2016年9月27日火曜日

ゴンチチ、14年ぶりのアニメ劇伴作 ― GONTITI 『「あまんちゅ!」 オリジナルサウンドトラック』(2016)

TVアニメ「あまんちゅ!」オリジナルサウンドトラック
GONTITI
FlyingDog (2016-08-24)
売り上げランキング: 550

http://www.jvcmusic.co.jp/flyingdog/-/Artist/A018300.html

 マッグガーデン〈月刊コミックブレイド〉で2008年より連載中の、天野こずえ原作コミック『あまんちゅ』。2016年7月より9月にかけてAT-X・TOKYO MXなどで放送された、佐藤順一監督(兼 音響監督)による同作のアニメ版のサウンドトラック(全25曲)。劇伴担当は、かれこれ40年近い活動歴をほこるゴンザレス三上氏とチチ松村氏のお二人によるアコースティック・ギターデュオ ゴンチチ。2000年以降は是枝裕和監督の『誰も知らない』(2004)、『歩いても 歩いても』(2008)、『ゴーイング マイ ホーム』(2012)や、青野春秋原作/福田雄一監督の『俺はまだ本気出してないだけ』(2013)などの映画やドラマの劇伴をいくつか担当されておりましたが、アニメ劇伴を手がけるのは2002年のCG映画『ぼのぼの クモモの木のこと』以来 、約14年ぶりとなります(その前では、1998年のOVA版『ヨコハマ買い出し紀行』) 。




《ミュージックマガジン》2016年9月号のゴンチチのインタビューによると、同じく天野&佐藤コンビの前作〈ARIA〉シリーズの劇伴をアコースティック・バンドのショーロクラブが担当していたことを知り、「やりたいことを好きなようにやっていた」と感じたので、今回のオファーを受けられたとのこと。サントラには収録されなかった曲もふくめ、最終的にレコーディングされたのは40曲。本編の演出のうえでの細かい要望もあり(彼らの持ち曲である"南方郵便船"のような曲もオーダーされたとのこと)、お二人にとって「ここまで作りこむサントラ仕事は初めてでした」とのこと。「サントラではあるんですけど、自分たちのオリジナル・アルバムでもあるという感覚です」ということで、時間とお金をかけてじっくりと丹念に仕上げられた作品になっています。

 盟友 菅谷昌弘氏のアレンジのもと、"landscape" "new waltz" "funny cat"などではストリングス、"hurry up!" "underwater"ではエレクトリック・ギターとデジタル(アンビエント)サウンド、"swing on the beach" "夏の王国"ではホーン(アレンジはEGO-WRAPPIN'、レキシ等のサポートで知られる武嶋聡氏)が前面に出てきたりと、ほがらかでまろやかな響きのアコースティック・ギターサウンドのみならず、カラフルな色合いにも富んでいます。インタビューで触れていた「"南方郵便船"みたいな曲」というのは、「そこから応用して何曲かできた」というコメントからも考えるに、冒頭と末尾を飾る"海と空と太陽と ~morning~/~sunset~"のことなのでしょう。同曲のモチーフは"風とゆびきり" "月あかりとマリンシューズ" "さよならも言わずに"でも、それぞれ異なるアレンジで聴くことができます。


http://comic.mag-garden.co.jp/amanchu-ya/anime.html
http://www.gontiti.jp/


ミュージックマガジン 2016年 09 月号

ミュージックマガジン (2016-08-20)


 なお、坂本真綾さんの歌うオープニングテーマ"Million Clouds"のシングルのカップリング曲には、ゴンチチを編曲・演奏にフィーチャーした"DIVE"が収録されていることを追記しておきます。
http://www.jvcmusic.co.jp/flyingdog/-/Discography/A008957/VTCL-35235.html

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『「あまんちゅ!」 オリジナルサウンドトラック』
[VTCL-60434|2016.08.24|フライングドッグ]

01. 海と空と太陽と~morning~
02. landscape
03. 一緒に歩こう
04. 遊びの時間
05. route135
06. hurry up!
07. swing on the beach
08. new waltz
09. 風とゆびきり
10. underwater
11. 待ちぼうけ
12. 雨の月曜日
13. funny cat
14. blue in bossa
15. ぴかりウォーク
16. マジックタイム
17. 入道雲の向こうに
18. 夏の王国
19. delightful day
20. 月あかりとマリンシューズ
21. きっと会える
22. てこセンチメンタル
23. 水中メガネ
24. さよならも言わずに
25. 海と空と太陽と~sunset~


all tracks composed & arranged by GONTITI

except track 2, 20 composed by GONTITI、菅谷昌弘
track 1, 2, 8, 13, 15, 20~22, 25 arranged & strings arranged by 菅谷昌弘
track 7, 18 horns arranged by 武嶋聡

ゴンザレス三上(guitar, soprano, guitar, ukulele & programming: )
チチ松村(guitar)

菅谷昌弘(piano, electric piano & programming: )
黒木千波留 (piano / track 24)
楠均(drums)
藤井珠緒(percussion)
一本茂樹(bass)

《strings quartet》
桑野聖 (1st violin)
藤家泉子 (2nd violin)
島岡智子 (viola)
多井智紀 (cello)

《strings section》
【violin】
桑野聖、藤家泉子、押鐘貴幸、岩戸由紀子、
矢野晴子、大林典代、三浦道子、桐山なぎさ
【viola】菊地幹代
【violoncello】古川淑恵

最上峰行(oboe, English horn)
澤村康恵(clarinet)
石川晃(fagotto)
武嶋聡(alto, tenor, baritone sax & programming)
榎本裕介(trombone)
川上鉄平(trumpet & Flugel horn)

Producer: 福田正夫(フライングドッグ)、佐脇章三(sweet boon music)
Executive Producer: 佐々木史朗(フライングドッグ)

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【GONTITI アニメサントラディスコグラフィ】

『映画「ぼのぼの」オリジナル・サウンドトラック』
(ESCB-1420|1993.09.22|エピックレコードジャパン]

オリジナル・サウンドトラック『ぼのぼの』
Sony Music Labels Inc. (2014-09-17)
売り上げランキング: 13,533

1993年公開の劇場版「ぼのぼの」のサントラ。2014年にデジタル配信版がリリースされています。



『made in Ukulele』
[PCCA-01691|2002.05.15|ポニーキャニオン]
[PCCA-60002|2005.02.16|ポニーキャニオン]※SACD(HYBRID)再発盤


made in Ukulele
made in Ukulele
posted with amazlet at 16.09.27
GONTITI
ポニーキャニオン (2005-02-16)
売り上げランキング: 1,037,677

2002年公開の劇場版「ぼのぼの クモモの木のこと」のサントラ。



『ヨコハマ買い出し紀行 ベスト・サウンドトラックス』
[SRCL-4319|1998.07.01|ソニーミュージック]
[SVWC-7147|2002.10.23|ソニーミュージック]※再発盤


ヨコハマ買い出し紀行 ベスト・サウンドトラックス
イメージ・アルバム 椎名へきる
SME・ビジュアルワークス (2002-10-23)
売り上げランキング: 233,356

 OVA版の楽曲+二枚のラジオドラマCD『ヨコハマ買い出し紀行』(SVWC-7145/1996) 『ヨコハマ買い出し紀行 2』(SVWC-7145/1996)【※2002年にともに廉価盤で再発】 の楽曲を収録したベスト盤。ラジオドラマは、椎名へきるさんがパーソナリティーを務める番組で1995年~1997年にオンエアされています。なお、2002年にリリースされたドラマCDの三枚目と、2003年の新OVA版『ヨコハマ買い出し紀行 -Quiet Country Cafe-』のサントラはショーロクラブが担当しています。

2016年9月24日土曜日

LAのプログレユニット、超強力布陣でおくる七年ぶりの新作 ― AN ENDLESS SPORADIC『Magic Machine』(2016)




 ロサンゼルスのプログレッシヴ・メタル・ユニット アン・エンドレス・スポラディックは、マルチミュージシャンのザック・カミンスと、ゲームデベロッパー「NEVERSOFT」のスタッフであり、ドラマーであるアンディ・ジェンティルのインストゥルメンタル・デュオとして2004年に結成。初めてレコーディングした楽曲"Sun of Pearl"は、NEVERSOFTのヒットシリーズ〈トニー・ホーク〉の「American Wasteland」にフィーチャー。その後、〈Guitar Hero〉シリーズへの楽曲提供でさらなる注目を集め、2008年にEP『Ameliorate』でデビューします。翌2009年には、THE FLOWER KINGSのロイネ・ストルトのプロデュースと、ヨナス・レインゴールドのサポートのもと、フルアルバム『An Endless Sporadic』をリリース。同作の収録曲のいくつかは「Guitar Hero 5」のダウンロードコンテンツともなりました。




