Cold Reading (2014/01/19) Bram Stoker 商品詳細を見る |
かの怪奇小説の古典的名作「吸血鬼ドラキュラ」の著者であるエイブラハム “ブラム“ ストーカーからバンド名を取り、1972年にWindmill Recordsというマイナーレーベルからアルバム『Heavy Rock Spectacular』を発表したイギリスのプログレッシヴ・ロック・バンド ブラム・ストーカー。ATOMIC ROOSTER、アーサー・ブラウン、THE NICE/キース・エマーソンなどからの影響も伺わせる、オルガンをフィーチャーしたプログレッシヴ・ロックを聴かせる好バンドだったのですが、メンバーの詳細も殆どわからないまま同年にひっそりと姿を消してしまいます。唯一残された『Heavy Rock Spectacular』はカルトなアルバムとして幾度となく再発を重ねてきたのですが、近年になってバンドが復活。今年1月に実に41年ぶりとなる新作オリジナルアルバムをリリースしました。カルトなアシッド・フォークで異彩を放ったCOMUSや、Vertigoレーベルに二枚のアルバムを残したCRESSIDAなど、70年代の英国勢が数十年ぶりに復活を遂げている昨今ですが、このバンドは存在自体が非常にマイナーなこともあり、再結成は恐らく誰も予想だにしていなかったのではないでしょうか。世の中何があるかわかりませんね。
再編されたブラム・ストーカーは、オリジナルメンバーでキーボードのTony Bronsdon、ギター、ベース、アレンジ、プロデュース担当のTony Lowe、ドラマー兼ヴォーカリストのWill Hackを迎えたトリオ編成。また、オリジナル・ベーシストのJon Bavinも、2曲の作曲に関わっているようです。Tony氏はジュリアン・レノンやロジャー・ダルトリーやトーヤ・ウィルコックス、VISAGEやPET SHOP BOYSなどのアルバムへの参加歴があるとのこと。近年では、The Artaud Beats(元HENRY COWのメンバーらによるバンド)のユミ・ハラ・コークウェル氏とアルバムを制作されてもおります。そういった氏のキャリアを知ると、今回のBRAM STOKERのアルバムがブランクを感じさせない内容なのもなるほど頷けるところです。また、氏は元KING CRIMSONのデヴィッド・クロスとは古くから付き合いがあり、現在、彼と共同でアルバムを制作されているとか。
『Heavy Rock Spectacular』では当時の録音環境もあってか垢抜けなさがありましたが、本作では洗練されたシンフォニック・ロックを展開しており、PENDRAGONやIQのような英国ネオ・プログレッシヴ・ロックの流れも汲んだメロディアスなものにもなっています。1stアルバム収録曲"Fast Decay"のリメイクも含めて、見違えるほどにスッキリしていますが、それでもやっぱりどこか古めかしい感触を残しているのがミソです。抜けるように爽やかな感触のオルガン・ロック"Climbing The Gyroscope"や、CAMELを強く彷彿とさせるジェントリーなヴォーカルとギターが柔らかに包み込む"Cold Reading" "Like Autumn Now"、クラシカルな響きのハモンドオルガンと泣きのギターによる愛くるしいインスト"Joust" "Fingal's Cave"、ミドルテンポのヘヴィ・プログレ"Light At The End Of The Tunnel"と、いずれも叙情性に重きを置いた楽曲揃い。そこそこトンガっていた70年代の頃とは別物のようになってしまった感もありますが、シンフォニック・ロック好きの琴線をくすぐるコンパクトな良作に仕上がっていると断言できます。流通がごくごく限られていた数十年前と違い、現在はデジタル配信での流通もバッチリ整っているので、過去の作品とともに再評価されてほしいですね。
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