2010年7月13日火曜日

平沢進『突弦変異』(2010)

突弦変異
突弦変異
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平沢進
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 平沢進ソロ・デビュー20周年、P-MODELデビュー30周年記念企画「凝集する過去 - 還弦主義8760時間」。その企画の一環として、P-MODELの過去作品からの楽曲をファンからの投票結果も参考にしつつ選曲し、"還弦"アレンジ(つまるところストリングスとコーラスを加えたアレンジ)を施したものをまとめたアルバム。やはり初期の平沢ソロ作品に近い雰囲気を感じるアレンジで、低音を利かせた派手なオーケストラ風アレンジということでは「デトネイター・オーガン」のサウンドトラック三部作の作風にもちょっと相通ずるという印象。しょっぱなから重厚なコーラスと壮大な曲調のアレンジの中、"未来はキレイに"のフレーズが印象的に繰り返される「アート・ブラインド」、胡散臭さとキャッチーさの増した「ミサイル」のアレンジが登場するのですが、したたかな毒気の強い初期P-MODELの曲はどうも派手なアレンジとは噛み合いが悪いように感じます。

 逆に『Perspective』『KARKADOR』『One Pattern』といった中期の楽曲は本作の方向性とかなり相性が良く、先行公開された「Solid Air」は、無機質で乾いた印象の強かった原曲とはまた違ったシリアスな魅力を伴って生まれ変わっているほか、「LEAK」はゴージャズなポップ感が増してさらにユートピアなイメージを喚起させるものになっており、まさに極上の聴き心地、個人的には本作髄一の名アレンジだと思います。また、「Another Days」の中盤で聴けるセリフの意味合いが原曲とは異なっている(「合言葉は、消えちゃいました」→「合言葉は、消去可能」)のは、なかなか意味深な気もします。

 完全に初期ソロの路線に則ったアジアンなシンフォニック・ポップスと化した「CHEVRON」「Goes On Ghost」、伸びやかなサビがさらに伸び伸びと展開するようになった(ついでに機械音声によるすっとぼけたつぶやき?も挿入された)「WIRE SELF」、疾走感2割増しでさらに爽やかになった「DUSToidよ歩行は快適か?」など、解凍後P-MODEL楽曲もストリングスアレンジとの相性が良いのですが、こちらは予定調和といった仕上がりのものが多いので物足りなさも感じます。しかし、「ASHURA CLOCK」は原曲のイントロの荘厳さをさらに大げさに拡張したようなアレンジになっており、テンポをさらに落としたのも相まってより貫禄ある曲調にグレードアップしていて、これは結構インパクトがありました。そういうわけで、全ての楽曲アレンジがうまくいっているというわけではないですし、良くも悪くも企画モノの域は出ていないアルバムなんですが、原曲の魅力を改めて再発見でき、過去作品に目を向けるキッカケになるんじゃないでしょうか。


「Solid Air」(還弦版)





平沢進:Wikipedia
P-MODEL:Wikipedia
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