 その後、ザックはバークリー音楽大学で映画音楽を専攻し、学士号を取得。そして約七年ぶりとなる2ndアルバム『Magic Machine』を引っさげて、再びシーンに戻ってきました。なお、本作にはアンディは不参加です。前作の音の軽さはしっかりと克服され、スケール感が大幅にアップしており、ジャズ/フュージョン、ラテンミュージック、ファンク、djent、チップチューンを織り交ぜた変幻自在のギタースタイルを主体に、往年のプログレッシヴ・ロックへの敬愛も込めたインストゥルメンタルアルバムとして攻めに攻めた一枚です。ロイネ・ストルト(guitar)、ヨナス・レインゴールド(bass)は前作に引き続き参加しているほか、DREAM THEATERのジョーダン・ルーデス(keyboard)、Sleepytime Gorilla Museumのマイケル・メレンダー(percussion, glockenspiel etc)、Animals as LeadersのNavene K(drums)といった、ザックが大いにリスペクトしているバンドのメンバーが続々と客演。随所にフィーチャーされたストリングス、ホーンセクションも強力なアクセントになっています。



ジョーダン・ルーデスをフィーチャーした一曲。



「INTRODUCING: An Endless Sporadic」
(from HoldTightPR|2016.07.06)

Andy Gentile - mobygames

http://www.anendlesssporadic.com/
https://www.facebook.com/anendlesssporadic
https://soundcloud.com/anendlesssporadic
https://www.youtube.com/user/AnEndlessSporadicTV

2016年9月22日木曜日

「りり」   ファミコン国内移植版『ゴーストバスターズ』発売30周年



 1984年に公開され大ヒットを記録した映画「ゴーストバスターズ」は、その後各種ハードでゲーム化され、海外では近年も何らかの形で新作タイトルがリリースされています(今年はリブート版映画が公開されたこともあり、二タイトルがリリース)。日本国内で初めてリリースされたのは、ビッツラボラトリーが開発し、トクマソフト(徳間書店)から発売されたファミコン版。1984年にアメリカでApple IIやCommodore 64などで出たものの国内移植になるわけですが、その移植具合はよろしくなく、エンディングで唯一表示される「りり」の二文字がそのままゲームの代名詞となっています。そして本日、2016年9月22日で発売30周年を迎えました。






 今から10年ほど前にジーパラドットコムの特集ページ(現在は404 not found)では、国内移植版「ゴーストバスターズ」の開発に関わられたビッツラボラトリーの創設メンバーである宮崎暁氏(ファミコンではほかに「テクザー」「キングスナイト」、PCエンジン版の「ファンタジーゾーン」「スーパーダライアス」「アフターバーナー」「愛・超兄貴」などにも参加)へのインタビューが掲載されていたのですが、その記事によると、開発中にメインプログラマーが交通事故に遭い、急遽、専務を駆り出して二人でプログラムその他諸々を担当されていたとのこと。また、「キングスナイト」(1986年9月18日発売)とほぼ同時期に進行していたということで、なおさらキビシイ状況であったことがわかります。


クリエイターズファイル「第213回 ビッツラボラトリー 宮崎暁さん」
(from Gpara com |2006.01.23|※Internet Archiveのログ

宮崎氏:
 思い入れが深い作品は、会社設立後初期の作品『ゴーストバスターズ』と『キングスナイト』ですね。
 『ゴーストバスターズ』は映画のノリがとても好きで、今でもDVDを引っ張り出して見たりしてます(笑)。この作品は開発中にメインプログラマーが交通事故にあって入院しちゃいまして、急遽、私と当時の専務がプログラムを担当したりして、とにかく大変だったのを覚えています。ちなみに、この作品ではプログラムの他、グラフィック、音響も担当してました。今考えるとかなり無茶をしていたと思います。
 『キングスナイト』では、これも先の『ゴーストバスターズ』とほぼ同時期に進行してた作品なのですが、当時のスクウェア(現スクウェア・エニックス)にいらっしゃった坂口さんや、音楽の植松さんと一緒に仕事が出来たとても幸運な作品です。


 さて、悪名高き「りり」についてですが、これは単に「スタッフロールのデータ処理をミスっていた」という事実が判明しております。2015年にニコニコ動画にアップされたこちらの解析・検証動画を参照のこと。非常に面白いです。

「ゴーストバスターズの「りり」を直してみよう」


 1988年に海外でリリースされたNES移植版ではちゃんとスタッフロールを見ることができます。なお、あちこちのスペルミスや文法ミスはほとんど直っていません。




「りり」は、当時徳間書店から刊行されていた《ファミリーコンピュータMAGAZINE》(ファミマガ)の懸賞用パスワードだった、という話も出回っていましたが、その真偽は怪しい状態です。実際に国会図書館でファミマガのバックナンバーにあたって調べられた方のレポート。

FC版ゴーストバスターズEDの「りり」はただのバグ? - 月記


【2016.09.24 追記】
クリア後に表示されるパスワードをハガキで送ってくれた方 先着○名様にプレゼント!」という応募キャンペーンがあり、応募したらナンバーが振られた認定証カードが届いた、という情報をいただきました。ファミマガ以外で一番可能性が高いのはソフトの説明書かパッケージにキャンペーンの文言が入っていたのではないかというところですが、リアルタイムでソフトを購入された方で詳しくご存知の方、ぜひご一報ください。


 私も先日、国会図書館でファミマガのバックナンバーを一通り調べましたが、やはり懸賞クイズ的な記述は見当たりませんでした。以下は、私がチェックしたファミマガの4月18日号から12月19日号までのなかでのゴーストバスターズ関係の記事の概要です。


《ファミリーコンピュータMAGAZINE》

1986年 No.5(4月18日号) P109
「超新作ゲーム先取り大作戦」半ページの告知。
(発売日未定・トクマソフト・価格未定)





1986年 No.6(5月12日号) P116
「超新作ゲーム先取り大作戦」半ページの告知。
(発売日未定・徳間書店・価格未定)




▼1986年 No.7(5月16日号 母の日特大号)情報なし
▼1986年 No.8(6月6日号)情報なし
▼1986年 No.9(6月20日号)情報なし

1986年 No.10(7月4日号) P120
「超新作ゲーム先取り大作戦」としてページ四分の一ぶんの告知。
6月予定の発売が遅れていることのお詫びの文面も。
(8月上旬発売予定・徳間書店・5200円)





1986年 No.11(7月18日号 創刊一周年記念特大号 P175
「超新作ゲーム先取り大作戦」半ページほどの告知。
「でもな~んかイマイチなんだよナ」というコメントから
開発状況がテンパっていることがうかがえなくもないです。
(8月上旬発売予定・徳間書店・5200円)





1986年 No.12(8月1日号) P6~9
タイトル見開きページと、ゲーム概要を伝える情報ページを
4ページにわたり掲載。発売予定はさらにズレこむ。
(9月上旬発売予定・徳間書店・5200円)
ちなみに10ページは「キングスナイト」の記事でした。







1986年 No.13(8月15日・9月5日合併号 P6~13
速報第二弾「必勝GBマニュアル」と題して、タイトル見開きページと、
ゲーム概要にさらに踏み込んだ情報ページを8ページにわたり
掲載。ファミマガでのゴーストバスターズ記事は本号がピーク。
5200円と表記されていた価格が、ここでいったん「未定」に。
(9月上旬発売予定・徳間書店・価格未定)







1986年 No.14(9月19日号) P120~123
発売日・価格が確定する。ゲーム発売直前特集として、
「必勝GBマニュアル3」と題した情報ページを4ページにわたり掲載。
(9月22日発売予定・徳間書店・4500円)






▼1986年 No.15(10月3日号)情報なし
▼1986年 No.16(10月17日号)情報なし

1986年 No.17(11月7日号) P92~93、P110
「超ウルトラテクニック50+1」のページに「優勝技」「大関技」「小結技」の三つの裏技が掲載。本号以降、ゴーストバースターズ関係の情報はすべてこの企画ページのなかのものになります。ちなみにファミマガのウル技ページには毎号「ウソテックイズ」というクイズがあり、51本の裏技のなかに一個だけ混じっているウソの裏技をクイズの答えとして読者に当てさせるという趣旨。「りり」が懸賞用パスワードだというウワサも、この企画の存在と記憶が混同されて発生した可能性があります。

