2017年8月30日水曜日

ボイアルド『恋するオルランド』(1494) 私的要約(縮約)版




 マッテオ・マリア・ボイアルドによる中世騎士物語であり、“シャルルマーニュ伝説”の二次創作といえる『恋するオルランド』(1494)の精読と要約を気が向いたときにやっていました。ツッコミどころもたっぷりあるのだけど、よくできた群像劇であり、オルランドの最強脳筋ウォリアーぶりも物語の一種のスパイスとなっていて面白く読めます。また、第一巻でリナルドが「嫌悪の泉」の水を飲んだことでアンジェリカを拒絶し、アンジェリカが「愛の泉」の水を飲んだことでリナルドに焦がれるという図式が、第二巻の終盤で真逆になる(そしてそのまま『狂えるオルランド』に持ち越される)という趣向は、まことにエンタメだなと思うんですよ。


【参考】

①「Internet Archive」

イタリアの詩人フランチェスコ・ベルニ(1497 or 1498 - 1535)による改稿版を、イギリスの詩人・翻訳者・議員のウィリアム・スチュワート・ローズ(1775 - 1843)が1823年に英訳(抄訳?)したテキストがInternet Archiveにあります。完全にストーリーを知るとなると原語版にあたるしかないのだけども、イタリア語は読めないので……。


②「馬虎書房」
http://ayutori.web.fc2.com/index.html
http://ayutori.web.fc2.com/orland/orland.0.html

 ヤナギゆとりさんのサイトに①の日本語訳がすべて載っております。第一章を19パート、第二章を17パート、第三章を6パートに分けてストーリーを訳されており、わかりやすく、また大変な労作です。ほかにもアルフレッド・テニスンの翻訳や、ジョフリー・オブ・モンマスの『マーリンの生涯』、14世紀に書かれた騎士物語で、ガウェインの息子を主人公にした『リベアウス・デスコヌス』の全訳などもあり、ぜひともサイトを訪れてみてください。


③トマス・ブルフィンチ『シャルルマーニュ伝説』(市場泰男訳)

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 ダイジェストでの紹介(ブルフィンチによる脚色もけっこう入っている)。『恋するオルランド』についての章は第一章~第五章まで(しかし第五章は第二巻の前半部分のストーリーをかなりはしょっている)。



【書誌情報】

すべて市場泰男氏の訳によるものです。

社会思想社 ・現代教養文庫(1994年)
文元社・教養ワイドコレクション(2004年)
講談社学術文庫(2007年)


■シャルルマーニュ伝説 中世の騎士ロマンス
(上記のオンデマンド版/版元はインタープレイ)


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《電子版》
二種類ありますが、どちらも内容は同じ。

現代教養文庫ライブラリ

■シャルルマーニュ伝説(上・下)kindle版【インタープレイ】






■シャルルマーニュ伝説 Kindle版【グーテンベルク21】

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★そのほか、チャールズ・スタンリー・ロスによる英訳(要約)版(2004年/Parlor Press)があるようです。いずれ入手したいものです。

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【『恋するオルランド』雑なキャラクター紹介】

シャルルマーニュ: えらい人。
オルランド(ローラン): 最強の脳筋。
リナルド(ルノー・ド・モントーバン): シャルルマーニュの妹の子。オルランドのいとこ。苦労人。
マラジージ: シャルルマーニュに仕える魔法使い。
アストルフォ: おっちょこちょいの美男子。本作では途中退場する。
ブランディマル(フロリマール): 苦労人。オルランドの親友となる存在。
ガノ(ガン/ガヌロン): シャルルマーニュに対し邪心を抱く。イスカリオテのユダ的存在。
アンジェリカ: 契丹(古代中国)の姫。ヒロイン。
ブラダマンテ: シャルルマーニュの妹の子。リナルドの妹。
ルッジェーロ: トロイアのヘクトールの血統を受け継ぐ騎士。『狂えるオルランド』における主役。
マルフィーザ: ルッジェーロの双子の妹。
モルガーナ: 魔女。男を誘惑する。
アルシーナ: モルガーナの姉妹。男を誘惑する。
グラダッソ: セリカン(古代中国)の王。名剣や名馬をほしがる。ほしがり王。
アグリカン: タタールの王。アンジェリカをめぐってオルランドとやり合い、死ぬ。
アルガリア: すぐ死ぬ。
フェッラウ: 荒くれKNIGHT。つよい。
マルシリウス: スペイン王。


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『恋するオルランド』



【第一巻】


 グラダッソはオルランドの所有する剣、ドゥリンダナ(デュランダル)と、リナルドの所有する馬、バイアルド(バヤール)を欲しがっており、一万五千の騎兵とともに遠征を開始した。一方、シャルルマーニュは馬上槍試合を開催して各地から強者を募り、王や上級貴族、騎士たちが続々と集う。巨男のグランドニオ、サラセン人のフェッラウ、バルガンテ王、などなど……。

 騎士アルガリアと美女アンジェリカの姉弟は、人々に「マーリンの階段」での試合をもちかける。リナルドの近縁の魔法使いマラジージは、姉弟たちの秘めた思惑を感じ取り、アンジェリカの計画を挫こうとするが、彼女の身に着けていた指輪が魔法を無効化してしまい、アルガリアにぶちのめされた。その後、契丹のガラフロン王によって地下牢に投獄される。

 一方、パリではオルランドが「マーリンの階段」での挑戦権を主張。挑戦者たちはくじ引きで順番を決め、第一番目の権利はアストルフォが、第二番目の権利はフェッラウが、第三番目の権利はグランドニオが得る。オルランドは第三十数番目となり、大いに憤慨する。壮麗だが自信過剰のアストルフォはアルガリアと対峙するが、あえなく一発で落馬。続いてフェッラウが挑戦するも、やはり一発で落馬。だがフェッラウはしつこく試合の継続を主張したので、彼の粗暴さと醜さに心底うんざりしたアンジェリカは、弟に時間稼ぎをたのみ、森へと姿を消した。フェッラウ、リナルド、オルランドは、それぞれに消えた彼女を追いかける。


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 トーナメントの準備をすすめるシャルルマーニュ。アストルフォは入場時に落馬し、足を挫く。巨人グランドニオはその剛腕で次々と相手を打ち破り、シャルルマーニュは苦い顔をする。アストルフォはシャルルマーニュにグランドニオと対戦する旨を伝えると、武装して競技場へと赴く。アストルフォは自らの持つ槍の力で奇跡的にグランドニオを落馬させることに成功する。試合場に遅れてやってきたガノが、トーナメントをやめる旨を提案するが、アストルフォはそれを拒否。ガノをはじめ、次々と落馬させる。それによって周囲の顰蹙を買ったアストルフォはシャルルマーニュの命令により投獄されてしまう。

 アンジェリカを追うフェッラウ、リナルド、オルランドの三人のうち、アーデンの森に最初にたどり着いたのはリナルドであった。彼は美しい泉を発見すると、その水を飲む。だが、ここは昔、賢者マーリンがイゾルテへの悲恋に苦しむトリスタンのためにつくった泉であり、リナルドは泉の魔力によって、乙女への愛が消え去ってしまった。ふたたび歩を進めると、目の前にまた泉が広がっていた。水はもう飲みたいとは思わないが、泉の縁で一眠りすることにした。しばらくすると、泉にアンジェリカが訪れる。彼女は喉の渇きを潤すため、泉の水を飲む。この泉は、さきほどの泉とは真逆の性質をもっていた。縁で眠っていたリナルドを目にしたアンジェリカに、彼への愛が芽生える。やがてリナルドは目覚めるが、彼女に対しては嫌悪の情しか持たない。

 しばらくのち、フェッラウが森にたどり着く、木陰で眠るアルガリアを発見した彼は、一泡ふかせようと、彼の馬を放す。やがて目覚めたアルガリアにフェッラウは決闘を仕掛ける。フェッラウはアルガリアの鎧の隙間から心臓を貫いた。命脈尽きたアルガリアはフェッラウに、自分の鎧を川に投げ込むよう頼み込む。フェッラウはその願いを聞き入れる。

 そうしてオルランドが森に到着し、眠るアンジェリカを発見する。そのとき、フェッラウも同じ場所にたどり着く。たちまち決闘が始まるが、アンジェリカはその間にこの場を去る。決闘は白熱するが、フロルデスピナ(Flordespina)の近親者であるという一人の乙女が馬を駆って登場し、中断される。彼女はフェッラウに、スペインがセリカン王グラダッソの侵略を受けており、バレンシアが荒廃し、アラゴンが破壊され、バルセロナが包囲された状態にあるということで、即時帰還するよう求めた。フェッラウはオルランドとの決闘を休戦し、フロルデスピナとともに一路スペインへ向かった。


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 シャルルマーニュはオルランドを呼び戻すことに決めた。さらに、スペインを侵略しようとするグラダッソと対峙するため、リナルド以下、兵士を引き連れて出陣する。スペインはすでに壊滅状態にあった。だが長期戦の末、同盟軍がグラダッソ軍を打ち破る。グラダッソはリナルドに狙いをさだめ襲いかかり、一騎打ちが始まる。

 一方、アンジェリカはインドに帰還。マラジージを地下牢から解放する。リナルドへの恋情が芽生えた彼女は、マラジージに、リナルドを自分のもとへ連れていけば自由の身にさせてやると持ちかける。マラジージはやがてリナルドのもとにたどり着くが、説得がうまくいかず、魔法でなんとかしようとする。悪魔をグラダッソに化けさせ、リナルドを船へおびきださせる。策は成功し、リナルドは船で遠方へ運ばれる。


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 オルランドはタニスにたどり着き、そこで出会った老人から一冊の本をもらいうける。そこには「スフィンクスを探せ」との指示があった。スフィンクスのもとを訪れたオルランドは、アンジェリカはカタイのアルブラッカにいることを告げられるが、同時に、かつてオイディプスが解いたものと同じ謎(「朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足となるものは何か?」)をかけられる……が、オルランドは謎解きを早々に諦め、剣を振り回してスフィンクスを斬り殺す。

 やがて彼はとある川にたどり着いた。その先には橋と巨人がおり、「ここは『死の橋』だ」と彼に告げる。まもなくオルランドは巨人を殺し、川に投げ落とす。だが、死のまぎわに巨人が投げた鉄網にオルランドは絡め取られて身動きがとれなくなってしまう。そこに、サイクロプスに脅かされている修道士が通りかかるも、サイクロプスもその場に現れ、修道士は逃げ出す。サイクロプスは近くに転がっていたドゥリンダナでオルランドに斬りつけるが、彼にはキズ一つつかず、代わりに鉄網がばらばらになった。激戦のすえ、サイクロプスを倒したオルランド。

