2015年8月7日金曜日

本家GOBLINのリズム隊を迎えて新たに誕生した「第三のゴブリン」 ― GOBLIN REBIRTH『Goblin Rebirth』(2015)

GOBLIN REBIRTH
GOBLIN REBIRTH
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GOBLIN REBIRTH
RELAPSE JAPAN (2015-08-26)
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 長い歴史のなかで何度か中断を挟みながらも、現在まで活動を続けるイタリアン・プログレッシヴ・ロック界の重鎮であり、ホラー/サスペンス・ミュージックにこのバンドありと謳われるGOBLIN。近年はキーボーディストのクラウディオ・シモネッティが主導するClaudio Simonetti's GOBLINと、彼以外のメンバー(マッシモ・モランテ(g)/ファビオ・ピニャテッリ(b)/アゴスティノ・マランゴロ(ds)/マウリツィオ・グアリーニ(kbd))からなるGOBLINの二つが同時並行的に存在する状態だったのですが、そこからさらに、ピニャテッリとマランゴロをリズム隊にフィーチャーした新たなるGOBLINが登場いたしました。それがこのGOBLIN REBIRTH。ピニャテッリとマランゴロ以外のメンバーは三人。キーボーディストのAidan Zammitはミュージシャンとして数々のバンドやアーティストを渡り歩き、劇伴音楽のコンポーザーとしてもキャリアのあるヴェテラン、GOBLINとは2009年ごろから関わるようになったとのこと。同じくキーボーディストのDanilo Cherniも、スタジオ・ミュージシャンや劇伴コンポーザーとして活動歴のあるメンバー。そしてGiacomo Anselmiはアメリカで音楽理論を学んだジャズ・フュージョン系ギタリストです。





 クラウドファウンディングを経て3~4月にリリースされたGOBLINの新作アルバム『Four of a Kind』に続けとばかりに、GOBLIN REBIRTHのデビューアルバムがアメリカのデス/ドゥームメタル系レーベル RELAPSE RECORDSより6月末にリリースされました。しかし分家的バンドとはいえ、RELAPSEからGOBLINのアルバムがリリースされるとは。そういう時代なのかという妙な感慨があります。本作は、「悪鬼の誕生を描いた架空のサウンドトラック」という体裁をとったコンセプトアルバム。サウンドの方向性は本家GOBLINが作り上げてきたオリジナルアルバムやサウンドトラックのムードをある程度踏襲した、仰々しくおどろおどろしいテイスト。冒頭を飾る"Requiem For X"こそ「シモネッティ的な」オルガンアレンジが施された様式美的な仕上がりなのですが、続く"Back In 74"ではガラリと趣を変え、フュージョン・タッチの軽快なオルガン・ロックを展開しています。そのほか、デジタル処理したヴォーカルや、エレクトロ・タッチのアレンジなど、本家GOBLINではあまりやらなさそうなことを積極的にやっているところがポイント。"Forest"では女性コーラスとニューエイジ調のシンセサイザー・アレンジで、神秘的でもの侘しいイメージを強めています。また、70年代中期のKING CRIMSONが展開したヘヴィ・プログレを意識したフシもあり、"Evil In The Machine""Rebirth"で顕著にあらわれています。全体的にフットワーク軽めですが、それが逆にサウンドの抜けのよさに繋がっており、プラスに働いています。





 同時に三形態も存在しているとなるとはや何がなんだかというところですが、いずれのバンド形態も手応えのある作品をリリースしているのが面白いところ。本流が太ければ支流も太いといった感じです。そして先ごろ、GOBLINの前身バンドにあたるCHERRY FIVEがなんと四十年ぶりに復活を果たし、オリジナルメンバーのカルロ・ボルディーニとトニー・タルタリーニを擁する編成で約四十年ぶりに新作アルバムをリリースするというアナウンスがされました。いやあ、えらいこっちゃ。


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