2015年11月28日土曜日

ドイツ産重量級バカテクメタリックジャズ炸裂弾 ― Panzerballett『Breaking Brain』(2015)

 ドイツ・ミュンヘンのジャズ・ロック・バンド パンツァーバレット。ギタリスト ヤン・ツェアフェルトによって2004年に結成され、サックス奏者を擁する五人組である同バンドは、思いのままに可変し切り返していく圧倒的テクニックの裏打ちとともにぶっ放される痛快な「ジャズ・メタル」サウンドを標榜。エンターテインメント性も高いパフォーマンスでファンを獲得していったキレッキレの実力派です。かのランディ・ブレッカーやドゥイージル・ザッパらも、彼らに賞賛の言葉を贈っています。影響元として挙げられているバンドは、MESHUGGAHやTribal Tech、MATS/MORGAN BANDと、いずれも常軌を逸した手合いばかり。ジャズ・フェス、ロック・フェスへの出演はもちろんのこと、バルト諸国のプログレ系音楽フェス「Baltic Prog Fest」や、毎年ドイツで開催されている、フランク・ザッパへ捧げられた音楽フェス「Zappanale」への出演も過去に果たしているほか、自ら「Jazz Metal Festival」を主宰するなど、ジャンルを股にかけたアグレッシヴなライヴ活動を展開しています。




 オリジナル曲もさることながら、カヴァーもただものならざるセンスが爆裂しており、いい意味で「ぶっ壊れ」ています。これまで料理してきた楽曲は「シンプソンズのテーマ」、WEATHER REPORT"Birdland"、ABBA"Gimme, Gimme, Gimme"、フランク・ザッパ(メドレー形式でカヴァー)など多数。彼らのライヴではジャズスタンダードの"Take Five"や、「ピンクパンサーのテーマ」のメタリック・ジャズ・カヴァーが定番となっており、抱腹絶倒のパフォーマンスをイヤと言うほど見せつけてくれます。近年はFREAK KITCHENのハイパーギタリスト マティアス・エクルンドをフィーチャーした"The IKEA Trauma"でPVを制作するなど、外部とのコラボレーションにも余念がありません。「IKEAのトラウマ」という人を喰った曲名もまたイカスのです。


Breaking Brain
Breaking Brain
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Panzerballett
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 タイトルで人を喰うのはこのバンドの伝統芸ですが、通産5thフルアルバムとなる本作『Breaking Brain』も、一曲目でEurobeatならぬ"Euroblast"をぶちかましております。リフのみじん切り。二曲目"Typewriter II"ではタイプライターの打鍵音をザクザクのギターリフと同期させるという一発ネタのようなアイデアを実にカッコよく料理しており、してやられた! の一言。ガワはジャズなのに中心部で否応なくヘヴィなグルーヴが渦巻いている"Der Saxdiktator" "FrantiK Nervesaw"。ファンク、ブギー、フュージョンをヘヴィネスで連結してじっくりと煮込んだような"Smoochy Borg Funk"もスルメな味わい。"Shunyai/Intro" "Shunyai"では、インドの名パーカッション奏者 トリロク・グルトゥがゲスト参加。ヴォイスパフォーマンス込みの細やかな超絶パーカッションプレイがセクシィなサックスのブロウとヘヴィなアンサンブルに絡むことでさらなる化学反応が生まれております。ラストは、『Starke Stücke』(2008)以来二度目となる"Pink Panther (ピンクパンサーのテーマ)"のカヴァー。しょっぱなからヘヴィなグルーヴで圧倒してはいますが、今回はどちらかというとジャズに寄せた印象です。ケッタイなメタリック・ジャズ・ロックですが、ストイックさを感じさせない親しみやすさたっぷりの彼らのケッタイさは、独特のミクスチャー感覚ともども貴重な存在です。ホント、強みですよ。

http://www.panzerballett.de/




 なお、『Breaking Brain』は、来月にマーキー/ベル・アンティークから国内盤仕様(輸入盤に帯・解説を付けたもの)で流通するそうです。五作目にして日本初紹介。「パンザーバレット」だとなんだか締まらない気もするのですが、入手しやすくなるのは誠にめでたい。あわよくばさらに知名度が上がって、来日してくれれば言うことありませんね!


ブレイキング・ブレイン
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パンザーバレット
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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PANZERBALLETT : BREAKING BRAIN】
(from Marunouchi Muzik Magazine)
http://sin23ou.heavy.jp/?p=6122
Jan Zehrfeldへのインタビュー(日本語)

https://www.facebook.com/Panzerballett-Official-FB-177186085648197/
http://www.progarchives.com/artist.asp?id=2906

2015年11月27日金曜日

もはや無敵なProg Powerの精髄。イタリアのベテランの通産十作目 ― ELDRITCH『Underlying Issues』(2015)

 イタリアのプログレッシヴ・パワーメタル・バンド エルドリッチ。前身バンド ZEUSから引き継ぐ形で1991年に結成され、1995年にInside Outよりアルバム『Seeds of Rage』でデビューした彼らは、ここ日本でも国内盤がマーキー/ベル・アンティークや徳間ジャパンからのディストリビュートで紹介されてもいました。初期のサウンドは、DREAM THEATERやFATES WARNING、SIEGES EVENなどからの影響を感じさせつつも、よりキーボードを強めにフィーチャーしたもの。その方向性は『El Niño』(1998)からよりヘヴィな色を強め、一皮剥けた彼らはTHRESHOLDやPain of Salvationとツアーも行いさらなる成功をおさめることになります。その後、『Reverse』(2001)ではモダン・ヘヴィネス寄りに、『Portrait of the Abyss Within』(2004)からはスラッシュ・メタル寄りのサウンドになり、同作と『Neighbourhell』(2006)では「WAR PIG」(モーターヘッドのシンボル)のようなキャラクターをジャケットに押し出したりもしていました。所属レーベルも、バンドメンバーも、方向性も幾度となく変えながら、コンスタントなリリースペースは維持し続け、結成25周年を迎えようとしている彼らですが、近年はDGMやSADISTも所属するレーベル Scarlet Recordsのもと、再び正統派プログレッシヴ・パワーメタルに回帰しています。





