2016年8月13日土曜日

90年代悲運のマイナー・マルチメディア「CD-i」版テトリスが奏でた、美しき環境音楽の響き




 まさかの映画化も現在進行中である「テトリス」。同ゲームのBGMというと、一般的に想起されるのはロシア民謡"コロブチカ"のメロディ、もしくはBPS版テトリスに収録された、YMO meets ブルグミュラー風のテクノポップチューン "テクノトリス"を思い浮かべられる方が多いと思います。が、そんなシリーズのなかでも異色のサウンドを奏でたタイトルが90年代に存在しました。それがCD-i版テトリス。「CD-i」は、オランダのフィリップス社が開発し、1991年末にリリースされたマルチメディア規格「コンパクトディスク・インタラクティヴ」のこと。独自CD規格であり、専用プレイヤーでないと再生ができません。マルチメディア機(ゲームもできる)というふれこみでCD-iプレーヤーを売り出したものの、メガCDやセガサターン、プレイステーションとのシェア争いであえなく敗北。ゲーム機としての認知度もまったく上がらず、全世界累計出荷台数は約57万台。結果的に、任天堂のバーチャルボーイの全世界累計出荷台数である約77万台を大きく下回る「売れなかったハード」となり、1998年にひっそりとその姿を消してしまいました。CD-i対応のゲームソフトの数も非常に少なく(一応、フィリップスは任天堂の許諾を得て「マリオ」「ゼルダ」を冠したタイトルも出していたのですが、出来はイマイチ。ともに日本未発売です)、そんな同作に対応したテトリスCD-iは、フィリップスP.O.V.エンターテインメントグループの開発のもと1992年にリリースされました。1994年11月には日本マランツから日本向けにもリリースされたのですが、先に述べた事情もあり、どれほど国内で出回ったのかは不明です。





 さて、そのCD-i版テトリス。ハイスコアBGMこそロシアンなイメージですが、あとはほぼニューエイジ・ミュージックという一線を画した作風になっています。CDメディアなので、当然高音質。生演奏風のサウンド、静かにあふれだす美しいメロディの数々は、まさに浸れることうけあいです。背景の自然の一枚写真と、テトリスの無機質プレイ画面という対比もあいまって妙な味わいが醸し出されており、海外の一部界隈では「これはまさにvaporwaveゲームだ!」という声とともに再評価する人もいるようで、(ナナメ上の形で)時代が追いついた感があります。その楽曲に魅了された人は多く、有志によってYouTubeにいくつもアップロードされていることからも評価のほどがうかがえます。同作のコンポーザーであったJim Andron氏は、同じくフィリップスP.O.V.開発による恐竜モノSFアドベンチャー「Zombie Dinos from Planet Zeltoid」(1992)や、後にビクター音楽産業がPCエンジンに移植して国内発売した「ライジングサン(Lords of the Rising Sun)」のCD-i版(1992)、ゲームボーイアドバンスやプレイステーション2、ゲームキューブ、XBOXなど各種ハードで出た「パックマンフィーバー」「ナムコミュージアム」(2000~2002)の海外版などにコンポーザーとしてクレジットされてもいます。ゲームタイトル以外では、1988年公開(1990年日本公開)の映画「エイリアン from L.A」の劇伴への参加が確認できました。そのほか色々と調べてみましたが、2000年代以降の活動については不明です。





CD-i ハード ソフト 解説及び一覧 - Gamest
CD-i - giantbomb
TETRIS(CD-i)- mobygames
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Jim Andron - IMDb