2016年9月18日日曜日

米光亮、佐橋俊彦『こちら葛飾区亀有公園前派出所 音楽集(1・2)』(1997)

こちら葛飾区亀有公園前派出所 200 特装版 40周年記念 (ジャンプコミックス)
秋本 治
集英社 (2016-09-17)
売り上げランキング: 7


 1976年9月より《週間少年ジャンプ》で連載が開始され、2016年9月で連載終了。単行本第200巻をもって完結となった、秋本治の長期連載コミック「こちら葛飾区亀有公園前派出所」。アニメ版は1985年にジャンプのイベントのために短編として二本制作され、その後、コミックスが第100巻目を迎えた1996年に、両津勘吉のCVにラサール石井氏を起用したテレビシリーズが同年6月16日から2004年12月19日にかけてフジテレビ系列で放映(全330話)され、1999年と2003年には劇場版(「THE MOVIE」)が制作。その後、2005年から2008年にかけてテレビスペシャル(全13話)が不定期で放映されました。そして本日9月18日、約8年ぶり、通産第14話目となるテレビスペシャル「THE FINAL 両津勘吉最後の日」が放映され、久々に動くアニメ版両さんの姿を拝め、おなじみのBGMの数々を耳にするところとなりました。



(ちなみにこの予告映像で使用されているのは米光氏作曲のスコア"M4A")


「こちら葛飾区亀有公園前派出所」音楽集
TVサントラ ザ・コレクターズ
日本コロムビア (1997-02-21)
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 アニメ版こち亀の劇伴を手がけたのは、光GENJIや沢田聖子、広瀬香美などのJ-POPや、ナムコや日本ファルコムのゲームミュージックアレンジでおなじみの米光亮氏と、ドラマ、ゲーム、アニメ、特撮などの劇伴関係の仕事を数多く抱え、売れっ子としてますます頭角をあらわしていた佐橋俊彦氏のお二人。最初は米光氏作曲のスコアのみ使用されていましたが、第13話以降に追加された劇伴は佐橋氏が担当されています。各トラックは複数のスコア(それぞれMナンバーで表記)で一曲という構成をなしており、旧盤ライナーノーツでは構成を担当された田神悠氏による充実の楽曲解説が収録されています。第一回、第二回の録音で計60曲が用意された米光氏のスコアは朗らかでコメディタッチの軽音楽スコアが中心ですが、チェイスシーンで頻繁に使用される"両津出勤、遅刻ギリギリ!"ではバキバキのハードフュージョンチューン(M4A)が仕込まれており、メリハリたっぷりの仕上がりはさすが米光氏だなと感じさせます(そのあと、「刑事スタスキー&ハッチのテーマ」風のスコアがくるのがまたなんともシャレています)。また、"奇妙な人々"は「ピンクパンサーのテーマ」風。第三回~第五回の録音で計75曲が用意された佐橋氏のスコアは、得意のストリングス、ブラスを駆使し、バラエティ豊かな仕上がり。米光氏のスコア同様、ちょっとしたパロディも仕込まれており、エレクトリックギターがハードなプレイを聴かせる"葛飾、大立ち回り!"は思いっきりディープ・パープルの「ハイウェイスター」ですし、ほかにもジグソーの「スカイ・ハイ」がシレっと紛れ込んでいたり、ネタはけっこう枚挙にいとまがないです。ラストには第13話~第39話のエンディングテーマだった、ザ・コレクターズの"いいことあるさ"をテレビサイズ版で収録。


「こちら葛飾区亀有公園前派出所」音楽集2
TVサントラ 奥菜恵 堂島孝平 ザ・コレクターズ
日本コロムビア (1997-08-21)
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 半年後にリリースされた『音楽集 弐』には、音楽集1に収録できなかった佐橋氏の第三回、第四回録音の残りと、1997年6月3日に行われた第五回録音の劇伴を収録。"最低男、両津勘吉" "両津、痛快一発逆転!"は「クシコス・ポスト」(運動会のテーマによく使われるアレ)風、"奇妙な人々、世界から!"は「ロッキーのテーマ」をパロディしつつ、よりブラス・ロック感強めでアレンジしたスコアをふくむ。しっとりとした哀愁のピアノソロや、ボサノヴァタッチの軽快なスコアを13分にまとめた"春夏秋冬"。ギターとブラスが艶っぽいムードを醸す、そのままズバリなタイトルのアダルティーな"お色気"。人情味あふれるスコアを集めた"思い出"など、10トラック。また、第39話~第146話のオープニングテーマだった堂島孝平氏の"葛飾ラプソディー"と、第40話~第79話のエンディングテーマであった、奥菜恵さんの歌う"淑女(レディー)の夢は万華鏡"のそれぞれテレビサイズ版を収録しています。ちなみに"葛飾ラプソディー"は「THE FINAL」のオープニングテーマでもありました。そして"いいことあるさ"はこちらにもテレビサイズ版で収録されています。


