2016年1月28日木曜日

1+1=「3」の成果を上げる、北欧メロディック・ハードの新タッグ ― NORDIC UNION 『Nordic Union』(2016)

ノルディック・ユニオン【日本盤限定ボーナストラック収録/歌詞対訳付/日本語解説書封入】
ノルディック・ユニオン
SMD itaku (music) (2016-01-20)
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 デンマークのPRETTY MAIDSのヴォーカリストであるロニー・アトキンスと、スウェーデンのECLIPSEのソングライター/プレイヤーであるエリック・モーテンソン。北欧出身の二つのメロディック・ハード・ロック・バンドのメンバーがタッグを組んだノルディック・ユニオンのデビューアルバム。別々のバンドのメンバーがユニットを組むという話にはいつだってワクワクさせられますが、それが必ずしも1+1=2のコラボレーションとなるのかというと話は別。聴き手の期待に反して、双方の個性が発揮されずに終わってしまう企画というのも往々にしてあり、ことフィーリングの面ではなかなかに難しいものがあります。が、嬉しいことにこのノルディック・ユニオンは間違いなく、心の底から見事なコラボレーションと呼べるユニットであり、1+1=3、いや、それ以上の成果をあげております。




 メロディック・ハード・ロックというジャンルはある種の様式美で固められており、音楽的な自由度はさほど高くないのですが、それでもここまで何もかもが噛み合った化学反応というのはそうそうないと思います。ベテランと中堅という、世代がひとつ異なる者が組んだというのも功を奏したのかもしれませんが、それもやはり両人が確かな実力者という前提があってのこと。とくにエリックは本ユニットより前にWORK OF ARTのロバート・サール、TALISMANのジェフ・スコット・ソートと組んだW.E.Tでの活動を軌道にのせており、コラボレーションの「実績」もあります。また、ドラムと一部ギター以外のパート(バッキングヴォーカル含む)はすべて彼が担当しております。ドラムは元ECLIPSEのマグナス・アルフステッド。ギターソロでは、同じくECLIPSEのマグナス・ヘンリクソン("The War Has Begun")、デスメタルバンド NECROFOBICのフレドリック・フォルケ("Hypocrisy" "Point Of No Return")、ドゥームメタルバンド SORCERER(元THERIONのクリスティアン・ニエマンが在籍)のピーター・ホールグレン("21 GUNS")、そしてBALTIMOORE、元グレン・ヒューズ・バンドのトーマス・ラーソン("Wide Awake" "Every Heartbeat")の四名が参加。作曲のほとんどはエリックですが、一部でECLIPSEでの作曲パートナーであるミカエル・パーソンも参加しています。





 ギターを全面に押し出した楽曲が多いのもポイント。湯水のようにメロディとハーモニーが湧き出しており、ただひたすら法悦したくなることしきり。同時にただひたすら個人的な「ツボ」も列挙したくなります。メロウなイントロからとびっきりにエッジの効いたリフを刻み込む"Hypocrisy"とか、ロニーのパッションあふれるヴォーカルの魅力がグッと詰まった"When Death Is Calling"とか、欲しいものが全部詰まった、これぞ北欧ハードポップの教科書といいたくなる"Go"とか……と、ここでいくら並べ立てても詮無きこと。Frontiers Recordsの公式YouTubeアカウントで試聴トラックがふんだんにあがっているので、まずは極上のコラボレーションを耳で確かめてみて下さい。なお、日本盤ボーナストラックは"When Death Is Calling"のアコースティック・ヴァージョン。単なるオマケと思うなかれ、ロニーのヴォーカルがより際立つ仕上がりで、こちらも一聴の価値あります。アルバム丸ごと、メロハーのご馳走、です。オイシイ要素が三拍子どころか六拍子くらい揃っており、満面のえびす顔を禁じ得ません。今年最初のベストコラボレーションは彼らで決まりでしょう。

http://www.frontiers.it/album/5289