 さらに旅をすすめると、彼はアンジェリカが派遣した使者に出会い、タタールの皇帝アグリカンがアンジェリカの父の統治するアルブラッカを囲んでいると知る。かの地へ馬を進めるオルランドだが、そこに黄金の杯を持つ乙女があらわれ、彼に酒の入った杯を勧めた。中身を空にしたオルランドはたちまちのうちに陶酔してしまい、乙女に導かれるまま、とある宮殿へと足を踏み入れていく。


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 一方グラダッソはリナルドを探すが、見つからず怒りに震えていた。だが、やがてパリへ向けて進軍を開始する。それを迎え撃つシャルルマーニュだが、敗北。パリは占領されてしまう。グラダッソはシャルルマーニュに、バイアルドとドゥリンダナをよこすよう伝える。ドゥリンダナは遠方にいるオルランドが所持していてすぐには渡せないが、バイアルドはリナルドの弟が管理しており、こちらを取り寄せようとシャルルマーニュは手配をすすめる。だが、それにアストルフォが異議を唱えた。彼はグラダッソに、パリで決闘しない限り馬は渡さないという旨を使者を通して伝える。アストルフォ対グラダッソの試合は、魔法の槍の力によりふたたびアストルフォが勝利を収める。グラダッソはセリカンに帰還し、アストルフォはオルランドたちを捜索するため出発する。


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 船で運ばれ、「喜びの庭(Joyous Garden)」なる場所にたどり着いたリナルドは、一人の乙女に宮殿を案内される。贅を尽くしたその宮殿の主がアンジェリカであることを知った彼は憤慨し、再び船に飛び乗って別の陸地へたどり着き、一人の老人と出会う。彼の娘が何者かに連れ去られたと聞いたリナルドは捜索に出るが、途中で落とし穴に落ち、巨人の捕虜となってしまう。城に連行されたリナルドは、そこで老婆から、この城の伝説と、人肉を求める怪物の話を聞く。その後、その怪物の前に連れ出されたリナルドは、そこで絶望的な戦いを強いられる。

 一方、マラジージから、リナルドが城に連行されたという報告を聞いたアンジェリカは、マラジージからいくつかの「道具」を渡されたあと、空を飛んでリナルドの救出に向かう。突如現れたアンジェリカに驚くリナルドだが、彼は彼女の助けの手を拒否。アンジェリカは怪物めがけ「道具」を投げつけると、怪物は身動きがとれなくなった。リナルドは怪物の首に飛び上がり、これを絞め殺す。アンジェリカが置いていったやすりを使って脱したリナルドは、船に乗らず、海岸を歩き続ける。


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 アストルフォはバイアルドにまたがり、オルランドとリナルドの捜索に向かい、チェルケスにたどり着く。そこでサクリパンテ率いる大軍の弥栄に遭遇。サクリパンテはアストルフォをリクルートしようとするが失敗。アストルフォは旅に戻るが、サクリパンテは彼を追いかける。旅路の途中、アストルフォは異邦の騎士ブランディマルとその恋人に出会い、彼女をめぐって決闘となる。敗北を喫したブランディマルは自害しようとするが止められ、アストルフォに忠誠を誓う。そこにサクリパンテが訪れ、二人に決闘を申し込む。アストルフォはサクリパンテをあっさり倒し、彼の馬をブランディマルに贈与させた。

 その後しばらくして、忘却の河に近づいており、引き返すか進路を変えるようにと乙女が進言するが、二人はそのまま進む。すると、そこに魔法の杯を持った乙女が現れる。アストルフォが杯を受けることを拒否すると、乙女は杯を地面に投げつけ、橋が炎につつまれ、通行不能となる。やむなく別の橋をわたって魔法の庭にたどり着いた一行は、そこで記憶を失った騎士たちの襲撃を受ける。アストルフォはオルランドがいることに気づいたが、ひとまずこの場から逃げることにした。

 一方、ブランディマルは降伏して杯の水を飲み記憶を失う。アストルフォはアンジェリカの元に到着し、まもなく独断専行でアグリカンの野営地へ向かうのだが、捕虜となってしまう。やがてサクリパンテの援軍が到着し、アグリカンとサクリパンテの一騎打ちが始まる。サクリパンテは重傷を負う。


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 リナルドが海岸沿いを歩き続けていると、すすり泣くブランディマルの恋人に出会う。旅路を共にする二人。そのうち、ブランディマルの恋人は、リナルドにバビロンのイロルドとプラシルドの逸話を語る。その後、リナルドは森の中のある洞窟で巨人とグリフォンが一匹の馬を守っているのを目の当たりにする。その馬はアルガリアのもつ魔法の駿馬ラビカンであった。リナルドは死闘を繰り広げ、すべて打ち倒し、ラビカンを得る。洞窟を出てしばらく旅を続け、休憩していると、ライオンを連れたケンタウルスが襲い掛かり、ブランディマルの恋人(フロリドリ)を連れ去ったあげく川に投げ込む。リナルドはケンタウルスを打ち倒すが、ブランディマルの恋人の行方が知れなくなる。


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 アルブラッカに取り残されたアグリカンは、部下によって救い出される。アンジェリカは援軍を求めて魔法の指輪を装備したのち出立する。チェルケス近郊のオルガーニャで、彼女は一人の老人の罠にはまり、ドラゴンティナの庭園の牢に入れられるが、そこでブランディマルの恋人フロリドリと出会う。彼女からリナルドのこと、妖精の魔力によってオルランドなどの騎士たちがこの地に閉じ込められていることを聞かされたアンジェリカは、指輪の魔力で牢を脱出し、騎士たちの呪いを解く。そして彼らたちに対し、自国の救援を要請する。

 一方アルブラッカではトゥルッファルディーノ(Truffaldino)の叛逆が起き、サクリパンテらを捕虜にし、アグリカンのもとに使者を送った。アンジェリカとオルランドたち一行はトゥルッファルディーノの申し出を受け入れ、要塞の中へと入る。その後、オルランドは兵糧を確保するため騎馬で敵軍に突撃、アグリカン側と五分の状況へと持ち込んだところで、ガラフロンと女騎士マルフィーザ率いる軍が登場する。アグリカンはオルランドに決闘の中断を申し出、オルランドはそれを受諾する。その後、形成は逆転し、ガラフロンの軍は窮地に陥る。


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 北を目指すリナルドは、泉で泣いている見知らぬ騎士に出会う。自らの死によって起きることを恐れているという彼は、自らの過去をリナルドに語り始めた――そう、彼こそがイロルドであった。護送されているプラシルドを救うべく、二人は救出作戦を決行し、イロルドはプラシルドに、リナルドはフロリドリに再会する。一行は一路、ドラゴンティナの庭園を目指すが、その途中でアグリカン軍の脱走兵に遭遇し、オルランドの武勇を聞く。

 リナルドたちは木陰で休む女騎士マルフィーザと出会う。一触即発ムードが漂う中、マルフィーザはそこに突如あらわれた使者から、ガラフロン軍が崩壊しかけている旨を伝え聞く。リナルドたちと一戦交えたのちに援護に向かうことにしたマルフィーザはリナルドと接戦を繰り広げる。

 一方、アンジェリカの命を受けたオルランドはガラフロンに加勢。アグリカンと長期戦を繰り広げたのち、彼に致命傷を負わせる。亡きアグリカンの馬を調べると、それがバイアルドであることに気がついた。そして一方、ガラフロンはアストルフォたちを解放する。アストルフォはすぐさまガラフロンとともに戦場へと舞い戻る。その途中で交戦中のリナルドとマルフィーザに出会う。乱戦のさなか、ブランディマルとフロリドリは再会する。


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 だが再会もむなしく、フロリドリは彼女をつけねらう隠者の魔術により連れ去られる。後を追うブランディマルはそこで巨人の列とラクダに乗っている一人の乙女を発見し、彼女がフロリドリに違いないと思いこんだブランディマルは巨人たちに打ちかかるも、自らの馬を失い瀕死の状態となる。だが、救援にかけつけたオルランドとともになんとかうち倒す。

 マルフィーザとリナルドはガラフロンをアルブラッカの砦まで追いまわし、決着のつかない戦いを続けていた。そのうち、ガラフロンに交渉のテーブルにつくよう求める。一方、乙女の介抱を受けたブランディマルだが、その乙女はフロリドリではなかった。彼は自らの運命を嘆く。乙女は自らの冒険について語り始めるが、ブランディマルは呆然としているのみ。オルランドと乙女は捜索の協力を申し出る。一方フロリドリは隠者によって洞窟に運び込まれる。だがそこに住むライオンに、隠者はたちまち八つ裂きにされてしまう。逃げ出したフロリドリだが、その先で今度は野蛮人に捕まってしまう。ところ変わって、乙女は物語の続きをオルランドに話す。そのうち、ブランディマルとはぐれてしまう。


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 ブランディマルは木に縛り付けられているフロリドリを発見するが、野蛮人の攻撃を受ける。野蛮人を殺し、フロリドリを解放すると、オルランドを探しに戻る。一方、リナルドはグリフォンとアクィラントを相手に戦っており、そのうちマルフィーザがリナルドの支援に駆け付けた。乱戦が続く。

 オルランドがブランディマルを探しているうちに、森の中から本と角笛を携えた一人の乙女と出会う。乙女はオルランドに勇気があるかどうかたずね、ある提案をする。オルランドが彼女の角笛を吹くと、二頭の雄牛が襲い掛かってきた。長き取っ組み合いの末にこれを捕獲すると、再び角笛を吹いた。今度は火竜が姿をあらわした。炎を浴びて装備を溶かされてしまうものの、ついに竜の首を刎ねることに成功する。神話のイアソンよろしく竜の歯をむしりとり、地面に植えると、歩兵や騎兵たちが生えてきた。防具のない状態でこの一群をなんとか皆殺しにする(スフィンクスのとき同様、今度もオルランドは脳筋プレイをかましているのだが、このあたりのくだりはつまるところギリシア神話の「アルゴー船の遠征」の再現ともいえる)。そして三度目の角笛を吹くと、白い猟犬があらわれた。そして、本と角笛の乙女より、近くの湖に住むファタ・モルガーナの存在を伝えられる。「黄金のリンゴの乙女」とともにオルランドは出立する。


