2017年7月31日月曜日

80年代インドネシアの知られざるプログレッシヴ・ポップ・バンド ― WOW!『Produk Hijau』(1983)

 イタリアのプログレッシヴ・ロック・レーベルであるMELLOW RECORDSはbandcampアカウントで過去のカタログや発掘音源などを定期的にアップしています。インドネシアものではDISCUSの2003年発表の1stアルバム『Tot Licht!』や、異才シンガーソングライター ハリー・ルスリの1977年発表の二部構成のロックオペラアルバム『Ken Arok』があるのですが、ジャカルタで1983年に結成されたロックバンド ワオ!が同年に発表したデビューアルバムは、まさに掘り出しもの。90年代初頭に解散を迎えるまで四作のアルバムをカセットテープで発表しています。




 メンバーは、EL&PなどのフォロワーバンドだったABBHAMAの元メンバーであるイワン・マジド(ヴォーカル/キーボード)とダーウィン・B・ラックマン(ベース)の二人に、当時すでにいくつかのバンドを渡り歩き、ソロでも数枚のアルバムを発表するという多忙ぶりであったFariz RMことファリス・ロスタム・ムナフ(ドラムス)を加えた三人。一曲目の"Dibalik Kemerdekaan"は二部構成、14分近い大曲ですが、一貫してフレッシュなポップサウンドを聴かせており、やりたいことをやりつつ、ヒットチャートとも折り合いをつけようという欲張りなスタンスがみなぎっています。その後も、しっとりとしたピアノ・バラードを配しつつ、プログレッシヴ・ロック/AORな味付けもしっかりした明快な歌ものアルバムというカラーは崩しません。ブリティッシュ・ポップやプログレ、とくに中期のGENESISへの傾倒は如実にうかがえるのですが、イントロからモロに"Firth of Fifth"な4曲目の"Armagedon"はその最たる一曲。国は違えど、同時期にアルバムデビューを果たしたアルゼンチンの良バンド PABLO EL ENTERRADORと同じ根っことベクトルを持っているという印象もあります。


 このあと、ムシャ・ヨーノース(ギタリスト)、イカル・インドラ(ドラムス)という二人のメンバーを迎えながら、1985年に2ndアルバム『Produk Jingga』、1990年に3rdアルバム『Rasio & Misteri』、1991年にラストアルバム『Lupus IV』(1990年公開の映画「Anak Mami Sudah Besar」のサウンドトラックでもあります)をリリース。アルバムを重ねるごとにプログレッシヴ・ポップ色は減退し、よりストレートでコンパクトなAORにシフトしています。また、イワンは1986年、1988年に二枚のソロアルバムをリリースしたほか、ロックバンド Cynomadeusのメンバーとして90年代初頭ごろまで音楽活動を継続。その後は音楽活動にカムバックすることなく(どうやら長らく服役をしていたとのこと)、2014年に57歳でこの世を去っています。ファリスはFariz RMとしてポップミュージック界で大成し、現在も精力的に活動を続けています。


■WOW! — Rateyourmusic



「Yess Records:インドネシアのブートレグカセットレーベル」
(Red Bull Music Academy Japan)


70年代中盤から80年代後半にかけてのインドネシアは英米のバンドの海賊盤カセットテープがYess Recordsなどのショップを通じて数多く流通しており、少なからずシーン形成にも影響をもたらしていたとのこと。


「インドネシアのプログレ事情 改定ダイジェスト版」【前編】 【後編】
 (蝸牛の神託 蝸牛のゴタク)

ジェット尻氏による上記記事は、インドネシアン・プログレシーンを知るには欠かせない、必見の内容です。

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