 本作『Underlying Issues』は、前作『Tasting the Tears』からわずか一年半のインターバルでリリースされた通産十枚目のオリジナルアルバム。現編成は、テレンス・ホラー(vo)、ユージーン・シモーネ(g)のオリジナルメンバー二人を中心に、今年アルバムデビューしたプログレッシヴ・メタル・バンド ENSIGHTのリズム隊でもあるアレッシオ・コンサーニ(b)、ラファーエル・ドリッジ(ds)、IN MEMORYのルッジ・ジャンネッシ(g)の五人。『Neighbourhell』より参加していたジョン・クリスタル(b)は、本作のレコーディングをもってバンドを脱退したようです。マスタリング/ミキシングは、EMPYRIOSや近年のDGMのギタリストとして要となっている シモーネ・ムラローニ。ヘヴィなリフを中心として組み立てられたバンドのストロングなサウンドにおいて、彼はまさに頼もしい味方であります。ミドルテンポの"The Face I Wear" "Bringers Of Hate"や、パワーバラード"To The Moon And Back"でもしっかりと魅せてくれるのも強みです。本作の二曲目"Danger Zone"はたいへんな白眉で、ギッシリと詰まった音のなかでキャッチー極まるサビが光るシブいキラーチューン。まさに「Prog Power」の理想を体現したような一曲、オススメです。また、ラストはエッジをたっぷり効かせたスラッシュチューン"Slowmotion K Us"で強烈に締めくくります。これまで辿ってきた音楽性の変遷を血肉として鍛え上げてきた素晴らしきProg Powerの精髄が味わえる一枚。これを向かうところ敵なしといわずしてなんといいましょう。

http://www.eldritchweb.com/

http://www.scarletrecords.it/bands/Eldritch/band.htm
http://www.metal-archives.com/bands/Eldritch/591
http://www.progarchives.com/artist.asp?id=758

2015年11月25日水曜日

ピーター・ワッツと音楽

ブラインドサイト〈上〉 (創元SF文庫)
ピーター ワッツ
東京創元社
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 カナダの海洋生物学者でSF作家であるピーター・ワッツの長編小説『ブラインドサイト』を改めて読み返していました。2006年に発表された作品で、邦訳されたのは2013年後半。ものすごく雑に説明すると「めっちゃ難儀なファーストコンタクト」「で、意識って、理解ってなんなのよ?」を描いた作品。かなり晦渋な文章なので、登場人物たちが作中で味わう未曾有の困惑よろしく、読むほうも状況描写などでかなりの困惑を味わうことになるのだけれども、書かれているテーマは非常に魅力的。かのテッド・チャンも「意識が知性にとって障害になる」という本書の主張には同意していないものの、それでも一読をオススメしたいという玉虫色な書き口で解説していることもふくめて面白い。そこにノレるかソレるかというところはあるとはいえ、再トライしがいのある作品なのです。本書には、「脳を半分切除した男」「吸血鬼」「四重人格の言語学者」「感覚器官を機械化した生物学者」といった、一筋縄ではいかない造型のキャラクターがチームで宇宙活動をしていくわけですが、この設定はただ奇をてらったわけではなく、本書のメインテーマを追求していく上で必要なものであったというのは読み進めるとわかると思います。2014年には本書の続編『Echopraxia』も刊行されており、こちらの邦訳も待たれるところです。


ブラインドサイト〈下〉 (創元SF文庫)
ピーター ワッツ
東京創元社
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 本書では各章の頭にアリストテレスや、アインシュタイン、ヘミングウェイ、オルダス・ハクスリー、テッド・バンディ、ジョージ・ゴードン・ロード・バイロンなど数多くの人物のコメントや、聖書、古い箴言、著作などからの引用が付されているのですが、その中にはJETHRO TULLの"Occasional Demons" "Reasons For Waiting"の詞の一部も含まれており、前者は上巻のP63、後者は下巻のP129でそれぞれ引用されています。ほかにスザンヌ・ヴェガの"Blood Makes Noise"(アルバム『99.9F°』(1992)収録)からの引用もありますが、同じバンドで二度にわたって取り上げているあたり、ワッツ氏は相当にタルが好きなんだなというのがよくわかります。


“All kinds of animals living here. Occasional demons too.”
― Ian Anderson, Catfish Rising


アルバム『Catfish Rising』(1991)収録


“If I can but make the words awake the feeling”
― Ian Anderson, Stand Up


アルバム『Stand Up』(1969)収録


■「Interview with Peter Watts」(IRoSF, 2008)
http://www.irosf.com/q/zine/article/10391

 海外SFウェブジン「IRoSF」が2008年2月に行ったワッツ氏へのインタビュー記事。ここで氏はお気に入りのバンド/アーティストを挙げています。JETHRO TULL、トーリ・エイモス、RUSH、LED ZEPPELIN、初期YES、R.E.M.、RADIOHEAD。やはりタルの名前を真っ先に挙げております。そして「最近のお気に入りはPORCUPINE TREE」とのこと。確かにスティーヴン・ウィルソンのサウンドは氏の気に入りそうだなという、妙な納得をおぼえました(ちなみに、ウィルソンは2011年から現在もJETHRO TULLのアルバムのリミックスを継続的に手がけております。おそらくワッツ氏にとってもこれは嬉しいサプライズだったのではないかと)。質問者がピーター・ワッツに対して「あなたはMOTT THE HOOPLEのベーシストと同名なんですけど、音楽的背景について教えてくれませんか?」などという切り出し方をしてるのがちょっと面白い。そうそう、確かにモットの創設メンバーでありベーシストのピーター“Overend”ワッツと同名なんですよね。そしてその質問に対してワッツ氏が「モット・ザ・フープルの方のピーター・ワッツは知らなかったけど、自分が知ってるのはPINK FLOYD『狂気』の頃のサウンドエンジニアのピーター・ワッツだね」と返しているのがまた。典型的な音楽マニア同士の会話じゃないですかもう。ちなみに、PINK FLOYDのサウンドエンジニア兼ローディーであったピーター・ワッツは30歳の若さで亡くなっております。





JGS: To continue the riff on your name, it's also the same as one of the bass players for the British glam-rock band Mott the Hoople, most popular during the 1970s (he was known as "Overend" Watts for a tumble he took over some band equipment). Do you have music playing in the background (besides Jethro Tull) when you write?

