2016年4月24日日曜日

「ミュージシャン ジョン・カーペンター」として、さらなる躍進を重ねる一作 ― John Carpenter『Lost Themes II』(2016)




 2015年2月にキャリア初となるオリジナルソロアルバム『Lost Themes』をリリースし、今年で68歳を迎えた御大ジョン・カーペンター。息子のコディと、名づけ子であり養子のダニエル・デイヴィス(父はThe Kinksのギタリスト デイヴ・デイヴィス)との楽曲制作やセッションをベースにして作り上げられた同アルバムは、大きな反響をもって迎えいれられました。それから約一年、早くも二作目の新作フルアルバム『Lost Themes II』が登場です。ボーナストラックを含む全12曲。本国アメリカでのレコ発ツアーみならず、ヨーロッパ各地でのライヴや音楽フェスへの出演もすでに決定しており、10月にはイギリスで書き下ろしの新曲披露も兼ねたプレミアムライヴも予定されているなど、今年は「ミュージシャン ジョン・カーペンター」としてさらなる躍進の年になりそうです。また、本アルバムは5月にHostess Entertainmentから国内盤でもリリースされることを付け加えておきます。





 前作同様、コディとダニエルとの共同作業によって制作されたシンセサイザー・ミュージック。おなじみの「ベンベン節」はもちろんありますが、それ以上に個々の楽曲のメロディが際立ってきており、ギターやリズム隊も前に出てきたことで「バンドっぽさ」も増しました。コディが近年ソロで精力的に展開しているプログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Ludrium」からの良好なフィードバックもうかがえますし、音楽的にもネクストステージに立った感があります。ベースとシンセがゴリゴリと支配する"Distant Dream"は、まさに「新生ジョン・カーペンター・バンド」と呼ぶにふさわしい仕上がり。ちなみに同曲のPVでは、ツインシンセサイザー、ツインギターの六人編成で演奏されており、ジョン(synthesizer)、コディ(synthesizer)、ダニエル(guitar)のほかは、TENACIOUS Dのサポートメンバーであるジョン・スパイカー(bass)、ジョン・コネスキー(guitar)、スコット・セイヴァー(drums)というラインナップ。CDのブックレットには演奏者クレジットがまったく記載されておりませんが、おそらくアルバムの他の楽曲の演奏にも三人が携わっている可能性があります。カーペンター流ヘヴィ・プログレともいえる"Dark Blues" "Virtual Survivor"や、ドラキュラ役で名を馳せたハンガリー人怪優を重厚なシンセサイザーサウンドでイメージした"Bela Lugosi"。やんわりとしたメロディが淡く光る"Hofner Dawn"や、シンフォニックな盛り上がりをみせる"Utopian Facede"もよいのですが、本作の白眉として推したいのが、"Angel's Asylum"。ジョンの奥方 サンディ・キングとの共著によるスーパーナチュラルものホラー・コミック「アサイラム」のイメージソングでもある一曲。エレクトリック・スタイルのダークな展開から一転してギターが静かにつまびかれる終盤の美しい「ダメ押し」には、ハッと息をのむ瞬間があります。



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http://www.sacredbonesrecords.com/


「No Longer Lost: John Carpenter On Playing Live」
(from The Quietus|2016.02.15)

コンポーザーとしてのジョン・カーペンターのエッセンスを凝縮 ― John Carpenter『Lost Themes』(2015)

受け継がれる音楽的遺伝子。ジョン・カーペンターの息子コディ率いるプログレッシヴ・ロック・バンド ― Ludrium『Zeal』(2012)
ゲーム音楽、フュージョン、プログレの折衷をより推し進めた、コディ・カーペンターの二作目 ― Ludrium『Pleasure of a False Past』(2015)
コンスタントなリリース、コンパクトなグッドメロディ ― Ludrium (Cody Carpenter)『Unity』(2016)