2017年8月17日木曜日

ボトムズシリーズの作曲家が、ボトムズ以前に手がけたジャズ・ロックアルバム、本邦初CD化 ― 乾裕樹 & TAO『砂丘』(1979)

砂丘
砂丘
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Hiroki Inui & TAO
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 2017年はカシオペアが結成40周年、PRISMと松岡直也のアルバムデビュー40周年ということで、ワーナーミュージックが国内フュージョンの廉価盤再発キャンペーン「J-FUSION 40th ANNIVERSARY SHM-CD COLLECTION 1300」を4月から7月にかけて四か月連続で展開しておりました。その第四弾にはヴァイオリニストの篠崎正嗣氏の『NASA=MASA』(1980)や、四人囃子の元キーボーディスト 茂木由多加氏の1980年の『フライトインフォメーション』(1980)などの初CD化作品がラインナップされております。この『砂丘』も本邦初CD化タイトルの一つ。70年代に『Sony Sound Adventure』『Space Fantasy』などのシンセサイザーのデモンストレーションアルバムに参加し、80年代にフュージョンバンドのカリオカに加入。EPOや谷山浩子などの編曲や、アニメ『まいっちんぐマチコ先生』『装甲騎兵ボトムズ』『蒼き流星SPTレイズナー』などの主題歌や劇伴を手がけたキーボーディスト/作編曲家の故・乾裕樹氏が、「TAO」との連名名義で1979年に発表したアルバムです。

 このTAO、ワーナーのサイトやCDの帯のインフォメーションには「『銀河漂流バイファム』を手掛けるTAO~」とあり、その記述をうっかり信じてしまったのですが、調べてみるとそのTAOとはまったく別であることがわかりました。……というのも、1983年に『銀河漂流バイファム』の主題歌「HELLO, VIFAM」「NEVER GIVE UP」を手がけたヴァイオリン・ロック・バンド TAOが結成されたのは70年代ではあるのですが、デヴィッド・マン、関根安里、岡野治雄、野澤竜郎の四人のメンバーの名前は本作のクレジットのどこにもありません。本作の演奏者にはシュガー・ベイブやバイバイ・セッション・バンドの上原裕(drums)、鈴木茂&ハックルバックの田中章弘(bass)、パラシュートの今剛(guitar)、そして本田俊之(sax)、村上秀一(drums)、佐藤正美(acoustic guitar)、ペッカー(percussion)、ヴァイオリン奏者、チェロ奏者などがクレジットされています。このTAOというのは、あくまでゲストミュージシャンも含めてのレコーディングバンドに便宜的につけられたものだったのでしょう。ワーナー側からはこの情報的な大ポカに対して今のところ特に何もアナウンスがないのですが、誤認させたままでは色々とマズいのではないでしょうか……。

 ともあれ、アルバムの内容はまことに素晴らしいの一言。ドビュッシーの「En Bateau(小舟にて)」のアレンジや、ピアノ&シンセサイザーによる透明感あふれる小品「砂丘」も含めた六曲の楽曲は、エキゾチックなムードをたたえたインストゥルメンタルの傑作です。カリオカのスムース・ジャズのテイストにももちろん通じますし、プログレッシヴなジャズ・ロックとしてもスリリングに仕上がっています。シンセサイザープログラミングに松武秀樹氏のクレジットが確認できるところもポイントでしょう。『Space Fantasy』(1978)収録の「エンジェルダスト」(「カンツォネッタ」原曲)や、カリオカの『DUSK』(1983)収録の「Never Ending」(「いつもあなたが」原曲)など、乾氏が別のところで手がけた楽曲がボトムズの楽曲としてリメイクされることがあるのですが、本作の一曲目「Solar Plexus」もそのケースに当てはまります。同曲は、ボトムズの「クメン編」の劇伴「Jungle Ride」の原曲でもあります。廉価盤とはいうものの、完全限定盤ゆえ、再プレスの可能性はほぼないといっていいでしょう。最低野郎はこの再発の機を逃さないように。

2017年8月13日日曜日

源平討魔伝の30年、そしてアクアポリスの再始動――『源平討魔伝~参拾周年記念音盤~』(2017)

源平討魔伝~参拾周年記念音盤~
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 感激のリリースでありました。アーケード版とファミコン版の音源、ナムコミュージアムVOL.4のゲームルームBGM、高橋弘太氏、細江慎治氏、増渕裕二氏による各アレンジヴァージョン、1988年7月27日に聖蹟桜ヶ丘で行われた、TBSのラジオ番組「ラジオはアメリカン」のイベントで演奏された「組曲 源平討魔伝」「ラストテーマ・ニューバージョン」の音源の再収録。そして、再結成を果たした中潟憲雄氏率いるプログレッシヴ・ロック・バンド アクアポリスによる新録アレンジメドレー「真組曲 源平討魔伝」が収録されたCDに、源平プロジェクトが撮影した実写版、雨宮慶太氏の演出によるプロモーション版映像が収録されたDVDがセットになったまさにスペシャルアイテム。(なお、PCエンジン版「源平討魔伝」「源平討魔伝 巻ノ弐」のBGMはクラリスディスクより2014年にリリースされた『HuCARD Disc In BANDAI NAMCO Games Vol.2』に収録されていることもあり、未収録です)。ブックレットも充実しており、先ごろ刊行された《GAMEgene》第三号のインタビューと併せることで永久保存版といえるものになっています。



GAMEgene Vol.3
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 中潟氏が中期SOFT MACHINE、ジョン・マーシャルがお好きだったというのは初耳でした。1972年のライヴアルバム『Live in Paris』の一曲目"Plain Tiffs"におけるジョン・マーシャルの八分の六拍子のビートがサウンドのイメージにあったとのこと(ところで、ブックレットのインタビューの記載では1971年となっていましたが、同作が録音されたのは1972年5月2日です)。「ようやく本当に自分が思い描くものになった」と語られていた「真組曲 源平討魔伝」は、さまざまなライヴやレコーディングに参加されている竹井誠氏の尺八と、大友良英氏(中潟氏とは高校のJAZZ研の同期だったそうです)のノイズギターもゲストで加わっての、15分以上に渡る圧巻のアレンジ。


