タイタス・アウェイクス (ゴーメンガースト4) (創元推理文庫) (2014/06/21) マーヴィン・ピーク&メーヴ・ギルモア 商品詳細を見る |
イギリスの作家 マーヴィン・ピークの「ゴーメンガースト」シリーズは、広大さと無秩序さを誇る巨大建造物ゴーメンガースト城を舞台に、グローン伯爵家の幼い跡継ぎタイタスや、彼を取り巻く人々を描いたゴシック・ファンタジー作品。ピーク氏の逝去により未完に終わってしまうものの、生前に発表された『タイタス・グローン』『ゴーメンガースト』『タイタス・アローン』の三作品は、今なおファンタジーノベル界に屹立する、重厚極まる大作であります。先ごろ、東京創元社からシリーズ三部作が全てカヴァーを新装して復刊されたことに加え、遺されたわずかな断片をもとにメーヴ・ギルモア夫人が書き継いだ幻のシリーズ四作目『タイタス・アウェイクス』も刊行され、改めて注目が集まっております。
Titus Groan (2010/11/01) Titus Groan 商品詳細を見る |
というわけで、今回はそんなゴーメンガーストに因んだバンドについて取り上げたいと思います。マーヴィン・ピークは1968年に亡くなるのですが、その翌年 ― 1969年に、イギリスでTITUS GROANな るバンドが誕生します。さながら『タイタス・グローン』で、父セパルクレイヴの死により当主の座を引き継ぐ幼きタイタスのように。サイケデリック・ロック 界隈で活動していたメンバーたちによる四人編成のブラス・ジャズ・ロック・バンドであり、サックス/フルート/オーボエを担当するTony Priestlandとドラムス担当のJim Toomeyの二人は、ショック・ロックの祖 アーサー・ブラウンがThe Crazy World Of Arthur Brownの結成以前に率いていたブラス・ロック・バンドでもプレイしていたという経歴の持ち主であります。そして、今なおカルト的なファンの多いイギリスのDawn Recordsから1970年にリリースされたアルバムが、この『Titus Groan』。プロデュースは、同レーベルの筆頭だったポップ/ロック・バンド MUNGO JERRYを手がけていたBarry Murray。ちなみに彼は翌年、アシッド・フォーク・バンド COMUSの怪作『First Utterance』のプロデュースも手がけます。オリジナル盤の収録曲は全5曲で、後にシングル盤に収録されていた3曲(うち1曲はボブ・ディラン"Open The Door Homer"のカヴァー)が追加収録されます。
"It Wasn't For You"のようなブルージーなギターとサックスが絡む小粋なサイケデリック・ロックや、10分を越えるフォーク・ロック組曲"Hall Of Bright Carvings"、厚いコーラスワークを聴かせるビート・ロック/ポップ"Fuschia"と いった楽曲を、管楽器の素朴な響きやバタバタしたリズムセクションも交えて、どこを切ってもいなたいサウンドで聴かせます。基本的に軽快なので、原作のイ メージをダブらせて聴くのはちょっと難しいかもしれませんね。これをシブくて味わい深いと感じるか、ゴッタ煮でまとまりがないと感じるかというところも意 見が分かれるところでしょうが、未分化の魅力とでも言いましょうか、そういうものを強く感じます。バンドとしての活動期間はごくごく短く、結局アルバムを 1枚出して解散してしまうのですが、アート・ロックからプログレッシヴ・ロックへという、過渡期にあったブリティッシュ・ロック・シーンにひっそりと痕跡 を残したカタログとして、今なお愛される作品なのは間違いありません。海外では幾度となく再発が繰り返されていることからも、それが伺えましょう。ちなみ に最新のリイシューは、英国のESOTERIC RECORDINGSから2010年に出たリマスター盤です。日本国内では、1999年にビクター、2007年にストレンジデイズレーベルからそれぞれ紙 ジャケット仕様で出ていました。
TITUS GROAN解散後、メンバーはそれぞれセッション・ミュージシャンとしての活動にシフト。ギタリストのStuart Cowellはオーストラリアで音楽活動を続けた後、現在はアイルランドのKinvara Area Musicという音楽系プロダクションに携わっているようですし、Jim Toomeyは70年代後半にTHE TOURISTS (アニー・レノックスとデイヴ・スチュワートがEURHYTHMICSを結成する前に活動していたバンド) に参加したことで成功を収めます。
●Titus Groan | 60s/70s英国ロック・データベース:
●ゴーメンガースト - Wikipedia
●Dawn Records - Wikipedia
■「究極の幻想文学。読書人必読の書〈ゴーメンガースト〉三部作復活!2014年6月刊行」 ‐ 東京創元社
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