2017年11月21日火曜日

Simon Stålenhag『The Electric State』(2017)



http://www.simonstalenhag.se/


 巨大構造物や機械、クリーチャーのたたずむ情景を描き、日常をSF的に侵食する作風で、近年とみに注目を浴びている、1984年生まれのスウェーデン・ストックホルム出身のデジタルアーティスト、Simon Stålenhag(シモン・ストーレンハーグ)氏。幼少のころから風景や動物の絵を描き、バードウォッチングやSF映画に親しみ、80年代~90年代のスウェーデン郊外の風景や十数年以上にわたって撮りため続けている4万枚以上の写真からインスピレーションを育んできたという氏がインターネット上で作品を発表し始めたのは2013年のこと。ほどなくしてVergeやWIRED、The Guardianなどのメディアからの注目と絶賛を続々と受け、2014年9月にスウェーデンのブックフェアにおいて初の画集『Ur Varselklotet』を販売します。そして翌2015年4月にkickstarterで同書と二冊目の画集の英語版(『Tales from The Loop』『Swedish Machines, Lonely Places』)のハードカバー刊行のキャンペーンを立ち上げるやいなや さらなる注目を集め、最終的に目標金額である10000ドルを30倍以上も上回る金額を3800人以上から集めました(『Swedish Machines, Lonely Places』はその後『Things from the Flood』と改題され、2016年6月に刊行されています)。

https://www.kickstarter.com/projects/cabinetentertainment/simon-stalenhags-tales-from-the-loop


Tales from the Loop
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Simon Stålenhag
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Things from the Flood
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 そして今年7月には三冊目となる画集『The Electric State』の刊行キャンペーンを立ち上げます。画の舞台はスウェーデンからアメリカへと移り、十代の少女と黄色いおもちゃのロボットが架空の1990年代アメリカを西へと旅していくというコンセプト。約三週間という短期間で5000人以上から3000000スウェーデンクローナ=約5300万円以上を集め、7つの特典が用意されたストレッチゴールを全て達成してもいます。デジタル版は11月、ハードカバー版は12月のリリースを予定しているとのこと。

https://www.kickstarter.com/projects/1192053011/the-electric-state-simon-stalenhags-new-narrative





 また、『The Electric State』の6つ目のストレッチゴール(2000000スウェーデンクローナ)のbacker特典として設定されていた「サウンドトラック」は、10月下旬にbandcampで単体リリース(6クローネ=約80円)されています。全9曲のアンビエント/サウンドスケープを収録しており、すべてがシモン氏本人のプロデュースと作曲によるものであることも大きなポイントでしょう。じつはシモン氏はイラストレーターである一方で、コンポーザー/チップチューン アーティストの顔も持っております。コンポーザーとしての作品には、2013年6月にPixeltrussからリリースされた「Ripple Dot Extra」があります。同作はシモン氏と旧知の間柄であるトミー・サロモンソンが制作したオンラインの2Dアクションゲーム。シモン氏は90年代の香りただよう軽快なFMポップ/フュージョンな楽曲を38曲制作しており、サントラが配信リリースされています。
http://www.rippledotzero.com/


Ripple Dot Extra
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 また、ロシアのチップチューンレーベル「Ubiktune」からこれまで3枚リリースされている、世界各国のアーティストがオリジナル曲を提供したFMサウンドコンピレーションシリーズ「FM FUNK」には、氏の提供曲が1曲ずつ収録されています。これがまた実にブリリアントな仕上がりであり、メロディメイカーとしても一級のセンスの持ち主であるということがわかります。


"Ripple Boogie"
from『SOUNDSHOCK: FM FUNK MADDNESS​!​!』(2011)



"Fluvial Beat Deposits"
from『SOUNDSHOCK 2: FM FUNK TERRROR​!​!』(2012)



"The Lacustrine Beat Machine"
from『SOUNDSHOCK 3: FM FUNK NIRVANA​!​!』(2017)



Interview / Simon Stålenhag
(from Werth com|2014.01.27)

SIMON STÅLENHAG the future’s so yesterday
(from LodownMagazine)