Live in Paris
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 個人的な妄想をいささか広げる形になりますが、「エンディング」はKING CRIMSONも意識されているのではないかとずっと思っています。「混乱こそ我が墓碑銘となるだろう(Confusion will be My Epitaph)」「星ひとつなき聖なる暗黒(Starless and Bible Black)」といった詞が、ゲームのエンディングにおける「神様は死んだ 悪魔は去った 太古より巣食いし 狂える地虫の嬌声も 今は、はるか 郷愁の彼向へと消え去り 盛衰の於母影を ただ君の 切々たる胸中深くに 残すのみ 神も悪魔も降立たぬ荒野に我々はいる」のメッセージと共鳴しているような気がしてならないのです。「Epitaph」を歌ったグレッグ・レイクも、「Starless」を歌ったジョン・ウェットンもこの世を去り、諸行無常を痛感する次第ですが、復活を果たしたアクアポリスのこれからの活動にさらなる期待をしたいと思います。

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 最後に、アクアポリスのプロフィールについて、三年半前に書いたこちらの内容を改訂する形で以下に記しておきたいと思います。

【参考文献】
ヌメロ・ウエノ『ヒストリー・オブ・ジャップス・プログレッシヴ・ロック』(1994年/マーキー・ムーン刊)
剛田武『地下音楽への招待』(2016年/ロフトブックス刊)


 1980年の夏、早稲田大学のプログレッシヴ・ロック・サークル「イオロス」内で結成されたブリティッシュ・プログレ系のコピーバンドが母体となり誕生したアクアポリスは、同年12月に越谷のイベントでライヴデビューを果たし、1981年からは吉祥寺シルバーエレファントを拠点にライヴ活動を行うようになります。当時はアウターリミッツやKENSOとも共演していたとのこと。


《1980年》
中潟憲雄(keyboard)
桑原聡(bass)
渡辺幸一(guitar)
竹迫一郎(drums)






 当初はYESやKING CRIMSON、BRUFORDのレパートリーを演奏していたそうですが、次第にオリジナル曲の演奏も行うようになり、1981年8月にはバンドの代表曲であり、16分を超える大曲「アクアポリス組曲」がスタジオ録音されます。同曲は1994年にマーキー/ベル・アンティークからリリースされたオムニバスアルバム『伝説の彼方~東京シンフォニック・シンドローム』に収録(ちなみに、本CDには菅野詩朗氏が80年代に在籍していたバンド「GREEN」の楽曲も収録されています)。シンフォニックな広がりを持ったシンセサイザー・アレンジの上を、軽やかなバンドアンサンブルがテクニカルに押していく力作です。1982年からはラインナップが不安定になり、特にドラムスの入れ替わりが頻繁にあったもよう。


《1982年》
中潟憲雄(keyboard)
伴田宏(bass)from KALEIDOSCOPE
浜田龍美(guitar)
川上達朗(drums)
高橋直哉(drums)from 新月

《1982年7月~1983年4月》
中潟憲雄(keyboard)
桜井良行(bass)from HAL
浜田龍美(guitar)
竹迫一郎(drums)






 そして、1983年4月に発行された《マーキームーン》誌第12号の付録ソノシート(MM-0008)に、プログレッシヴ・フュージョン寄りの楽曲「El Dorado」が収録され、1985年8月には、モノリスコミュニケーションからリリースされた三枚組オムニバス『Progressives' Battle From East/West』(MN-14001~14003)に、よりシンセサイザーを前面に押し出した、三部構成の情緒的なシンフォニック曲「ノルウェーの印象 (夜明け・オスロの午後・白夜)」が収録されます。ちなみに1985年は、中潟氏がナムコで『モトス』『バラデューク』の楽曲を手がけられた年でもあります。






《1987年》
中潟憲雄(keyboard)
桜井良行(bass)
三苫裕文(guitar)
竹迫一郎(drums)


 1987年7月には、アラン・ホールズワースからの強い影響下にある三苫裕文氏にギターがチェンジするものの、中潟氏の仕事が忙しくなったため、その後しばらくしてバンドは活動を休止することになります。メンバーの竹迫氏と三苫氏はこの後、ジャズ・ロック・バンド「NOA」を結成して活動を展開(三苫氏はさらにその後プログレッシヴ・ロック・バンド「MONGOL」にも参加されています)。NOAは1996年以降、活動が途絶えていましたが(2007年に亡くなられたメンバーの飯嶋氏の追悼ライヴのため、2008年4月に一時的に再編)、2016年8月に本格的に再始動しています。現在のラインナップには桜井良行氏と、作編曲家であり、PRISMの現キーボーディストでもある渡部チェル氏が加わっております。

http://www.pjr-noa.com/






《2017年『源平討魔伝~三拾周年記念音盤~』》
中潟憲雄(keyboard)
桜井良行(bass)
三苫裕文(guitar)
菅野詩郎(drums)from KBB


 2017年2月25日に行われた「東京ゲーム音楽ショー2017」において、アクアポリスの約30年ぶりのライヴが行われ、歴代メンバー+αによる、新曲も交えたパフォーマンスが展開されました。そして8月19日には「VGM SPARK -STAGE1-【源平討魔伝・激奏禄】」にて、二度目のライヴが行われます。





東京ゲーム音楽ショー2017: 中潟憲雄氏LIVE、菊田裕樹氏LIVE 覚え書き

2017年8月7日月曜日

「キノの旅」イメージアルバム『キノなカノン~ゆっくりでアップテンポでなめらかな曲~』(2003)



 シリーズ第一作が刊行されて17年目を迎える『キノの旅 -the Beautiful World-』。今年に入ってコミカライズ企画が始動し、単行本第一巻が7月に刊行。さらに二度目のアニメ化(テレビシリーズ)も決定し、10月に放送が開始となります。旧テレビシリーズの最終話に登場したヒロインのCVを担当された悠木碧さん(この回が彼女の声優デビューとなりました)が、新テレビシリーズでキノ役を務めるというのも感慨深いものがあります(ちなみに、2016年の電撃文庫&ニコニコ動画のラジオドラマ企画で彼女はすでにキノを演じておりました)。


http://www.kinonotabi-anime.com/
http://kinonotabi.com


 改めて思ったのは、2003年の4月から7月にかけてWOWOWで全13話が放送された旧テレビシリーズでは音楽面での関連CDがかなり少なかったなということでした。そもそもアニメ本編は音響効果としての演出はあれど劇伴音楽はなかったためサウンドトラックCDそのものが出ておらず、また、ドラマCDも2002年に一枚しか出ていませんでした。同じ電撃文庫作品であり、その少し前にアニメ化した『ブギーポップは笑わない』は三枚の企画アルバムが出ていたことを考えると、なおのこと対照的に思えます。



