2014年6月16日月曜日

クルト・ラスヴィッツに想を得た、イタリアの新鋭の意欲作 ― FORZA ELETTRO MOTRICE『Sulla Bolla Di Sapnone』 (2014)

バブルソープにバブルソープに
(2014/05/25)
フォルツァ・エレットロ・モトリーチェ

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https://itunes.apple.com/jp/album/sulla-bolla-di-sapone/id853961195

  イタリアの新鋭プログレッシヴ・ロック・バンド FORZA ELETTRO MOTRICEの、2012年に発表された4曲入りEP『Epsilon』に続く1stフルアルバム。FORZA ELETTRO MOTRICEとは「起電力」の意。キーボーディストのAlberto CitterioとギタリストのPaolo Colomboを 中心としてバンドが結成されたのは2007年頃で、当初はPFM、BANCO、LE ORMEといったイタリアン・ロックのカヴァーを中心としていたそうです。その後、幾度かのメンバーチェンジを経て、現在のラインナップとなります。本作 は黎明期SFの父とも呼ばれるドイツの作家 Kurd Lasswitz (クルト・ラスヴィッツ 1848-1910)「Auf cler Seifen blase (シャボン玉の世界で)」を 基にしたコンセプトアルバムであります。同作は十数ページほどの短篇であり、あらすじを説明すると、主人公とマッド気味な科学者が、《ミクロゲン》なる発 明機械により身体を限りなく微細なサイズに縮小し、多数の住人が存在し、地球とはまた別の時間が流れているシャボン玉の世界を探検するというメルヘンチッ クなお話です。エドモンド・ハミルトンの「フェッセンデンの宇宙」に通じるものもありますが、それより50年も前に書かれたのが本作なのです。

  ぶ厚いシンセサイザー/キーボードとフュージョン・タッチで滑らかなフレーズを弾きこなすギターにのせて、ヴォーカルが熱っぽく、しなやかに歌い上げるシン フォニック・ロックを得意としております。近年のバンドにありがちなプログレッシヴ・メタル的な要素は全くなく、70年代プログレッシヴ・ロックへのリス ペクトと共に人懐っこさを感じさせるサウンド。2~6分とコンパクトな楽曲を、疾走感を失うことなく淀みなく可変するバンドアンサンブルで巧みに魅せてく れます。作曲の殆どはAlbelto氏によるもので、スケール感のある楽曲作りに彼の非凡なセンスを伺わせます。モーグ・シンセサイザーをバリバリに弾き 倒す"Microgen (Parte 1&2)" "Incontro Con I Saponiani" から、アルバム中盤 "Il Mondo Bianco Opaco" "Riflessioni"ではAlberto氏のクラシック/ジャズの素養を遺憾なく発揮した上品なタッチのピアノ・インストゥルメンタルを聞かせてくれます。アルバムのハイライトはフュージョン/ジャズ・ロック寄りの"Nella Citta"で、細やかなリズムセクションをバックに朗々としたヴォーカル、後半のソロ合戦など、爽快感を味わえる場面も多いです。コーラスワークに力の入った暑苦しいオルガン・ハードロック"Processo Alla Verita"も面白い1曲。昨年デビューアルバムをリリースし、華麗でクラシカルなキーボード・プログレを聴かせてくれたPROGENESIと共に、今後の活動に大いに期待したいバンドです。


  FEMの公式サイトでは「シャボン玉の世界で」のPFDファイルが伊、独、英の三ヶ国語でダウンロード出来ます。邦訳で読みたいのであれば、ハヤカワSFマガジンの1980年3月号(第258号)か、国書刊行会から2001年に刊行された『独逸怪奇小説集成』と いうアンソロジーに前川道介氏の訳によるものが収録されているので、そちらをあたると良いでしょう。また、バンドのサイトは日本のファンも視野に入れてい るのか、日本語にも言語対応してるという親切設計。バイオグラフィやメンバープロフィールもしっかり訳されており、マメな人たちだなあと感心してしまいま した。FEMのメンバーにはカヴァーバンド出身者が多いのですが、ドラムスのEmanuele BorsatiはEL&Pのカヴァーバンドの他にTigerbandなるアニソンのコピーバンドもやってるそうで、同バンドが"TOUGH BOY"を演奏してる動画がYouTubeにありました。しかしながら、HIGHLORDといいDGMといい、イタリア人はホント北斗の拳が好きですなあ。

独逸怪奇小説集成独逸怪奇小説集成
(2001/09)
不明

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クルト・ラスヴィッツ - Wikipedia

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