「優勝技」  あっというまに大金持ちになるのだあ!!(P92)
「大関技」  ゴーザとの対決に役立つ2種類の隠れキャラ発見(P93)
「小結技」  動けなくなって、かなしばりになったみたいだ!!(P110)






▼1986年 No.18(11月21日号)情報なし


1986年 No.19(12月5日号) P134、P146、P149
「超ウルトラテクニック50+1」のページに「小結技」が二つ、「十両技」が一つ掲載。さらに「負けウルトラテクニック番外地コーナー」の欄外に「ウル技場外技」が一つ掲載。

「小結技」  隠れキャラのファミコンくんでダメージを0に!!(P134)
「小結技」  階段のない空中を歩いてしまう、変な魔術を見よ!!(P146)
「十両技」  なんて遠いショップまでの道のりなんだろうか!?(P146)
「ウル技場外技」  「電源を入れてからセレクトボタンを五回押すといくらスタートボタンを押してもゲームが始まらない」(ポーズがかかる)というもの。(P149)


1986年 No.20(12月19日号) P126
「超ウルトラテクニック50+1」のページ欄外に「ウル技場外技」が一つ掲載。「階段の昇り降りを繰りかえし、階段一段ぶんズレた状態でBボタンで扉を開けようとすると上の扉が開いてしまう」というもの。


以上になります。

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以下は余談。


▼ファミコン国内移植版「ゴーストバスターズ」のサウンドエフェクト担当は、ツルオカヨシアキ氏とソウタダシ氏のお二人。海外のゲームミュージック・データサイトである「Videogame Music Preservation Foundation(vgmpf)」では、「キングスナイト」のサウンドドライバも両人が担当されたことになっています。ファミコン版「キングスナイト」にはスタッフロールがなく、クレジットも確認できないのですが、二作の開発スタッフが同じで、開発時期が近いということからの推測によるものでしょう



http://www.vgmpf.com/Wiki/index.php?title=Yoshiaki_Tsuruoka
http://www.vgmpf.com/Wiki/index.php?title=Tadashi_Sou


▼1990年にゲームボーイやファミコン用ソフトとしてリリースされた「NEWゴーストバスターズ2」は、かのHAL研究所が開発。前作とは違い、良作に仕上がっています。そしてBGMのコンポーザー/アレンジャーは〈星のカービィ〉シリーズの石川淳氏。HAL研に入社してまもない頃の仕事のひとつです。良曲・良アレンジの宝庫であり、とくにステージ3のBGMはブリリアントな一曲。ぜひご一聴あれ。また、NES版ではMark Van Hecke氏がBGMを手がけられています




▼1990年にリリースされたメガドライブ版「ゴーストバスターズ」の全BGM集。コンポーザー/アレンジャーは「エイリアンシンドローム」「獣王記」「ゴールデンアックス・ザ・デュエル」などを手がけられた長井和彦氏によるものです。





▼ゲーム版「ゴーストバスターズ」(1984~2016)リスト

「Ghostbusters」
(1984|Apple IIほか)
開発・販売:ActiVision

「The Real Ghost Busters」
 (1987|アーケードほか)
開発・販売:データイースト
※1986年から1991年にかけてアメリカで放送されたテレビアニメシリーズ「ザ・リアルゴーストバスターズ」のゲーム版。日本では1987年に「迷宮ハンターG」のタイトルでリリースし、ゴーストバスターズの版権は使用していません。

「Ghostbusters II」
(1989|AMIGAほか)
開発:Foursfield|販売:ActiVision

「NEWゴーストバスターズ2」
(1990|ファミコンほか)
開発・販売:HAL研究所

「Ghost Busters」
(1990|メガドライブ)
開発:コンパイル/セガ|販売:セガアメリカ

「The Real Ghostbusters」
 (1993|ゲームボーイ)
開発:ケムコ|販売:ActiVision
※日本では「ミッキーマウスIV 魔法のラビリンス」としてリリースされ、ミッキーマウスを操作する版権ゲーム。しかしヨーロッパ版ではこれがガーフィールドに差し替えられ、北米版ではリアルゴーストバスターズに差し替えられています。

「Extreme Ghostbusters」
(2001|ゲームボーイカラー)
販売:Light and Shadow Productions
「Extreme Ghostbusters: Code Ecto-1」
(2002|ゲームボーイアドバンス)
開発:Magic Pockets|販売:DreamCatcher Interactive
「Extreme Ghostbusters: The Ultimate Invasion」
(2004|プレイステーション)
開発:Similis Software|販売:Light and Shadow Productions
※上記三作は、「ザ・リアルゴーストバスターズ」に継ぐアニメシリーズとして1997年に放送された「エクストリーム・ゴーストバスターズ」のゲームシリーズ。

「Ghost Busters」
 (2006|Windows)
開発:Behaviour Interactive|販売:Atari
※1988年のActiVisionのNES版をリメイク

「Ghostbusters: The Video Game」
(2009|プレイステーション3ほか)
開発:Terminal Reality|販売:Atari

「Ghostbusters: Sanctum of Slime」
(2011|プレイステーション3ほか)
開発:Behaviour Interactive|販売:Atari

「Ghostbusters: Paranormal Blast」
 (2012|iOS/Android)
販売:XMG Studio

「Ghostbusters Beeline」
 (2013|iOS)
販売:Beeline

「Ghost Busters」
 (2016|プレイステーション4ほか)
開発:FireForge|販売:ActiVision

「Ghostbusters: Slime City」
 (2016|iOS/Android)
開発:EightPixelsSquare|販売:ActiVision

2016年9月18日日曜日

米光亮、佐橋俊彦『こちら葛飾区亀有公園前派出所 音楽集(1・2)』(1997)

こちら葛飾区亀有公園前派出所 200 特装版 40周年記念 (ジャンプコミックス)
秋本 治
集英社 (2016-09-17)
売り上げランキング: 7


 1976年9月より《週間少年ジャンプ》で連載が開始され、2016年9月で連載終了。単行本第200巻をもって完結となった、秋本治の長期連載コミック「こちら葛飾区亀有公園前派出所」。アニメ版は1985年にジャンプのイベントのために短編として二本制作され、その後、コミックスが第100巻目を迎えた1996年に、両津勘吉のCVにラサール石井氏を起用したテレビシリーズが同年6月16日から2004年12月19日にかけてフジテレビ系列で放映(全330話)され、1999年と2003年には劇場版(「THE MOVIE」)が制作。その後、2005年から2008年にかけてテレビスペシャル(全13話)が不定期で放映されました。そして本日9月18日、約8年ぶり、通産第14話目となるテレビスペシャル「THE FINAL 両津勘吉最後の日」が放映され、久々に動くアニメ版両さんの姿を拝め、おなじみのBGMの数々を耳にするところとなりました。



(ちなみにこの予告映像で使用されているのは米光氏作曲のスコア"M4A")


「こちら葛飾区亀有公園前派出所」音楽集
TVサントラ ザ・コレクターズ
日本コロムビア (1997-02-21)
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 アニメ版こち亀の劇伴を手がけたのは、光GENJIや沢田聖子、広瀬香美などのJ-POPや、ナムコや日本ファルコムのゲームミュージックアレンジでおなじみの米光亮氏と、ドラマ、ゲーム、アニメ、特撮などの劇伴関係の仕事を数多く抱え、売れっ子としてますます頭角をあらわしていた佐橋俊彦氏のお二人。最初は米光氏作曲のスコアのみ使用されていましたが、第13話以降に追加された劇伴は佐橋氏が担当されています。各トラックは複数のスコア(それぞれMナンバーで表記)で一曲という構成をなしており、旧盤ライナーノーツでは構成を担当された田神悠氏による充実の楽曲解説が収録されています。第一回、第二回の録音で計60曲が用意された米光氏のスコアは朗らかでコメディタッチの軽音楽スコアが中心ですが、チェイスシーンで頻繁に使用される"両津出勤、遅刻ギリギリ!"ではバキバキのハードフュージョンチューン(M4A)が仕込まれており、メリハリたっぷりの仕上がりはさすが米光氏だなと感じさせます(そのあと、「刑事スタスキー&ハッチのテーマ」風のスコアがくるのがまたなんともシャレています)。また、"奇妙な人々"は「ピンクパンサーのテーマ」風。第三回~第五回の録音で計75曲が用意された佐橋氏のスコアは、得意のストリングス、ブラスを駆使し、バラエティ豊かな仕上がり。米光氏のスコア同様、ちょっとしたパロディも仕込まれており、エレクトリックギターがハードなプレイを聴かせる"葛飾、大立ち回り!"は思いっきりディープ・パープルの「ハイウェイスター」ですし、ほかにもジグソーの「スカイ・ハイ」がシレっと紛れ込んでいたり、ネタはけっこう枚挙にいとまがないです。ラストには第13話~第39話のエンディングテーマだった、ザ・コレクターズの"いいことあるさ"をテレビサイズ版で収録。