キノの旅-the Beautiful World-  -記憶の国 Their Memories-(CD付き) (電撃文庫ビジュアルノベル)
時雨沢 恵一
メディアワークス
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 今回ご紹介する『キノなカノン』は、2003年12月に刊行された同作のビジュアルノベル第一弾『「記憶の国」-Their Memories-』に付属した音楽CDであり、『キノの旅』の現時点で唯一の公式イメージアルバムです。「パッヘルベルのカノン」のヴォーカルアレンジや、アニメ版エンディングテーマ「the Beautiful World」をふくめ全8曲を収録しており、作編曲・演奏は、アニメ「仙界伝 封神演義」(1999)や「妖しのセレス」(2000)などの劇伴を手掛けられた酒井良氏が担当。シンセサイザー多重録音によるアンビエントで無国籍風のインストゥルメンタルを中心にした「静のイメージ」で一貫して構成されています。「the Beautiful World」は、弦楽四重奏をバックに前田愛さんがやわらかに歌いあげるファンタジックなナンバーとして、今なお色あせぬ名曲です。また、「東の城門」「人々」には、「the Beautiful World」のメロディラインやストリングスが組み込まれているというちょっとした趣向もあり、ストーリーアルバムとしても、コンセプトアルバムとしても統一感のある仕上がりになっています。10年以上前に出た特殊な判型のCD付き書籍のため、今では古書店で見かけることもあまりなくなりましたが、ぜひともオススメしたいアイテムです。





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『キノなカノン~ゆっくりでアップテンポでなめらかな曲~』
[DMCG-30311|2003.12.25|メディアワークス]

01. 東の城門
02. 人々
03. 祈り
04. 祭り
05. 夜と朝
06. くりかえす (「パッヘルベルのカノン」より)
07. 西の城門
08. the Beautiful World


《STAFF》
作詞:村井さだゆき(M-06)
作曲:酒井良(except M-06)
編曲:酒井良


「the Beautiful World」
歌:前田愛
作詞:時雨沢恵一
補作詞:わたなべもも
作編曲 & synthesizer & programming:酒井良

NAOTO、伊能修(vl)
三木章子(vla)
大沢真人(vc)




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 以下、補足としての情報を。下川みくにさんが歌うオープニングテーマ「all the way」(作詞:何茶李/作編曲:Sin)と、前述の「the Beautiful World」のシングルは共に2003年6月にリリース。2005年2月に上映された劇場版第一作「何かをするために -life goes on.-」のエンディングテーマ「はじまりの日」(作詞:わたなべもも/作編曲:酒井良)は、同年3月にリリースされた前田さんのミニアルバム『night fly』のB面に収録されています。また、2007年4月に《電撃文庫ムービーフェスティバル》の一環として上映された劇場版第二作「病気の国 -For You-」のエンディングテーマ「Bird」(作詞・作曲:下川みくに/編曲:Sin)のシングルは同年3月にリリースされました。



all the way (「キノの旅」 OPテーマ)
下川みくに
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the Beautiful World (「キノの旅」 EDテーマ)
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night fly
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Bird(初回限定盤)(DVD付)
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 2003年3月にリリースされた『キノの旅 -the Beautiful World- サウンドコレクション』は、同年7月にメディアワークスからリリースされたPS2版ソフトのサントラ。作編曲は石井吉幸氏と加藤恒太氏の二人で、主題歌「セカイハカガヤク」のヴォーカルは霜月はるかさん。2005年に彼女のベストアルバム『あしあとリズム~Haruka Shimotsuki works best~』に収録されています。



キノの旅-the Beautiful World- サウンドコレクション
サウンドトラック
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あしあとリズム ~Haruka Shimotsuki works best~
霜月はるか
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 二次創作作品では、2002年にサークル「LITTLE WING」から、MANYOさんの作編曲、園田まひるさんのヴォーカルによる10曲入りイメージアルバム『REVERIE -サウンドスケッチ "キノの旅"』が制作されています。







2017年8月6日日曜日

マイリトルポニー第一世代のイタリア版イメージソングEP ― Marco Lamioni「Ponymusical」(1985)





 ずっと気になっていた「Ponymusical」を少し前に入手することが叶いました。1985年にイタリアでリリースされた、マイリトルポニーの「四曲入りEP」です。現在のマイリトルポニーは第四世代ですが、本作は第一世代。かつ、1985年ということはアメリカでテレビスペシャルの二本目「Escape from Catrina」が放送されたころであり、テレビシリーズ第一作目や劇場版第一作が放送される前です。アメリカの子供向けレコード専門レーベルである「Kid Stuff Records」からレコード/カセットでオーディオブックが出ていましたが、それとは別に、イギリスとイタリアではキャラソンを収録した企画EPが制作されました(イギリス版については後述)。イタリア版EPは、MONDO CANDIDOなどのプロデューサーであり、ヘクトール・ザズーともコラボレーション歴のあるマルコ・ラミオーニが手がけたというちょっとしたシロモノ。盤面は白と黒の二種類のプレスがあったようです。男女ヴォーカルによる、ドリーミーでソフトなポップソングが収められています。




『Ponymusical: Storie E Musiche Dall'Arcobaleno Dei Miominipony』

【Side A】

01. La Canzone Dei Miominipony
02. La Canzone Del Re Triste


【Side B】

03. La Canzone Della Zia Sirena
04. La Canzone Della Felicita





 マルコ・ラミオーニ(Marco Lamioni)は1970年代中期にINSIEMEというジャズ・ロック・バンドにギタリストとして在籍。その後、同バンドのベーシストだったニコラ・ベルヌッキオと共にフォーク・ロック・バンド CARTACANTAに在籍し、1980年にバンド唯一のアルバム『Il Tempo Delle Ciliegie』を発表しています。その後はソングライターやプロデューサーとして活動を続け、著名なところではボッサ/ラウンジ系グループのMONDO CANDIDOやGAZZARA(フランチェスコ・ガッザーラ)との仕事があります。ソロとしてもラウンジ・ポップのフィールドを中心に活動を展開し、2003年にソロアルバム『Slow』をリリース。他方では、1999年にフランク・ザッパ トリビュートアルバム『frank you, thank!』の第一弾に"peaches en regalia"のカヴァーを提供しているほか、ヘクトール・ザズーの2004年作『L'Absence』にゲスト参加などもしています。



Slow
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Marco Lamioni
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L'absence
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 ちなみに、二年後の1987年にはTillyやクリスティーナ・ダヴェーナによるイタリア語歌唱のテーマソングシングルがリリースされています。クリスティーナ嬢はイタリアにおけるアニメソングの女王であり、爆発的人気を博したイタリア実写ドラマリメイク版「愛してナイト」の劇中曲を歌っているのも彼女です。






