2017年12月7日木曜日

缶チューハイの史学 9%チューハイの史学



 ストロングゼロがインターネットミーム化しつつある昨今。ただ度数9%のチューハイを飲みたいのであれば、氷結ストロング、もぎたて、タカラcanチューハイドライ、ウィルキンソンハード無糖ドライetc……と選択肢はそれなりに多くあるのだけども、ストロングゼロはとにかく店頭で目につきやすく入手も容易であり、ストロングでゼロというのが直感的で、全部カタカナなので通りがよく、ミーム化する条件の揃いっぷりはダントツだなあとは思います。しかし一口にストロングゼロとはいっても、「-196℃」の派生シリーズとして「ストロングゼロ ダブルレモン」が初登場したのは2009年2月であり、ぼちぼち9年目にさしかかろうとしています。大元の「-196℃」ブランドの販売開始は2005年からなので、2000年代以降のチューハイであるというのは間違いないでしょう。ミーム化させるのもいいですが、100年飲み継がれれば間違いなくひとかどの歴史になるので、あと92年、皆さんにはストロングゼロを飲み継いでいっていただきたいと私は思います。

 缶チューハイ全般の史学はここいらで一旦まとめられてもいいのではと個人的に思うところがあります。1983年1月に宝酒造が「タカラcanチューハイ」の商品化プロジェクトに着手して翌1984年1月24日に発売(その間、サントリーが「タコハイ」、東洋醸造が瓶入りの「ハイリッキー」【※後にハイリキに改名。東洋醸造は1992年に旭化成工業株式会社と合併。さらに2002年に旭化成からアサヒのブランドに移行】を発売してから、じつに30余年が経っております。草創期のチューハイブームを経て、90年代にはアルコール度数低めの甘い果物系チューハイが人気を博し、1999年3月にはサントリーが再参入して安価な「スーパーチューハイ」で攻勢をかけ、低価格化の流れに。さらに2001年7月にキリンが缶チューハイに参入し、度数6%の「氷結果汁」で一気にシェアを拡大。2000年前半の話題をさらいます(2002年3月に「氷結」に名義変更)。そして2000年代半ばから度数7%以上の「ストロング」系チューハイが続々と出始め……というのがざっとした流れでしょうか。


「タカラcanチューハイ誕生プロジェクト」(宝酒造)
「チューハイ“ハイリキ”その歴史を紐解きます。」(アサヒ)


 度数7~8%固定から度数9%固定の間の壁の突破というのは間違いなく缶チューハイ史に残るトピックのひとつだと思いますが、ここ数年どのような度数9%チューハイがあったのか、そして最初に度数9%を打ち出したのは何か、ふと興味をそそられたので色々と調べてみました。おそらく嚆矢となったのは、前述の「ハイリキ」が発売25周年を迎えた2008年7月に、アサヒビールが記念商品として発売した「ハイリキナイン」。同商品は翌2009年1月31日まで販売されたようです。ハイリキはその後、2013年3月に「ハイリキ ザ・スペシャル」としてリニューアル。当初のラインナップのうちグレープフルーツとカシスオレンジは度数9%に設定されていました。現在も市場に出回っているのはカシスオレンジのみです。2009年7月には、サンガリアから度数9%「ストロングチューハイタイム ゼロ レモン」が発売。このシリーズは現在も販売されております。



「『チューハイ ハイリキ9(ナイン)』新発売」
(アサヒ 2008年3月17日付)

「アサヒハイリキザ・スペシャルカシスオレンジ 」(アサヒ)
「ストロングチューハイタイム ゼロ レモン」 (食@新製品)
「チューハイタイム」(サンガリア)





 2009年2月、ストロングゼロシリーズ第一弾の「ストロングゼロ ダブルレモン」が発売。このときの度数は8%。ちなみに、ストロングゼロが登場する少し前に販売を開始した「ゼロドライ」は度数5~6%どまりで、2011年1月にリニューアルしたものの、ストロングゼロに取って代わられるような形で消滅してしまいます。2010年7月、“限定”をうたった「ストロングゼロ スーパーストロング レモン×ライム」が登場し、ここで度数9%のブレイクスルーを一時的に果たします。 さらに2010年12月、200mlサイズ缶に度数12%という「ストロングゼロ スーパーショット」を限定販売し、一時的に一ケタの壁まで突破。サントリーはその後一度も本品を再販していないので、ある意味伝説の存在となりました。時代が早すぎた感があります。なお、度数12%に手を出したのはサントリーだけではありません。2014年9月にサンガリアが「スーパーストロングチューハイ レモン/グレープフルーツ」を発売しました。しかしこちらも現在は手に入りません。



「石原さとみ、レスラー蝶野を挑発」
(Livedoor News 2009年2月4日付)

「糖類ゼロのサントリーチューハイ「-196℃ ゼロドライ」 リニューアルして本日発売します」
(SUNTORY 2011年1月18日付)

「アルコール9%、ガツンと効く缶チューハイ」
(J-CASTトレンド 2010年7月2日付)

「サントリー史上最高!アルコール度数12%の“強刺激チューハイ”発売」
(東京ウォーカー 2010年10月20日付)

「スーパーストロングチューハイレモン(お酒) 350ml缶 新発売!」
「スーパーストロングチューハイグレープフルーツ(お酒) 350ml缶 新発売!」
(サンガリア - WhatNew 2014年9月22日付)※記事は共にリンク切れ


 2011年7月、アサヒが度数9%の「スパークス(SPARX)」を、刺激的レモン/爽快系グレープフルーツの2種で発売。この後に数種類のフレーバーが登場しましたが、2012年10月の「刺激的ワインスパークリング」が最後となったようです。