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 オルランドはとある橋にたどり着き、そこで出会った騎士に乙女を引き渡す。一方アルブラッカではまだ戦いが続いていた。休戦期間中にアストルフォは包囲軍の側に寝返る。そのうち、オルランドがアルブラッカに到着し、アンジェリカの守備軍に迎えいられる。リナルドとオルランドは対峙し、激しい戦いを繰り広げる。その後、アンジェリカはオルランドにとある庭園を破壊せよと危険な冒険をすすめる。また、リナルドに乙女とバイアルドを送りつけたが、彼は無関心であった。

 冒険に出立したオルランドはオルガーニャへの道を進む途中で一人の騎士ウルダーノと、松の木に吊り下げられて泣いている乙女オリジッラを見つける。ウルダーノはオリジッラの犯した罪について長い話を語り始める――だが、オリジッラのほうは、この騎士が嘘をついていると主張する。オルランドはオリジッラの言葉を信じ、騎士を突き落とし、彼女を連れて立ち去る。
(このあと、愛馬ブリリアドロを彼女に盗まれる)


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【第二巻】



 アフリカ王アグラマンはフランス侵攻の作戦を練る。側近のソブリノは、作戦のためにはまずルッジェーロを引き入れることが第一だと王に提案し、王はルッジェーロの捜索を命じる。一方、アルブラッカはまだ戦火のなかにあった。リナルドはオルランドを探すため、アストルフォ、イロルド、プラシルドとともに出立する。途中で、一人の泣いている乙女に出会う。悪漢によって姉妹が連れ去られたことを聞くと、彼らは救出に向かう。

 ブランディマル、グリフォンとアクィラントの兄弟はオルランドを追う。兄弟はとある城で歓待を受けるが、拘束され、処刑場へとやられることになる。一方、アルブラッカではマルフィーザが猛威をふるっていた。さらに一方、アグラマンの使者はルッジェーロの捜索がはかばかしくないことを王に告げる。また、オルランドは馬を盗まれたために徒歩で移動していたところ、馬を盗んだオリジッラが武装集団に護衛されて移動しているところを目にする。さらにグリフォンとアクィラントが捕虜となっているのを見たオルランドは護衛を蹴散らし、彼らを自由にした。グリフォンとオリジッラはいい感じの関係になっていたが、オルランドはグリフォンを追い払い、オリジッラを自分のもとにとどめようとする。


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 オルランドはオリジッラを口説き続けていると、さらにもう一人の乙女があらわれる。彼女はオルランドに危機が迫っていること、オルガーニャの庭園に近づいていることを伝える。本を渡され、翌朝まで眠ることにしたオルランドだが、オリジッラはこの隙にドゥリンダナで殺そうとする。だがブリリアドロが突如駆け出し、オリジッラを剣ごとどこかへと運んだ。目を覚ますと馬と剣をがなくなっていることに気づいたオルランドだが、そのまま冒険を続ける。オルガーニャの庭園の城壁内に入ると閉じ込められてしまう。その先の泉で女主人ファレリーナを見て取ったオルランドは彼女にここから脱出する方法を尋ねるが、すげなく断わられたため彼女を木に縛り付けた。


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 オルランドは出立する前に渡された本のことを思い出し、本を開くと、庭園の南にも出入り口があることを知った。その途中の湖で彼はセイレーンに遭遇し、魔力の歌を聞かされるはめになるが、やられたふりをしてセイレーンを斬首。彼女の血液を全身に塗りたくり、南側の出入り口を守る雄牛の角から守る術とした。順当に雄牛も殺したが、その影響で門が消え去ってしまい、閉じ込められてしまう。再び本を開き、西側にも門があることを知ったオルランドは、方向を変える。途中の大きな木でハーピーが糞を引っ掛けようとしてきたところ、これを斬り殺す。西門には金の鱗をもつロバがおり、オルランドはこれも斬首する。するとまた門が消えてしまった。またも本を開く羽目になったが、今度は北にも出入り口があると知り、そちらへと向かう。途中で半人半獣のフォーンが隠れており、オルランドは一撃で葬った。北門には巨人がおり、斬りつけるとその傷口からさらにもう一体の巨人が生まれ出た。二体一で苦戦を強いられるオルランドだが、なんとか動きを封じる。再び本を開き、この庭園を破壊するには、妖精が創り上げた運命を内包する木の枝を引き裂くことであると知ったオルランドは、さきほどのファレリーナのもとに戻り、目的の木を見つけ、その根元の枝を取り除いた。たちまちのうちに庭園は消滅した。ファレリーナはオルランドに慈悲を乞い、オルランドもそれを約束し、囚人の解放を誓わせた。


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 アルブラッカではサクリパンテ対マルフィーザの一騎打ちが続いていた。アンジェリカは城壁からそれを観戦していたが、スキをつかれて大泥棒ブルネロに指輪を盗まれてしまう。ブルネロは一時休戦中のサクリパンテからも盗みを働き、彼の馬を引いて行く。マルフィーザがその様子を見て取ったが、自らの剣も彼に盗まれていたことに気づく。ブルネロはまんまと逃げおおせた。アンジェリカは絶望していると、さらに悪いことにトルコ軍が接近してきていることを告げられる。サクリパンテはグラダッソに救援要請をおこなう。一方、ロドモンテは勝手にフランスに向けて出立。ガノはマルシリウスをフランスに迎え入れるという裏切りをはたらく。


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 オルランドとファレリーナは多くの囚人が捕えられている橋に向かう。その途中で、魔女モルガーナの仕掛けた罠に近づいていることをファレリーナより知らされる。モルガーナにはアリダノという用心棒がおり、壊れない鎧と、相手の六倍のパワーがみなぎる魔法によって強化されている。積み上げられたアリダノの戦利品のなかにリナルドの武具があるのを見て取ったオルランドは、アリダノに挑みかかり、ともに湖の底へと沈む。底でも戦いが再開され、オルランドは、ファレリーナが鍛えた剣であるバリサルダでアリダノを倒す。周囲を見渡すと、水晶の壁に門がついていることに気づいたオルランドは、先へと進み、石が輝く場所にたどり着く、そこで像の襲撃にあい、散々な目をみるが、紆余曲折を経てリナルドやブランディマルが収監されているモルガーナの地下牢へと続く道を行く。

 モルガーナの眠る平原にやってきたオルランドは、やっとの思いでモルガーナを捕えることに成功する。牢獄の鍵を渡すように求めると、モノドンテの息子ジリアンテ以外は解放してもよいと言う。その条件をのんだオルランドは、鍵を使いジリアンテ以外を解放した。地上に出た一行は武具を装備し、それぞれの場所へと散っていった。オルランドとブランディマルはアルブラッカに戻り、リナルドとイロルド、プラシルドは騎士ドゥドンとともに西へと進んだ。


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 リナルドたちが旅を続けていると、近くの城から角笛が鳴るのを耳にした。道案内の乙女より、このダモギール島がモノドンテ王の領土であることと、王に従う魔法使いバリサルドの存在を告げられる。やがてバリサルドに相対する一行だが、魔術のもとに囚われの身となってしまう。牢獄の中に投げ込まれたが、そこにはアストルフォもいた。

 一方、アルブラッカを目指すオルランドとブランディマルは、道中でブルネロと、彼を追いかけるマルフィーザの姿を目にする。気がつくと、バリサルダと角笛が盗まれていることに気がついた。追いかけるうち、前方で乙女が口論しているのをみる。馬に乗ったほうの乙女がオリジッラであることに気がついたオルランドは彼女とともにバリサルドのもとへ向かう船に乗り込む。結局、オルランドもバリサルドに敗北を喫してしまうが、ブランディマルが打ち倒した。

 オルランドとブランディマルは捕虜船の船長を尋問すると、モノドンテ王の二人の息子がそれぞれバルディノとモルガーナに誘拐されていることを告げ、モルガーナがモノドンテ王に、オルランドと引き換えに息子を解放すると申し出ていることを明らかにした。オルランド一行はモノドンテ王の島へと向かう。オリジッラは、囚われの身となっているグリフォンを救い出すため、モノドンテにオルランドのことを密告。解放されたグリフォン、アクィラントの兄弟とともにどこかへと出立する。

 捕虜の身となったオルランドとブランディマル。ブランディマルは自分がオルランドであると嘘の説明をし、モノドンテのもとへと連行される。ブランディマルは王に巧妙な提案をし、王はそれを受けれ、オルランドは解放される。が、しばらくのちにアストルフォが迂闊な行動をしてしまったことで秘密が露見してしまい、ブランディマルは再び投獄される羽目になる。


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 以前アリダノが守護していた泉のもとを訪れたオルランドは、そこで動かない一匹の竜と、すすり泣く乙女を見る。彼女はモルガーナであり、竜の正体はジリアンテであった(モルガーナは彼を竜に変化させようとして失敗していた)。泉の底へと沈んでいく二人を目の当たりにして間もなく、フロリドリがオルランドの前にあらわれる。彼女の話によると、モノドンテ王の誘拐されたもう一人の息子がブランディマルであることがわかった。オルランドは泉の底へと降り、人間の姿に戻っていたジリアンテをモルガーナの手から取り戻し、モノドンテ王のもとへと帰還した。一行は解放され、リナルド、イロルド、プラシルド、アストルフォはフランスへと帰還するため出立し、オルランドとブランディマルはアルブラッカへと帰還する(なお「黄金のリンゴの乙女」はモノドンテ王の娘であった)。


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 リナルドたちはモルガーナの姉妹アルシーナの王国へと足を踏み入れる。アルシーナはアストルフォに一目ぼれし、近くの島へと招待する。その島は巨大な鯨であり、アストルフォはどこかへと連れ去られてしまう。
(その後の彼については『狂えるオルランド』で語られる)

 アストルフォの救出を諦めて西へと向かった一行は、ハンガリーのブダへと到着する。ハンガリー王はリナルドを指揮官に任命し、一行はアルプスを越えプロヴァンスへと到着する。そこではロドモン率いる異教徒の軍とキリスト教徒の軍が戦闘中であった。リナルドはロドモンに一騎打ちを挑むが、そのあいだにドゥトンらは捕虜にされてしまい、アフリカへと送られていた。ロドモンはリナルドにニセの情報を流し、アーデンの森へと向かわせる。そして、ロドモンはフランスに戻っていたフェッラウと出会うが、話に花を咲かせているうちに決闘になってしまう。


