2018年6月28日木曜日

POWERGLOVE『Continue?』(2018)



 チップチューンメタルバンドでメジャーシーンに躍り出たバンドの代表格といえば、スウェーデンのMachinae Supremacy(Spinefarm Records所属)ですが、ゲーム音楽カヴァーバンドでヘヴィメタルシーンに限りなく近いポジションに位置するバンドといえば、アメリカのPOWERGLOVEが真っ先に浮かびます。2003年ごろにメロディック・デスメタル・バンド出身のメンバーたちによって結成され、「ストームイーグリード ステージ」(ロックマンX)や「Dr.ワイリー ステージ」(ロックマン2)、「ミュートシティ」(F-ZERO)、「決戦」(ファイナルファンタジーIV)、「神の誕生」(ファイナルファンタジーVII)などのカヴァーを収録したEP『Total Pwnage』で2005年11月にデビュー。2007年10月にはKiller Instinct、ダックハント、モータルコンバット、ゼルダの伝説シリーズ、ギルティギアシリーズなどのカヴァーを収録した1stアルバム『Metal Kombat for the Mortal Man』をリリース(ちなみに、同作収録のスーパーマリオのマイナーアレンジ「Mario Minor」は埼玉最終兵器のアレンジを意識したものになっています)。2008年にはハードコアバンドのPsychostickやLook What I Didとツアーを共にしているほか、DRAGONFORCEのハーマン・リがバンドに目をつけ、2008年発表のアルバム『Ultra Beatdown』に伴う北米ツアーにTURISASと共に帯同させています。





 その後、2010年3月にHAMMERFALL、4月から5月にかけてSONATA ARCTICAとMUTINY WITHINとの北米ツアーを経て、9月に2ndアルバム『Saturday Morning Apocalypse』をE1 Musicよりリリース。同作は「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」「トランスフォーマー・ザ・ムービー」「ガジェット警部」「原始家族フリントストーン」などのカートゥーン/アニメテーマソングのカヴァーを収録した一枚で、「ポケットモンスター」の海外放送版主題歌「Gotta Catch Em All」や、「ザ・シンプソンズ」主題歌カヴァーではSONATA ARCTICAのトニー・カッコがヴォーカル/コーラスで参加し、ノリノリの熱唱を披露しているところもトピックでした。なお、バンドの当初の構想では他に「キャプテン・プラネット」「サンダーキャッツ」「タイニー・トゥーンズ」、ディズニーの「リトルマーメイド」の劇中曲「Under the Sea」などもカヴァー候補にあったものの、それらは種々の事情により見送られています。翌2011年にはライヴツアーイベント「The Summer Slaughter Tour」に参加。この年のヘッドライナーであったThe Black Dahlia MurderとWhitechapelのサポート・アクトを務めています。


テレビゲーム・メタル
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 2012年7月にマーキー/アヴァロンレーベルより『TV Game Metal』をリリースし日本デビュー。同作は日本国内限定の企画盤であり、過去作から日本向けの選曲を行った上でリミックスされています。アルバムカヴァーは〈ギルティギア〉シリーズゼネラルディレクター石渡太輔氏による描き下ろしイラスト。2014年には、再録中心のコンピレーションアルバム『Video Game Metal』をデジタル限定でリリース、2015年にはKickstarterでのファンディングを経てスコットランドのOuergh RecordsよりリリースされたSONATA ARCTICAのトリビュートアルバムに参加(「Revontulet」をカヴァー)。その後しばらくは大きな動きがありませんでしたが、2017年に入り、星のカービィ、スーパーメトロイド、スーパーマリオシリーズ、ストリートファイターIIのカヴァーをデジタルシングルで立て続けにリリース。アルバムへの布石を徐々に固めていきました。





 そして今年5月、実に8年ぶりとなるアルバム『Continue?』をリリース。先行シングル4曲を含む全15曲。かつて許可が下りずカヴァーが見送られたリトルマーメイドの「Under the Sea」が収録されており、DRAGONFORCEのマーク・ハドソンがゲストヴォーカルを務めるというオマケ付き。バンドの方も思いっきりDRAGONFORCEのハイスピード路線に寄せており、あまりにも清々しい仕上がりになっています。また、グルメレース(星のカービィ)のカヴァーである「Kirby」では、カリフォルニアのフォークメタルバンド The Dread Crew of Oddwoodの“ウルフビアード・オブラディ”ことリース・ミラーがアコーディオンで、忍者龍剣伝の「鮮烈のリュウ」のカヴァー「Ninja Gaiden」ではジャズピアニストの出原加奈さんが参加されています。ファイナルファンタジーVIIからは2曲カヴァーされていますが、「J-E-N-O-V-A」はともかくとして「空駆けるハイウインド」のメタルアレンジ「Highwind Takes to the Skies」はなかなか珍しいケースではないかと思います。クロノトリガーメドレーは、過去作のファイナルファンタジーIVメドレー「Red Wings Over Baron」をさらに上回る10分超えの大曲。楽曲の繋ぎもさることながら、アコースティック/ヘヴィ、静/動のスイッチングも巧みで、改めてこのバンドの確かなセンスを味わわせてくれます。ボーナストラック的に収録されている「Acoustic Medley」はアコースティックギターとベースによるメドレー。マイク・タイソン パンチアウト~スーパーマリオUSA~パワーレンジャー~伝説の騎士エルロンド~リンクの冒険の流れをよどみなく展開。






POWERGLOVEのMAGFest2018でのライヴ映像のアーカイヴ(たっぷり1時間)。途中からトニー・ディッキンソンがゲスト参加。ちなみに彼もまた、ゲーム音楽カヴァーからメタルシーンに躍り出た人物であり、元EMPTY TREMORのダニエレ・リヴェラーニや、植松伸夫氏率いるEARTHBOUND PAPASとの共演を経て、近年ではTrans-Siberian Orchestraのツアーギタリストを務めております。


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