2016年7月4日月曜日

マイケル・ムアコックの音楽活動について ― Michael Moorcock & The Deep Fix『New Worlds Fair』(1975)

The New World's Fair
The New World's Fair
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Michael & Moorcock
Esote (2008-02-08)
売り上げランキング: 877,354


 エルリック、コルム、ホークムーンなどの永遠の戦士たちの活躍を描いた一大ヒロイック・ファンタジー〈エターナル・チャンピオン〉シリーズを創り上げた作家にして、1964年に創刊した雑誌《New Worlds》誌の編集長をつとめ、「ニューウェイヴSF」の興隆に貢献。ミュージシャンとして、またHAWKWINDのコンセプトにも携わる重要人物としても知られるマイケル・ムアコックが、自身のバンド「The Deep Fix」名義で1975年3月にリリースした唯一のアルバム。アルバムジャケットは、初期HAWKWINDのアートワークを手がけたバーニー・バブルズによるもの。また、ムアコックも参加したHAWKWINDの傑作『Warrior on the Edge of Time (絶体絶命)』が発表されたのもこの年(リリースは5月)です。バンド名のThe Deep Fixは、ムアコックがジェームズ・コルヴィン名義で1966年に刊行した同名の短編集が由来。スティーヴ・ギルモア(guitar. vocal)と、《New Worlds》誌の編集者だったグラハム・チャーノック(guitar. vocal)がメンバーで、ムアコックはヴォーカルのほか、ギター/バンジョー/マンドリンも弾いています。そのほか、HAWKWINDのデイヴ・ブロック、アラン・パウエル、サイモン・キング、HIGH TIDE~THIRD EAR BANDのピート・パヴリ(cello. bass)&サイモン・ハウス(violin)、PINK FLOYDのツアーやTHIN LIZZYのレコーディングなどに参加したスノーウィ・ホワイト(guitar)、GONZALEZのクマ原田(bass)といった面々がゲストで参加。気心の知れた仲間同士で繰り広げられるサイケデリック・ロック、カントリー、スワンプ・ロックをマイペースに繰り広げています。やはりポエトリーリーディングもあり。ユルさでいえば、HAWKWINDよりもユルいです。ヘタウマというのもちょっとはばかられるようなヨレ気味のムアコックのヴォーカルに弦の響きがたゆたう"Fair Dealer" "Dude's Dream (Rolling In The Ruins)"や、6分半という長めの尺をとった叙情プログレ調の"Ferris Wheel"の味がなかなか。ヴァイオリン、メロトロンのみならず編曲も担当しているサイモン・ハウスのよい仕事があちこちで光ります。





 『New Worlds Fair』は1995年にアメリカのGriffin MusicとイギリスのDojo Recordsよりボーナストラックを四曲追加し再発されます。追加されたのは、"Candy Floss Cowboy"のデモヴァージョン、1980年にシングルリリースされた"Dodgem Dude" "Starcruiser"、1982年にシングルリリースされた"The Brothel In Rosenstrasse"。また、アメリカ盤はムアコックへのインタビュー集『Death is No Obstacle』が付属したBOXセット仕様でした。2004年にはイギリスのVoiceprint Recordsより、本作のデモ音源や別ヴァージョン音源でまるまる構成された『Roller Coaster Holiday』がリリース。2008年にイギリスのESOTERIC Recordingsより、1995年版にさらにボーナストラックを三曲追加("You're A Hero" "Dodgem Dude" "Kings of Speed"の未発表デモ)のうえでリマスターした決定版が出ています。なかでも、『Warrior on the Edge of Time』に収録されたブロックとムアコックの共作曲"Kings of Speed"の未発表ヴァージョンは、HAWKWINDのシングル版より30秒程度短いというシロモノ。




 二作目のアルバムのリリースには至らなかったものの、70年代末に録音されたデモ音源がそれなりに残っており、2008年にNoh Poetry Records (スペース・ロック・バンド SPIRITS BURNINGのドン・ファルコンのレーベル)から一枚にまとめられてリリースされています。それがこの『The Entropy Tango & Gloriana Demo Sessions』。〈エターナル・チャンピオン〉シリーズにも連なる〈ジェリー・コーネリアス〉シリーズの第六作目『The Entropy Tango』(1981)と、世界幻想文学大賞を受賞した架空歴史ファンタジー『グローリアーナ』(1978)をテーマにした楽曲を収録しており、ピート・パヴリが再び参加しているほか、《New Worlds》周辺の作家・編集者であったラングドン・ジョーンズ(サンリオSF文庫から短編集『レンズの眼』、編纂アンソロジー『新しいSF』の邦訳あり)の名前もあります。ムアコックのこの頃の活動については、2012年に刊行された自伝本『London Peculiar and Other Nonfiction』に詳しいようなので、いずれ読んでみたいものです。


London Peculiar and Other Nonfiction
PM Press (2012-02-01)



Michael Moorcock - ISFDB
マイケル・ムアコック - 翻訳作品集成


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【マイケル・ムアコック関連楽曲】

HAWKWIND『Space Ritual』(1973)
"Black Corridor"
※ノンシリーズ長編『暗黒の廻廊』(1969)がモチーフ

HAWKWIND『Warrior on the Edge of Time』(1975)
"The Wizard Blew His Horn" "Standing At The Edge" "Warriors" "Kings of Speed"

HAWKWIND『Sonic Attack』(1981)
"Sonic Attack" "Psychosonia" "Coded Languages" "Lost Chances"

HAWKWIND『Choose Your Masques』(1982)
"Choose Your Masks" "Arrival in Utopa"(Linda Steele名義)
※リンダ・スティールはムアコックの三人目の妻の名前

HAWKWIND『Zones』(1983)
"Running Through The Back Brain" "Sonic Attack"
※デモ、ライヴ音源を含むアルバム。

HAWKWIND『The Chronicle of the Black Sword』(1985)
"Sleep of A Thousand Tears"

HAWKWIND
『The Chronicle Of The Black Sword』(1985 ライヴ盤)
『Live Chronicles』(1986 ライヴ盤)

Rovert Calvert『Lucky Leif and the Longships』(1975)
※バンジョーで参加

Rovert Calvert『Hype』(1981)
※12弦ギターで参加

Blue Öyster Cult『Mirrors』(1979)
"The Great Sun Jester"

Blue Öyster Cult『Cultosaurus Erectus』(1980)
"Black Blade"

Blue Öyster Cult『Fire of Unknown Origin』(1981)
"Veteran of the Psychic Wars"

Schatten Unter Eis『Twilight Of The City』(1983)
"Assault And Battery" "Burried Alive" ※作詞

Michael Moorcock『The Brothel In Rosenstrasse』(1992)
※通販限定5曲入りカセット

01. The Brothel In Rosenstrasse
02. Good Girl, Bad Girl
03. Another Quiet Day In Auschwitz
04. At The Time Centre
05. Turn The Tape Over Vol. 1

HAWKWIND『Undisclosed Files』(1993)
"Damned By The Curse Of Man"

Nik Turner『Past Or Future?』(1996)
"Warriors On The Edge Of Time"

SPIRITS BURNING『Alien Injection』(2008)
"Every Gun Plays Its Own Tune" "The Entropy Tango" "Ingleborough" "Upturned Dolphin" "Montfallcon" ヴォーカル、ギター、マンドリンで参加。
※"Upturned Dolphin"以外の四曲は『The Entropy Tango & Gloriana Demo Sessions』に収録されていた楽曲。


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