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 森を進むリナルドは、そこで裸で踊る男女の集団をみる。すると男が枝で殴りつけ、負傷させる。愛に逆らったがゆえの罰であると集団の中の一人は言い、傷を治すには愛の泉の水を飲むしかないと告げる。そのうち、かつてアンジェリカの好意をはねのけた泉の水を飲み、体力を回復させた彼は、自らの行いを悔い、アンジェリカのもとへと向かおうとする。

 一方、ブルネロをずっと追いかけ続けていたマルフィーザは疲労困憊で倒れる。ブルネロはアフリカへと渡り、アグラマンに面会する。アンジェリカとオルランドから盗み取った指輪と角笛を疲労すると、アグラマンはブルネロを王へと迎え入れた。ブルネロ一行はルッジェーロ捜索へと向かい、彼をおびきだすために馬上槍試合を開催する。企みは成功し、ルッジェーロが姿をあらわすと、ブルネロは彼をもてなし、サクリパンテの愛馬であったフロンティラッテ(フロンティノ)と、オルランドの愛剣バリサルダを与えるが、やがて裏切りを察したルッジェーロはその窮地を脱し、フランス侵攻作戦に参加する決意をする。


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 インドに向かうオルランドたちは、騎士が守っている橋と、地面を見つめ続ける淑女をみつける。やがて一人の巡礼者が騎士に挑む。泣いている乙女はオルランド一行のもとにやってくると、この地がナルキッソスとシルヴァネッラの悲恋の呪いにかかっていることを告げる。川岸にたどり着いた者たちは永遠に川の流れを見つめてしまうという呪いであり、騎士は淑女カリドラの命で橋を守り続けていたのである。騎士への助太刀を頼まれたオルランドはこれを受け入れ、交戦中の騎士と巡礼者の間に割り込むと、巡礼者の正体はサクリパンテであった。騎士はカリドラに使えるイソリエロであり、重傷の身であったがそのままこの地にとどまった。オルランドはアルブラッカへ、サクリパンテはグラダッソのもとへと向かう。


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 アルブラッカにたどり着いたオルランドはアンジェリカにこれまでの経緯を説明する。アンジェリカはこの地を脱し、フランスまでの案内をオルランドに頼み込む。オルランドはこれを申し受け、逃亡の旅が始まるが、途中でブランディマルとはぐれてしまう。オルランドと二人の乙女はやがて人喰い民族であるレストリゴン人に食糧を分けてもらうよう近づくが、オルランドは殴られて失神。二人の乙女は散り散りに逃げ出してしまう。目を覚ましたオルランドはドゥリンダナで人喰いの民を屠ると、すぐにアンジェリカを発見した。

 一方フロリドリは、偶然にブランディマルと合流する。ブランディマルとフロリドリは元の場所へ戻ろうとする途中で剣のみを携えた一人の騎士の挑戦を受ける。騎士はマルフィーザであり、彼女はフロリドリを人質にとり、ブランディマルの武具と馬を要求した。要求を受け入れたブランディマルはフロリドリの馬に乗り旅を続けることにしたが、盗賊の集団と出くわす。逃げながらもこれを撃退すると、途中で武具をまとった遺体を発見し、鎧を剥ぎ取った。その遺体はアグリカンであった。


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 オルランドはダマスカス王ノーランディノと出会い、彼に同行してキプロスへと赴き、かの地で開催された馬上槍試合に参加する。そこにはグリフォンとアクィラントの兄弟が相手陣営側で参加していた。彼らはオルランドが参加しているのではないかという疑念を主であるギリシア人のゴスタンゾ(実は彼はコンスタンティノープルの皇帝ヴァタロンの息子である)に告げると、彼は一計を案じオルランドたちを口車で船に乗せフランスへと向かわせた。

 オルランド一行はプロヴァンスに上陸したのち、かつてリナルドが愛の水を飲んだアーデンの森に到着。そこでアンジェリカは嫌悪の泉の水を飲んでしまう。その後、ロドモンを追っていたリナルドと遭遇する。アンジェリカにわびようとするリナルドを嫌悪するアンジェリカ、やがてオルランドとリナルドは争い始め、アンジェリカは森の中を逃げ出し、シャルルマーニュの野営地にたどり着くと、シャルルマーニュに事情を話す。シャルルマーニュは二人の騎士のいさかいを仲介し、アンジェリカをバイエルン公に引き渡した。


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 アグラマンはブルネロを処刑しようとするが、ルッジェーロはブルネロを助け、アグラマンに事情を説明した。ルッジェーロは騎士に叙せられ、ビゼルトに送り込まれた。そこにロドモンの軍が帰還する。ロドモンはフェッラウと一騎打ちをしていたが、スペイン王マルシリウスの使者が訪れたことで勝負を中断し、モントーバン包囲作戦へと向かう。その途中でマラジージの妨害に遭うがこれを退け、やがてスペインの野営地に到着した。


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 ブランディマルとフロリドリはヨーロッパでとある宮殿にたどり着くと、バルコニーで乙女が他の道へ行くよう身振りをしているのを横目にする。その後、門前で蛇をあやつる巨人の攻撃を受けるがこれを退け、その先に待っていた墓守の騎士とも勝利し、奥へと進んでいくが、最終的に迷ってしまう。脱出方法を探っているうちに先ほどのバルコニーの乙女があらわれ、墓室を開いた先にある者とキスをしなければここからは出られないとブランディマルに伝える。墓室からは竜が姿をあらわし、ブランディマルは意を決して口づけすると、竜は美しい妖精ドリステッラへと姿を変えた。彼女はある物語を語る。


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 ドリステッラの父はドリストンといい、長女は王の息子セオドアと婚約をしていたが何者かに誘拐される。ドリステッラは一人の青年と恋仲になるが、ウスベックなる悪漢(ブランディマルが先ほど宮殿で倒した騎士)と結婚させられてしまう。スキをみてセオドアを情を交わしていたが、それが露見し、ウスベックに魔法をかけられ、姿を変えられてしまう――ここまで話したところで、ドリステッラの物語は、盗賊の襲撃により中断された。

 ほどなくしてブランディマルはその首領を生け捕りにするが、彼はかつてドリストンの長女を誘拐した張本人であった。ブランディマルはドリストンの城に彼を連行すると、かの地はセオドアによって包囲されていた。だがそこで、これまで旅を続けてきたフロリドリこそがドリストンの長女であることが明らかとなる。ドリストンとセオドアは和解し、セオドアはドリステッラと結婚し、ブランディマルとフロリドリも結婚を果たした。しかしオルランドの捜索を続けるため、ブランディマルとフロリドリはフランス行きの船に乗る。途中で嵐に遭い、べつの海岸に流れ着く。身分を偽り、首都ビゼルタにたどり着いたブランディマルたちは、ルッジェーロとともにフランス侵攻に加わる。


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 オルランドはブランディマルとロドモンの一騎打ちや、ほかの乱戦を見物していたが、やがてアグラマンの軍が接近していることを察知する。シャルルマーニュはリナルドにフェッラウとの一騎打ちを中断するよう命じたところでオルランドが敵軍のなかにいることに気づいた。

 一方オルランドは戦線から引っ込み、近くの森で待機していた。そこに、水を飲みにきたフェッラウと遭遇する。オルランドは戦況をうかがうとシャルルマーニュの加勢に向かった。やはてルッジェーロに向かい始めたオルランドだが、ルッジェーロのそばにいたアトランテの一計によりアーデンの森に迷い込む。泉の水を飲もうとすると、底に水晶の宮殿があるのをみてとり、武装したのちそこに飛び込んだ。


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【第三巻】


 タタール王マンドリカルドは独裁的にふるまっていたが、父アグリカンがオルランドの手に掛かったことを知ると、身分を隠して王国を出立した。鎧を身に着け、馬に乗った矢先、目の前に炎が広がり、全身を焼かれてしまった彼は、近くの泉に飛び込んだ。そこで美女に抱きとめられ、この泉にはグラダッソやグリフォン、アクィランテらが閉じこめられていると伝える。さらに、丘の向こうの城に剣以外のヘクトールの武具があり、手に入れる勇気があるならば案内をしようと申し出る。マンドリカルドは彼女と共に出立する。


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 マンドリカルドは第一の試練としてグラダッソと戦うことになり、これに勝利する。その後、宿泊のために訪れた先で巨人を撃退する。魔法の城の中に入ったマンドリカルドにさらなる試練が襲い掛かるがこれを退け、かつてヘクトールが所有していたもののもとへとたどり着く。そこで、城の主人から「ドゥリンダナ以外の剣は決して身につけない」という誓いを立てさせられる。オルランドの持つドゥリンダナを手にしたときこそがヘクトールの武具が完全に揃うときなのだ。やがて、囚われていたグラダッソ、サクリパンテ、グリフォン、アクィランテら騎士たちが解放される。マンドリカルドはグラダッソとともに旅路を進む。


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 グリフォンとアクィランテは、二人の乙女に助けを求められる。不死身の能力をもつオッリロと戦ってほしいという願いを聞き入れた二人は、オッリロのもとへと向かうが、そこで長期戦にもつれこむ。

 マンドリカルドとグラダッソは、鎖につながれた乙女ルキアナをみてとる。彼女はこの場所で海魔の生贄にされようとしていた。苦戦の末、巨大な怪物オルクを巨大な裂け目に落とす。ルキアナの父の船に乗り込んだ一行だが、オルクの再襲撃に遭い、辛くも窮地を脱すると、フランスとスペインのはざまの海岸に流れ着いた。周囲を探索していると、戦火のさなかにあることがわかり、アグラマンとシャルルマーニュが戦っていた。


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 乱戦が続くなか、リナルドはバイアルドを取り戻そうとしていた。ルッジェーロは自らの愛馬であるフロンティノを見つけ出した。やがて彼はブラダマンテとロドモンが戦っているところを目撃する。二人の間に割ってはいるルッジェーロにロドモンは非礼をはたらいたので、一騎打ちとなったが、ルッジェーロの勝利に終わる。ロドモンは立ち去り、ブラダマンテとルッジェーロは互いに身分を明かすが、兵の襲撃により散り散りとなってしまう。


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 ブラダマンテを探すルッジェーロはマンドリカルドとグラダッソと出会う。マンドリカルドとグラダッソはやがて諍いをはじめ、ルッジェーロはそれをなだめていたが、そこにブランディマルとフロリドリが通りかかる。ブランディマルの説得でマンドリカルドたちは休戦する。マンドリカルドはその後ブランディマルたちと別れ、アグラマンの野営地にたどり着く。