「こちら葛飾区亀有公園前派出所」音楽集2
TVサントラ 奥菜恵 堂島孝平 ザ・コレクターズ
日本コロムビア (1997-08-21)
売り上げランキング: 215,946


 半年後にリリースされた『音楽集 弐』には、音楽集1に収録できなかった佐橋氏の第三回、第四回録音の残りと、1997年6月3日に行われた第五回録音の劇伴を収録。"最低男、両津勘吉" "両津、痛快一発逆転!"は「クシコス・ポスト」(運動会のテーマによく使われるアレ)風、"奇妙な人々、世界から!"は「ロッキーのテーマ」をパロディしつつ、よりブラス・ロック感強めでアレンジしたスコアをふくむ。しっとりとした哀愁のピアノソロや、ボサノヴァタッチの軽快なスコアを13分にまとめた"春夏秋冬"。ギターとブラスが艶っぽいムードを醸す、そのままズバリなタイトルのアダルティーな"お色気"。人情味あふれるスコアを集めた"思い出"など、10トラック。また、第39話~第146話のオープニングテーマだった堂島孝平氏の"葛飾ラプソディー"と、第40話~第79話のエンディングテーマであった、奥菜恵さんの歌う"淑女(レディー)の夢は万華鏡"のそれぞれテレビサイズ版を収録しています。ちなみに"葛飾ラプソディー"は「THE FINAL」のオープニングテーマでもありました。そして"いいことあるさ"はこちらにもテレビサイズ版で収録されています。


こちら葛飾区亀有公園前派出所 音楽集 〔ANIMEX1200シリース゛ 163〕
TVサントラ ザ・コレクターズ
コロムビアミュージックエンタテインメント (2007-03-21)
売り上げランキング: 882


 2007年には音楽集1が日本コロムビアの廉価盤シリーズ〈ANIMEX 1200〉のタイトルのひとつとして再発されましたが、廉価仕様のため、旧盤サントラのライナーノーツに収録されていた秋本治氏や、米光氏、佐橋氏、フジテレビやASATSUの関係者各氏のコメント、前述した田神悠氏による音楽解説はすべてカットされています。とくに田神氏の解説は非常に読み応えのあるものなので、ぜひ旧盤を入手して一読いただきたい。また、音楽集 弐は現在もなお再発されておらず、中古市場で数万円台というプレミアアイテムとなっています。こちらもぜひ再発していただきたいところです。


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『こちら葛飾区亀有公園前派出所 音楽集』
[COCC-13669|1997.02.21|日本コロムビア]
[COCC-72243|2007.03.21|日本コロムビア(ANIMEX 1200シリーズ)] 再発盤

01. プロローグ (M20B、M26メロぬき)
02. サブタイトル (M25)
03. 両津出勤、遅刻ギリギリ! (M4A、M4B、M4C、M5A、M5B)
04. 両津のテーマ 1-1 (M1、M7-1、M7-2、M7-3、M7-4)
05. 両津のテーマ 1-2 (M7-5、M7-6、M7-7、M7-8、M7-9)
06. 大原部長 (Mナンバーなし[演歌]、M27、M32B)
07. 麗子 (M3、M23A、M28、M35)
08. 中川&本田 (M2、M31A1、M32A)
09. 日暮 (M31C、M31D、M33A)
10. 奇妙な人々 (M34A、M34B)
11. 意地の張り合い、ぶつかり合い (M31B、M33B、M33C)
12. 葛飾、大立ち回り! (M52、M67、M8、M28、M29、M16)
13. 両津のテーマ 2-1 (M1、M4、M5)
14. 両津のテーマ 2-2 (M12、M17、M22、M24)
15. 両津 VS 部長 (M30、M49、M18)
16. 最低男、両津勘吉 (M27、M32、M31、M46、M48)
17. 両津、痛快一発逆転! (M50、M23)
18. 本日の被害 (M18A、M18B)
19. 次回もよろしくな (M26)

20. いいことあるさ (TVサイズ) 
(作詞・作曲/加藤ひさし/編曲・歌:ザ・コレクターズ/編曲:伊藤銀次)


作編曲:
米光亮(1~11、18、19)
佐橋俊彦(12~17)

※カッコ内のMナンバーはライナーノーツの田神氏の解説を参照した。





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『こちら葛飾区亀有公園前派出所 音楽集 弐』
[COCC-14450|1997.08.21|日本コロムビア]


01. 「葛飾ラプソディー」(TVサイズ)
(作詞:森雪之丞/作曲・歌:堂島孝平/編曲:中山努・堂島孝平)

02. 両津のテーマ2-3
(第5回M14、M1B、M22B、第5回M12、第5回M13)

03. 奇妙な人々、世界から!
(第5回M32、第5回M34、第5回M19、第5回M18、第5回M16、M56、第5回M28、第5回M29)

04. 事件発生
(M6、M55、第5回M10、M51A、M33)

05. シリアスに追跡
(M13、M14、M26、M2、M63、M26、第5回M25、第5回M11)

06. コミカルに追いかけっこ
(第5回M1、第5回M6、M59、M9)

07. 「いいことあるさ」(TVサイズ)
(作詞・作曲/加藤ひさし/編曲・歌:ザ・コレクターズ/編曲:伊藤銀次)

08. 春夏秋冬
(M38、M45、M39、M43、M40、M41、M37、M42、M44、M36、M47)

09. お色気
(第5回M5、M7、M57、第5回M21)

10. 思い出
(第5回M4、第5回M7、第5回M8、M21)

11. 大騒ぎ
(第5回M30、M15、第5回M15)

12. “こち亀”のテーマ
(M53、M66、M62、M64)

13. 「淑女(レディー)の夢は万華鏡」(TVサイズ)
(作詞:森雪之丞/作曲:佐橋俊彦/編曲:岩本正樹/歌:奥菜恵)


作編曲:
佐橋俊彦(2~6、8~13)

※カッコ内のMナンバーはライナーノーツの田神氏の解説を参照した。
(「第5回」は1997年6月3日に行われた五回目の劇伴収録分)



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佐橋俊彦『クリス・クロス オリジナル・サウンドトラック』(1994)

2016年9月17日土曜日

全てのサウンドは……混沌の中。それが…… 『ドロヘドロ・オリジナル・サウンドトラック』(2016)




 現在、小学館〈ビッグコミックスピリッツ〉増刊「ヒバナ」にて連載中の、林田球による異形のダークファンタジーコミック「ドロヘドロ」(今月30日に最新21巻が刊行予定)のイメージサウンドトラック。2000年に、今はなき〈月刊IKKI〉で連載が始まってから十数年、「ありそうでなかった」企画がついに実現した一枚です。東京を拠点とするハードコア・ミュージック プロダクション「MURDER CHANNEL」のUme氏と、コミックス/アート/ホビー関係の企画・制作を手がけるプロダクション「MHz(メガヘルツ)」のメチクロ氏の企画&ディレクションのもと、60組近いの候補アーティストの中から林田氏が選び出した14組のアーティスト(期せずしてイギリス出身のアーティストが半分を占めた形に)へオファーし、コミックからインスピレーションを得た書き下ろし楽曲で構成された二枚組ヴォリュームの一大コンピレーション。パッケージ版は34cmの大判ハードカバー仕様。もちろん、ジャケットアートは林田氏による描きおろしです。




