2011年3月10日木曜日

Autumn Moonlight『The Sky Over Your Shoulders』(2010)




 南米のプログレッシヴ/ジャズ・ロック系カタログを多くリリースしているVIAJERO INMOVIL RECORDSより新たに登場した、ギタリストとベーシストのデュオによるアルゼンチン出身のユニット オータム・ムーンライトのデビューアルバム。SIGUR ROSやGod Is An Astronautといったバンドからの音楽的影響を公言しているだけあって、どっぷりと感傷に浸れる、浮遊感たっぷりのメランコリックなポスト・ロック/アンビエント・サウンドを基調としているのですが、このユニットの面白いところは、存外シンフォニック・プログレ的なアプローチも強いところ。

 さざ波や子供達の声など、いかにもな趣向も凝らしつつも、時に惜しげもなくグワッと押しだされるシンフォニックなオーケストレーションの味付けや、オープニングとエンディングにタイトル曲のパート1、パート2をそれぞれ配する趣向に、この人たちの隠し切れないプログレへの愛が伺えます。「Autumn Moonlight Part I」「The Outsider」などは、ハードなエッジも効かせたモダンなメロディック・ロックとしても聴ける曲。イントロから既に最高潮の盛り上がりに達しているシンフォニックなストリングスアレンジをバックに、ギターの乾いたアルペジオや、抜けの良い泣きのトーンを反復させる「Letters To God」や、「The Sky Over Your Shoulders」は、欧州的なウェットなメランコリーを感じさせる楽曲。同様に「T.O.R.」も、ピアノやギターのアコースティックな響きを大切にしつつ、後半では徐々にストリングスアレンジとメロディアスなギターで壮大に盛り上がっていく王道の趣向がたまりません。打ち込みと思われるドラムスの軽さも、心なしかサウンドの方向性にマッチしています。ポスト・ロックの静の面と、シンフォニック・プログレの動の面、両者の美味しい部分を殺すことなくソフトに融合させたこういったユニットが南米から出てきているというのも非常に面白いなと思いつつ、最近のお気に入りアルバムのひとつとして何度もリピートしております。


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