PW: I did not know that about Mott the Hoople. The only Peter Watts I know from that era is Pink Floyd's sound engineer, the guy who giggled maniacally on Dark Side of the Moon. In terms of background music, I used to listen constantly—Tull, Tory Amos, Rush, Zeppelin, Pre-Cheese-era Yes, REM, Radiohead—but not so much any more. I tend to like tunes that draw you in both lyrically and musically—but by definition, such tunes draw your attention away from the writing. Maybe I was better at dual-core processing in my younger days. More likely I just finally realized that I was tuning the music out of my conscious awareness anyway while writing, so what was the point? I still listen to music for inspiration (Porcupine Tree is a recent favorite), but that's an eyes-closed-get-lost kinda process without keyboard involvement. The only time music actively inspired my writing while I was writing, without intruding, would be Dead Can Dance's "Spleen and Ideal," which set the mood for my short story Nimbus.



 また、ワッツ氏が音楽に触発されて書いたという唯一の作品が、初期の短編「Nimbus」(1993)で、これはDEAD CAN DANCEのアルバム『Spleen and Ideal』(1985)の雰囲気に寄せているのだそうな。同様の言及はフランスのSF&ファンタジーウェブジン「actuSF」が2012年に行ったワッツ氏へのインタビュー記事にもありました。

■「Interview Peter Watts」(actusf, 2012)
http://www.actusf.com/spip/Interview-Peter-Watts-VO-2012.html





 ちなみに〈Rifters〉シリーズ第二作『MAELSTROM』の第二章のタイトルは、R.E.M.のアルバム『Fables of the Reconstruction』(1985)からの拝借である旨が著者あとがきで述べられています。ワッツ氏のサイトでは各著作がクリエイティヴ・コモンズのもと公開されており、PDFやテキストファイルで読むことができます。
http://www.rifters.com/real/shorts.htm






Catfish Rising
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Jethro Tull
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Stand Up
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Suzanne Vega
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Spleen & Ideal (Reis) (Spkg)
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Dead Can Dance
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Fables of the Reconstruction
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2015年11月22日日曜日

全裸齧歯男性の猛威!! 変態スラッシュ・ポップ from チェコ ― Hentai Corporation『The Spectre Of Corporatism』(2013)

【無修正あり】チェコの変態バンド
Hentai Corporationの新曲PVがHentaiすぎる
(from 今私は小さな魚だけれど)
http://sciandeng.blog38.fc2.com/blog-entry-639.html







 そのあんまりなバンド名と強烈な内容のPVから以前より局部、もとい局地的に話題となっていた、チェコ・プラハのアヴァンギャルド・ポップ・バンド Hentai Corporation。2005年に結成され、2006年と2008年にデモ音源「Mufta Demo」「Fuck You Like a Chameleon」を、2011年に4曲入りEP『Dokktor.Zaius』、2012年にシングル「Neurol Machine」をリリース。そして2013年に『The Spectre Of Corporatism』で待望のアルバムデビューを果たした彼らは、本国でのライヴ活動や同郷のアーティストとのコラボレーションを活発に行いながら、現在も精力絶倫な活動を繰り広げています。





 ヘンタイの伝道師である彼らはYouTubeアカウントのみならずbandcampアカウントでも自らの音源を啓蒙しております。以前は『Dokktor Zaius EP』しか置いてありませんでしたが、さる9月に『The Spectre Of Corporatism』の音源もあがりました。$10よりダウンロード購入も可能。まことに嬉しいことです。まさに変態的朗報。正式なアルバムタイトルは『The Spectre Of Corporatism: Starship Shaped Schnitzels From Planet Breadcrumbs Are Attacking A Giant Tree Monster Who Has A Vagina And Holds Hitler Hostage』(コーポラティズムの幽霊:パン粉惑星からの宇宙船型シュニッツェルはヒトラーを人質にしたヴァギナつき巨木モンスターを攻撃中)。つまりジャケットの通りです。あんまりにもタイトルが長いので、iTunesではガッツリ省略されて『Tsocsssaaagtmwhvahhh』になってます。字面だけだとVOIVODの『Rrröööaaarrr』みたいですね、なんて。なお、こちらでは1200円で購入可能です。
https://itunes.apple.com/jp/album/tsocsssaaagtmwhvahhh/id821937939





 スラッシーでトリッキーなリフに、ポップでキャッチーなシンセの味付けを施したケッタイであり痛快なサウンド。バンドのヴォーカリスト Radek Škarohlídの歌い回しも実に怪人といった印象で、シャウトの合間にニタニタ笑いを浮かべているかのようなパフォーマンスは、正しくへんたいのおじさんです。しかし、ねじ伏せるヘヴィネスとキッチュなセンスの融合を見事に果たしており、ただただキワモノを演じているわけではないというのはサウンドを聴けばおわかりでしょう。こういうバンドは生半可な実力ではやれないと、太古の昔より言い伝えられており、彼らのライヴパフォーマンスも実に堂に入ったものです。サウンドの性交、もとい性向から、マイク・パットンのMr.BungleやFaith No More、北欧のジャンル越境異能集団 Waltariなどのバンドと比較したくなるのも包皮が痛いほどよくわかります。フルチン! ビーバー! 大虐殺!な"Equilibristic Brides"のPVはYouTubeにはちんこ修正版であがっていますが、vimeoにはちんこ無修正版であがっているというユーザーフレンドリーさにも亀頭が下がります。しかし無修正版、容赦なくプラプラするちんこにいくらモザイクをかけたところで余計卑猥にしかならないというコペニスルク的転回を皮肉にも(?)果たしておりますね。下は、同じくチェコのクロスオーヴァーメタルバンドであるAtari Terrorとコラボした"No More Love"のPV。EP『Dokktor.Zaius』のオープニングトラックです。ツインヴォーカルでの掛け合いといい、フックのある展開といい、めちゃカッコイイです。





