2010年7月28日水曜日
FROST*『Milliontown』(2006)
2006年、彗星のごとく登場したモダン・プログレッシヴ・ロック・バンド フロスト*の記念すべき1stアルバム。メンバーはキーボード/ヴォーカル担当のジェム・ゴドフリー(彼は本国でアイドルグループのAtomic Kittenなどのプロデュースなども手がけている売れっ子プロデューサー)を中心に、ARENA/KINOのジョン・ミッチェル(Gr/Vo)、IQのジョン・ジョウィット(Ba)&アンディ・エドワーズ(Dr)、ジェム氏の古くからのバンドメイト(共にFREEFALLというプログレ・バンドに在籍)であるジョン・ボイス(Gr)の5人。リリースから4年経った今、改めて聴いても、本作は素晴らしいの一言。こんなにも胸がときめき、ワクワクさせられるプログレサウンドに出会ったのは、06年で一番の衝撃でした。
とにかく一曲目の「Hyperventilate」からダイナミズム溢れるサウンドで魅せてくれる。吹き抜けるシンセと静謐なピアノのイントロから一気にテクニカルなアンサンブルへ豪快に突入するという展開は、ベタだけれども物凄く掴みバッチリ。演奏に負けないヴォーカル/コーラスの厚み、動から静、静から動へのメリハリの効いた展開も光るプログレ・ハード「No Me No You」。打って変わって静謐なスロウ・ナンバー「Snowman」。モダンでヘヴィなUKロック的ダイナミズムも内包した「The Other Me」「Black Light Machine」と、どの曲も強靭なたくましさを感じさせますし、何よりバンドアンサンブルやソロでのここぞ! というところでのパワフルな爆発力がバツグンの求心力で聴き手にインパクトを与えます。
80~90年代のファルコムサウンドチームのドラマティックな楽曲や、コナミ矩形波倶楽部のプログレ・フュージョン的アプローチ、そして植松伸夫氏のロッキン・プログレな作風……などなど、往年のゲーム・ミュージック、ひいてはゲームミュージックにあるプログレ的折衷精神も彼らのサウンドからは感じます。ラストに収められたタイトル曲「Milliontown」は、26分半というかなりの長尺曲ですが、練りこまれた展開で魅せてくれるドラマティックな力作。希望に溢れたエンディングへと加速度的に向かっていく終盤の展開、そして残る静かな余韻……メンバーのキャリアとセンス、そして揺るぎの無い自信が最高の形で結実しているのがこの1曲でしょう。小曲、大曲に関わらずキチンと一本の筋が通った本作は、間違いなく傑作であります。プログレとしても素晴らしいですが、この魅力的なサウンドはプログレというジャンルで括ってしまうのはもったいない。ジャンルの枠に囚われず、改めて、多くの人に聴いて欲しい一枚です。
余談ですが、ジェム・ゴドフリー氏とジョン・ボイス氏が在籍していたFREEFALLは、86年から91年にかけて活動していたポンプ・ロック・バンド。3枚のEPと1枚のアルバムを残しております。その唯一のアルバムに収録されている曲はこちら。シンセのうねりや爆発力、ゲー音ばりのキャッチーな曲調など、後のFROST*へと繋がる部分も多く、興味深いです。
●『Milliontown』:Wikipedia
●FROST*:myspace
●FROST*:公式