2015年10月18日日曜日

今の筋少なりの「原点回帰」 ― 筋肉少女帯『おまけのいちにち(闘いの日々)』(2015)

おまけのいちにち(闘いの日々)
筋肉少女帯
徳間ジャパンコミュニケーションズ (2015-10-07)
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 筋肉少女帯の17thアルバム。アルバムジャケットはオーケンの怪作小説『新興宗教オモイデ教』(1992)の角川文庫版でも使用された丸尾末広氏のイラストレーション。大傑作アルバム『新人』(2007)で鮮烈な二度目のデビューを果たし、さらに再編後『シーズン2』(2009)をリリース。その次作の『蔦からまるQの惑星』(2010)あたりから徐々に方向性がユルくなっているのですが、本作のちょうど一年前にリリースされた『THE SHOW MUST GO ON』で完全にそれが馴染んだ感があるなと。ユルいことはユルいのですが、手応えのあるユルさというか。90年代初期に回帰したようでもあり、50歳を目前にして落ち着くところに落ち着いたバンドの姿をダイレクトに反映しているようでもあり、微笑ましくもあります。サポートメンバーはおなじみ三柴理氏と長谷川浩二氏。そして内田雄一郎氏、本城聡章氏、河塚篤史氏(元 陰陽座~現 NESS)を擁するプログレ歌謡バンド「Foo-Shah-Zoo」のフロントマンである扇愛奈さんが前作に引き続きバッキングコーラスとして参加されております。

 アルバムタイトルの「おまけのいちにち」は、6thアルバム『断罪!断罪!また断罪!!』(1991)の冒頭曲のタイトルでもあり、ファンならおなじみのワードでありますね。また、今年の四月に刊行されたオーケンの最新エッセイ集のタイトルは『おまけのいちにち(その連続)』でありました。アルバムの副題にある「闘いの日々」は、1976年から1979年にかけて放送された石原プロ制作の刑事ドラマ「大都会」シリーズ第一作目の副題と同じ。ということで、冒頭は"大都会のテーマ"(作曲:篠原仁志)のカヴァー、しかもTVサイズヴァージョン。もちろん、アルバム終盤ではフルヴァージョンも収められています。また、1977年から1987年にかけて放送された刑事ドラマ「特捜最前線」の主題歌"私だけの十字架"(作詞:尾中美千絵/作曲:木下忠司)のカヴァーもあり、オーケンのなかで刑事モノのリバイバルが来たのかしらん? と思ったのですが、ナタリーのインタビューでオーケンが “再結成以降の筋肉少女帯というのは、刑事ドラマでいうと「西部警察」だったと思うんです”“『西部警察』の原点は何だろう?」と考えてみると、その前に「大都会」という番組があったんですよね――「大都会 闘いの日々」というのがあって、これが最初なんです――筋肉少女帯もそこに戻ってからチェンジしていくのがいいんじゃないかなって” と語っていることから、これは筋少なりの原点回帰の表れの一端でもあったようです。





 "レジテロの夢" "混ぜるな危険" "球体関節人形の夜"の三曲はいわゆるキラーチューンの流れ。橘高氏作曲の"レジテロの夢"はジャーマン・メタル風なのにサビが「古畑任三郎のテーマ」っぽく、最終的にはそれらを全部ぶん投げて平穏なオチがつく、まごうことなき「ヘンな曲」です。筋肉少女帯としては「EAT-MAN」以来、実に18年ぶりのアニメタイアップとなった、「うしおととら」主題歌となった"混ぜるな危険"は、昭和40年代、50年代のアニメソングのイメージで本城氏が書かれた曲。キャッチーかつおどろおどろしいという、この百鬼夜行感。"球体関節人形の夜"は、声優の野水伊織さんのシングル『D.O.B.』のカップリングとして提供された楽曲のセルフカヴァー。"再殺部隊"や"トリフィドの日が来ても二人だけは生き抜く "あたりに通底するエモーショナルな筋少様式美が炸裂しております。"枕投げ営業"は、本アルバム随一のほっこり曲。一部のフレーズがLED ZEPPELINの"Achilles Last Stand(アキレス最後の戦い)"っぽいのは、歌詞のストーリーを考えるとなるほどピッタリだな、と。ヘヴィでドラマティックな正統派筋少チューン"おわかりいただけただろうか"も、戦慄の怪奇ホラーかと思えばじんわりと切なく、年を重ねた今だからこその優しさが込められた曲が増えてきたなと思います。本城氏が高校時代につくった曲を30年ぶりに再録した"LIVE HOUSE"は、本城氏とオーケンのツインヴォーカルによる青春のロックチューン。続く、ボサノバタッチの"別の星の物語り"が、男女の久しぶりの再会を描いており、それぞれ異なる形で「邂逅」の二曲が続いた形になっているのがまた心憎い。"時は来た"はDEEP PURPLEの"Space Truckin'"にガッツリとオマージュを捧げたオルガン・ハードロック。しかし、ここにアジりまくった歌詞とムサいコーラスが載るともはや筋少ナンバー以外の何モノでもないという(笑)。"S5040"は内田氏曰く “心を病んだシド・バレットが脱退したPINK FLOYDに、後任で太田裕美が入ったっていうイメージ” という、氏の嗜好が全開のユルユルサイケデリック歌謡。ラストは郷愁のフォークナンバー"夕焼け原風景"でじんわりと締め。一見するととりとめがないようで、聴き終わってみれば一貫して「昭和50年代、40年代回帰」が意識されるものになっています。


http://www.kids.co.jp/King-Show/

結成から33年ーー筋肉少女帯・大槻ケンヂが語る“異能のヴォーカル”の矜持と、バンドの現在地 - Realsound
筋肉少女帯「おまけのいちにち(闘いの日々)」メンバー全員インタビュー - 音楽ナタリー Power Push
野水いおり「D.O.B.」特集 野水いおり×大槻ケンヂ×橘高文彦鼎談 - 音楽ナタリー Power Push


新興宗教オモイデ教 (角川文庫)
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筋肉少女帯『新人』(2007)
筋肉少女帯『シーズン2』(2009)
Thunder You Poison Viper(内田雄一郎/三柴理/長谷川浩二)『You!』(2014)
NESS(三浦俊一/戸田宏武/内田雄一郎/河塚篤史)『NESS 2』(2013)
特撮『パナギアの恩恵』(2012)

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