 チェコ本国の音楽チャンネル「Óčko」のプログラムに、Hentai Corporationが出演した回。YouTubeにアーカイヴされております。メンバーへのインタビューとか、例のPVとかへの言及とか。




https://www.facebook.com/hentaicorp
https://www.youtube.com/user/HentaiCorp
http://bandzone.cz/hentaicorp


《おまけ》



2015年11月17日火曜日

ドキュメンタリー『ホドロフスキーのDUNE』のサウンドトラックがついにリリース




 かつてアレハンドロ・ホドロフスキーが、フランク・ハーバートの『デューン/砂の惑星』を壮大な構想と豪華スタッフ陣のもと映像化するべく制作に取り組むものの、資金的な問題などで幻に終わった作品の経緯を追った、フランク・パヴィッチ監督によるドキュメンタリー「ホドロフスキーのDUNE」。ここ日本でも2014年に公開され、大きな反響を呼びました。そして、クルト・シュテンツェルによる劇伴を収録した同作のサウンドトラックが、さる11月13日にLight in the Attic Recordsよりリリースされました。昨年、クルト氏が昨年に脳梗塞で倒れ、リハビリに取り組んでいたこともあり長らく制作が遅れていたのですが、いろいろとひと区切りがついたのでしょう。氏の回復、そしてサントラのリリースを心より喜びたいです。サントラはLP(二枚組/ダウンロードコード付き)、CD、MP3の各種形式でそれぞれ販売されています。Amazonでも購入可能です。

http://lightintheattic.net/releases/2003-jodorowsky-s-dune-original-motion-picture-soundtrack

《LP》
Jodorowsky's Dune [Analog]
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Kurt Stenzel
Cinewax (2015-11-13)
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 レコーディングでは、カシオCZ-101やRoland JUNO-6などのヴィンテージシンセサイザーのほか、ニンテンドーDSなどを使用。冨田勲やジャーマン・シンセ/クラウト・ロックからの深い影響を投影した、ディープでミニマルメディテーショナル・ミュージックを33曲収録。ホドロフスキーのナレーションをフィーチャーしたトラックもあります。シュテンツェル氏の来歴(元ハードコアパンクバンド出身)や、パヴィッチ監督との出会いについては、以前当ブログでも取り上げました。こちらもご覧いただければ幸いです。





http://kurtstenzel.com/

★ドキュメンタリー『ホドロフスキーのDUNE』のサントラを手がけた男、クルト・シュテンツェル (Kurt Stenzel)
http://camelletgo.blogspot.com/2014/09/dune-kurt-stenzel.html

「Kurt Stenzel shares three songs from his Jodorowsky’s Dune score — listen」(from Consequence of Sound)
パヴィッチ監督とシュテンツェル氏のインタビューも併録

《CD》
Jodorowsky's Dune
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Kurt Stenzel
Cinewax (2015-11-13)
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《MP3》
Jodorowsky's Dune (Original Soundtrack)
cinewax / Light In The Attic Records (2015-11-06)


2015年11月16日月曜日

サンクトペテルブルグから鬱屈重低爆音 ― Письмо от Зодиака〔Letter From Zodiac〕



 2010年以降に結成され、2014年にデビューアルバムをリリースしたサンクトペテルブルグのプログレッシヴ・メタル・バンド Письмо от Зодиака(Letter From Zodiac)。バンド名は、アメリカでかつて起こった連続殺人「ゾディアック事件」に由来したものでしょう。ネッチリとヒリついた妖艶さを醸しながらもドスの利いた姐さんタイプの女性ヴォーカルがフロントのバンドで、邪悪に鬱屈したアレンジが盛られたヘヴィ・サウンドのマッチングがすごくイイ。これがさらにタガが外れるとカナダのUnExpectやノルウェーのRam-Zetのようなアヴァンギャルド・キャバレー・メタルみたいになるのだけれど、そこまで過剰ではなく、いくらか地に足の着いた印象があります。とはいえ今後ブチ切れて化ける可能性もなきにしもあらず。一連の作品は彼らのbandcampでname your price(投げ銭)でダウンロードできます。以下はこれまでにリリースした楽曲。


2015年11月リリース(3曲入りEP)


2015年3月リリース(シングル)


2014年12月リリース(シングル)


http://letterfromzodiac.bandcamp.com/
http://vk.com/letter_from_zodiac

2015年11月15日日曜日

噛むほどに味が出る、イカ世界のスルメ盤 ― 峰岸透、藤井志帆『Splatoon O.S.T -Splatune-』(2015)

