2017年9月30日土曜日

リリース情報・備忘録 2017年8月~9月































































































2017年9月10日日曜日

映画『ベイビー・ドライバー』雑感




「ベイビー・ドライバー」を観た。プレゼンテッド バイ エドガー・ライトの二時間ミュージックビデオ、二時間DJミックスと言ってもいいくらいに、最高の「エディット感」が味わえるクライム・カーアクションでした。鑑賞後に、2003年にエドガー・ライトが撮ったミント・ロワイヤルの「Blue Song」のMVを改めて観ると、映画冒頭のノリノリ車内待機シーンはこれのリメイクでありエクステンデッド・ヴァージョンだったということがわかるので、ぜひとも観てほしい。








 ド派手なカーアクションが見ものであるわけだけども、同時に、言ったこととやったことのツケをみんながみんな盛大に支払っていく映画でもあったよなと。作中、いろんな意味でしぶといキャラが二人いたわけだけど、一人はもちろんバディ。手負いの獣というか哀しみを背負った人間の執念がビンビンであり、ベイビーがいなけりゃ主役を張れただろうにと思えるくらいの大立ち回りでしたよ。もう一人は「たまたま現場に居合わせた海兵隊員」。なんというか、モブにしてはめちゃくちゃ強すぎませんかね……。それと、主人公が途中で組まされる強盗「“鼻なし”のエディ」役としてレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーが出てくるんですが、養蜂だけじゃなく強盗まで手がけるベーシストとして唯一無二の存在となりましたね。なお、フリーが長編映画に生身で出るのは、2014年の「LOW DOWN ロウダウン」以来(その前だと2000年の「Goodbye Casanova」までさかのぼることになります)。





 主人公ベイビーは自作ラベルのボイスリミックステープをコレクションしていた(「トロかったか?」のセリフをサンプリングした"Was He Slow?"はキッド・コアラの楽曲としてサントラに収録されている)わけだけど、形は微妙に違えど、かつてカセットテープに好きな曲を入れて凝った自作ラベルをシコシコ書いていた人にブッ刺さるものがあるよなあと。この映画自体がエドガー・ライトの「自作ミックステープ」としてバッチリ成立しているわけだし。そしてそれをいうと「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」とも相通じます(選曲も60~70'sヒット中心ですし)。そういえば、ジェームズ・ガンとエドガー・ライトは互いの選曲がダブらないようにTwitterのダイレクトメール上でやり取りしていたそうですね。


From ‘Shaun of the Dead’ to ‘Baby Driver,’ Edgar Wright shatters Hollywood’s formulas
(from Washington Post|2017.06.28)



「ベイビー・ドライバー」オリジナル・サウンドトラック
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 冒頭の逃走シーンでのジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンのハードブルーズロックチューン"Bellbottoms"の使い方はそのままMVにできるくらいだったし、ダムドの"Neat Neat Neat"もしかり。T-REXの"Debora"とBECKの"Debra"のシャレたやり取りや、クイーンの"Brighton Rock"が因縁の曲であり「キラーチューン」になっていたのも印象的でした。フォーカスの"Hocus Pocus"も、原曲のドライヴ感をたっぷり活かして盛大なドンパチシーンに使っていたのもめちゃくちゃ嬉しかった。ちなみに、同曲は2010年のFIFAワールドカップのときにナイキが制作した3分間のCMの挿入曲として大胆にカットした形で使用されていましたが、エドガー・ライトはその「前例」をかなり意識していたようで、「あんなふうに使いたかったけど、映画ではそうはいかないな」と思ったのだとか。




 タイス・ヴァン・レアのあの超絶ヨーデル風ヴォーカル部分をちょっと使うだけでも十分インパクトのある曲だけど、そういったことを一切しなかった。その点も賞賛したいですね。オランダのバンドではフォーカスのほかにゴールデン・イヤリングの"Radar Love"も流れていましたが、こだわりを感じます。また、本作ではオリジナルとカヴァーの二つのヴァージョンが使われた楽曲が二曲あるのですが、どちらもモータウンがらみの楽曲ですね。一曲はマーサ&ザ・ヴァンデラスの1965年の楽曲"Nowhere to Run"トレイラー映像ではBOGAが2015年にリリースしたリミックス版が使われてました(こちらはサントラには未収録)。もう一曲はコモドアーズの1977年の楽曲"Easy"。スカイ・フェレイラ演じるベイビーの母親がかつて歌っていたのは同曲のカヴァーです。


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 ところで、映画小道具などが出品される「VIP FAN AUCTIONS」に、映画で使用されたカセットテープ一式が映画の公開と同時期の6月終わりごろに出品されました。最終的な落札価格は3051ドル=約33万円。
http://vipfanauctions.com/category/baby-driver/