2016年1月31日日曜日

確かな実力と高密度の総合力が快いフレンチプログレメタル ― THE MARS CHRONICLES『EP』(2013/2016)



 THE MARS CHRONICLESは、2012年初頭に結成されたフランスのプログレッシヴ・メタル・トリオ。結成当初は四人組であり、フランスのヘヴィ・プログレ・バンドOPRAMのデヴィ・ディアデマ(g.vo)、セバスティアン・オリーヴ(b)、チュニジアのオリエンタル・メタル・バンド MYRATHのモーガン・ベルテ(ds)、西アフリカのプログレッシヴ・メタル・バンド LAG I RUNのヤン・モーヴァント(g)というラインナップで、ちょっとした多国籍バンドの様相も成していました。2013年3月にYouTubeで初の楽曲を公開するや数万PVを獲得。すぐさまインディーズレーベル SEND THE WOOD MUSICとの契約にこぎつけ、同年5月にSEASON OF MISTのディストリビューションのもと5曲入りEPをリリース。その後、バンドは9月末から11月中旬にかけて23ヶ国、通産46回に及ぶ初のツアーに繰り出すのですが、同時にそれはイスラエルのORPHANED LANDのヨーロッパツアーのサポートアクトとしてのものでもありました。



 本作は、2013年のデビューEPの2016年度再々発盤。オルタナティヴ・ロック由来のクリアーな情感たっぷりのヴォーカルに、テクニカル/グルーヴ・メタルにも対応可能の安定感バツグンの演奏(特にモーガンのドラムが痛快)、総合力の高いパフォーマンスでグイグイと引っ張っていくのが頼もしい。タイトかつオーソドックスに魅せるプログレッシヴ・メタル・チューン"Constant Show"、高密度のリフとグルーヴを伴った疾走チューンからポストメタルへと広がっていく"Abyss"は聴きものです。バンドは2014年夏に1stフルアルバムのレコーディングに入る予定でしたが、同年にモーガンとヤンが、翌年にはセバスティアンが相次いで脱退し、オリジナルメンバーはデヴィ一人となってしまいます。後任ギタリストにエイドリアン・マルティノを迎えるものの、自身のバンドに注力したいとのことでほどなくして脱退。活動が危ぶまれましたが、2015年10月にギヨーム・ブドゥー(b)、SEASON OF MIST所属のゴシック/ヘヴィ・ロック・バンド KELLSのケヴィン・プラッタ(ds)の加入を発表。晴れて再始動を果たしたバンドの次なるリリースに期待が持たれます。


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