 そのダークでグロテスクでアヴァンギャルドな作品世界から、「ソッチ系」の音楽からの影響は容易に見て取ることができますが、林田氏もかつて、〈月刊IKKI〉のホームページ上に掲載された作家リレーメッセージ企画「このマンガはある曲からインスピレーションを受けて生まれました。その曲は歌詞がメチャクチャダークで凶暴なのにメロディーは踊りたくなるぐらい楽しいものでした。このイメージと自分の好きなものを色々とミックスして、ドロヘドロが現在の形になりました」とコメントされておりました。本イメージサントラもまさに渾沌たる様相をなしており、ダブ、ブレイクビーツ、アンビエント、ゴルジェ、サイケ、ヒップホップ、ドゥームメタル、エクスペリメンタル、ノイズ、インダストリアル ―― 日本、イギリス、ドイツ、フランス、オランダ、アメリカ ――と、参加した顔ぶれのジャンルも国籍もさまざまですが、各人がそれぞれのミクスチャーなカラーを全開にした手心一切ナシのトラックをぶつけてきているのがまた素晴らしい。なかにはそれまで「ドロヘドロ」を読んだことがなかったというアーティストもいたそうですが、コミックスを読んで即、参加を快諾したのだそうな。

 DISC1はどちらかというとアッパーチューン、そしてDISC2はよりディープでドープなトラックが中心となっています。インダストリアル・ドゥームメタルバンド khostはとびきり鈍重ズルズルなトラックを、エレクトロ・デュオ Shitwifeは享楽的なイメージに富むアッパーチューンを、Asian Dub FoundationのDr Dasはじっくりとした不敵なダブ/レゲエチューンを放ち、Igorrrはグロウルやソプラノがストリングスやノイジーなリフと絡んで邪悪な美しさをこれでもかと大仰に表出させ、Toki Takumiによるゴルジェサウンドユニット hanaliは人妻であり悪魔であるハルちゃんのイメージを楽曲に賑々しく散りばめ、Dead Faderは「カイマンの頭」と名づけた、約18分におよぶ本アルバム最長トラックを提供……などなど、異形ぞろいのアーティストサンプラーとしてもバツグンの強度を誇り、まさにスペシャルなアイテム。あらゆるサウンドを混沌の中に呑み込む。それが……ドロヘドロ!



『ドロヘドロ・オリジナルサウンドトラック』完成記念鼎談 [前半] – 林田球 x Ume x メチクロ

「DOROHEDORO Original soundtrack – 収録アーティスト紹介」
http://ghz.tokyo/2016/03/29/dorohedoro_ost_lineup1/
http://ghz.tokyo/2016/04/01/dorohedoro_ost_lineup2/
http://ghz.tokyo/2016/04/03/dorohedoro_ost_lineup3/


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『Dorohedoro Original Soundtrack』


【Disc 1】

1. Redacted Recalcitrant Repressed ― khost(イギリス)
2. Blaka Smoko ― VOODOOM(オランダ)
3. Dorohedoro Zombie Slushi ― Candie Hank(ドイツ)
4. Eating food and fighting Wizards ― Shitwife(イギリス)
5. Enter the Hole ― NAH(アメリカ)
6. She is a devil ― hanali(日本)
7. LIZARD HEAD ― Dr Das(イギリス)
8. Transformations ― Shackleton(イギリス)

【Disc 2】

01. Dorohedoro ― Igorrr(フランス)
02. The Hole ― Ghengis(日本)
03. Don't Think, Just Kill ― Roly Porter(イギリス)
04. Kaimans Head ― Dead Fader(イギリス)
05. Radio 538 ― Dow Jones Brotherhood(オランダ)
06. Stay down zombies! ― Ed Cox(イギリス)

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http://q-hayashida.com/
https://ja-jp.facebook.com/Murder-Channel-328088223957128/
http://m-hz.com/portfolio/




 また、GHzのサイトでは参加アーティストの情報やインタビューが数多く公開されており、非常に充実しております。それぞれが抱いた「ドロヘドロ」への印象のみならず、アーティストのルーツを知る上でも興味深く、必見の内容です。


Dead Fader – Exclusive Mix & Interview for “DOROHEDORO original soundtrack”
“DOROHEDORO OST Interview – NAH”
khost – Exclusive Mix & Interview for “DOROHEDORO original soundtrack”
▽hanali – Exclusive Mix & Interview for “DOROHEDORO original soundtrack”
Part .1 / Part. 2
▽DR DAS – Exclusive Mix & Interview for “DOROHEDORO original soundtrack”
Part. 1 / Part. 2
ROLY PORTER – Exclusive Interview for “DOROHEDORO original soundtrack”
Deformer(VOODOOM) – Exclusive Mix & Interview for “DOROHEDORO original soundtrack”


▼khost: https://khostband.bandcamp.com/
▼VOODOOM: https://voodoom.bandcamp.com/
▼Candle Hank(Patirc Catani): http://www.candiehank.com/
▼Shitwife: https://shitwife.bandcamp.com/
▼NAH: http://www.nahstuff.com/
▼hanali: http://soundcloud.com/hanali
▼Dr Das(from Asian Dub Foundation): https://drdas.bandcamp.com/
▼Shackleton: http://www.surefireagency.com/index.php/artist/shackleton/
▼Igorrr: http://www.igorrr.com/
▼Ghengis: https://soundcloud.com/ghengis_gorgonn
▼Roly Porter: http://www.rolyporter.com/
▼Dead Fader: https://deadfader.bandcamp.com/
▼Dow Jones Brotherhood: http://dowjonesbrotherhood.tumblr.com/
▼Ed Cox: https://soundcloud.com/ed-cox-life4land


ドロヘドロ 21 (BIC COMICS IKKI)
林田 球
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2016年9月16日金曜日

ヘヴィ、スムース、そしてファンキー。オーストラリアからの一撃 ― OSAKA PUNCH『Death Monster Super Squad』(2016)




 大阪とみせかけてオーストラリア・ブリスベン出身のミクスチャー・ポップ・バンド オーサカ・パンチ。2月にデビューシングル「Stonk」、5月にデビューアルバム『Voodoo Love Machine』を出し、わずか四ヶ月後にリリースされた2ndフルアルバム。メンバーはヴォーカル兼キーボード兼「おしゃべり顔面」担当のジャック、ベース兼「上腕二等筋」担当のブレント、ギター兼「毛」担当のクリスピー、そしてドラムス兼ヴォーカル兼「アティチュード」担当のデインの四人組。“Brutal Pop”を標榜し、「面白ければなんでもあり」のサウンドを体現。ヘヴィ&ファンキーなグルーヴと、スウィートなヴォーカル、そしてスムースなメロディがキメラ的に織り成すミクスチャー・ポップです。FAITH NO MOREをオシャレにしようとして、やっぱりゲテモノにしてしまった感もある。毎回メンバーの茶番と悪ふざけが盛り込まれたPVも愉快な仕上がり。また、Jordan 'J Tron" Lewerissa氏による、クリーチャーやロボットが跋扈するアートワークもまことに素晴らしい。ちなみに本作のジャケットに描かれた「デス・モンスター・スーパー・スクワッド」にはそれぞれ設定があるようで、公式サイトで順次公開されていくもよう(9月20日現在、ハリー“Make the Call”マンハッタン「ストンク」のプロフィールが公開ずみ。なかなかムチャクチャなことが書いてあります)。



http://osakapunch.com/
https://www.youtube.com/user/osakapunchofficial

2016年9月15日木曜日

《誰も死ぬ必要のないRPG》「Undertale」 世界各国のファンが贈る、一周年記念トリビュートアルバム



「The RPG Game Where You Don't Have to Destroy Anyone.」 をコンセプトに、トビー・フォックス氏のほぼ個人製作のもと、二年以上もの開発期間を経て2015年9月15日にsteamでリリースされたインディーズゲーム「Undertale」。国内外から大反響をもって迎えいれられ、100万ダウンロードを越えるヒットを記録。氏がつくりあげた世界観、キャラクター、シナリオ、楽曲の数々の忘れがたい魅力のもと、現在もなお着々とファンを増やし続けている2D RPG作品であります。

http://undertale.com/
http://store.steampowered.com/app/391540


「Undertale」公式サウンドトラック(77曲+隠しトラック)


「東方」と「MOTHER」と「真・女神転生」の”カクテル”、2D-RPG『Undertale』開発者Tobyfoxインタビュー
(from automaton.jp|2015.12.28)


 ファンアート、アレンジ/リミックスなどの二次創作も非常に盛んであり、リリース一周年を迎えた2016年9月15日の前後には、世界各国のファンがつくりあげたトリビュートアルバムが続々と登場しています。以下、いくつかご紹介。いずれも愛と情熱のこもった作品ぞろいで、改めて人気の高さをうかがわせます。