こちら葛飾区亀有公園前派出所 音楽集 〔ANIMEX1200シリース゛ 163〕
TVサントラ ザ・コレクターズ
コロムビアミュージックエンタテインメント (2007-03-21)
売り上げランキング: 882


 2007年には音楽集1が日本コロムビアの廉価盤シリーズ〈ANIMEX 1200〉のタイトルのひとつとして再発されましたが、廉価仕様のため、旧盤サントラのライナーノーツに収録されていた秋本治氏や、米光氏、佐橋氏、フジテレビやASATSUの関係者各氏のコメント、前述した田神悠氏による音楽解説はすべてカットされています。とくに田神氏の解説は非常に読み応えのあるものなので、ぜひ旧盤を入手して一読いただきたい。また、音楽集 弐は現在もなお再発されておらず、中古市場で数万円台というプレミアアイテムとなっています。こちらもぜひ再発していただきたいところです。


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『こちら葛飾区亀有公園前派出所 音楽集』
[COCC-13669|1997.02.21|日本コロムビア]
[COCC-72243|2007.03.21|日本コロムビア(ANIMEX 1200シリーズ)] 再発盤

01. プロローグ (M20B、M26メロぬき)
02. サブタイトル (M25)
03. 両津出勤、遅刻ギリギリ! (M4A、M4B、M4C、M5A、M5B)
04. 両津のテーマ 1-1 (M1、M7-1、M7-2、M7-3、M7-4)
05. 両津のテーマ 1-2 (M7-5、M7-6、M7-7、M7-8、M7-9)
06. 大原部長 (Mナンバーなし[演歌]、M27、M32B)
07. 麗子 (M3、M23A、M28、M35)
08. 中川&本田 (M2、M31A1、M32A)
09. 日暮 (M31C、M31D、M33A)
10. 奇妙な人々 (M34A、M34B)
11. 意地の張り合い、ぶつかり合い (M31B、M33B、M33C)
12. 葛飾、大立ち回り! (M52、M67、M8、M28、M29、M16)
13. 両津のテーマ 2-1 (M1、M4、M5)
14. 両津のテーマ 2-2 (M12、M17、M22、M24)
15. 両津 VS 部長 (M30、M49、M18)
16. 最低男、両津勘吉 (M27、M32、M31、M46、M48)
17. 両津、痛快一発逆転! (M50、M23)
18. 本日の被害 (M18A、M18B)
19. 次回もよろしくな (M26)

20. いいことあるさ (TVサイズ) 
(作詞・作曲/加藤ひさし/編曲・歌:ザ・コレクターズ/編曲:伊藤銀次)


作編曲:
米光亮(1~11、18、19)
佐橋俊彦(12~17)

※カッコ内のMナンバーはライナーノーツの田神氏の解説を参照した。





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『こちら葛飾区亀有公園前派出所 音楽集 弐』
[COCC-14450|1997.08.21|日本コロムビア]


01. 「葛飾ラプソディー」(TVサイズ)
(作詞:森雪之丞/作曲・歌:堂島孝平/編曲:中山努・堂島孝平)

02. 両津のテーマ2-3
(第5回M14、M1B、M22B、第5回M12、第5回M13)

03. 奇妙な人々、世界から!
(第5回M32、第5回M34、第5回M19、第5回M18、第5回M16、M56、第5回M28、第5回M29)

04. 事件発生
(M6、M55、第5回M10、M51A、M33)

05. シリアスに追跡
(M13、M14、M26、M2、M63、M26、第5回M25、第5回M11)

06. コミカルに追いかけっこ
(第5回M1、第5回M6、M59、M9)

07. 「いいことあるさ」(TVサイズ)
(作詞・作曲/加藤ひさし/編曲・歌:ザ・コレクターズ/編曲:伊藤銀次)

08. 春夏秋冬
(M38、M45、M39、M43、M40、M41、M37、M42、M44、M36、M47)

09. お色気
(第5回M5、M7、M57、第5回M21)

10. 思い出
(第5回M4、第5回M7、第5回M8、M21)

11. 大騒ぎ
(第5回M30、M15、第5回M15)

12. “こち亀”のテーマ
(M53、M66、M62、M64)

13. 「淑女(レディー)の夢は万華鏡」(TVサイズ)
(作詞:森雪之丞/作曲:佐橋俊彦/編曲:岩本正樹/歌:奥菜恵)


作編曲:
佐橋俊彦(2~6、8~13)

※カッコ内のMナンバーはライナーノーツの田神氏の解説を参照した。
(「第5回」は1997年6月3日に行われた五回目の劇伴収録分)



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佐橋俊彦『クリス・クロス オリジナル・サウンドトラック』(1994)