2016年2月18日木曜日

コンポーザーとギタリスト、阿吽のテクニカル・フュージョン・デュオ ― 菊田裕樹&佐々木秀尚『ANGELICFORTRESS』(2015)


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『聖剣伝説2』『聖剣伝説3』『双界儀』『シャイニング・ハーツ』など、多数のタイトルの楽曲を手がけるコンポーザーであり、自身のサークル「メタファジックチャイルド」でのオリジナル作品リリースも精力的に展開されている菊田裕樹氏と、ジャズ・ギタリストであり、ギターインストラクター/ライター、sasakure.uk氏が主宰するバンド「有形ランペイジ」のメンバーでもある佐々木秀尚氏が組んだデュオ・ユニット ANGELICFORTRESSのデビューアルバム。全曲の作編曲を菊田氏、ギターを佐々木氏が担当した全5曲のインストゥルメンタル集です。




 メタファジックチャイルドでの近年の作品は、「人狼」ゲームの場へ供したイメージアルバム『人狼伴奏音楽集』(2013)。ミニマルミュージックへの追究により生み出されたアコースティック・インストゥルメンタル『スティーブ・ライヒの主題によるインテグラルポリフォニー』(2014)。JH科学のカードゲーム「真空管ドールコレクション」の世界観を40分越えのオーケストラルな大曲で表現した『女子真空管交響楽』(2014)。エピック/シンフォニックなインストゥルメンタル『死者の代弁者』(2014)、泉鏡花の同名作品に題をとった幻想コンセプトアルバム『夜叉ケ池』(2015)と、“攻め”のリリースが続いているのですが、そんな菊田氏が次に目指したコンセプトはズバリ、プログレッシヴ・ロックとフュージョンのミックス。





 ファンタジーRPG調の雰囲気を漂わせつつ、抜群のセンスとテクニックを兼ね備えた佐々木氏のギタープレイを主軸に構築されております。テーマ・メロディの反復の上を佐々木氏が縦横無尽にプレイする"Angelic Fortress"は、ユニットの方向性を象徴する一曲でもあります。"Neo Pragmatism" "Mission Field"は伸び伸びと開放感のあるオルガン・フュージョンを、"End of Assault"では、シリアスに引き締まったプログレッシヴ・ロックをそれぞれ展開。よりハードエッジな方向性の"Dark Schizophrenia"では、複雑かつトリッキーなフレーズがゴリゴリと仕込まれており、マゾヒスティックなまでの高密度の音空間におけるコンポーザーとギタリストの切り結びを聴いてとることができます。それだけにギターレコーディングは非常に難航していたようですが、見事やってのけた佐々木氏に頭が下がります。また、同曲は過日開催された東京ゲーム音楽ショー2016におけるANGELICFORTRESSのライヴでもプレイされておりましたが、これまた飛びぬけた安定感でガッツリと弾きこなされており、聴いていてとにかく気持ちよく、ただただ圧倒された次第。すごいものを目の当たりにしたという感嘆の一方で、この方向性で今度はリズム隊を迎えたバンドスタイルでも聴いて/観てみたいなという気持ちも頭をもたげてきました。実現はより大変なものになるでしょうが、今後のさらなる展開に期待したいです。

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