ版鎌付き戦車と、バラーラデーヴァの戦車の双方に着想を得て製品化したとのこと。商売上手だなと。
https://www.amazon.in/dp/B074CJDLBY





【その他】
 バーフバリ公式facebookスタンプ。ライオンパンチスタンプ、スライディング礼拝スタンプ、気さくなカーラケーヤ族長あいさつスタンプなどがあります。
http://blog.baahubali.com/the-films/message-the-baahubali-way