■過去には「ファイナルファンタジーVII」「ファイナルファンタジーVIII」などの大規模トリビュート企画なども行っているアメリカ・シアトルのゲームミュージックレーベル Materia Collectiveによるトリビュート企画『FALLEN: An Undertale Tribute』。同レーベルはさる7月にも全35曲収録のトリビュートアルバム『Straight from the Underground』をリリースしておりましたが、こちらは全97曲収録。ヴォーカルアレンジもあり、アメリカのみならず、世界各国から総勢400名以上のアレンジャー&パフォーマーが参加。レーベル史上最大規模のプロジェクトにまで発展しています。







■日本のファン有志によるトリビュートアルバム『Underveil』。アルバムは「CHAPTER I - GOLDEN FLOWER」「CHAPTER II - THE SOULS」「CHAPTER III - DETERMINATION」の三パートに分かれ、全20曲/20のアレンジャーが参加しています。下記サイトよりアルバムの無料ダウンロードが可能です。
http://underveil.unisphere.tv/







■オーストラリア・ゴールドコーストのサウンドユニット SerialSymphonyによるストリングス・アレンジ アルバム『Undertale (for String)』。ダウンロードは投げ銭。17曲を収録。







■ハワイ・ホノルルのコンポーザー/アレンジャー Kristoffersonによるエレクトロ・アンビエント アレンジEP『Winter in the Underground』。ダウンロードは投げ銭。7曲を収録。







■これまでに一枚のオリジナルアルバムと一枚のEPをリリースし、LSDJ、Famitracker、Nanoloopなどを駆使してグルーヴィーなエレクトロ・ポップ/チップチューンを制作しているアメリカ・コネティカットのコンポーザー/アレンジャー NanodeことSam Sherによる4曲入りリミックスEP『Hopes & Dreams』。ダウンロード版のほか、キュートなCDレーベルデザインをあしらったCD版も取り扱っています。







■ブラジル・リオデジャネイロのソロユニット The 6th Dimentional Toasterによるインストゥルメンタル・リミックス アルバム『ToasterTale』。16曲+ボーナストラック1曲収録。あの曲やこの曲も入れる予定だったけど、あくまで自分の好みで選曲したとのこと。







■アメリカ・ニューヨーク在住の若干13歳のコンポーザー/アレンジャー MrSmash64によるエレクトロ・リミックスEP『Under Mount Ebott』。ダウンロードは投げ銭。5曲+シークレットトラック3曲収録。"MEGALOVANIA"のリミックスも収録したかったそうですが、間に合わなかったので無念、とのこと。







■クラシカルなアレンジからエレクトロなアレンジまで幅広く手がけ、「ゼルダの伝説 ムジュラの仮面」の二次創作オペラスコアを現在製作しているというポルトガル・シントラのサウンドチーム M. BulteauによるアレンジEP『Undertones』。ヴァイオリンやコーラスも交えた、クレズマー/マヌーシュ・スウィング/クラシカルなアレンジを4曲収録。トリビュートもののなかでもひときわ異彩を放つ仕上がりです。

2016年9月14日水曜日

もう誰にも止められない、怒涛のエピックアドベンチャーメタル ― TWILIGHT FORCE『Heroes of Mighty Magic』(2016)

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「アドベンチャー・メタル」を標榜するスウェーデンのエピック/シンフォニック・メタル・バンド トワイライト・フォース。2011年に結成され、2014年4月にBlack Lodge Recordsよりデジタルシングル"The Power of the Ancient Force"をリリースし、同年7月にアルバム『Tales of Ancient Prophecies』でデビュー。エピック……というにはあまりにも妖しさとB級感にあふれすぎたヴィジュアルと、1990年代後期~2000年代前期ごろのRHAPSODY OF FIREを筆頭にDARK MOOR、NOCTURNAL RITES、DRAGONLANDなどを思わせるカタルシスあふれるサウンドに琴線をブチ抜かれるリスナーが続出。日本でもスピリチュアル・ビーストから同年9月に国内盤がリリースされ、またたく間に日本でも熱狂的ファンが生まれました。クライレオンを名乗るヴォーカルのクリスチャン・ヘデグレン(エリクソン)は、ほぼ同時期にデビューしたメロディック・ハード・ロック・バンド SUNSTRIKEのメンバーでもあり、そのほか、同郷のSABATONなど数々のバンドでその歌声を聴かせてきた折り紙つきの実力派。ドラムスのロベルト(ロッバン・バック)も、ASTRAL DOORS、ECLIPSE、SABATONなどでもプレイしてきた歴戦の手練です。ヴィジュアルとサウンドの双方にインパクトのあるバンド繋がりで、ALESTORMのクリストファー・ボウズにより2010年に結成されたスコットランド/スイス混成バンド GLORYHAMMERと比較されることも少なくないですが、あちらはゴッタ煮な世界観のスペース・ファンタジーを展開しはじめているのに対し、こちらはあくまでオーソドックスなヒロイック・ファンタジーを頑として踏襲しているのがミソです。




 それから約二年、待望の2ndアルバム『Heroes of Mighty Magic』が届けられました。ラインナップには変動があり、ロベルトの後任としてミステリアスな出で立ちのデ・アズシュが加入。また、もう一人のエルフ系ギタリスト エーレンディルが加入したことでツインギター編成になりました。ドイツの大手メタルレーベルNUCLEAR BLASTと契約したことも大きなポイントです。アーティスト写真は洗練され、さながら次なる町でグレードの高い装備を整えた勇者一行のごとき変貌を遂げました(弓を引いて飛んでるアーレンディルの躍動感たるや)。そして何より特筆すべきは、サウンドプロダクションの格段の向上でしょう。これでもかとシンフォニックなアレンジとクワイアコーラスで攻め立てるアレンジはより過剰さを増し、映画音楽的なゴージャスな表現にも富み、いい意味で垢抜けました。




 その訴求力とカタルシスたるや尋常のものではなく、かつてエピック/シンフォニック・メタルのリスナーだった手合いすらをも冒険のフィールドへと引き戻してしまうような、圧倒的なヴィジョンとパワーであふれかえっております。終盤の"Epilogue"こそ6分半に渡る長ーいモノローグを配していますが、それ以外はほとんど疾走チューンであり、ほとんどが山場というあまりにも潔すぎる構成。先行シングルであり、アルバム冒頭を飾る"Battle of Arcane Might"でいきなりクライマックス級のバトルを展開しており、もう笑うしかありません。曲の長短やペース配分という概念すらも彼方に消し飛んでおります。"There and Back Again"ではRHAPSODY OF FIRE、ANGRAのファビオ・リオーネ、"Heroes of Mighty Magic"では、前作に引き続きのゲスト参加となるSABATONのヨアキム・ブローデンをフィーチャーし、ともに10分近い大曲にさらなるドラマを与えています。"Powerwind" "Riders of the Dawn"のサビは大合唱必至でしょうし、"To the Star"「Call Your Name! Call Your Name!」のくだりは、超ライヴ映えしそうです。ラストの"Knights of Twilight's Might"はいわゆるトワイライトキングダム国歌斉唱であり、皆さんご起立のうえ、ご唱和ください。





 アルバムブックレットにはバンドメンバー六人の(ファンタジー世界の住人としての)生い立ちと、各種ステータス、そして“トワイライトキングダム”の全図を収録。ギタリストのリンドとキーボーディストのブラックウォルドはバンドサウンドの中核を担う存在なだけあって、生い立ちの記述も長めにとってあるのが面白い。ステータスに関してはもはや完全にTRPGにおける「キャラクターシート」であり、レベル、種族、クラス、各種パラメータ、装備、特殊スキルまで細かく記載。こだわり、ここに極まれりといったところです……曲並みに時間をかけているのではなかろうか。メンバーの中で一番謎めいているデ・アズシュ氏(種族:ソウルシーカー/クラス:エーテル体)がパーティー内で一番の高レベル(レベル10)で、エーテル体なのでバイタリティの値が「∞」というところもツボでした。