【イギリス版EPについて】




 同じく1985年にイギリスではピクチャーディスク仕様のキャラソンEPが制作されていたのですが、こちらはポニーの玩具についている応募券を郵便為替とあわせて送ることで入手できたというノベルティアイテムだったようです(後にカセットテープでも出たとのこと)。全8曲。「マイリトルポニーのテーマ」「同 リプライズ」のほか、「アップルジャック」「バウ・タイ」「リケティ・スプリット」「ポージー」「チェリーズ・ジュビリー」「トッツィー」の6匹のポニーのキャラソンを収録しています。下記のサイト「Etherella.com」「The My Little Pony Scrapbook」に非常に詳しい情報が載っています。

http://www.etherella.com/scrapbook2/1985media.htm
http://www.etherella.com/scrapbook2/advert_pd.html



2017年8月5日土曜日

イギリス放送版パペットムーミンのサイケなサウンドが30年を経てサントラ化 ― Graeme Miller & Steve Shill『The Moomins』




 トーベ・ヤンソンが監修に参加し、ポーランドのアニメーションスタジオ「Se-ma-for」とオーストリアの「Jupiter Film」の共同で制作された、一話9分構成によるムーミンのストップモーション・パペットアニメは、ポーランド、オーストリア、ドイツの三ヶ国で1977年から1982年にかけて放送されました。日本では、1990年に全6シーズン78話が、1969年/1972年版アニメでムーミンを演じた岸田今日子の吹き替えでNHK BS2にて放送。2003年7月にはそのうちの36話分が日替わりで劇場公開され、2004年7月にDVD BOXがリリース。2012年3月には、松たか子、段田安則が吹き替えした50話分のエピソードがNHK BSプレミアムにて放送され、2013年6月にDVD BOXがリリース。2008年、2010年にはそれらのリメイク&再編集劇場版「ムーミン谷の夏まつり」 「ムーミン谷の彗星」が制作され、2009年、2015年にそれぞれ日本公開されています。そして今年12月には、劇場版第三作となる「ムーミン谷とウィンターワンダーランド」が日本でも公開予定です。また、チェコスロバキア生まれの作曲家/サックス奏者 エヴジェン・イリーン(Eugen Illin)と、ポーランド生まれのアンドレイ・リキッキ(Andrzej Rokicki)が手がけた劇伴は、日本では2003年にランブリングレコーズから三枚に分けてサントラCDでリリースされています。

Opowiadania Muminkow - IMDb

http://www.fuzzyfeltmoomins.co.uk/index.html






 前置きが長くなりましたが、今回クローズアップするのはイギリス放送版。イギリスでは1983年ごろより一話5分構成・全100話の形に編集されて放送され、俳優のリチャード・マードックがナレーションを務めたほか、グレアム・ミラースティーヴ・シルによるオリジナル劇伴に差し替えられています。放送当時はオフィシャルな形で音源化されることはありませんでしたが、2015年のレコード・ストア・デイに、イギリスの再発レーベル「Finders Keepers」からメインテーマが7インチシングル/ダウンロードの形でシングルカットされ、翌2016年には、レコード、CD、ダウンロードの形でサウンドトラックと、クリスマスシングル「The Moomins: Silent Night」が世に出ることとなりました。コレクターのツボをくすぐる発掘音源のリリースに定評のあるレーベルが、また一つイイ仕事をしたのです。






 グレアム・ミラースティーヴ・シルの二人の若者の共同作業によって自宅でつくりあげられたサウンドは一言で言うと「かなり節操がない」もので、アコースティック、サイケ、ニューエイジ、ポストパンク、ローファイテクノが無邪気に入り混じった、素朴なようで複雑な味わい。The Quietusが今年2月にグレアムに行ったインタビューによると、クラフトワークやブライアン・イーノ、ギャヴィン・ブライアーズ、そして「リーズ市立図書館のコレクション」などから影響を受けていて、さらにあらゆるインプットを無差別にとり込んで再加工するという「技術としてだけではなく、アイデアとしてのサンプリング」でスコアが生み出されていったとのこと。


「INTERVIEW: The Moomins Composer Graeme Miller」
(from The Quietus|2017.02.15)


 グレアムはその後、コンポーザーのみならず、より広範的なアーティストとしても活動を展開しております。また、今年の7月7日~9日には、イギリスで開催された「ブルードットフェスティバル」において、「ムーミン谷の彗星」の1983年版を、「Live Rescore」した形で放映したとのこと。また、スティーヴ・シルは80年代後半よりテレビプロデューサーとして活躍しており、テレビドラマ「デクスター~警察官は殺人鬼~」や「シカゴ・ファイア」「THE FLASH/フラッシュ」など数々の作品に携わり、2010年には「デクスター~警察官は殺人鬼~」でエミー賞監督賞を受賞しています。

2017年8月2日水曜日

リリース情報・備忘録 2017年7月



























































2017年8月1日火曜日

ミステリマガジン2017年9月号「シャーロック・ホームズ & コリン・デクスター」特集にディスクガイドを寄稿いたしました




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 早川書房より7月25日に発売となりました、《ミステリマガジン》2017年9月号【特集:シャーロック・ホームズは永遠に】に、「ミステリDISC SIDE S(sherock)」 「ミステリDISC SIDE M(morse)」を寄稿いたしました。〈SHERLOCK〉と〈主任警部モース〉の主要なサウンドトラックについての各1ページコラム。どちらも人気シリーズだけに、CDのリリースにも事欠きません。ご参考になればさいわいです。









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《余談》













《過去記事》

ミステリマガジン2017年7月号特集「このミステリ・コミックが大好き」のコミックガイドに参加&コラムを寄稿いたしました

ミステリマガジン2017年5月号【北欧ミステリ特集】に「北欧ミステリDISC SIDE A&B」を寄稿いたしました

2017年7月31日月曜日

80年代インドネシアの知られざるプログレッシヴ・ポップ・バンド ― WOW!『Produk Hijau』(1983)

 イタリアのプログレッシヴ・ロック・レーベルであるMELLOW RECORDSはbandcampアカウントで過去のカタログや発掘音源などを定期的にアップしています。インドネシアものではDISCUSの2003年発表の1stアルバム『Tot Licht!』や、異才シンガーソングライター ハリー・ルスリの1977年発表の二部構成のロックオペラアルバム『Ken Arok』があるのですが、ジャカルタで1983年に結成されたロックバンド ワオ!が同年に発表したデビューアルバムは、まさに掘り出しもの。90年代初頭に解散を迎えるまで四作のアルバムをカセットテープで発表しています。