「『アサヒ スパークス』“刺激的・爽快系チューハイ”としてリニューアル」
(アサヒ 2011年8月9日付)

「『アサヒスパークス刺激的ワインスパークリング』新発売」
(アサヒ 2012年8月29日付)



 度数が9%に固定されたのはキリンの方が早く、「氷結ストロング」の2013年12月からの製造ぶんの「シチリア産レモン」「グレープフルーツ」「ドライライム」を皮切りにして続々と登場した新フレーバーは、期間限定ものを含めてすべて9%です。また、2014年6月から販売が展開されている「ビターズ」は、2017年2月のリニューアルで8%から9%に固定されました。サントリーの「ストロングゼロ ダブルレモン」が度数9%固定となったのは2014年12月に通算5度目のリニューアルを果たして以降。2016年12月の通算6度目のリニューアル後にすべてのフレーバーが度数9%固定となります。そして2017年2月には、「果実まるGOD」「神ってるほどの果実感」というキャッチコピーが打ち出されました。また、アサヒは2016年4月に度数9%固定の「もぎたて」を発売。収穫後24時間以内に搾汁された果汁のみを使用したフレッシュ感をウリのひとつにしてヒットさせています。





「キリン 氷結ストロング 沖縄産シークヮーサー<期間限定>」を新発売
(キリン 2014年1月10日付)

 「「キリンチューハイ ビターズ ほろにがレモンライム / ほろにがグレープフルーツ / スパイシージンジャー」を新発売」
(キリン 2014年3月26日付)

「「-196℃ ストロングゼロ」〈ダブルレモン〉〈ダブルグレープフルーツ〉リニューアル新発売」
(SUNTORY 2014年10月7日付)

 「「キリンチューハイ ビターズ」をリニューアル発売」
(キリン 2017年1月24日付)

「~サントリー「-196℃ ストロングゼロ」新TV-CM~」
(SUNTORY 2017年2月7日付)

「徹底的に新鮮!「アサヒもぎたて」登場」
(アサヒ 2017年2月18日)





 9%ストロング系がもてはやされているとはいえ、「タカラcanチューハイ レモン」は80年代からずっと度数8%だということは忘れてはいけないと思います。最近の強めのチューハイはウォッカベースですが、タカラcanチューハイはずっと焼酎ベースのクラシックなスタイル。シンプルでうまいです。割高ではありますが、そこがまた練達の老騎士感がある。そして2016年9月には度数9%の「タカラcanチューハイドライ」が登場しております。人工甘味料はもちろん不使用。ブランド的に考えれば、これが間違いなく当代最強の存在ではないかと。店頭で見つけづらいのがネックですが、そこは公式サイトなどのネット通販で買いましょう。また、人工甘味料不使用のものでは、「ストロングゼロ〈DRY〉」のほかに、今年6月にアサヒから出た「ウィルキンソンハード無糖ドライ」にも頼もしさを感じてほしいですね。9月には「ウィルキンソンハード無糖レモン」も出ました。おいしいですよ。虚無に呑まれない程度に飲みましょう。




「元祖辛口チューハイ 愛され続けて30年目 記念缶が登場~タカラcanチューハイ〈レモン〉発売30年記念缶 新発売」
(宝酒造 2013年3月6日付)

「タカラcanチューハイ<ドライ> 新発売」
(宝酒造 2016年8月31日付)

「「-196℃ ストロングゼロ」〈DRY〉リニューアル新発売」
(SUNTORY 2015年8月4日付)

「ジンベースで、“キリリ”とした味わい! 炭酸強めで、“甘くない”「無糖」RTD」
(アサヒ 2017年5月17日付)


▼本記事の執筆には「K氏の葡萄酒的日常」を非常に参考にさせていただきました。2000年7月のサイト立ち上げから現在まで、一般的に販売されているあらゆるワイン、ビール系飲料、缶チューハイ、カクテル、日本酒、焼酎等のテイスティングを独自に行って詳細にレビューされているK氏の情報集積量は圧巻というほかなく、ブログやtwitterやfacebookに一切頼らず、すべてを昔ながらのホームページ形式で完結させてコツコツと日々情報を更新されている姿勢もたゆまぬ実直さを感じます。こういった人が歴史の細部を伝え残していくのではないでしょうか。かくありたいものです。

http://www.wine-life.info/index.html


▼また、酒と文化に関する数々の情報やコラムが掲載されている「酒文化研究所」のテキストも非常に参考にさせていただいた。読み応えのあるテキストが多く、おすすめです。

http://www.sakebunka.co.jp/archive/letter/index.html


【その他参考資料】
「低価格競争で活性化する缶チューハイ市場」
(《財界にっぽん》1999年7月)

「低価格品の快走で発泡酒にマッタ―新規ユーザーも呑み込み低アル市場に新局面―」
(《企業と広告》2000年6月)

「タカラcanチューハイ」-居酒屋の味をいつでもどこででも飲んでもらいたい
(J-Net21 2011年12月16日付)

「-196℃ ストロングゼロ」「-196℃ ストロングゼロ〈DRY〉」―「やってみなはれ」の精神があればこそ| 飲食品でヒット商品をつくる
(J-Net21 2014年3月5日付)

「「どうせ売れない」を覆した「もぎたて」大ヒットの理由」
(ITmedia 2017年4月3日付)

「酒文化研究所ホームページ」

【缶チューハイの国際化】缶チューハイ誕生から30年 海外へ飛び出て市場をつくる日
(「酒文化研究所」レター第5号 2013年5月)※リンク先PDF

【酒類の消費動向】チューハイは第3のビールと並ぶふだんの酒- 家計調査2015年より
 (「酒文化研究所」レター第44号 2016年8月)※リンク先PDF

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