 つまるところ本作は「超つよいアルバム」なのです。「速い!」「クサい!」「派手!」をギッシリ詰め込んだアドベンチャーサウンドの前には、もはや語彙力がファービヨンドザスカイズしてしまわざるをえません。そもそも、あの新アーティスト写真でバッチリとキメこんだ時点で、TWILIGHT FORCEの勝利は絶対的に約束されたも同然だったのです……。バンドはこの後、10月にSONATA ARCTICAのサポートアクト(一年ぶり二度目)としてヨーロッパをツアーし、来年2017年には盟友SABATONとのツアーを予定しています。彼らの快進撃は、まだまだ止まりません。


http://www.officialknights.com/
https://www.facebook.com/twilightforce/

TWILIGHT FORCE - Spiritual Beast





 せっかくなので、アートワークについても言及しておきたいです。デビューアルバム『Tales of Ancient Prophecies』のジャケットイラストは、ジャック・ヨーヴィル(キム・ニューマン)の『吸血鬼ジュヌヴィエーヴ』『Beast in Velvet』(ともにウォーハンマーノベル)などのブックカバーイラストや、BAL-SAGOTH、ORANGE GOBLIN、TWISTED TOWER DIREなど数々のメタルバンドのジャケットアートも手がけるマーティン・ハンフォードによるもの(『ウォーリーをさがせ!』のイラストレーターであるマーティン・ハンドフォードと混同されますが、もちろん別人)。

http://martinhanford1974.deviantart.com/




 2ndアルバム『Heroes of Mighty Magic』のジャケットとメンバーイラストを手がけたのは、トルコ在住のカレム・ベイト(Karem Beyit)。ブリザード・エンターテイメント開発の戦略カードゲーム「ハースストーンHearthstone: Heroes of Warcraft」のイラストレーターでもあり、タッド・ウィリアムズ『テイルチェイサーの歌』『A Witch at Ordinary Farm』などのファンタジー小説のカバーイラストも手がける御仁。VAN CANTOのリーダーとヨルグ・マイケルが組んだジャーマン・パワーメタル・バンド HEAVATARのアルバムジャケットも氏による仕事です。

http://kerembeyit.daportfolio.com/
http://kerembeyit.deviantart.com


2016年9月13日火曜日

初期のゲームフリークを代表する作品「ジェリーボーイ」 発売25周年




 企画:ゲームフリーク、開発:システムサコムのもと製作され、1991年にEPICソニーから発売されたスーパーファミコン用アクションゲーム「ジェリーボーイ」。悪の魔法使いによってスライムに変えられてしまった王子ジェリー・ビーンの16ステージにわたる冒険を描く同作は、今年の9月13日で発売25周年を迎えました。ゲームデザイン/ストーリーは田尻智氏(現 ゲームフリーク代表取締役社長)と杉森建氏(同 取締役/アートディレクター)。リリース後、1992年にかけて〈ファミリーコンピュータMagazine〉誌上で杉森氏によるコミカライズが連載され、1993年に単行本が徳間書店インターメディアより刊行されました(2014年に『杉森建の仕事』に再録)。「ポケットモンスター」以前のゲームフリークのオリジナルタイトルとして、「クインティ」(1989/ファミコン)、「パルスマン」(1994/メガドライブ)と並ぶ代表作です。


ジェリーボーイ
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The Making of Jerry Boy: An Interview with its Creators
(『ジェリーボーイ』(トクマインターメディアコミックス)に収録された、田尻智氏、杉森建氏、とみさわ昭仁氏の対談テキスト)


「ジェリーボーイ」(1991)BGM集



 黎明期ゲームフリークを語る上で避けては通れない同作ですが、コンポーザーの顔ぶれにも注目です。メインコンポーザーは福田裕彦氏。アシスタントコンポーザーはシステムサコムの斎藤学氏、そして山岡晃氏。この後「天外魔境II 卍MARU」「スーパーボンバーマン2」「エメラルドドラゴン」を手がけられる福田氏。「ユーフォリー」「幽霊君」「38万キロの虚空」など、数多くのシステムサコム作品を手がけてきたコンポーザーであり、翌1992年に22歳の若さでこの世を去った斎藤氏。この後 コナミに入社し、〈サイレントヒル〉シリーズのコンポーザー/プロデューサーを担当される山岡氏。以上の三人が携わられていたというのも興味深く思います。


「ジェリーボーイ」エンディングクレジット


HIROHIKO FUKUDA(福田裕彦)

MANABU SAITO(斎藤学)
AKIRA YAMAOKA(山岡晃)



「ジェリーボーイ2」(1994) BGM集



 1994年には続編である「ジェリーボーイ2 ちょっとあぶない遊園地」の発売が予定されていましたが、最終的に発売中止となりました。しかしほぼ完成していたそうで、ベータ版のROMはいつの間にか流出しており、今ではソフトの全貌はほぼ明らかとなっています。当時、電気グルーヴの一員だった砂原良徳氏(現 METAFIVE)がメインコンポーザーとして参加されていたというのも特筆すべきポイントでしょう。古本鉄也氏、藤澤孝史氏との共作であり、誰がどの曲を担当されたのかは不明ですが、曲を聴いてみるとだいたいのアタリをつけることはできます。そして1994年といえば、メガドライブで「パルスマン」が出た年でもあり、佐藤大氏と砂原良徳氏のユニット【ステレオタイプ】による同作のイメージCD『エレクトレース パルスマン』がリリースされています。


ジェリーボーイ2 クレジット



YOSHINORI SUNAHARA(砂原良徳)
TETSUYA FURUMOTO(古本鉄也)
TAKAFUMI FUJISAWA(藤澤孝史)



「Chris Covell's Jerry Boy/Smart Ball Tribute Page」
海外のジェリーボーイ ファンページ

2016年9月10日土曜日

シュルレアリスムの鬼才と電子音楽の異才による超大作「オペラ・ポエム」 ― Salvador Dali & Igor Wakhévitch 『Être Dieu』(1974)



 泣く子も黙るシュルレアリスム芸術の鬼才 サルヴァドール・ダリが、フランス電子音楽界の異才 イゴール・ワッケビッチと組んで制作した、最初で最後の「オペラ・ポエム」作品『Être Dieu』(To Be God)というものがあります。構想自体は1927年ごろにまでさかのぼり、親交の深かった詩人 フェデリコ・ガルシア・ロルカとマドリッドのカフェで過ごしたある日の午後のひとときがすべての始まりとなったそうな。その後、1974年に本格的な制作がすすめられ、日本でもいくつか翻訳が紹介されている〈私立探偵カルバイヨ〉シリーズで知られるスペインの作家 マヌエル・バスケス・モンタルバンが台本を書いています。レコーディングされた音源は1985年にシリアルナンバー付きの500枚限定でリリースされ、その後、1989年にスペインのDCDレーベルからそれぞれ三枚組のLP/CD盤がリリース。1992年にはドイツのEurostarレーベルから、326ページブックレット付きの箱入り特装版でリリースされ、いすれも超プレミアアイテムとして現在も中古市場で取引されています。ブート盤でも出回っており、こちらは二枚のCD-Rに三枚分の音源を無理やり収録した仕様になっています。




 日本ではあまり馴染みのない名前ですが、イゴール・ワッケビッチという人も並々ならぬキャリアの持ち主です。ミュージック・コンクレートの創始者であるピエール・シェフェールに師事。テリー・ライリーや、PINK FLOYD、SOFT MACHINEの面々とも繋がりを持っていたコンポーザー/アレンジャーであり、彼が70年代に精力的に発表した6枚のソロアルバムは、いずれもサイケデリック・ロックとエレクトロニクス・ミュージックの実験的作品でありました。その時に凄まじい瘴気を放つサウンドは後年、NURSE WITH WOUNDやSWANSといったアヴァンギャルド・ロック・シーンの面々の熱烈な賛辞もあり、再評価に火がついたというのもむべなるかな。イゴールはその後、2000年初頭までインドに移住し、現地の巨匠たちとの親交を深めてゆきます。





『Être Dieu』には、オーケストラアンサンブルやロックバンド、オペラシンガー、俳優をフィーチャーし、それぞれ二十数分のポエムリーディング&インプロヴィゼーションが6つのパートに渡って収録されています。ストーリーは、ブリジット・バルドーがアーティチョークと化し、エカチェリーナ二世とマリリン・モンローがストリップショーを行うというブッ飛んだものだそうで、ダリ自身もヴォイスアクターとして参加し、「神」を演じています。また、参加俳優には、「ノートルダムのせむし男」「甘い生活」「エマニエル夫人」などへの出演で知られるアラン・キュニーや、「パリは霧にぬれて」「アラン・ドロン 私刑警察」などのレイモン・ジェロームの名もあります。