 メンバーは、EL&PなどのフォロワーバンドだったABBHAMAの元メンバーであるイワン・マジド(ヴォーカル/キーボード)とダーウィン・B・ラックマン(ベース)の二人に、当時すでにいくつかのバンドを渡り歩き、ソロでも数枚のアルバムを発表するという多忙ぶりであったFariz RMことファリス・ロスタム・ムナフ(ドラムス)を加えた三人。一曲目の"Dibalik Kemerdekaan"は二部構成、14分近い大曲ですが、一貫してフレッシュなポップサウンドを聴かせており、やりたいことをやりつつ、ヒットチャートとも折り合いをつけようという欲張りなスタンスがみなぎっています。その後も、しっとりとしたピアノ・バラードを配しつつ、プログレッシヴ・ロック/AORな味付けもしっかりした明快な歌ものアルバムというカラーは崩しません。ブリティッシュ・ポップやプログレ、とくに中期のGENESISへの傾倒は如実にうかがえるのですが、イントロからモロに"Firth of Fifth"な4曲目の"Armagedon"はその最たる一曲。国は違えど、同時期にアルバムデビューを果たしたアルゼンチンの良バンド PABLO EL ENTERRADORと同じ根っことベクトルを持っているという印象もあります。


 このあと、ムシャ・ヨーノース(ギタリスト)、イカル・インドラ(ドラムス)という二人のメンバーを迎えながら、1985年に2ndアルバム『Produk Jingga』、1990年に3rdアルバム『Rasio & Misteri』、1991年にラストアルバム『Lupus IV』(1990年公開の映画「Anak Mami Sudah Besar」のサウンドトラックでもあります)をリリース。アルバムを重ねるごとにプログレッシヴ・ポップ色は減退し、よりストレートでコンパクトなAORにシフトしています。また、イワンは1986年、1988年に二枚のソロアルバムをリリースしたほか、ロックバンド Cynomadeusのメンバーとして90年代初頭ごろまで音楽活動を継続。その後は音楽活動にカムバックすることなく(どうやら長らく服役をしていたとのこと)、2014年に57歳でこの世を去っています。ファリスはFariz RMとしてポップミュージック界で大成し、現在も精力的に活動を続けています。


■WOW! — Rateyourmusic



「Yess Records:インドネシアのブートレグカセットレーベル」
(Red Bull Music Academy Japan)


70年代中盤から80年代後半にかけてのインドネシアは英米のバンドの海賊盤カセットテープがYess Recordsなどのショップを通じて数多く流通しており、少なからずシーン形成にも影響をもたらしていたとのこと。


「インドネシアのプログレ事情 改定ダイジェスト版」【前編】 【後編】
 (蝸牛の神託 蝸牛のゴタク)

ジェット尻氏による上記記事は、インドネシアン・プログレシーンを知るには欠かせない、必見の内容です。

2017年7月28日金曜日

その後の「待ってる者 (Homunculus Loxodontus)」について



「待ってる者」こと「Homunculus Loxodontus」の、ロシア語圏でのインターネットミーム化の流れについて

http://camelletgo.blogspot.jp/2017/03/homunculus-loxodontus.html


 今年はじめからロシア語圏で爆発的に流行っている「Zdhun(待ってる者)」こと《Homunculus Loxodontus》以前の記事では3月末までの流れを追いましたが、その後もいろいろとトピックがあったので、ご紹介いたします。


【5月】

《Homunculus Loxodontus》の制作者であるマルグリート・ヴァン・ブレーヴォートさんが、もう一体の新たな個体を制作。アムステルダムの地下鉄駅ギャラリー「Etalagegalerie Inkijk」に展示されるようになりました。1分半ほどのプロモーション映像もvimeoで公開されています。キリっとした表情、右手に添えられた左手、ヒレのような足(?)など、ライデン大学病院のベンチにいる個体と色々と違う特徴がみてとれます。



the waiting from polderlicht on Vimeo.


https://ja-jp.facebook.com/margrietvanbreevoort/posts/1913401422240630

http://www.polderlicht.com/
http://galerie-inkijk.blogspot.jp



【6月】

《Homunculus Loxodontus》がロシア語圏で爆発的ブームになった結果、無許可のグッズが現地でいくつも販売され、あげく第三者が勝手に商標登録しようとする動きまであり、懸案事項となっていました。そこでZhdunの権利管理団体として名乗りを挙げたのが、ロシアの著名なメディアグループ「CD Land」。ほどなくして、作品イメージを合法的に使用する際はCD Landを通してほしいというアナウンスもマルグリートさんから出され、ロシア圏での無認可での商品化問題がひとまず進展。また、同月中旬には広告・コミュニケーション関係の世界的なフェスティバル「カンヌ・ライオンズ」のロシア版イベントにマルグリートさんは招待され、現地のアーティストやファンと交流されたもよう。


https://ja-jp.facebook.com/margrietvanbreevoort/posts/1929717547275684



【7月】

 ロシアでアニメ化が決定。どういう内容で展開していくのかまったく予想がつかないのですが、ともあれ、前述のCD Landを通すようになったことで、マルグリートさんも利益を得ることができます。「芸術で食べていくことは難しいのですが、これで数年間はお金の心配をする必要がなくなり、作品制作に打ち込むことができます」という彼女のコメントがモスクワタイムスに載っていました。しかしながら、わずか半年でここまで進展するとは。





「Russian Company Buys Rights to Zhdun Viral Sensation」
(from The Moscow Times|2017.07.06)

「Aandoenlijk zeekoebeeld van LUMC in toekomst ook op televisie」
(from UNITY TV|2017.07.13)


http://margrietvanbreevoort.nl/index.html
https://nl-nl.facebook.com/margrietvanbreevoort/

2017年7月23日日曜日

極道野球からの伝奇ヴァイオレンス野球で人間が死ぬ 『硬派!埼玉レグルス』(1986-1989)

ふと思い立って『硬派!埼玉レグルス』(滝直毅[原作]/山本コーシロー[作画])を一気読みしました。月刊少年ジャンプの1986年9月号から、1989年8月号にかけて連載された全9巻の野球漫画。ヤクザの若頭である主人公 歯車獅子太郎が弱小球団である埼玉レグルスのオーナーに見染められ、新監督として超人的体力と気合(そして暴力)でチームを牽引していく、というのが本作のあらすじです。





