上山 徹郎
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2017年で20周年を迎える作品は数多くあり(たとえば『ファイナルファンタジーVII』『ONE PIECE』『少女革命ウテナ』『OK COMPUTER』(RADIOHEAD)などもそうです)、あちこちでアニバーサリー企画なども出ているわけですが、1996年から1999年にかけて《月刊コロコロコミック》《別冊コロコロコミックSpecial》で連載された、上山徹郎氏のバトルアクションコミック『LAMPO―THE HYPERSONIC BOY―』も、単行本第一巻が刊行(1997年5月25日奥付)されて今年で二十周年を迎えました(連載開始は1996年10月15日の月刊コロコロコミック11月号)。途中打ち切りとなった初連載作『電人ファウスト』(1994年~1995年)に次ぐ、氏の長編連載第二作。「未来少年コナン」へのオマージュもたっぷりと込められた入魂のSF群像バトルアクションの傑作です。リアルタイムで『LAMPO』連載第一回を目の当たりにしたときは、明らかにほかの掲載作品とは違う空気に子供ながらに戸惑いを感じた一方で、「なんかスゲーのがきた!」とワクワクさせられたのを未だに憶えています。
第一巻のころはまだ主人公たちの等身は低めで、ロボットたちの造型もややデフォルメが効いていましたが、見開きでの見せ場があったりと、すでに規格外の印象があります。第二巻より、主人公であるランポのライバル的存在として〈風使い(セラフィック)〉の少年ローズが登場。そして第9話を境にして隔月刊の別冊へと連載が移行します。「人造人間」「ロボット」「巫女の神託により最新テクノロジーを有する国家」といった設定が一通り出揃い、太陽系十二惑星の重力波を用いた〈公転発電機(カレンダードライブ)〉や、神からの託宣を巫女の脳を通じてデジタル信号化し転送・記録する〈巫術〉システムなどの登場で、ストーリーや設定がさらにノリにのってきます。
第三巻ではランポ、ヨシノ、マスラオを中心とした群像劇という面も見え始めてきます。ローズの存在がやや薄くなり始め、主人公のライバルキャラ的役割はマスラオにとって代わられた感もなきにしもあらずなのですが、面白さにもますます拍車が掛かってくる。フガクが示威行動として発射したミサイルの名称が〈佳句爆弾(トゥルーライズ)〉だったりするのだけども、元ネタがわかったちびっ子は当時どれだけいたのだろうか(映画は1994年公開)。核抑止論ネタといい、もはや完全に対象読者層をぶっちぎっております。
作画修正のために刊行が半年以上延期した最終第四巻では、巻頭に設定資料「神国ロボットの基礎知識」が収録されており、これがまた非常に読み応えのあるものになっています。人型ロボットの戦闘力の裏づけたる設定〈力場体(イーサーボディ)〉〈蓮華盤(ロータス)〉〈掌裡効果(パームイフェクト)〉など、今読んでも否応なくワクワクさせられてしまう。機械のアイデンティティとサムライの気概の相克を描く、マスラオ対ウンリュウの闘いは本巻の白眉。終盤に登場する〈美少女形態フガク〉に至っては上山先生の趣味がヒートアップしており、氏が会心の出来とうたった「不快感を伴った美」のデザインはなるほどお見事な仕上がり。
全24話。まだまだ描きたいことがあったのではないかという感もあるものの、小学生向けの漫画雑誌というフィールドで描ける以上のものを詰め込んで健闘しており、随所で見せる上山先生のこだわりと熱意にも頭が下がります。第四巻刊行の半年後、『電人ファウスト』の新装版(ワイド判)が刊行されましたが、『LAMPO』はその後 新装版は出ていません。復刊を心から望みます。
【8月24日追記】
……と書いてから一ヵ月、なんと、『電人ファウスト』『LAMPO』の復刊計画がクラウドファンディングサイトのCAMPFIREで始動しました。目標金額は3,000,000円、ファンディング期限は2017年10月1日です。
https://camp-fire.jp/projects/view/38966
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上山氏はその後、2002年から2005年にかけて《コミック電撃大王》で『隻眼獣ミツヨシ』を連載。三巻分の単行本が刊行されるも、未完・未収録分を残して終了(第三巻は現在もプレミア状態になっています)。数年後の2008年12月に集英社の隔月刊誌《JC.COM》に移籍し、『ミツヨシ 完結編』として同誌の第十号まで連載され、前作の未収録エピソードも収録した上下巻の単行本で(一応)完結。また、『ミツヨシ 完結編』に少し先駆ける形で、2008年4月から9月に放送されたアニメ「RD 潜脳調査室」のキャラクターデザインを担当され、2012年から2013年にかけて放送された「PSYCHO-PASS」第一期(第12話「Devil's Crossroad」)のキャラクターデザイン協力ののち、2013年から2014年にかけて《月刊ヤングキング》にて『テングガール』を連載。二巻の単行本が刊行され、「第一部完結」となりました。近年の活動については、「手前屋鬱郎」で検索しましょう。