Splatoon ORIGINAL SOUNDTRACK -Splatune-  (デジタルミュージックキャンペーン対象商品: 400円クーポン)
ゲーム・ミュージック 竹内浩明 keity.pop 菊間まり
株式会社KADOKAWA (2015-10-21)
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 今年5月に発売されるや爆発的なヒットを記録した任天堂のWiiU用ソフト「スプラトゥーン」のサウンドトラック。BGMを手がけるのは、峰岸透氏、藤井志帆さんのお二人。峰岸氏は「ムジュラの仮面」以降のゼルダシリーズや、「Wii Fit」「スティールダイバー」などに共同作曲者で携わられており、本作ではメインコンポーザーとしてサウンドディレクターと兼任されております。一方の藤井さんは「Wii Fit」「New スーパーマリオブラザーズ」 「マリオカート8」などに共同作曲者として携わられてきた方です。サントラにはシオカラーズ、Squid Squad、ABXY、Hightide Era、OCTOTOOL、Cala Marley、DJ Lee F.、DJ Octavioといったイカ世界のバンド/アーティストによる楽曲をふくむ37曲の楽曲と、24のジングル・SEがCD二枚組にわたって収録されています。ライナーノーツも、さまざまなお楽しみ(後述)や、メインコンポーザーお二人のコメントが掲載された濃厚な内容。藤井さんは「“Splatoon”の世界には独自の文化や流行の音楽があり、ゲームで流れるBGMは「イカの世界で若者たちに聴かれている音楽」というイメージを持って制作しています」とコメントされています。

 また、これはファミ通.comが行ったスプラトゥーンサウンドチームへのインタビューで特に印象的に思ったところでもあるのですが、テンポの異なるさまざまな曲の断片が三つのスピーカーから別々に流れているハイカラシティの広場は「イカスツリーの下で鳴っているドッカンドッカンというリズムを中心に、拍がいつの間にかシンクロして聴こえてくるようにサウンドの仕組みを作っていまして、12曲がどのスピーカー、どの順番で流れても、まとまった大きな音の塊として聞こえてくるようになっています」とのこと「目の前の店で流れている音楽と、隣りの店で流れている音楽がいっしょになって聞こえてきて、テンポが妙にシンクロして、だんだんひとつの曲のように聞こえてくることがあって、おもしろかった」という峰岸氏の体験からヒントを得たそうで、さりげない趣向ながらこれは非常に秀逸だと思いました。サントラ収録の"広場"で、その「ミックス感」を追体験することができます。

 Squid SquadABXYHightide Eraは、少年ナイフやPOLYSICSを彷彿とさせるパンク/ニューウェイヴから、昨今のチップチューン・パンクやピアノエモにも接近したサウンドを展開する、いずれも印象的な造型のバンドです。ところでチップチューンパンクといえば、海外では2000年ごろから往年のゲームミュージックからの影響をパンク/ハードコアと融合させた「ニンテンドーコア(Nintendocore)」というジャンルがインディーズシーンで興り、その中からメジャーシーンへ躍り出るバンドも年々増えているのですが、「イカの世界で若者たちに聴かれている音楽」というスプラトゥーンのサウンドコンセプトは、十数年にわたり育まれ続けてきた向こうのシーンに図らずも呼応したような感もあります。そう考えると、なんだかちょっと感慨深いものがないでしょうか。





 ドライヴ感あふれるギター&ベースの上をワニャワニャしたヴォーカルとシンセがアオる"Splattack!"(Squid Squad)、(イカだけど)アジるようなヴォーカルパートにエッジとフックを効かせた"Metalopod"(Squid Squad)や、キュートなヴォーカルの爆走チップチューンパンク"Friend List"(ABXY)、軽快なピアノエモチューン"Sucker Punch"(Hightide Era)などのキラーチューンが満載です。ベース、シンセ、ドラム、ギターと徐々にパートが重なっていく"Splattack!"のジャムセッションヴァージョンを、段階を踏んでいくチュートリアルのBGMにアテたのも、演出意図としてもうまいなあと。一番最後には2014年のE3のプロモーション映像で流れたヴァージョンの"Splattack!"も収録されているのですが、歓声のSEやラフな合いの手など、ライヴ感のあるアレンジがまさにボーナストラックといった趣を醸し出しています。民謡歌手出身のアイドルユニットという秀逸な設定をもつシオカラーズ"シオカラ節"はキュートなエレクトロポップ。"シオカラ節"の「原曲」である、民謡調アレンジの"元祖正調塩辛節"もサントラには収録されています。"ハイカラシンカ" "キミ色に染めて"は延々と聴いていても飽きないスルメ曲。対照的に、OCTOTOOLは本サントラのダークホースとして一際ストレンジな存在感を放っております。ロシア・アヴァンギャルドとKRAFTWERKを足したようなオールドスクールなヴィジュアルイメージが愉快極まりないのですが、ミニマル、テクノポップ寄りのサウンドが奇妙な高揚をおぼえる、ツボなテイスト。タコツボ。淡々とあちこち引っかき回しているような"Eight-Legged Advance" "Tentacular Circus"も好きですが、アッパーに振れたお囃子ビート"Tacozones Rendezvous"もGOODなのです。そのOCTOTOOLのプロデューサーであるDJ Octavio"I am Octavio"は、"Eight-Legged Advance"のバリエーションといった趣向のアレンジ。そのほか、ブイヤベースのBGM"Lookin' Fresh"を手がけるDJ Lee F.(海外版ではDJ Lee Fish)は「Jellyfish(クラゲ)」にかけたものですし、マッチング待機時BGMであるレゲエチューン"Ika Jamaica"Cara Maraleyは偉大なるジャマイカのボブ・マーリーのパロディです。





 サントラのレコーディングメンバーについても触れないわけにはいきません。Squid Squadの楽曲には竹内浩明(vocal)、西川進(guitar)、芳賀義彦(guitar)、TABOKUN(bass)、恒岡章(drums)。ABXYやHightide Eraの楽曲には高慶“CO-K”卓史(guitar)、かどしゅんたろう(drums)といった面々が参加されております。西川進氏は膨大な数のアーティストのサポートを務めてきた歴戦のギタリストにして、コンポーザー/プロデューサーとしても精力的に活動するワーカホリックな御仁。氏のブリティッシュテイストのギタープレイは、なるほどSquid Squadのサウンドにも非常にマッチしています。芳賀義彦氏はaikoや嵐などのツアーサポート歴のあるギタリストで、西川氏が代表を務める「Smash Room」に現在所属。恒岡章氏はHi-STANDARDのドラマーとしてお馴染みですし、近年はチャットモンチーのメンバーでもありますね。TABOKUN(元The Space Funkool)や、高慶“CO-K”卓史氏、かどしゅんたろう氏(元Mr.Orange)も、多くのアーティストのツアーでサポートやバンドマスターを務められている、いずれも名うてのプレイヤーです。竹内浩明氏はテレビCMや映画の挿入歌などの活動や、ハロプロの楽曲のコーラスパートを長年務められているほか、最近では「ギルティクラウン」「輪るピングドラム」のサントラや、少女病やEGOISTなどのアルバムでもヴォーカルやコーラスでクレジットされています。シオカラーズのアオリのヴォイスを担当されたkeity.pop(百済友希)さんはヴォーカリスト/作詞作曲家にしてファッションモデルの顔も持つマルチなお方。また、ホタルのヴォイス担当である菊間まりさんは平井堅氏や戸松遥さんのライヴにコーラスとして参加されています。YouTubeの任天堂の公式アカウントがレコーディング風景の動画をアップしております。





