2017年12月10日日曜日

Hans Zimmer『Live in Prague』(2017)


http://www.hanszimmerlive.com/liveinprague/
 
「レインマン」(1988)、「ライオン・キング」(1994)、「グラディエーター」(2000)〈パイレーツ・オブ・カリビアン〉シリーズ(2003~)、「ラスト・サムライ」(2003)〈ダークナイト〉トリロジー(2005~2012)、「ダ・ヴィンチ・コード」(2006)、「インセプション」(2010)、「インターステラー」(2014)、そして今年の「ダンケルク」「ブレードランナー2049」に至るまで、手がけた映画サウンドトラックは150以上。受賞歴・ノミネート歴多数。1989年に設立したMedia Venturesを前身とする音楽制作プロダクション「Remote Control」からは、マーク・マンシーナ、トレヴァー・ラビン、ローン・バルフェ、ヘンリー・ジャックマン、ラミン・ジャヴァディ、ベンジャミン・ウォルフィッシュなど多数のコンポーザーを輩出し、映画音楽制作における一つの方法論をも確立。当代トップクラスのコンポーザーとして不動の地位を築き上げたハンス・ジマー。彼はイギリス・ロンドン公演を皮切りに、2016年4月6日から6月5日にかけて大規模なコンサートツアーをヨーロッパで数十公演行っており、同ツアーから5月7日のチェコ・プラハ「O2 Arena」でのパフォーマンスを収録したライヴアルバムが本作。2枚組CDのほか、4枚組LP、DVD/Blu-rayの各ヴァージョンでリリースされています。
http://www.eagle-rock.com/2017/08/hans-zimmer-live-in-prague/


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 ライナーノーツを映画プロデューサーのジェレミー・トーマスが書いており、なぜ、ロンドンやベルリンではなくプラハのライヴをシューティングしたのかということについての見解を書いてもいるのですが、プラハはヨーロッパの文化の中心地であり、フランツ・カフカやミロス・フォアマン、ヴァーツラフ・ハヴェルを輩出した地である。ヴァーツラフ・ハヴェルは大統領となったあとにフランク・ザッパを特別な大使として信任していて――ところでザッパといえばマザーズ・オブ・インヴェンションだが、バンドのトランぺッターの一人であったブルース・ファウラーは、ジマーのサウンドトラックの主要オーケストレイターを長年に渡って務めていて……といった具合で、なかなか粋な内容でした。ライヴのレビューも簡潔かつ的確であり、まことに素晴らしいテキストです。


Live in Prague
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 一言でいって、最強のライヴアルバムです。ニック・グレニー=スミス(音楽ディレクターも兼任)、スティーヴ・マッツァロ、アンドリュー・カヴィンスキ、ネイサン・ストルネッタ、リチャード・ハーヴェイといった「Remote Control」の仲間たちをはじめ、ARISTOCRATSやスティーヴン・ウィルソン・バンドでもその技巧を振るうガスリー・ゴーヴァン、オルタナティヴ・ロック・バンド INCUBUSのマイク・アインジガー、そして「インセプション」「アメイジング・スパイダーマン2」のサントラに客演したThe Smithのジョニー・マーといったギタリストたち。ヨランダ・チャールズ、サットナム・ラムゴートラ、ティナ・グオ、アン・マリ―・シンプソンといった、セッションプレイヤーであり、スコアのレコーディングメンバーである面々。〈ライオンキング〉のプロデューサー/コンポーザー/アレンジャーであるリーボ・M、ヴォーカリストであるブイ・ザマらを擁した20名以上の大編成バンドに、チェコ・ナショナル・シンフォニー・オーケストラとコーラス隊を迎えた総勢72名の巨大編成のもと、とてつもないスケールのエピック・ミュージックが濃縮されております。まさにハンス・ジマーがこれまでに築き上げてきた一大帝国の軌跡といっても過言ではありません。こちらの予想のはるか上をいく興奮と感動にただただ打ち震えるばかり。




「ドライビング Miss デイジー」「シャーロック・ホームズ」「マダガスカル」の三作を巧みな流れで仕上げた軽快なオープニングメドレーから既に見事なつかみ。続く「クリムゾン・タイド」「天使と悪魔」の二部構成メドレーは相当な破壊力で、ガスリーのギターが泣き、重厚なパーカッション&ドラムソロにクワイアコーラスとストリングスが入り乱れ、結果的にシンフォニック・ロックやメタルオペラ系リスナーにもガンガンに刺さるパフォーマンスが繰り広げられます。「グラディエーター」メドレーは、リサ・ジェラルドのオリジナルをシャリナ・ラッセルが歌い上げ、「ダ・ヴィンチ・コード」"Chevaliers De Sangreal"は、ルサンダ・パンフィニのヴァイオリンが哀切の響きを奏で、「ライオン・キング」"Circle of Life (Prelude)" "King of Pride Rock"では。リーボ・Mとブイ・ザマが力強いデュオ・ヴォーカルを披露。