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 泉に潜ったオルランドは、そこにとどまることを決意していたが、ブランディマルたちによって救い出された。オルランドは、ブランディマルとフロリドリとともにパリへ向かう。ルッジェーロとグラダッソは別の方向へと向かった。ルッジェーロとはぐれたブラダマンテは、傷を癒し、一人で旅を続けていた。森で一眠りしているときに、フロルデスピナとニアミスする。


『恋するオルランド』 ―未完―

2017年8月27日日曜日

松武秀樹(サウンドプロデュース)『魔法陣グルグル ジミナ村の祭典/キタキタおやじの逆襲/音の魔法陣』(1995)




 今年、三度目のテレビシリーズアニメ化を果たした「魔法陣グルグル」。1994年10月から1995年9月にかけて三クールにわたり放送されたテレビシリーズ第一作は、『ジミナ村の祭典』『キタキタおやじの逆襲』『音の魔法陣』と題したイメージアルバムが1995年3月から三か月おきにわたってリリースされておりました。スーパーバイザーは衛藤氏。サウンドプロデュースは、「YMO第四の男」であり、日本有数のシンセサイザースペシャリストであり、LOGIC SYSYEMなど多数のユニットを手掛ける松武秀樹氏。氏は1996年の劇場版のオープニングテーマ「金のトビラ」にも参加されます(「キハラサトミ with ラジオハート」は松武氏、木原さとみさん、衛藤ヒロユキ氏のユニット)。






「魔法陣グルグル」~ジミナ村の祭典
イメージ・アルバム TOo’S
ソニー・ミュージックレコーズ (1995-03-08)
売り上げランキング: 347,038



 本イメージアルバムは三枚ともいわゆるボイスミックスの趣向で、本編のナレーションや各キャラクターのセリフをこれでもかと大量投入したつくり。特にキタキタおやじ(CV:緒方賢一)ボイスの使用率は群を抜いており、公式による「やりたい放題」がここにあります。一枚目の『ジミナ村の祭典』ウィリー・ナカオ氏との共作アルバム。ウィリー氏は今剛を師にもつギタリストであり、杉山清貴など多数のアーティストの作編曲を手掛けるスタジオミュージシャン。かつてコナミのコンポーザー(なぞなぞ鈴木、半沢紀夫)との「Nazo2プロジェクト」に松武氏と共に参加してもいました。熱のこもったウィリー氏のギターソロとキタキタおやじのボイスカットインを交えたテクノポップチューン"ジミナ・テクノ"、お悩み相談ダイヤルの司会(伊武雅刀風ボイス)とキタキタおやじのまったく噛み合わないコントが繰り広げられる、スネークマン・ショーのあからさま過ぎるパロディ"待ってますぞ!"などを収録。また、鈴木蘭々がTOo's名義で歌った前期オープニングテーマである"MAGIC OF LOVE"は本CDにもフルヴァージョンで収録されています。



「魔法陣グルグル」~キタキタおやじの逆襲
TVサントラ
ソニー・ミュージックレコーズ (1995-06-21)
売り上げランキング: 407,051



 二枚目の『キタキタおやじの逆襲』からは、松武氏のユニットの一つ「Purple Project」の小松原まさし氏が参加。冒頭を飾る「DE・SU・ZO」は、一世を風靡したEAST END×YURIの「DA.YO.NE」(1994)のパロディ、主役はもちろん、キタキタおやじです。ちなみに、後にシングル「金のトビラ」にカップリング曲としても収録されます。小松原氏作曲の"N. K. Bar"は、ユルめのファンクチューン。また、ジミナ村とジミ・ヘンドリックスにひっかけたJimina Hendrixなるクレジットがあるのですが、これもおそらく松武氏でしょう。スクラッチ気味にボイスをカットインさせた"Supermarket"もまた、ファンク路線の一曲です。どストレートなタイトルの"DESUZOPOLIS"は、YMO"テクノポリス"のパロディ。主役はもちろん、キタキタおやじです。ウィリー氏作曲の"Rock Bellbottom"はジミヘンの"Purple Haze"よろしく、こってりしたギターを聴かせるライヴ感あふれる一曲。主役はもちろん(略)。





魔法陣グルグル~音の魔法陣~
サントラ
ソニー・ミュージックレコーズ (1995-09-21)
売り上げランキング: 311,529


 三枚目の『音の魔法陣』はククリを主役にした一枚。ククリ(CV:吉田古奈美)のボイスを大々的にフィーチャーしているほか、楽曲はいずれもククリが使う呪文の名を冠しています。松武氏、小松原氏、ウィリー氏の共同作曲、または編曲によって制作されており、音楽的にも総まとめ的な趣向。キュートかつ引き締まった内容です。ククリのボイスとともにウィリアム・テル序曲や天国と地獄、クシコス・ポストなどのおなじみのメロディが挿入される"グルグル"。心なしか「金のトビラ」のプロトタイプといえなくもないブレイクビーツチューン"トカゲのしっぽ""長い声のネコ"は、シンセサイザーとギターがそれぞれ「長い声」を奏でるという趣向も楽しいテクノ・ポップ。ギターがうなるテクノ・フュージョン"ベームベーム"は、投げやり気味に爆発オチを決めるアウトロとの落差が激しいのだけれども、それがまたなんとも「らしい」。ラストはカノンコード進行とリリカルなアレンジの"夢の回転木馬~わかれのウインク"で締めくくられます。




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『魔法陣グルグル~ジミナ村の祭典』
[SRCL-3132|Sony Music|1995.03.08]

01. ようこそグルグルワールド
(作曲:松武秀樹、ウィリー・ナカオ)

02. ジミナ・テクノ
(作曲:松武秀樹、ウィリー・ナカオ)

03. 待ってますぞ!
(作曲:松武秀樹、ウィリー・ナカオ)

04. Theme of コーダイ
(作曲:松武秀樹、ウィリー・ナカオ)

05. MAGIC OF LOVE by TOo's(鈴木蘭々)
(作詞:Miss Tee、Nohzy/作編曲:保泉ヒロ)


衛藤ヒロユキ(original concept & design, supervisor)

松武秀樹(music, arrange, synth op, vocorder, engineer)
ウィリー・ナカオ(music, arrange, guitar)
Hiroshi Shitamiya(mix down engineer)
George Asahi(produce & direction)


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『魔法陣グルグル~キタキタおやじの逆襲~』
[SRCL-3252|Sony Music|1995.06.21]

01. DE・SU・ZO
(作曲:Jimina Hendrix)

02. N. K. Bar
(作曲:小松原まさし)

03. Supermarket
(作曲:Jimina Hendrix)

04. DESUZOPOLIS
(作曲:松武秀樹)

05. Rock Bellbottom
(作曲:ウィリー・ナカオ)

編曲:Jimina Hendrix


衛藤ヒロユキ(original concept & design, supervisor)

松武秀樹(music, arrange, synth op, vocorder, engineer)
ウィリー・ナカオ(music, arrange, guitar)
小松原まさし(music, keyboards)
Hiroshi Shitamiya(mix down engineer)


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『魔法陣グルグル~音の魔法陣~』
[SRCL-3298|Sony Music|1995.09.21]

01. グルグル
(作曲:松武秀樹、小松原まさし、ウィリー・ナカオ)

02. トカゲのしっぽ
(作曲:ウィリー・ナカオ)

03. 長い声のネコ
(作曲:松武秀樹)

04. ベームベーム
(作曲:松武秀樹、小松原まさし、ウィリー・ナカオ)

05. 夢の回転木馬~わかれのウィンク
(作曲:小松原まさし)


全編曲:松武秀樹、小松原まさし、ウィリー・ナカオ


松武秀樹(music, arrange, synth op, vocorder, engineer)
ウィリー・ナカオ(music, arrange, guitar)
小松原まさし(music, keyboards)
Hiroshi Shitamiya(mix down engineer)


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 ところで、今年のテレビシリーズアニメ版の劇伴(と、エンディングテーマ)は、テクノポップユニット TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDが手がけております。YMOからの多大な影響下にあり、シンセサイザーミュージックへの強いこだわりはもちろんのこと、これまでにYMOやアルファレコード人脈を迎えたサントラ制作も行っている彼らが起用されたキッカケには、第一作のイメージアルバム(と劇場版主題歌)を手掛けた松武氏のイメージがあったのかどうかはわかりませんが、20年の時を隔てて「つながっている」感があるのは面白いなと思います。







TVアニメ『魔法陣グルグル』ED主題歌「Round&Round&Round」
TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND feat.ボンジュール鈴木
ランティス (2017-08-09)
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2017年8月24日木曜日

ドイツ在住のブラックメタルポップシンガーおじさん ― Sataninchen『Panda Metal Party』(2017)




 YouTubeを閲覧していて、ふと関連動画の広告枠を見やると、パンダがいました。……なんでパンダなのか。どうやらSataninchenというドイツのシンガーのプロモらしく、ブラックメタルとみせかけてエピックメタルだったりポップソングだったりフォークだったり、MVで意味不明な悪ふざけをしていたりと、なかなかトチ狂っているなと思いながらも数曲ほど聴いてしまった。どうやら、このパンダ・メタル・パーティーおじさんことサタニンヒェンは、5月末にフルアルバムを出したばかりで絶賛売り込み(?)中の人らしい。これも何かの縁だと思い、バンドの公式通販経由でCDも買ってしまった。今は夏だというのにクリスマスカードを送ってきたうえ、卑猥なオマケもくれました。






 サタニンヒェン氏の素性はまったくもって不明なのですが、ドイツやオーストリアの往年のポップソング(日本ではほとんどなじみがない類の)を塩辛いヴォーカルとジョワジョワしたギター、薄っぺらいドラムなどを駆使してブラックメタル風にアレンジするので「Black Metal-Schlager」と他称されているようです。この「Schlager」というのはドイツ語でヒットを意味する言葉であり、つまるところはポップソングであります。活動自体は数年ほど前からやっているようで、2015年末の時点でクラウドファンディングでアルバム制作資金も募っておりました。当初の構想では同国のDie Apokalyptischen Reiterのダニエル・ターメルや、Lord of the Lostのクリス・ハルムス、イスラエルのOrphaned Landのコビ・ファーリなどをフィーチャーする予定だったようですが、この三人の参加は結局実現しなかったみたいです。というか、その豪勢なメンツでよくやろうと思ったなと。ただ、この時同じく参加がアナウンスされていたNEOPERAのニナ・ジアースと、俳優兼シンガーであるルーシー・ヴァン・オルグの二人は参加しています。