 当時の月刊ジャンプは、なかいま強の『わたるがぴゅん!』が連載3年目にさしかかろうとしていたころで、野球漫画がダブるのではと思いきや……埼玉レグルスは第1話のしょっぱな4ページ目で(フェイクとはいえ)指をエンコしてドスでメッタ刺しにするシーンが出てくるので、ハナからマトモな野球漫画ではありませんでした。相手の剛速球やスライディングを顔面で受け、長ドス持ちの構えでバットを持ち、ボールをその先端にブチ当ててホームランをカマす獅子太郎のポテンシャルは以降インフレし続けます。その一方で、鶴之丞という「男の娘」(元リトルリーグのエースピッチャーだったものの、母を亡くし、腕を故障したため女形の道へ進んだという設定)もおり、かれは完全に本作のヒロイン枠です。






 そんなこんなで、3巻までは「極道野球漫画」なのですが、4巻にさしかかり、地下プロ野球リーグ「レッド・ドラゴン」と、それらを統べる「赤龍」の存在が明らかになるあたりで伝奇ヴァイオレンスアクション野球漫画へと舵をきりはじめ、沢村栄治の魂を受け継ぐ9人の「光の獅子」という設定がメインになってゆきます。同時期の週刊少年ジャンプは『北斗の拳』『魁!!男塾』『聖闘士星矢』『ドラゴンボール』と、バトル漫画大全盛であり(さらに1987年に入ると『ジョジョの奇妙な冒険(第一部)』や『ゴッドサイダー』の連載も加わってきます)、それらと同位相の波動がレグルスにもみなぎりはじめるのです。そして、人間がどんどん死にはじめる(ココ重要)。ジャンプ野球漫画の系譜でも、70年代の『アストロ球団』と90年代の『地獄甲子園』と同じラインにあり、その間をつなぐ作品といえなくもないんじゃないかと。もうムチャクチャなケレン味です。





 アラーの呪い、もといサソリの猛毒で瀕死の重傷を負わせるチーム「アラーズ」(ピッチャーとキャッチャー以外の全員が“地中”で守備についている)や、ヨーゼフ・メンゲレの血を引くエースピッチャー アルラウネ(筋肉を伸長限界点まで伸ばして繰り出す「ハイドロサイエニック打法」で殺しにかかる)を擁するナチスドイツチーム「パニッシュナーズ」、ウェンディゴのパワーを得るために魂を売り渡したカナダチーム「カナディアン・ブレード」といった狂った強豪チームが出てくる6巻から8巻にかけての傍若無人っぷりも相当なものですが、最終巻に至っては、味方に謎の新キャラが出てくるわ、主要キャラがどんどん死ぬわとツッコミが追いつかなくなり、もはや完全に破綻してしまっています。それでも、全てを巻き込んでラストまで突き抜けてしまった。いろんな意味で記憶に残る怪作だと思います。……求む、電子書籍化。






吼!サムライ 1 (少年チャンピオン・コミックス)
山本 コーシロー
秋田書店
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 作画担当の山本コーシロー氏は1991年に週刊少年チャンピオンで異種格闘技漫画『吼!サムライ』を連載されましたが、その後の氏の消息は不明(ちなみに、『吼!サムライ』の連載終了から数週間後に同誌に登場した異種格闘技漫画が『グラップラー刃牙』です)。原作担当の滝直毅氏は埼玉レグルスと同時期にフレッシュジャンプで『ぶるどっぐ』(作画:双葉たかし)、モーニングで『凶獣よ荒野へ』(作画:湯浅ひとし)の原作を手掛けられていましたが、その後、『どっかん!』(作画:能田茂)、『ギラギラ 六本木不死鳥ホスト伝説』(作画:土田世紀)などの原作や、本宮ひろ志の『サラリーマン金太郎』『雲にのる』のノベライズなどを手掛けられています。

2017年7月21日金曜日

現実のインディーズシーンともクロスする、タワレコ×スプラトゥーンコラボ企画 ― Wet Floor『Inkoming!』(2017)



http://tower.jp/item/4534119


『スプラトゥーン2』の新しいバトルBGMを担当するイカ世界のロックバンド“Wet Floor”のCDがタワレコ限定で発売
(from タワーレコード|2017.06.09)


 任天堂から7月21日に発売されるNintendo Switchソフト「スプラトゥーン2」。ゲーム中で対戦BGMとして流れるイカ界のバンド「Wet Floor」の1st EP。6月23日から7月30日にかけて開催されているタワーレコードとスプラトゥーンのコラボキャンペーンの一環として、タワレコでの限定販売CDとしてリリースされた本EP。作曲は前作のメインコンポーザーであり、同じくゲーム中のバンド「Squid Squad」や「Hightide Era」の楽曲も手がけられている峰岸透氏。ネーミングセンスも、相変わらずヒネりが効いております。「インク(Ink)」と「入ってくる/次に来る(Incoming)」をひっかけたリードトラック"Inkoming!"、飛び込み競技における入水方法のネーミングを冠した"Rip Entry"、イルカ(Dolphin)とエンドルフィン(Endolphin)をひっかけた"Endolphin Surge"の三曲と、人間界のメンバーで編成された【Wet Floor Shibuya】のスタジオレコーディングによる"Inkoming!"を収録。歌詞はもちろん架空言語(イカ語)。「Squid Squad」はニューウェイヴロック、「Hightide Era」はピアノエモ、「ABXY」はチップチューンパンクという方向性でしたが、「Wet Floor」はバンドリーダーがシンセサイザー奏者であることと、ギター&ヴォーカルが二人いるという編成を特徴としており、「Squid Squad」よりもゴリっとしていてパンキッシュな感触のサウンドなのがミソです。「1st EP」ということは、反響次第で二枚目も出るのでしょうか。





 【Wet Floor Shibuya】の演奏陣もトピックです。「Squid Squad」の楽曲のレコーディングメンバーには、西川進氏、Hi-STANDARDやチャットモンチーなどで知られる恒岡章氏らが参加されておりましたが、【Wet Floor Shibuya】は気鋭のインディーズバンドから選抜したメンバーが集結しており、架空のバンドでありながら、現実のインディーズシーンにもコミットしているという面白さがあります。このあたりの人選は、やはりタワレコ側のディレクションなのでしょうね。鈴木望世さんは名古屋を拠点とするバンド ペンギンラッシュのヴォーカル&ギター。坂本遥氏は恋愛至上主義音楽集団ことTHEラブ人間や、トリオ・ユニット エドガー・サリヴァンのギタリスト。高木祥太氏は無礼メン、エドガー・サリヴァンなどのベーシスト。深澤希実さんはAUSTINESや、Pollyanna(タワレコ内のレーベルからアルバムをリリースしています)のキーボーディスト。MIZUKIさんは川田まみバンドやLovendoЯのサポートドラマーなどで活躍されております。アレンジャーは、前作楽曲のライヴアレンジでもおなじみの大山徹也氏です。