 これはゲームサントラ全般に言えることですが、それでも特に任天堂作品のサウンドトラックはクオリティの高さに反して昔からプレミア化しやすい(「ドンキーコング」や「星のカービィ」などのサントラは今でも中古市場でン十万~ン万円という相場ですし)、または入手可能であっても経路がごく限られているというイメージがあります。最近でも、錚々たるミュージシャンが一堂に会したとんでもないクオリティでありながらクラブニンテンドーのポイントアイテムとしての流通のみだった「マリオカート8」のサントラで泣きを見たのですが、本サントラはKADOKAWA/エンターブレインからのリリース。スプラトゥーンのソフト自体が大ヒットを記録したこともあってとはいえ、一般流通に踏み切ったのは大正解だったと思います。結果、初週で4万枚を超えるセールスを記録するという快挙にも至っております。パッケージやブックレットが愛にあふれたつくりなのもまたうれしい。シオカラーズのヴォーカルトラック三曲分の架空言語めいた歌詞がひらがなで掲載されているのには笑ってしまいましたが、さらにSquid Squad、シオカラーズ、OCTOTOOL、DJ Octavioの架空ライナーノーツが収録されており、いずれも、イカにも音楽雑誌とかでありそうな書き口で思わずクスリとさせられます。たとえば「スズケ ゲソロウ」氏によるSquid Squad"Splattack!"の解説では「僕が彼らを知ったのは、今では“幻のゼロ番シングル”とも言われているアマチュア時代のデモ・テープ(残念ながら今の所リリースはされていない)だ。――茹で上がりそうなそのパッションは、将来の爆発を予感させるものがあった」とあったりして、「あるある」と頷いてしまう感じのエモさ。テキストの凝りように思わず頭が下がります。このように、パッケージ、内容ともに充実したつくりで、噛めば噛むほど味の出る、極上の「スルメ盤」です。


『Splatoon(スプラトゥーン)』サントラのマスタリングを直撃取材! 『シオカラ節』の歌詞などをサウンドスタッフにインタビュー&トラックリスト初公開 - ファミ通com
機能を表現するデザイン手法。キャラクター、ブキ、ギアのデザインに迫る、『Splatoon(スプラトゥーン)』開発スタッフインタビュー【デザイン編】 - ファミ通com

峰岸透 - vgmdb
藤井志帆 - vgmdb

http://ebten.jp/p/4541993024681/

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『Splatoon ORIGINAL SOUNDTRACK -Splatune-』
[EBCD-10001/02|2015.10.21|KADOKAWA/Enterbrain]

【DISC 1】

01. Opening(Squid Squad)
02. Splattack! [Jam Session](Squid Squad)
03. Splattack! (Squid Squad)
04. Ink or Sink (Squid Squad)
05. Seaskape (Squid Squad)
06. Kraken Up (Squid Squad)
07. Metalopod (Squid Squad)
08. Now or Never! (Squid Squad)
09. バトル 勝ちジングル
10. バトル 勝ちリザルト
11. バトル 負けジングル
12. バトル 負けリザルト
13. Friend List (ABXY)
14. Quick Start (ABXY)
15. Hooked (Hightide Era)
16. Sucker Punch (Hightide Era)
17. プレイヤーメイク
18. ハイカラシティ 初回入場
19. ハイカラシティ チュートリアル
20. 広場
21. ロビー
22. Ika Jamaica (Cala Marley)
23. Lookin' Fresh (DJ Lee F.)
24. ハイカラニュース
25. フェス お題発表



【DISC 2】

01. ハイカラシンカ (シオカラーズ)
02. フェスマッチ オープニング (シオカラーズ)
03. キミ色に染めて (シオカラーズ)
04. イマ・ヌラネバー! (シオカラーズ)
05. フェス 最終結果発表
06. ゲットジングル
07. アタリメのテーマ
08. タコツボバレー
09. Eight-Legged Advance (OCTOTOOL)
10. Tentacular Circus (OCTOTOOL)
11. Cephaloparade (OCTOTOOL)
12. Tornado Shuffle (OCTOTOOL)
13. Tacozones Rendezvous (OCTOTOOL)
14. Octoweaponry (OCTOTOOL)
15. ヒーローモード つづく!
16. ヒーローモード Miss!!
17. ミステリーファイル
18. I am Octavio (DJ Octavio)
19. シオカラ節 (シオカラーズ)
20. マリタイム・メモリー (シオカラーズ)
21. SE:インクに潜む
22. SE:インクに飛び込む
23. SE:インクを往く
24. SE:スプラシューター
25. SE:スプラチャージャー
26. SE:スプラッシュボム
27. SE:スーパージャンプ
28. SE:メガホンレーザー
29. SE:トルネード
30. SE:声(ガール) 悦び
31. SE:声(ガール) やられ
32. SE:声(ボーイ) 悦び
33. SE:声(ボーイ) やられ
34. SE:声(シオカラーズ)決め台詞
35. 元祖正調塩辛節
36. Splattack!(2014 E3PV)