 2016年には1stマキシシングル「Katzelied」を111枚限定で、2017年4月には、2ndマキシシングル「Panda Metal」をデジタル限定でそれぞれリリースしています。「ピアノver.」「グロウルver.」「1815年ver.」(?)など、別ヴァージョンが充実。デビューアルバムでありながら、いびきと猫の鳴き声と生活音と嘔吐という、なかなか最悪な始まり方をする本作『Panda Metal Party』は、シンセポップバンドNenaの1982年の「Nur Geträumt」、ウド・ユルゲンスの1974年のフォークソング「Griechischer Wein」、EAV(Erste Allgemeine Verunsicherung)の1994年の「Einmal möchte ich ein Böser sein」、言わずと知れたABBAの「Lay All Your Love On Me」などのカヴァーも収めた全17曲。また、アルバムの一部楽曲で威勢のよいコーラスを担当している「HardChor」には、アカペラヘヴィメタルバンド VAN CANTOのバス・ヴォーカル担当であるヤン・モリッツも参加しています。ふざけているようで実はちゃんとアレンジを作りこむというスタンスとしては同国のスーパーヒーローメタルバンドであるGrailknightsに近いのかもな……と思うところもあります。細く長く活動していただきたい。


http://www.sataninchen.de/

2017年8月19日土曜日

2017年8月19日(土)「VGM SPARK STAGE1 【源平討魔伝・激奏禄】」@吉祥寺Club SEATA レポート



https://t.livepocket.jp/e/vgmspark1


今回のイベントを一言で言いあらわしますと


 「ありがたや」


これに尽きます。


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【O.T.K】


 1995年結成、活動歴20年を超えるゲームミュージック(とY.M.Oの)カヴァートリオ。実はお目にかけるのは今回初めてだったのですが、年季と熱気のこもったパフォーマンス(と寸劇)はこりゃすごいという印象。キーボード、ベース、ドラムスのバンドサウンド+打ち込みとクロスオーヴァーさせ、変拍子とキメがバリバリの楽曲群をハードなパフォーマンスで弾きこなす。選曲は、「ローリングサンダー」「キングオブキングス」「サイバースレッド」「アサルト」「F/A」「バラデューク」「モトス」など。バンドアレンジで聴く「キングオブキングス」も実にイイものですね。



【hally [VORC]】


 豊富な知識と膨大な資料の渉猟、そして関係者への取材をまとめた大変な労作であり、チップチューン史の黎明から興隆を知るうえで格好の一冊である『チップチューンのすべて All About Chiptune』を今年五月に上梓されたhally氏によるファミコン実機DJは、中潟氏が手がけられたファミコンタイトル楽曲メドレー(この日のためのスペシャルセット)と、バトルガレッガ楽曲メドレーの二本立て。現在のチップチューン技術で奏でられる「暴れん坊天狗」曲がやはりエグかった。ループをほうっておくと際限なく一音ずつ上がっていく仕様のステージ選択BGM「Verge of Danger」は限りなくドープだし、ハイスコア時BGMであるファミコンテクノ「Delta Rap」はやはりアガります。



【ファミ箏】

 箏×3、三味線×1、尺八×2の編成による和楽器ゲームミュージックグループ。オープニングは「戦場の狼」から始まるカプコンメドレー。「ロックマン」では途中で尺八によるカーソル音再現、メニュー画面でのE缶回復も入れているという芸の細かさ。「暴れん坊天狗」からはまさかの「Strontium 90」というシブい選曲。原曲のおどろおどろしさが見事に倍化しておりました。ゲームボーイ版「平安京エイリアン」の一連の楽曲アレンジもまことに雅な印象。オープニングからエンディングまでを演るという趣向で15分をゆうに超える「源平討魔伝」メドレーは、オール和楽器の響きによる編曲の妙もさることながら、より一層、諸行無常の響きがありました。もしや「だじゃれのくに」も? と思っていたら、しっかりだじゃれ入りで演られており、流石、ぬかりがない。ありがたやありがたや。ラストは、「レイブレーサー」の“Kamikaze”と、「妖怪道中記」をセットで。



【中潟憲雄 with AQUA POLIS】

 トリはもちろんアクアポリス。2月の東京ゲーム音楽ショー2017から半年ぶり、再結成後二度目となるライヴ。ラインナップは中潟氏(keyboards)、桜井良行氏(bass)、三苫裕文氏(guitar)、川上達朗氏(drums)。一曲目は東京ゲーム音楽ショー2017でも披露されていたプログレッシヴ・フュージョンチューン「夜明け」。続く「サンダーセプター」は、クラシックのフィールドのみならずゲーム音楽の演奏参加や、東京ゲーム音楽ショーやゲームタクトにも出演されているヴァイオリニストの松原まりさんを迎え、さらにキレを増したアレンジで展開。ドラムスの川上氏の知人でもある梅田NORI氏をヴォーカルに迎えての「超絶倫人ベラボーマン」は、NORI氏のシャッキリしたキャラクターと朗々たる歌声で強烈な印象。続けて、弓達公雄氏作詞によるフォークソング「方眼紙の唄」も、NORI氏が担当。また、前回の東京ゲーム音楽ショーにはスケジュールの都合により来られなかった小野浩(Mr.ドットマン)氏が「二人の景清」を伴ってステージに上がられていました。メガドラアイドルこと愛沢めみさんの(夏コミには間に合わなかった)新作コスプレROMに提供された書き下ろし提供曲「Spages」は、シンセサイザーを全面に押し出した、80年代のアクアポリスのテイストも感じさせる壮大な仕上がりの一曲。

 ここで、ドラムスが菅野詩郎氏に代わり(ドラムのセッティング中の中潟氏のMCでは、レアな「未来忍者」販促ポスターがステージに登場する一幕も)、ハイライトである「真組曲 源平討魔伝」へ。CDで幾度となく聴いておりますが、それでもやはり生のパフォーマンスは言わずもがなの熱量の塊。菅野氏のドラムはやはりおそろしくパワフルであります。アンコールは、阿部隆大氏とのユニット ACRYLICSTABのヴォーカリストであるUyuさんを迎えての「ワンダーモモ」。オリジナル版はTAKA&まさごろの二人がキュートパートとシャウトパートをスイッチングする形でしたが、Uyuさんが一人で両パートを歌いこなされており、素晴らしいヴォーカルパフォーマンスでした。歌詞が新たに書き下ろされていたところもポイント。オーラスで、ロウソク型ペンライト(物販アイテム)が客席から一斉に振られましたが、形が形だけになかなか異様な光景になっていました(笑)。アンコールはさらにもう一曲用意されており、満を持しての「未来忍者」。再び松原まりさんを迎えてのパフォーマンスで締めくくられました。

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会場物販ラインナップのひとつ、景清の扇子






源平討魔伝の30年、そしてアクアポリスの再始動 『源平討魔伝~参拾周年記念音盤~』

東京ゲーム音楽ショー2017: 中潟憲雄氏LIVE、菊田裕樹氏LIVE 覚え書き

中潟憲雄・大久保高嶺『暴れん坊天狗音楽集』

2017年8月17日木曜日

ボトムズシリーズの作曲家が、ボトムズ以前に手がけたジャズ・ロックアルバム、本邦初CD化 ― 乾裕樹 & TAO『砂丘』(1979)

砂丘
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Hiroki Inui & TAO
ワーナーミュージック・ジャパン (2017-07-19)
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https://wmg.jp/artist/hiroki-inui-tao/WPCL000012658.html


 2017年はカシオペアが結成40周年、PRISMと松岡直也のアルバムデビュー40周年ということで、ワーナーミュージックが国内フュージョンの廉価盤再発キャンペーン「J-FUSION 40th ANNIVERSARY SHM-CD COLLECTION 1300」を4月から7月にかけて四か月連続で展開しておりました。その第四弾にはヴァイオリニストの篠崎正嗣氏の『NASA=MASA』(1980)や、四人囃子の元キーボーディスト 茂木由多加氏の1980年の『フライトインフォメーション』(1980)などの初CD化作品がラインナップされております。この『砂丘』も本邦初CD化タイトルの一つ。70年代に『Sony Sound Adventure』『Space Fantasy』などのシンセサイザーのデモンストレーションアルバムに参加し、80年代にフュージョンバンドのカリオカに加入。EPOや谷山浩子などの編曲や、アニメ『まいっちんぐマチコ先生』『装甲騎兵ボトムズ』『蒼き流星SPTレイズナー』などの主題歌や劇伴を手がけたキーボーディスト/作編曲家の故・乾裕樹氏が、「TAO」との連名名義で1979年に発表したアルバムです。

 このTAO、ワーナーのサイトやCDの帯のインフォメーションには「『銀河漂流バイファム』を手掛けるTAO~」とあり、その記述をうっかり信じてしまったのですが、調べてみるとそのTAOとはまったく別であることがわかりました。……というのも、1983年に『銀河漂流バイファム』の主題歌「HELLO, VIFAM」「NEVER GIVE UP」を手がけたヴァイオリン・ロック・バンド TAOが結成されたのは70年代ではあるのですが、デヴィッド・マン、関根安里、岡野治雄、野澤竜郎の四人のメンバーの名前は本作のクレジットのどこにもありません。本作の演奏者にはシュガー・ベイブやバイバイ・セッション・バンドの上原裕(drums)、鈴木茂&ハックルバックの田中章弘(bass)、パラシュートの今剛(guitar)、そして本田俊之(sax)、村上秀一(drums)、佐藤正美(acoustic guitar)、ペッカー(percussion)、ヴァイオリン奏者、チェロ奏者などがクレジットされています。このTAOというのは、あくまでゲストミュージシャンも含めてのレコーディングバンドに便宜的につけられたものだったのでしょう。ワーナー側からはこの情報的な大ポカに対して今のところ特に何もアナウンスがないのですが、誤認させたままでは色々とマズいのではないでしょうか……。