【Wet Floor Shibuya】

鈴木望世(vocal & guitar)
坂本遥(vocal & guitar)
高木祥太(bass)
MIZUKI(drum)
深澤希実(keyboard)
大山徹也(arrange)




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 なお"Inkoming!"は2017年1月14日・15日に開催されたNintendo Switch 体験会2017で【任天堂スペシャルロックバンド】によっても演奏されております。

【任天堂スペシャルロックバンド】

AYUMU(guitar)
高慶“CO-K”卓史(guitar)
TABOKUN(bass)
かどしゅんたろう(drum)
小田朋美(keyboard)
大山徹也(arrange)




 高慶“CO-K”卓史氏は「ABXY」「Hightide Era」、TABOKUNは「Squid Squad」、かどしゅんたろう氏は「ABXY」の楽曲のレコーディングメンバーでもあり、AYUMU氏は2016年4月29日に「ニコニコ超会議2016」で行われたシオカラーズのライヴのサポートギタリストでもありました。小田朋美さんは自身がフロントを務めるCRCK/LCKSのほか、dCprG、エビデュオなどでも活動されている鍵盤奏者/シンガーソングライターです。


噛むほどに味が出る、イカ世界のスルメ盤 ― 峰岸透、藤井志帆『Splatoon O.S.T -Splatune-』(2015)

シオカラーズファンへの「スルメ盤」 ― 『SPLATOON LIVE IN MAKUHARI ―シオカライブ―』(2016)

2017年7月17日月曜日

『LAMPO―THE HYPERSONIC BOY―』単行本第一巻刊行20周年

ランポ 1―The hypersonic boy (てんとう虫コミックススペシャル)
上山 徹郎
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 2017年で20周年を迎える作品は数多くあり(たとえば『ファイナルファンタジーVII』『ONE PIECE』『少女革命ウテナ』『OK COMPUTER』(RADIOHEAD)などもそうです)、あちこちでアニバーサリー企画なども出ているわけですが、1996年から1999年にかけて《月刊コロコロコミック》《別冊コロコロコミックSpecial》で連載された、上山徹郎氏のバトルアクションコミック『LAMPO―THE HYPERSONIC BOY―』も、単行本第一巻が刊行(1997年5月25日奥付)されて今年で二十周年を迎えました(連載開始は1996年10月15日の月刊コロコロコミック11月号)。途中打ち切りとなった初連載作『電人ファウスト』(1994年~1995年)に次ぐ、氏の長編連載第二作。「未来少年コナン」へのオマージュもたっぷりと込められた入魂のSF群像バトルアクションの傑作です。リアルタイムで『LAMPO』連載第一回を目の当たりにしたときは、明らかにほかの掲載作品とは違う空気に子供ながらに戸惑いを感じた一方で、「なんかスゲーのがきた!」とワクワクさせられたのを未だに憶えています。





 第一巻のころはまだ主人公たちの等身は低めで、ロボットたちの造型もややデフォルメが効いていましたが、見開きでの見せ場があったりと、すでに規格外の印象があります。第二巻より、主人公であるランポのライバル的存在として〈風使い(セラフィック)〉の少年ローズが登場。そして第9話を境にして隔月刊の別冊へと連載が移行します。「人造人間」「ロボット」「巫女の神託により最新テクノロジーを有する国家」といった設定が一通り出揃い、太陽系十二惑星の重力波を用いた〈公転発電機(カレンダードライブ)〉や、神からの託宣を巫女の脳を通じてデジタル信号化し転送・記録する〈巫術〉システムなどの登場で、ストーリーや設定がさらにノリにのってきます。






 第三巻ではランポ、ヨシノ、マスラオを中心とした群像劇という面も見え始めてきます。ローズの存在がやや薄くなり始め、主人公のライバルキャラ的役割はマスラオにとって代わられた感もなきにしもあらずなのですが、面白さにもますます拍車が掛かってくる。フガクが示威行動として発射したミサイルの名称が〈佳句爆弾(トゥルーライズ)〉だったりするのだけども、元ネタがわかったちびっ子は当時どれだけいたのだろうか(映画は1994年公開)。核抑止論ネタといい、もはや完全に対象読者層をぶっちぎっております。





 作画修正のために刊行が半年以上延期した最終第四巻では、巻頭に設定資料「神国ロボットの基礎知識」が収録されており、これがまた非常に読み応えのあるものになっています。人型ロボットの戦闘力の裏づけたる設定〈力場体(イーサーボディ)〉〈蓮華盤(ロータス)〉〈掌裡効果(パームイフェクト)〉など、今読んでも否応なくワクワクさせられてしまう。機械のアイデンティティとサムライの気概の相克を描く、マスラオ対ウンリュウの闘いは本巻の白眉。終盤に登場する〈美少女形態フガク〉に至っては上山先生の趣味がヒートアップしており、氏が会心の出来とうたった「不快感を伴った美」のデザインはなるほどお見事な仕上がり。





 全24話。まだまだ描きたいことがあったのではないかという感もあるものの、小学生向けの漫画雑誌というフィールドで描ける以上のものを詰め込んで健闘しており、随所で見せる上山先生のこだわりと熱意にも頭が下がります。第四巻刊行の半年後、『電人ファウスト』の新装版(ワイド判)が刊行されましたが、『LAMPO』はその後 新装版は出ていません。復刊を心から望みます。


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上山 徹郎
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 上山氏はその後、2002年から2005年にかけて《コミック電撃大王》で『隻眼獣ミツヨシ』を連載。三巻分の単行本が刊行されるも、未完・未収録分を残して終了(第三巻は現在もプレミア状態になっています)。数年後の2008年12月に集英社の隔月刊誌《JC.COM》に移籍し、『ミツヨシ 完結編』として同誌の第十号まで連載され、前作の未収録エピソードも収録した上下巻の単行本で(一応)完結。また、『ミツヨシ 完結編』に少し先駆ける形で、2008年4月から9月に放送されたアニメ「RD 潜脳調査室」のキャラクターデザインを担当され、2012年から2013年にかけて放送された「PSYCHO-PASS」第一期(第12話「Devil's Crossroad」)のキャラクターデザイン協力ののち、2013年から2014年にかけて《月刊ヤングキング》にて『テングガール』を連載。二巻の単行本が刊行され、「第一部完結」となりました。近年の活動については、「手前屋鬱郎」で検索しましょう。