「Être Dieu  The grand opera dreamed by Dali」 - Net Shop Susa


  非常につかみどころのない構成です。グロテスクであり、エロティックであり、そしてデカダンである。そしてその間を縫うように、ワッケビッチの手によるアレンジやシンセサイザーサウンドが抽象的で宇宙的な空間を創出していきます。第三パートではエレクトリックなジャズ・ロック サウンドもフィーチャーされ、フランソワーズ・アルディやフランス・ギャルなどへの楽曲提供なども行っているシンガーソングライターのジャン・ピエール・キャステラン(guitar)や、ブラス・ロック・バンド ZOOのミシェル・リポーシェ(violin)、プログレッシヴ・ロック・バンド HELDONのディディエ・バタール(bass)とフランシス・オーガー(drums)が演奏メンバーとして名を連ねているところも興味深いところです。第五パートでは"メイプル・リーフ・ラグ"の断片や女性のあえぎ声、小刻みなパーカッションパートなどもフィーチャーされ、いかがわしさが増してきます。最終楽章では弦楽アンサンブルが急転直下を告げるかのようなスリリングな演奏を繰り広げ、荘厳なコーラスパートを経て、ダリは妻のガラの名前を連呼し、フィナーレを迎えます。




http://www.salvador-dali.org/dali/en_bio-dali/
http://www.igorwakhevitch.org/


サルヴァドール・ダリの芸術は二十世紀を包み込むメタファーだ。彼の天賦の才能のなかでは、精神病理学の教科書から読み上げられる式次に従って、排泄物で汚された祭壇の前で理性と悪夢の結婚式が挙行されている――。

J・G・バラード「汚れなきパラノイア」(木原善彦訳)より
["Salvador Dali: The Innocent as Paranoid"〈New Worlds Science Fiction〉No. 187 (Feb.1969) ]
『J・G・バラードの千年王国ユーザーズガイド』(白揚社刊)収録

2016年9月9日金曜日

凝りに凝りまくったセックス讃歌 ― NINJA SEX PARTYが大作ポップオペラ「6969」のPVを公開

ニンジャとセックスのパーティー! アメリカのコメディポップデュオ ― NINJA SEX PARTY
 

http://ninjasexparty.com/

 わが道を行くバカっぷりとこだわりのアレンジの効いたサウンドで全米のティーンからの圧倒的支持を集める、ダニー・セックスバンとニンジャ・ブライアンによるエレクトロ・ポップス・ユニット NINJA SEX PARTY。今年3月には絶妙な選曲センスが炸裂したカヴァーアルバム『Under the Covers』をリリースした彼らですが、先ごろ、9月8日付けで"6969"とPVを公開しました。PVは公開後わずか一日足らずでPV数 500,000を軽々と突破し、現在もなお凄まじい勢いで増え続けております。ちなみに同曲は昨年リリースのアルバム『Attitude City』のハイライトとなった曲。そのタイトルとキーヴィジュアルからRUSHの金字塔的コンセプトアルバム『西暦2112』のパロディだというのは一目瞭然で、原曲にならってこちらも七部構成(ほんとこの人たちはRUSH好きだなと)という趣向なのですが、ふたを開けてみればストーリーはナナメ上にブチ抜けており、セックスあふれるユートピアを夢見て旅立ったはずがセックスのないディストピアにたどり着いてしまった二人の(色々な意味で)アツい闘いを描いています。これでもかと頻出する「dick」「fuck」ワードと、セックスの喜びを凝りに凝りまくったアレンジで8分半に渡って高らかに歌い上げる、「Danny Sexbang」のネーミングの面目躍如たる大作ポップオペラ。PVもPVで無駄にメタファーまみれで無駄に力を入れており、「EAT DICKS」ちんぽ長老評議会(Council of Dick Elders)抑圧的ちんぽ政権(Oppressive Dick Regime)A-COCK-olypse(アチンポカリプス)などのパワーワードを視覚的にもナチュラルにブッこんでくるので、率直に言って最高に狂ってると思います(褒め言葉)。ご堪能あれ。





 "6969"

[OVERTURE]

[Narrator:] Somewhere deep in the slow, eternal depths of the heavens drifts a planet called simply "Earth"
And among the otherwise unremarkable population of this planet are two incredible heroes, destined to save the future from itself

[Danny Sexbang:] Hey Ninja Brian, I made a time machine spaceship. You... wanna go on it?
[Ninja Brian:]...
[Dan:] Yeah, okay cool

Soaring through the galaxy, the stars and sky align
The speed of light's for pussies; we're going at the speed of Brian
Flying towards the sexual peak of history and time
Computer, set a sexy course for the sexiest year

Sixty-nine
Sixty-nine
(Sixty-nine) I've got my space suit
(Sixty-nine) And ninety pounds of space lube

Crossing through into a fuckin' worm hole beyond the Milky Way
That shit's far
To a time of Earth so far into the future where everyone gets laid
Twice as hard
We're noble knights of honor on a fierce and sultry butt crusade
Here we are

Open the bay doors and let's live the dream
Give the world a double team
I bet it's a billion person orgy in an ocean of whipped cream

[SOLILOQUY]

Wait, this place isn't sexy at all!
And this robot sign says human touch has been outlawed

I can't believe my eyes, but it's a world without sex
Everyone here just wears full length pants and loose fitting turtlenecks
Men and women wave to each other from a respectable distance
Without the thrill of boning, what is life?
We must speak to the Council of Dick Elders tonight

[CONFRONTATION]

[Dan:] Excuse me, Dick Elders?
[Dick Elder Michael Starr:] What do you want?
[Dan:] I know it's most unusual to come before you so
But the planet Earth sucks balls now that no one's allowed to bone
We've come from the past to introduce you to ass
[Dick Elder:] Wait! You're Ninja Sex Party! You will ruin our plans!
Guards! Sound the alarms!
If people have sex, they'll break a thousand-year spell
There'll be a revolution and they'll think for themselves
We control this planet of unsatisfied wood
Why does being evil always feel so damn good?

[Dan:] Fuck that bullshit, we'll make it right
Get ready for a sexy fight
My dick's the spark of hope and a revolution shall ignite (tonight)
We're taking flight, we have to find a girl
[Dick Elder:] Shoot the fucking lasers!
Shoot the fucking lasers at 'em!
[Dan:] Show her what it means to love, and fix this broken world
[Dick Elder:] All the fuckin lasers!
All the fuckin lasers at 'em!
[Dan:] A new sex king will rule; let the boner banners be unfurled

[DISCOVERY]

[Dan:] Ninja Brian, look at that girl with the sad eyes and the beautiful blonde hair. I'm immediately in love!

(Sixty-nine) She spent a life all alone
(Sixty-nine) Wanna take her to the bone zone
(Sixty-nine) Make her feel the pleasure
(Sixty-nine) On a lonely treasure

I can't believe my eyes, but you're the girl of my dreams
Let's both tear all of our clothes off like two pants-hating wolverines
The love we make will save the Earth from this oppressive dick regime

We're having sex now
To change the world
You brought your friends now
Oh shit, they're girls!

[REVOLUTION]

I think it's obvious that people liked our sexy show
A multi-billion person orgy has broken out all across the globe
The human race, much like my junk, will now be free to grow (let's go!)

But what about the Elders?
We tore their world to shreds
Maybe they'll be cool with it
Oh hey, Dick Elders! How's it goin'?

[Dick Elder:] You two are fucking dead!

[ESCAPE]

[Dan:] So much for that, it's time to put on pants
And run away from their Death Army which is starting to advance
[Dick Elder:] Shoot the fuckin' lasers!
Way more fuckin' lasers at 'em!
[Dan:] We can't die, we're way too young
And there are so many girls to bone
[Dick Elder:] Shoot the fuckin' lasers!
Way more fuckin' lasers at 'em!
[Dan:] But now we're cornered with our backs against the wall!

[Dick Elder:] It's all over, Danny Sexbang! Your time has come!
But first, we're gonna take care of your ninja friend, here!
[Slash:] Aaaaaaahhhhh!
[Dan:] Goddamn, Brian, you killed them all
Now the empire will fall
I have to say in retrospect that was easier than I thought! (oh yeah!)

[FAREWELL]

Our work here's done, the future is secure
But my girl and I have one last farewell slam just to be sure
For underneath those rockin' boobs lies a heart that is so pure

[Dan:]
Take care of this world for me, my darling, I will always love you
... What is your name by the way? Kristen? Ah, a beautiful name
Until that glorious day when we meet again, Katie, farewell!

Now let us fly into the night sky
And we'll raise a glass to ass in a final goodbye
To sixty-nine, sixty-nine
Sixty-nine sixty-nine
(Sixty-nine) Let us be gone
(Sixty-nine) Our quest is life-long
(Sixty-nine) It's a sexy destiny so let's rock the fuck on
Sixty-nine, sixty-nine

Fuck yeah
Fuck yeah