 ともあれ、アルバムの内容はまことに素晴らしいの一言。ドビュッシーの「En Bateau(小舟にて)」のアレンジや、ピアノ&シンセサイザーによる透明感あふれる小品「砂丘」も含めた六曲の楽曲は、エキゾチックなムードをたたえたインストゥルメンタルの傑作です。カリオカのスムース・ジャズのテイストにももちろん通じますし、プログレッシヴなジャズ・ロックとしてもスリリングに仕上がっています。シンセサイザープログラミングに松武秀樹氏のクレジットが確認できるところもポイントでしょう。『Space Fantasy』(1978)収録の「エンジェルダスト」(「カンツォネッタ」原曲)や、カリオカの『DUSK』(1983)収録の「Never Ending」(「いつもあなたが」原曲)など、乾氏が別のところで手がけた楽曲がボトムズの楽曲としてリメイクされることがあるのですが、本作の一曲目「Solar Plexus」もそのケースに当てはまります。同曲は、ボトムズの「クメン編」の劇伴「Jungle Ride」の原曲でもあります。廉価盤とはいうものの、完全限定盤ゆえ、再プレスの可能性はほぼないといっていいでしょう。最低野郎はこの再発の機を逃さないように。

2017年8月13日日曜日

源平討魔伝の30年、そしてアクアポリスの再始動――『源平討魔伝~参拾周年記念音盤~』(2017)

源平討魔伝~参拾周年記念音盤~
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 感激のリリースでありました。アーケード版とファミコン版の音源、ナムコミュージアムVOL.4のゲームルームBGM、高橋弘太氏、細江慎治氏、増渕裕二氏による各アレンジヴァージョン、1988年7月27日に聖蹟桜ヶ丘で行われた、TBSのラジオ番組「ラジオはアメリカン」のイベントで演奏された「組曲 源平討魔伝」「ラストテーマ・ニューバージョン」の音源の再収録。そして、再結成を果たした中潟憲雄氏率いるプログレッシヴ・ロック・バンド アクアポリスによる新録アレンジメドレー「真組曲 源平討魔伝」が収録されたCDに、源平プロジェクトが撮影した実写版、雨宮慶太氏の演出によるプロモーション版映像が収録されたDVDがセットになったまさにスペシャルアイテム。(なお、PCエンジン版「源平討魔伝」「源平討魔伝 巻ノ弐」のBGMはクラリスディスクより2014年にリリースされた『HuCARD Disc In BANDAI NAMCO Games Vol.2』に収録されていることもあり、未収録です)。ブックレットも充実しており、先ごろ刊行された《GAMEgene》第三号のインタビューと併せることで永久保存版といえるものになっています。



GAMEgene Vol.3
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 中潟氏が中期SOFT MACHINE、ジョン・マーシャルがお好きだったというのは初耳でした。1972年のライヴアルバム『Live in Paris』の一曲目"Plain Tiffs"におけるジョン・マーシャルの八分の六拍子のビートがサウンドのイメージにあったとのこと(ところで、ブックレットのインタビューの記載では1971年となっていましたが、同作が録音されたのは1972年5月2日です)。「ようやく本当に自分が思い描くものになった」と語られていた「真組曲 源平討魔伝」は、さまざまなライヴやレコーディングに参加されている竹井誠氏の尺八と、大友良英氏(中潟氏とは高校のJAZZ研の同期だったそうです)のノイズギターもゲストで加わっての、15分以上に渡る圧巻のアレンジ。


Live in Paris
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 個人的な妄想をいささか広げる形になりますが、「エンディング」はKING CRIMSONも意識されているのではないかとずっと思っています。「混乱こそ我が墓碑銘となるだろう(Confusion will be My Epitaph)」「星ひとつなき聖なる暗黒(Starless and Bible Black)」といった詞が、ゲームのエンディングにおける「神様は死んだ 悪魔は去った 太古より巣食いし 狂える地虫の嬌声も 今は、はるか 郷愁の彼向へと消え去り 盛衰の於母影を ただ君の 切々たる胸中深くに 残すのみ 神も悪魔も降立たぬ荒野に我々はいる」のメッセージと共鳴しているような気がしてならないのです。「Epitaph」を歌ったグレッグ・レイクも、「Starless」を歌ったジョン・ウェットンもこの世を去り、諸行無常を痛感する次第ですが、復活を果たしたアクアポリスのこれからの活動にさらなる期待をしたいと思います。

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 最後に、アクアポリスのプロフィールについて、三年半前に書いたこちらの内容を改訂する形で以下に記しておきたいと思います。

【参考文献】
ヌメロ・ウエノ『ヒストリー・オブ・ジャップス・プログレッシヴ・ロック』(1994年/マーキー・ムーン刊)
剛田武『地下音楽への招待』(2016年/ロフトブックス刊)


 1980年の夏、早稲田大学のプログレッシヴ・ロック・サークル「イオロス」内で結成されたブリティッシュ・プログレ系のコピーバンドが母体となり誕生したアクアポリスは、同年12月に越谷のイベントでライヴデビューを果たし、1981年からは吉祥寺シルバーエレファントを拠点にライヴ活動を行うようになります。当時はアウターリミッツやKENSOとも共演していたとのこと。


《1980年》
中潟憲雄(keyboard)
桑原聡(bass)
渡辺幸一(guitar)
竹迫一郎(drums)






 当初はYESやKING CRIMSON、BRUFORDのレパートリーを演奏していたそうですが、次第にオリジナル曲の演奏も行うようになり、1981年8月にはバンドの代表曲であり、16分を超える大曲「アクアポリス組曲」がスタジオ録音されます。同曲は1994年にマーキー/ベル・アンティークからリリースされたオムニバスアルバム『伝説の彼方~東京シンフォニック・シンドローム』に収録(ちなみに、本CDには菅野詩朗氏が80年代に在籍していたバンド「GREEN」の楽曲も収録されています)。シンフォニックな広がりを持ったシンセサイザー・アレンジの上を、軽やかなバンドアンサンブルがテクニカルに押していく力作です。1982年からはラインナップが不安定になり、特にドラムスの入れ替わりが頻繁にあったもよう。


《1982年》
中潟憲雄(keyboard)
伴田宏(bass)from KALEIDOSCOPE
浜田龍美(guitar)
川上達朗(drums)
高橋直哉(drums)from 新月

《1982年7月~1983年4月》
中潟憲雄(keyboard)
桜井良行(bass)from HAL
浜田龍美(guitar)
竹迫一郎(drums)






 そして、1983年4月に発行された《マーキームーン》誌第12号の付録ソノシート(MM-0008)に、プログレッシヴ・フュージョン寄りの楽曲「El Dorado」が収録され、1985年8月には、モノリスコミュニケーションからリリースされた三枚組オムニバス『Progressives' Battle From East/West』(MN-14001~14003)に、よりシンセサイザーを前面に押し出した、三部構成の情緒的なシンフォニック曲「ノルウェーの印象 (夜明け・オスロの午後・白夜)」が収録されます。ちなみに1985年は、中潟氏がナムコで『モトス』『バラデューク』の楽曲を手がけられた年でもあります。






《1987年》
中潟憲雄(keyboard)
桜井良行(bass)
三苫裕文(guitar)
竹迫一郎(drums)


 1987年7月には、アラン・ホールズワースからの強い影響下にある三苫裕文氏にギターがチェンジするものの、中潟氏の仕事が忙しくなったため、その後しばらくしてバンドは活動を休止することになります。メンバーの竹迫氏と三苫氏はこの後、ジャズ・ロック・バンド「NOA」を結成して活動を展開(三苫氏はさらにその後プログレッシヴ・ロック・バンド「MONGOL」にも参加されています)。NOAは1996年以降、活動が途絶えていましたが(2007年に亡くなられたメンバーの飯嶋氏の追悼ライヴのため、2008年4月に一時的に再編)、2016年8月に本格的に再始動しています。現在のラインナップには桜井良行氏と、作編曲家であり、PRISMの現キーボーディストでもある渡部チェル氏が加わっております。

http://www.pjr-noa.com/






《2017年『源平討魔伝~三拾周年記念音盤~』》
中潟憲雄(keyboard)
桜井良行(bass)
三苫裕文(guitar)
菅野詩郎(drums)from KBB


 2017年2月25日に行われた「東京ゲーム音楽ショー2017」において、アクアポリスの約30年ぶりのライヴが行われ、歴代メンバー+αによる、新曲も交えたパフォーマンスが展開されました。そして8月19日には「VGM SPARK -STAGE1-【源平討魔伝・激奏禄】」にて、二度目のライヴが行われます。





東京ゲーム音楽ショー2017: 中潟憲雄氏LIVE、菊田裕樹氏LIVE 覚え書き

2017年8月7日月曜日

「キノの旅」イメージアルバム『キノなカノン~ゆっくりでアップテンポでなめらかな曲~』(2003)



 シリーズ第一作が刊行されて17年目を迎える『キノの旅 -the Beautiful World-』。今年に入ってコミカライズ企画が始動し、単行本第一巻が7月に刊行。さらに二度目のアニメ化(テレビシリーズ)も決定し、10月に放送が開始となります。旧テレビシリーズの最終話に登場したヒロインのCVを担当された悠木碧さん(この回が彼女の声優デビューとなりました)が、新テレビシリーズでキノ役を務めるというのも感慨深いものがあります(ちなみに、2016年の電撃文庫&ニコニコ動画のラジオドラマ企画で彼女はすでにキノを演じておりました)。


http://www.kinonotabi-anime.com/
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 改めて思ったのは、2003年の4月から7月にかけてWOWOWで全13話が放送された旧テレビシリーズでは音楽面での関連CDがかなり少なかったなということでした。そもそもアニメ本編は音響効果としての演出はあれど劇伴音楽はなかったためサウンドトラックCDそのものが出ておらず、また、ドラマCDも2002年に一枚しか出ていませんでした。同じ電撃文庫作品であり、その少し前にアニメ化した『ブギーポップは笑わない』は三枚の企画アルバムが出ていたことを考えると、なおのこと対照的に思えます。



キノの旅-the Beautiful World-  -記憶の国 Their Memories-(CD付き) (電撃文庫ビジュアルノベル)
時雨沢 恵一
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 今回ご紹介する『キノなカノン』は、2003年12月に刊行された同作のビジュアルノベル第一弾『「記憶の国」-Their Memories-』に付属した音楽CDであり、『キノの旅』の現時点で唯一の公式イメージアルバムです。「パッヘルベルのカノン」のヴォーカルアレンジや、アニメ版エンディングテーマ「the Beautiful World」をふくめ全8曲を収録しており、作編曲・演奏は、アニメ「仙界伝 封神演義」(1999)や「妖しのセレス」(2000)などの劇伴を手掛けられた酒井良氏が担当。シンセサイザー多重録音によるアンビエントで無国籍風のインストゥルメンタルを中心にした「静のイメージ」で一貫して構成されています。「the Beautiful World」は、弦楽四重奏をバックに前田愛さんがやわらかに歌いあげるファンタジックなナンバーとして、今なお色あせぬ名曲です。また、「東の城門」「人々」には、「the Beautiful World」のメロディラインやストリングスが組み込まれているというちょっとした趣向もあり、ストーリーアルバムとしても、コンセプトアルバムとしても統一感のある仕上がりになっています。10年以上前に出た特殊な判型のCD付き書籍のため、今では古書店で見かけることもあまりなくなりましたが、ぜひともオススメしたいアイテムです。