《Composed by》
峰岸透:
【Disc1】Track 1~12、15~22、25
【Disc2】Track 5~12、14~18、36

藤井志帆:
【Disc1】Track 13、14、23、24
【Disc2】Track 1~4、13、19、20、35


《Sound Effects by》
辻勇旗:【Disc1】Track 20/【Disc2】21~34
安田拓朗:【Disc1】Track 18、23


《Performers》
竹内浩明(vocal)【Disc1】Track 3~6、8
keity.pop(vocal & voice[アオリ])【Disc2】Track 1、3、4、19、20、34
菊間まり(vocal & voice[ホタル])【Disc2】Track 1、3、4、19、20、34
西川進(electric guitar)【Disc1】Track 1~8
芳賀義彦(electric guitar)【Disc1】Track 3、4、8
高慶“CO-K”卓史(electric guitar)【Disc1】Track 13~16
TABOKUN(electric bass)【Disc1】Track 1~8
恒岡章(drums)【Disc1】Track 1~8
かどしゅんたろう(drums)【Disc1】Track 13、14


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http://www.nintendo.co.jp/wiiu/agmj/

2015年11月7日土曜日

佐久間正英『あなたにここにいて欲しい/新井素子 イメージアルバム』(1985)

あなたにここにいて欲しい (ハルキ文庫)
新井 素子
角川春樹事務所
売り上げランキング: 250,876



 二人の女性の共依存的な関係をミステリアスでサスペンスフルなタッチで描いた、新井素子さんの'84年発表の小説『あなたにここにいて欲しい』。本アルバムは翌年にリリースされたイメージアルバムで、テクノ・ポップ・バンド プラスチックスやプログレッシヴ・ロック・バンド 四人囃子の佐久間正英氏が全曲の作編曲を手がけられております。時期的には、初のソロアルバム『Lisa(果樹園のリサ)』をリリースして間もない頃であり、BOOWY、THE STREET SLIDERSなど、プロデュース仕事が増え始めた頃でもあります。
 




 小説のタイトルの元ネタはPINK FLOYDのアルバム『Wish You Were Here(あなたがここにいて欲しい)』からですが、小説は『あなた“に”ここにいて欲しい』で、一文字違います。これは意図的なものであるということが、'84年の文化出版局単行本版の新井さんのあとがきで述べられております。本作の執筆のキッカケについてPINK FLOYDへの言及もされているのですが、'87年の講談社文庫版、2012年のハルキ文庫版で書き下ろされたあとがきではそのあたりには触れられてはいませんので、参照の際はお気をつけを。レコードのインナーには新井さんと佐久間氏のそれぞれのコメントが掲載されており、新井さんは「横着なあたしは、このお話を書きえるまで、レコード聴き返しもしなかったんです。だから、このお話、正直言って、ピンク・フロイドの曲とは何のかかわりもないんですよね」と、かなりぶっちゃけたことを書かれています。とはいえ、ふと頭によぎった"Wish You Were Here"のメロディーと、タイトルからの連想で浮かんだいくつかの言葉が執筆のキッカケだったそうですから、まったくの無関係と言えない気もします。佐久間氏は制作にあたり、「ESP」ではなく「PSYCO」でイメージをつくりあげていったとのこと。「実写でない音楽を試みてみました」「多少の無理はしましたが、自動筆記の様に演奏し、アレンジしました」とも述べられています。





 佐久間氏のコメントからだいたいの方向性はつかめますが、アルバムの楽曲は全体的に無機質なイメージのインストゥルメンタルが中心となっており、反復される展開に物憂げな旋律が静かに湛えられ、常に低いところを漂うかのような感触が続いていきます。"解放"ではバックでうっすらと「あなたに ここに いてほしい」のモノローグも挿入されており、ゾクリとさせられます。演奏では佐久間氏のほか、パーカッションでそうる透氏、ヴァイオリンで中西俊博氏が参加されており、広瀬翔子さんが歌う表題曲の作詞を山崎ハコさんが書き下ろされております。そしてラストは、日本語詞と女性ヴォーカル(Crickets)による、PINK FLOYD"Wish You Were Here"のカヴァー。パーカッシヴなバッキングと明るめのシンセサイザーを中心とした、寂しさというよりもどこか解放的なイメージを感じさせるアレンジ。本編の展開にも寄り添った名カヴァーではないかと自分は思うのです。





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『ファンタスティック・ワールド② あなたにここにいて欲しい/新井素子 イメージアルバム』

LP [JBX-25059|1985|ビクター音楽産業]
CT [VCK-6138|1985|ビクター音楽産業]


【side A】
01. 共生
02. 一角獣
03. 黒の風景
04. 喪失
05. あなたにここにいて欲しい
(作詩:山崎ハコ)

【side B】
06. 緩衝
07. カフェオレの闇
08. 修羅の日
09. 解散
10. Wish You Were Here [PINK FLOYD cover]
(Roger Waters - David Gilmour)

《作編曲》
佐久間正英

《演奏》
佐久間正英(ギター、シンセサイザー)
中西俊博(ヴァイオリン)
そうる透(エレキ・パーカッション)

《歌》
広瀬翔子(“あなたにここにいて欲しい”)
Crickets(“Wish You Were Here”)






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新井素子研究会 - MOTOKEN
作品データベースなど、参考させていただきました。


あなたにここにいて欲しい
新井 素子
文化出版局
売り上げランキング: 1,412,457



Wish You Were Here
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Pink Floyd
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余談ですが、本アルバムはビクターが立ち上げた〈ファンタスティック・ワールド〉シリーズの第二弾作品にあたります。ちなみにレコード帯の広告によると、第一弾は『イカロスの娘/御厨さと美』(音楽:槌田靖織/演奏:ビクター・オーケストラ)、第三弾は『綿の国星/大島弓子』(歌:松尾清憲/演奏:ムーンライダース)、第四弾は『ガラスの迷路/竹宮恵子』(企画・構成・詩:竹宮恵子)といったラインナップ。同シリーズはCD・VHSへメディアがシフトしてからも続いていくこととなります。

