2016年1月3日日曜日

三者三様のヴォーカル、三位一体のハーモニー、今なお歩み続ける最強のロックトリオ ― THE ALFEE『三位一体』(2015)

三位一体(通常盤)
三位一体(通常盤)
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THE ALFEE
ユニバーサル ミュージック (2015-12-23)
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 結成40周年を迎えたジ・アルフィーの約6年ぶり、通産24枚目となるフルアルバム。「メロディック・ハード究極のコーラス・ワーク」というタタキも躍った前作『新世界 ― Neo Universe ―』は、しょっぱなからトータル20分近い三部構成のプログレッシヴ・メタル組曲を叩きこむなど、2010年代を突き進まんとするバンドの意気込みが過剰なほどに伝わってきた快作でした。70年代にフォークから始まり、80年代にハード・ロック、90年代にプログレッシヴ・ハード、00年代にビート・ロックと、およそ10年周期で音楽性を変遷させてきたバンドの歩みは類を見ないものであり、その蓄積を踏まえながらも、10年代に入ってさらなる邁進を続けるバンドの姿にはまったくもって感服の至りです。三人の顔をあしらったアルバムジャケットは相変わらず垢抜けないどころの騒ぎではないくらいなんともいえない仕上がりですが、このダサさを超越したセンスはトリプル・コーラス&スイッチング・ヴォーカルと共にTHE ALFEEの特権なのです。身も蓋もない言い方ですが、『夢幻の果てに』しかり、『Nouvelle Vague』しかり、ジャケットがダサいほどアルバムの内容が名盤と化すという法則を適用したくなるバンドがTHE ALFEE、といってもいいくらいです。

 坂崎氏のアコースティック/フォーク色、高見沢氏のハードロック/ヘヴィ・メタル色、両者をガッチリとつなぐ桜井氏のメインヴォーカル。そして、三者三様のスイッチング・ヴォーカルと、三位一体のコーラスハーモニー。これらの総合で紡ぎ出されるALFEEの最強のサウンドは本作『三位一体』でも揺ぎ無く提示されております。前作同様、高見沢氏が総ての楽曲の作曲・編曲を担当。共同編曲者にはおなじみの本田優一郎氏と、キーボーディストやプロデューサーなど多岐に渡る活動で知られ、高見沢氏のソロの編曲も手がけられている鎌田雅人氏の二人が参加。また、本作のドラムトラックは、レコーディング/ツアーサポートの常連でもある吉田太郎氏が務めております。

 オープニングを飾る"Orionからの招待状"は、強力なイントロとぶ厚いコーラスに導かれる歌謡プログレッシヴ・メタル。懐メロとメロディックスピードメタルが共存したような印象を受けるALFEEの疾走曲ですが、この曲はまさにバンドのド直球な様式美の叩き込まれた一曲です。続く"碧空の記憶"は、ブックレットの「with our respect to GARO」の一文にもあるように、70年代にTHE ALFEE(当時はALFIE)にとって兄貴分的存在であったフォークグループ ガロへの、そして2014年12月に亡くなったガロのフロントマン マークこと堀内護氏への想いを込めた、シンフォニックなアレンジとコーラスハーモニーが静かに興趣を添えるフォークナンバー。大仰なタイトルから繰り出される高見沢氏メインヴォーカルの歌謡ロック"或いはノイシュバンシュタイン城の伝言"は、ヴィレッジ・シンガーズやスパイダース、タイガースなど、数々のグループサウンズ(GS)バンドの楽曲の作詞を手がけてきた橋本淳氏が詞を提供しているところもポイントでしょう。GSといえば、続く、"G.S. I Love You -あの日の君へ-"は、高見沢氏がGSへの憧憬を形にした一曲。70年代プレイバック的な流れが続いたところで、さらに前の時代へさかのぼり、マンハッタンの喧騒を伝えるブラスロックナバー"Manhattan Blues"。曲調的に"冒険者たち"(1994)を思い出したりしました。

 アルバム後半にさしかかってからの楽曲はだんだんと熱を帯びてゆくかのような流れとなっており、構成的にも(いろんな意味で)見所のあるものになっています。"無情の愛 X"は、『ARCADIA』(1990)の頃を彷彿とさせるプログレッシヴ・ハードロック。アコースティック・ギターのアクセントも利いております。高見沢氏と桜井氏がヴォーカルを分け合う形になっておりますが、歌詞カードには(m)(f)の表記があるので、男女ツインヴォーカルを想定した一曲なのでしょう。続く"恋の花占いII"は、高見沢氏のシングル「誘惑の太陽」のB面に収録された同名曲のバンド再録版。なので"II"がついています。EDM(エレクトリック・ダンス・メタル)を打ち出したシングルの方向性とは異なり、こちらは正統派の歌謡曲アレンジ(やたらとあっちこっちでオケヒが鳴ってはいますが)。注目は歌詞で、今の時代に「キュンキュンキュンジンジンジン」「涙ポロリ ため息の 片思い天国」「撃沈Fortune!」などという歌詞をストレートにしたためる高見沢おじさんのセンスは素晴らしいなと本気で思いました。中毒性が高い曲です、いろんな意味で。"One Step ~ 再始動"は00年代のビートロック期の楽曲("運命の轍 宿命の扉"あたりの)を彷彿とさせるストレートなメッセージソング。サビとコーラスの抜けの良さがちょっと尋常じゃないです。"英雄の詩"は「新ウルトラマン列伝」主題歌となった64thシングル曲。桜井氏のヴォーカルが高らかに響き渡り突き抜ける、「強くあれ!」「強くなれ!」のワンフレーズに圧倒的説得力が込められた、入魂のギターソロもろともドラマティックなメロディックスピードメタル。ラストは、今はもういない人への惜別の情を歌った63rdシングル曲にして、8分を越える圧巻のシンフォニック・ロック大曲"GLORIOUS"で堂々たるエンディングを迎えます。これまでの総決算のようでいて、なおも前に進もうという気概を感じさせる仕上がり。三位一体にして唯一無二のロックバンド、それがTHE ALFEEだということを改めて感じさせてくれる快作だと言いたいです。





THE ALFEE『ARCADIA』(1990)
THE ALFEE『夢幻の果てに』 『LIVE IN PROGRESS』(1995)
THE ALFEE『Nouvelle Vague』(1998)
THE ALFEE『新世界 ― Neo Universe ―』(2010)

Progressive Side of THE ALFEE
バンドのプログレサイドを追求したエントリ