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『キノなカノン~ゆっくりでアップテンポでなめらかな曲~』
[DMCG-30311|2003.12.25|メディアワークス]

01. 東の城門
02. 人々
03. 祈り
04. 祭り
05. 夜と朝
06. くりかえす (「パッヘルベルのカノン」より)
07. 西の城門
08. the Beautiful World


《STAFF》
作詞:村井さだゆき(M-06)
作曲:酒井良(except M-06)
編曲:酒井良


「the Beautiful World」
歌:前田愛
作詞:時雨沢恵一
補作詞:わたなべもも
作編曲 & synthesizer & programming:酒井良

NAOTO、伊能修(vl)
三木章子(vla)
大沢真人(vc)




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 以下、補足としての情報を。下川みくにさんが歌うオープニングテーマ「all the way」(作詞:何茶李/作編曲:Sin)と、前述の「the Beautiful World」のシングルは共に2003年6月にリリース。2005年2月に上映された劇場版第一作「何かをするために -life goes on.-」のエンディングテーマ「はじまりの日」(作詞:わたなべもも/作編曲:酒井良)は、同年3月にリリースされた前田さんのミニアルバム『night fly』のB面に収録されています。また、2007年4月に《電撃文庫ムービーフェスティバル》の一環として上映された劇場版第二作「病気の国 -For You-」のエンディングテーマ「Bird」(作詞・作曲:下川みくに/編曲:Sin)のシングルは同年3月にリリースされました。



all the way (「キノの旅」 OPテーマ)
下川みくに
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the Beautiful World (「キノの旅」 EDテーマ)
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night fly
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Bird(初回限定盤)(DVD付)
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 2003年3月にリリースされた『キノの旅 -the Beautiful World- サウンドコレクション』は、同年7月にメディアワークスからリリースされたPS2版ソフトのサントラ。作編曲は石井吉幸氏と加藤恒太氏の二人で、主題歌「セカイハカガヤク」のヴォーカルは霜月はるかさん。2005年に彼女のベストアルバム『あしあとリズム~Haruka Shimotsuki works best~』に収録されています。



キノの旅-the Beautiful World- サウンドコレクション
サウンドトラック
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あしあとリズム ~Haruka Shimotsuki works best~
霜月はるか
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 二次創作作品では、2002年にサークル「LITTLE WING」から、MANYOさんの作編曲、園田まひるさんのヴォーカルによる10曲入りイメージアルバム『REVERIE -サウンドスケッチ "キノの旅"』が制作されています。







2017年8月6日日曜日

マイリトルポニー第一世代のイタリア版イメージソングEP ― Marco Lamioni「Ponymusical」(1985)





 ずっと気になっていた「Ponymusical」を少し前に入手することが叶いました。1985年にイタリアでリリースされた、マイリトルポニーの「四曲入りEP」です。現在のマイリトルポニーは第四世代ですが、本作は第一世代。かつ、1985年ということはアメリカでテレビスペシャルの二本目「Escape from Catrina」が放送されたころであり、テレビシリーズ第一作目や劇場版第一作が放送される前です。アメリカの子供向けレコード専門レーベルである「Kid Stuff Records」からレコード/カセットでオーディオブックが出ていましたが、それとは別に、イギリスとイタリアではキャラソンを収録した企画EPが制作されました(イギリス版については後述)。イタリア版EPは、MONDO CANDIDOなどのプロデューサーであり、ヘクトール・ザズーともコラボレーション歴のあるマルコ・ラミオーニが手がけたというちょっとしたシロモノ。盤面は白と黒の二種類のプレスがあったようです。男女ヴォーカルによる、ドリーミーでソフトなポップソングが収められています。




『Ponymusical: Storie E Musiche Dall'Arcobaleno Dei Miominipony』

【Side A】

01. La Canzone Dei Miominipony
02. La Canzone Del Re Triste


【Side B】

03. La Canzone Della Zia Sirena
04. La Canzone Della Felicita





 マルコ・ラミオーニ(Marco Lamioni)は1970年代中期にINSIEMEというジャズ・ロック・バンドにギタリストとして在籍。その後、同バンドのベーシストだったニコラ・ベルヌッキオと共にフォーク・ロック・バンド CARTACANTAに在籍し、1980年にバンド唯一のアルバム『Il Tempo Delle Ciliegie』を発表しています。その後はソングライターやプロデューサーとして活動を続け、著名なところではボッサ/ラウンジ系グループのMONDO CANDIDOやGAZZARA(フランチェスコ・ガッザーラ)との仕事があります。ソロとしてもラウンジ・ポップのフィールドを中心に活動を展開し、2003年にソロアルバム『Slow』をリリース。他方では、1999年にフランク・ザッパ トリビュートアルバム『frank you, thank!』の第一弾に"peaches en regalia"のカヴァーを提供しているほか、ヘクトール・ザズーの2004年作『L'Absence』にゲスト参加などもしています。



Slow
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Marco Lamioni
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L'absence
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 ちなみに、二年後の1987年にはTillyやクリスティーナ・ダヴェーナによるイタリア語歌唱のテーマソングシングルがリリースされています。クリスティーナ嬢はイタリアにおけるアニメソングの女王であり、爆発的人気を博したイタリア実写ドラマリメイク版「愛してナイト」の劇中曲を歌っているのも彼女です。






【イギリス版EPについて】




 同じく1985年にイギリスではピクチャーディスク仕様のキャラソンEPが制作されていたのですが、こちらはポニーの玩具についている応募券を郵便為替とあわせて送ることで入手できたというノベルティアイテムだったようです(後にカセットテープでも出たとのこと)。全8曲。「マイリトルポニーのテーマ」「同 リプライズ」のほか、「アップルジャック」「バウ・タイ」「リケティ・スプリット」「ポージー」「チェリーズ・ジュビリー」「トッツィー」の6匹のポニーのキャラソンを収録しています。下記のサイト「Etherella.com」「The My Little Pony Scrapbook」に非常に詳しい情報が載っています。

http://www.etherella.com/scrapbook2/1985media.htm
http://www.etherella.com/scrapbook2/advert_pd.html



2017年8月5日土曜日

イギリス放送版パペットムーミンのサイケなサウンドが30年を経てサントラ化 ― Graeme Miller & Steve Shill『The Moomins』




 トーベ・ヤンソンが監修に参加し、ポーランドのアニメーションスタジオ「Se-ma-for」とオーストリアの「Jupiter Film」の共同で制作された、一話9分構成によるムーミンのストップモーション・パペットアニメは、ポーランド、オーストリア、ドイツの三ヶ国で1977年から1982年にかけて放送されました。日本では、1990年に全6シーズン78話が、1969年/1972年版アニメでムーミンを演じた岸田今日子の吹き替えでNHK BS2にて放送。2003年7月にはそのうちの36話分が日替わりで劇場公開され、2004年7月にDVD BOXがリリース。2012年3月には、松たか子、段田安則が吹き替えした50話分のエピソードがNHK BSプレミアムにて放送され、2013年6月にDVD BOXがリリース。2008年、2010年にはそれらのリメイク&再編集劇場版「ムーミン谷の夏まつり」 「ムーミン谷の彗星」が制作され、2009年、2015年にそれぞれ日本公開されています。そして今年12月には、劇場版第三作となる「ムーミン谷とウィンターワンダーランド」が日本でも公開予定です。また、チェコスロバキア生まれの作曲家/サックス奏者 エヴジェン・イリーン(Eugen Illin)と、ポーランド生まれのアンドレイ・リキッキ(Andrzej Rokicki)が手がけた劇伴は、日本では2003年にランブリングレコーズから三枚に分けてサントラCDでリリースされています。

Opowiadania Muminkow - IMDb

http://www.fuzzyfeltmoomins.co.uk/index.html






 前置きが長くなりましたが、今回クローズアップするのはイギリス放送版。イギリスでは1983年ごろより一話5分構成・全100話の形に編集されて放送され、俳優のリチャード・マードックがナレーションを務めたほか、グレアム・ミラースティーヴ・シルによるオリジナル劇伴に差し替えられています。放送当時はオフィシャルな形で音源化されることはありませんでしたが、2015年のレコード・ストア・デイに、イギリスの再発レーベル「Finders Keepers」からメインテーマが7インチシングル/ダウンロードの形でシングルカットされ、翌2016年には、レコード、CD、ダウンロードの形でサウンドトラックと、クリスマスシングル「The Moomins: Silent Night」が世に出ることとなりました。コレクターのツボをくすぐる発掘音源のリリースに定評のあるレーベルが、また一つイイ仕事をしたのです。






 グレアム・ミラースティーヴ・シルの二人の若者の共同作業によって自宅でつくりあげられたサウンドは一言で言うと「かなり節操がない」もので、アコースティック、サイケ、ニューエイジ、ポストパンク、ローファイテクノが無邪気に入り混じった、素朴なようで複雑な味わい。The Quietusが今年2月にグレアムに行ったインタビューによると、クラフトワークやブライアン・イーノ、ギャヴィン・ブライアーズ、そして「リーズ市立図書館のコレクション」などから影響を受けていて、さらにあらゆるインプットを無差別にとり込んで再加工するという「技術としてだけではなく、アイデアとしてのサンプリング」でスコアが生み出されていったとのこと。


「INTERVIEW: The Moomins Composer Graeme Miller」
(from The Quietus|2017.02.15)


 グレアムはその後、コンポーザーのみならず、より広範的なアーティストとしても活動を展開しております。また、今年の7月7日~9日には、イギリスで開催された「ブルードットフェスティバル」において、「ムーミン谷の彗星」の1983年版を、「Live Rescore」した形で放映したとのこと。また、スティーヴ・シルは80年代後半よりテレビプロデューサーとして活躍しており、テレビドラマ「デクスター~警察官は殺人鬼~」や「シカゴ・ファイア」「THE FLASH/フラッシュ」など数々の作品に携わり、2010年には「デクスター~警察官は殺人鬼~」でエミー賞監督賞を受賞しています。

2017年8月2日水曜日

リリース情報・備忘録 2017年7月