「パイレーツ・オブ・カリビアン」4曲メドレーは、サットナム・ラムゴートラのパーカッション、ティナ・グオのエレクトリック・チェロ、スティーヴ・マッツァロの12弦ギターをフィーチャー。焦らしに焦らして、満を持しての"He's A Pirate"がやってくる瞬間のカタルシスは絶大です。ここから「トゥル―・ロマンス」「レインマン」「マン・オブ・スティール」「シン・レッド・ライン」そして「アメイジング・スパイダーマン2」のメインテーマ連発を経て、「ダークナイト」からの5曲を混ぜたメドレーは強迫的なコーラス/チャントがヘヴィなリフとともに執拗に押し寄せるアレンジとなっており、さらにエグみを増しています。"Aurora"は2012年にコロラド州デンバー郊外オーロラの映画館で起こった銃乱射事件を受けて、被害者遺族のためのチャリティとして制作したオリジナル曲。オーラスは、壮大で静謐なサウンドスケープが繰り広げられる「インターステラー」メドレーと、マイク・アインジガーとジョニー・マーによるギターユニゾンも盛り込まれた「インセプション」メドレー。アンサンブルの総力を結集したダイナミックな2つのメドレーでコンサートは締めくくられます。なお、今年は5月のフィンランド・ヘルシンキ公演を皮切りに、10月には韓国のオリンピックスタジアムに至るまで数十公演のツアーを行いました。4月のコーチェラ・フェスティバルにも出演し、ジョニー・マーの息子であるナイル・マーがギターを弾いていたほか、6月のパリ公演ではヴァイオリニストのディディエ・ロックウッドがゲスト参加していたもよう。見ごたえのある圧巻のパフォーマンスを、ぜひとも日本でもやってほしいものです。



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『Live In Prague』

Hans Zimmer (guitar, banjo, piano)

Yolanda Charles(electric bass)
Mike Einziger (guitar)
Nick Glennie-Smith (keyboards)
Guthrie Govan (guitar)
Tina Guo (electric cello)
Richard Harvey (Woodwinds)
Andrew Kawczynski (synthesizer)
Gary Kettel (percussion)
Lucy Landymoor (percussion)
Holly Madge (percussion)
Johnny Marr (guitar)
Steve Mazzaro (keyboards, guitar)
Lebo M (vocals)
Rusanda Panfili (violin)
Andy Pask (upright Bass)
Satnam Ramgotra (drums, tabla)
Czarina Russell (vocals, tubular bells)
Ann Marie Simpson (violin)
Nathan Stornetta (mallet kat)
Mel Wesson (synthesizer)
Buyi Zama (vocals)

Czech National Symphony Orchestra & Choir(Orchestra & Choir)

Director: Peter Asher
Musical Director: Nick Glennie-Smith

Recorded at The O2 Arena, Plague

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《DISC 1》

1. Medley:
(a) Driving (「ドライビング Miss デイジー」)
(b) Discombobulate (「シャーロック・ホームズ」)
(c) Zoosters Breakout (「マダガスカル」)


2. Medley:
(a) Crimson Tide(「クリムゾン・タイド」)
(b) 160 BPM (「天使と悪魔」)


3. Gladiator Medley:(「グラディエーター」)
(a) The Wheat
(b) The Battle
(c) Elysium
(d) Now We are Free


4. Chevaliers De Sangreal (「ダ・ヴィンチ・コード」)

5. The Lion King Medley:(「ライオン・キング」)
(a) Circle of Life (Prelude)
(b) King of Pride Rock


6. Pirates Of The Caribbean Medley:(「パイレーツ・オブ・カリビアン」)
(a) Captain Jack Sparrow
(b) One Day
(c) Up Is Down
(d) He's a Pirate


7. You're So Cool (「トゥル―・ロマンス」)

8. Main Theme(「レインマン」)


《DISC 2》

1. What are You Going to Do When You are not Saving the World (「マン・オブ・スティール」)

2. Journey to the Line (「シン・レッド・ライン」)

3. The Electro Suite (「アメイジング・スパイダーマン2」)

4. The Dark Knight Medley:(「ダークナイト」)
(a) Why So Serious?
(b) Like a Dog Chasing Cars
(c) Why Do We Fall
(d) Introduce a Little Anarchy
(e) The Fire Rises


5. Aurora

6. Interstellar Medley:(「インターステラー」)
(a) Day One
(b) Cornfield Chase
(c) No Time for Caution
(d) Stay


7. Inception Medley:(「インセプション」)
(a) Half Remembered Dream
(b) Dream is Collapsing
(c) Mombasa
(d) Time


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1970年代半ばごろに、ジマーは渡英してスタジオミュージシャンとして活動しはじめるのですが、そのころに関わったアルバムにはどんなものがあるのか、1985年ごろまでのものを調べてみました。


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リチャード・ハーヴェイはプログレッシヴ・ロック・バンド GRYPHONで70年代に活動し、同バンド解散後はジマーのスコアやオーケストレーションなどに数多く携わっております。2009年の再結成GRYPHONに加入して現在もメンバーとして活動中のグラハム・プレスケットも、ジマーとは80年代からの盟友。1995年に公開された映画「愛に迷った時」のスコアはジマーとグラハムの共作です。また、リチャードは2016年に再度GRYPHONを脱退しますが、後任メンバーとして加入したキース・トンプソンとローリー・マクファーレンはリチャード・トンプソンやマイケル・ナイマンとも仕事歴のある面々です。

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