2017年7月10日月曜日

2017年上半期フェイバリットアルバム10選

▼THE MANTLE『The Mantle』



スムースジャズ/フュージョンの第一人者ケニー・Gの息子 マックス・ゴアリック率いるプログレッシヴ・メタル・バンド。往年のシュラプネル系かよというくらいに、快楽指数の高いプレイで弾きに弾きまくる新たなシュレッドギタリストが颯爽とシーンに登場。
http://camelletgo.blogspot.jp/2017/02/the-mantle-max-gorelick.html



▼TO-MAS(伊藤真澄&ミト&松井洋平)『フリップフラッパーズ オリジナルサウンドトラック』

TVアニメ『フリップフラッパーズ』オリジナルサウンドトラック
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なんでもアリなアニメ本編の世界観に呼応するかのように、三人それぞれの音楽性がフル稼働した極彩色の傑作スコア。鮮やかなる音のピュアイリュージョン。伊藤真澄さん、良原リエさん、コトリンゴさん、Babiさんによるトイピアノカルテット「toi toy toi」や、倍音S、東京混声合唱団といった顔ぶれにも注目ですね。本作の次にTO-MASが劇伴を手掛け、toi toy toiがエンディングテーマを手がけた春アニメ「アリスと蔵六」のサントラもマストです。
http://camelletgo.blogspot.jp/2017/02/welcome-to-pure-illusion.html



▼みゆはん『自己スキーマ』

自己スキーマ【通常盤】
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「ぼくのフレンド」を無限リピートするために購入したところ、収録曲の全てがめっちゃよくて参った。アートワーク展開もふくめたマルチなセルフプロデュース能力の高さもブリリアントなものを感じました。全曲本人作詞作曲なのもさることながら、五人の編曲者がまたすごくいい仕事をされている。
http://camelletgo.blogspot.jp/2017/04/mewhan-jiko-schema.html



▼デーモン閣下『EXISTENCE』

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如何様なアレンジでも対応できるスタイルを確立してきた閣下が、北欧の仕事人アンダース・リドホルムとともにメロハー、ポップチューン、ロックオペラ、そしてメタルで魅せた、「スクランブルド・ロック」の魅力と真髄がたっぷりの快作。三人の「わかっている」ゲスト作詞陣のいい仕事も光る。
http://camelletgo.blogspot.jp/2017/05/demon-kakka-existence.html



▼Shobaleader One『Elektrac』

Elektrac
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スクエアプッシャーが宇宙人と組んだ「スクエアプッシャー曲の生演奏再現バンド」であるショバリーダー・ワン。スクエアプッシャーのバッツンバッツンなベースプレイと地球外生命体バックバンドのタイト&タイトなアンサンブルでとんでもなくエキサイティング。たっぷりイキのいい人力ブレイクビーツサウンドだし、プログレ/ジャズ・ロック好き好きマンがウキウキしそうなくすぐりもしこたまある。北欧のRune Grammofonあたりの急進的ジャズ・ロック勢の出す音ともめっちゃシンクロしてる感があるのも、とても面白い。ボイラールームでのライヴ映像は最高です。ショバ代を払って観たいパフォーマンス。



▼LINKED HORIZON『進撃の軌跡』

進撃の軌跡(CD Only)
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既発曲5曲と、書き下ろしの新曲6曲という構成で、一枚丸ごと「進撃の巨人」タイアップでアルバムを出してのけてしまった。新曲は「紅蓮の弓」「自由の翼」の変奏の趣があるのだけど、それが奏功してアルバムとしてもコンセプトとしても全力でガッチリ補強されていると思ったし、Revo氏の近年の仕事でもピカイチなくらいに焦点が定まっている。タイアッププロジェクトの真価を見事に発揮しつつ、「14文字の伝言」という、サンホラファンにもくすぐり(むしろ起爆装置かもしれないけど)を入れてるあたりはいつものRevoだなと。今から12年前に制作した『リヴァイアサン』『ガンスリンガーガール』の公式イメージアルバムで見せた強みが再度、遺憾なく発揮されましたね。



▼Isildurs Bane & Steve Hogarth『Colours not Found in Nature』

Colours Not Found In Nature
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Isildurs Bane & Steve Hogarth
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スウェーデンのチェンバー・ロック・バンド ISILDURS BANEの十数年ぶりの新作アルバムであり、MARILLIONのヴォーカリスト、スティーヴ・ホガースと共に制作された一枚。北欧と英国のまさかのコラボレーションといったところなのだけども、これが素晴らしいマッチング。よくよく考えてみればISILDURS BANEもMARILLIONもバンド名の由来はトールキンの中つ国の物語からなので、共演を果たすのも必然だったのではないかと言えなくもない。イシルドゥアの禍とシルマリルの物語。



▼Bubblemath『Edit People』

Edit Peptide
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Bubblemath
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ミネソタのテクニカルプログレバンドのBubblemathの16年ぶりの新作。GENTLE GIANT影響下なのは明らかなのだが、オーバーフローしている。スキを与えてくれない狂った展開のオンパレードですさまじいことになっている。16年分の妄念。



▼J・A・シーザー『バルバラ矮星子黙示録─アルセノテリュス絶対復活光とオルフェウス絶対冥府闇─』

バルバラ矮星子黙示録 -アルセノテリュス絶対復活光とオルフェウス絶対冥府闇-
J・A・シーザー
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「少女革命ウテナ」の放送20周年の今年、じつに19年ぶりとなる【ウテナ音楽】の新作がJ・A・シーザーから届けられた。タイトルの時点でもう完全勝利感があるのだけれども、内容も素晴らしかった。『薔薇卵蘇生録ソフィア』の衝撃と感動を再び味わえるとは! 不滅不朽。「絶対運命黙示録・完全版」はライヴなどでも披露されていた“幻の2番”が入った文字通りの完全版であり、死して復活 プロメティウス星体。



▼MONACA『灼熱の卓球娘ミュージックコレクション「灼熱の音楽娘」』

灼熱の卓球娘ミュージックコレクション 灼熱の音楽娘
V.A.
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広川恵一、高橋邦幸、田中秀和、瀬尾祥太郎のMONACAチームによる劇伴はシューティングゲームみたいだとさる方が言われておりましたが、ほとばしるようなテンションの高さはホントそんな感じ。すごくアッパーなEDMの目白押し。しかし卓球もタマをシューティングするゲームと考えればシューティングゲーム。