ビクター音楽産業「ファンタスティック・ワールド」レーベル
リリースタイトル一覧メモ 
http://camelletgo.blogspot.com/2013/06/fantastic-world.html


【関連】
西木栄二/森村あゆみ『そして、星へ行く船/逆恨みのネメシス イメージアルバム』(1987)

2015年11月2日月曜日

奇才ギタリスト バケットヘッド、早くも新作発表。



 ここ数年、「Pikes」と銘打ったインストゥルメンタル・アルバムを常軌を逸したペースでリリースし続けるアメリカの異才ギタリスト バケットヘッド。10月1日から10月31日にかけて「○○ Days Til Halloween」と題したハロウィンカウントダウン企画アルバムを一日一枚のペースで発表し続け、計31枚の連続リリースをみごと達成したと先日お伝えしましたが、月が替わって11月1日、早くも通産237枚目となる新作がリリースされました。30分のインストゥルメンタル一曲のみ収録の同アルバムのタイトルは『365 Days Til Halloween: Smash』。……ひと月に飽きたらず、来年のハロウィンまで一日一枚のペースでリリースを続ける気なのでしょうか。どこまでイってしまうのか、今後のバケットヘッド先生のよりいっそうのエクストリームな挑戦にご期待ください。





 なお、公式サイトでは11月2日(米国時間)まで、「Pikes」シリーズの第1番タイトル『It's Alive』から、第199番タイトル『8 Days Til Halloween: Flare Up』までをダウンロードストアで各$2でセール中です。コンプリートを目指そうとお考えの方は、この機を逃さずまとめ買いいたしましょう。193番タイトルから207番タイトルは、ダウンロード販売のほかに手焼きCD-R(サイン入り)のオーダーも受け付けております。詳細は彼の公式ウェブサイトをご覧ください。

http://www.bucketheadpikes.com/
http://music.bucketheadpikes.com/






https://en.wikipedia.org/wiki/Buckethead
https://en.wikipedia.org/wiki/Buckethead_discography

 Wikipedia英語版のバケットヘッドの記事はこまめに更新されており、ディスコグラフィ単体だけの記事もあるなど、ディープなバケットファンの目配りが行き届いております。そこでは年ごとのアルバムリリース枚数が棒グラフで示されているのですが、2013年で明らかなブレイクスルーが起こったのは一目瞭然であり、もはや笑うしかありません。11月1日現在で本年度の通産リリースは106枚なので、このペースが維持されるのであれば今年の大晦日には160枚を突破いたします。





 ところで、バケットヘッド氏は無類の「ジャイアントロボ」好きで知られており、その愛は海よりも深く山よりも高いです。'92年にリリースされた1stアルバム『Bucketheadland』では山下毅雄作曲の「ジャイアントロボのテーマ」をギター一本でカヴァー、彼のライヴの定番にもなっています。そして'94年リリースの2ndソロアルバムのタイトルはズバリ『Giant Robot』。彼のギター教則ビデオでも「昔観た「ジャイアントロボ」と「星雲仮面マシンマン」のショウにいたく感動したんだ」といったことを語っております。


Bucketheadギターレッスン完全版(訳つき)






Buckethead Land
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Giant Robot
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2015年11月1日日曜日

バケツ頭の奇才ギタリスト バケットヘッド、10月中にソロアルバム31枚連続リリース。今年の発表アルバム100枚突破。



 バケットヘッドといえば、元GUNS'N'ROSES、元Buckethead&Friends、そのほか数々のバンドへの参加歴のある、ケンタッキーのバケツをかぶったアメリカの謎のギタリスト。近年はソロで活動しており、公式サイトbandcampなどで、「Pikes」と銘打たれたギター中心のインストゥルメンタルアルバムのリリースを行っているのですが、そのペースは1日~6日に一枚という尋常ならざるもので、2013年には約30枚、2014年には約60枚という、もはや「マジキチ」としかいいようのない生産量。そんな彼はさる10月1日から10月31日にかけて「○○ Days Til Halloween」と題した、ハロウィンにちなんだカウントダウン企画アルバムのリリースを一日一枚のペースで行い、10月31日付でリリースされた通産236枚目のアルバム『Happy Halloween: Silver Shamrock』をもって連続31枚リリースを見事に達成。この異形、もとい偉業により、彼の今年のリリース枚数は既に100枚を越えてしまいました。幾何級数的に増えるバケットヘッド先生の今後のリリースにもご期待ください。

【11/2追記】
早くも新作が出ました。
http://camelletgo.blogspot.com/2015/11/bucketheadlands.html

以下が10月中にリリースされたカタログです。

■206枚目(10/1リリース)


■207枚目(10/2リリース)


■208枚目(10/3リリース)


■209枚目(10/4リリース)


■210枚目(10/5リリース)


■211枚目(10/6リリース)


■212枚目(10/7リリース)


■213枚目(10/8リリース)


■214枚目(10/9リリース)


■215枚目(10/10リリース)


■216枚目(10/11リリース)


■217枚目(10/12リリース)


■218枚目(10/13リリース)


■219枚目(10/14リリース)


■220枚目(10/15リリース)


■221枚目(10/16リリース)


■222枚目(10/17リリース)


■223枚目(10/18リリース)


■224枚目(10/19リリース)


■225枚目(10/20リリース)


■226枚目(10/21リリース)


■227枚目(10/22リリース)


■228枚目(10/23リリース)


■229枚目(10/24リリース)


■230枚目(10/25リリース)


■231枚目(10/26リリース)


■232枚目(10/27リリース)


■233枚目(10/28リリース)


■234枚目(10/29リリース)


■235枚目(10/30リリース)


■236枚目(10/31リリース)



http://www.bucketheadpikes.com/
http://music.bucketheadpikes.com/music