2016年8月31日水曜日

日常に柔らかに寄り添う、カラフルなヴァイオリン・ポップ サウンド ― スイスカメラ『酸素と丘とレンズ』(2016)

酸素と丘とレンズ
酸素と丘とレンズ
posted with amazlet at 16.08.30
スイスカメラ
DOG AND ME RECORDS (2016-08-10)
売り上げランキング: 25,512


 シンガーソングライター、ヴァイオリニストの梶山織江さんと、ミュージシャン、歌人、怪奇・幻想文学翻訳家、小説家、アンソロジストと多くの顔を持つ西崎憲氏を中心に、ベーシストの阿部昭彦氏とドラマーの川島浩平氏を擁する四人組ヴァイオリン・ポップバンド スイスカメラ。梶山さんも西崎氏もその活動キャリアは長く、梶山さんはヒートウェイブのアルバム『1995』(1995)や、SIONトリビュートアルバム『Ain't Nothing I Can Do』(1995)への参加や、岩井俊二監督の初期映像作品、小林沙苗さんの"永遠の祈りを捧げて"(2003)、堀江由衣さんの"お気に入りの自転車"(2003)などの楽曲提供を。一方の西崎氏は、古くは、姫神 With YAS-KAZ『まほろば』(1984)への奏者としての参加、うしろゆびさされ組"女学生の決意"(1985)、おニャン子クラブ"シーサイド・セッション"(1986)の楽曲提供などを手がけられております。そのほか、梶山&西崎コンビによる仕事では、鈴木真仁さんのアルバム『絶対少年』(1997)、野中藍さんのデビューシングル「夢のドライブ」(2005)、堀江由衣さんのアルバム収録曲"day by day"(2005)などがあります。ネオ・アコースティックやギターポップ系レーベルであるdog and me recordsから作品をリリースしているスイスカメラのサウンドは、各メンバーのバックグラウンドや多方面な活動からのフィードバックもあり、鮮やかな魅力をたっぷりと含みこんでいます。

 本作『酸素と丘とレンズ』は、2002年の4曲入りミニアルバム「about our life」以来、約14年ぶりのリリースとなった1stフルアルバム。梶山さんの颯爽としたヴァイオリンのメロディとやさしい歌声、そして日常のすきまや人間模様をふわりとくすぐっていく詞世界を中心に、サックス、フルートなどの金管楽器やコーラスなどのアレンジがさりげなく顔を出す。非常に丁寧に練りこまれたサウンドです。疾走感あふれるロックチューン"車の時間"や、ドリーミーなアレンジの"サイダーレイン"。ややアンニュイなトーンのヴォーカルと躍動的な楽曲の対比が絶妙な"はじめてだこんな気持ち"。B級映画風の導入で幕開けする、ひとときのシネマティックなアドベンチャー"ムービートラベル"も好きですが、ひときわ印象的に映ったのは"アニメの世界"。ハッとさせられるメロディやアレンジもさることながら、「背丈と同じ長さのアンテナで 世界の電波を集めている」「4コマ漫画では終われない 複雑なんだ毎日は」のフレーズにグッときます。また、西崎氏の作詞作曲による"あの時ぼくは青空を汚したかったんだ"は、ギター、ヴァイオリン、コーラスが一体となってじんわりと迫るスロウバラード。日常に優しくそっと寄り添う楽曲群は、何度も身をゆだね、聴きかえしたくなります。「これはポップ&ロックへの新しい挨拶です」というのは帯のキャッチフレーズですが、こちらもつい「新しい挨拶」で応えたくなる、そんなサウンドです。また、CDの盤面には西崎氏による掌編があしらわれており、アルバムタイトルへと有機的に繋がっています。




http://dog-and-me.d.dooo.jp/swiss_camera2.html
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《関連》

『サウンドコミックス 月のうまれる夜』(1996)
ドラマCDアルバム。結城比呂(優希比呂)氏と関智一氏のヴォーカルによるヴァイオリンポップチューン"君の瞳だけ映してる"の作曲を梶山さん、編曲を西崎氏が手がけております。

『がんばれ!ご主人様 オリジナルアルバム』(1992)
西崎氏が作曲&ヴォーカルで参加。

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