2015年6月11日木曜日

アーシュラ・K・ル=グウィンとデヴィッド・ベッドフォードによる異色のコラボ ― David Bedford, Ursula Le Guin『Rigel 9』(1985)

Rigel 9
Rigel 9
posted with amazlet at 15.06.10
David Bedford
Virgin (1997-06-20)
売り上げランキング: 1,197,803


 少し前になりますが、LPプレーヤーを買いました。これでわたくしもさらなる沼に足を踏み入れることになったわけです。というのはさておき、プレーヤーを買って最初に聴きたかったLPが、今回ご紹介する『Rigel 9』。このアルバムは、アーシュラ・K・ル=グウィンが書き下ろしたスペース・オペラを、デヴィッド・ベッドフォードが組曲に仕立てあげ、'85年にCharismaレーベルからリリースされたコラボレーション作品なのです。'97年にVirginよりCD化されてはいるのですが、現在ではプレミアとなっており、中古市場で二~三万円という価格帯で取引されております。さすがに手が出ないので、ネットオークションでLPを数百円で買いました。CDを買うより、LPとプレイヤーを買ったほうがまだ安いという。なんともはやです。LPにはストーリーの記載がどこにもなく、裏ジャケットに楽曲名とミュージシャンのクレジットしか書かれていないという簡素なつくりなのですが(ライナーノーツの類は一切入っていないのが元々の仕様のようです)、音楽は素晴らしい内容です。海外のAmazon.MP3やiTunes Storeではアルバムの楽曲がダウンロード販売されているのですが、日本版サイトでは取り扱いがないのが残念です。

https://itunes.apple.com/us/album/rigel-9/id714758332

 ル=グウィンは、『闇の左手』『風の十二方位』そして〈ゲド戦記〉などで知られる、いわずとしれたSF/ファンタジーの大家。'85年は、彼女が文化人類学的なアプローチで書いたノンシリーズ長編『オールウェイズ・カミング・ホーム』を刊行した年でもありました。対するベッドフォードは現代音楽作曲家としての作曲活動のみならず、ケヴィン・エアーズのアルバムのオーケストラアレンジや、彼のバックバンド The Whole Worldへの参加を皮切りに、マイク・オールドフィールドの『Tubular Bells』『Hergest Ridge』のオーケストラアレンジ/指揮(後者は公式での音源リリースはされませんでしたが)、エドガー・ブロートン・バンド、ロイ・ハーパーのアルバムへの参加など、ブリティッシュ・ロック・シーンへの関わりも大きなものでした。個人的には、CAMELの『A Live Record』(1978)での指揮/アレンジや、「MOTHER」のアレンジサウンドトラック(1989)の"Wisdom of the World"のストリングス・アレンジも印象に残っています。そんなベッドフォード氏がスペースオペラをテーマに作品を仕上げたというと少々意外に感じるかもしれませんが、アンサンブル曲の"A Dream of the Seven Lost Stars"(1964)や"Star Clusters, Nebulae and Places in Devon"(1971)、アルバム『Star's End』(1974)など、宇宙をテーマにした楽曲/作品はいくつもありますし、'71年に行った実験アンサンブル「With 100 Kazoos」は、ロジャー・ゼラズニイ、シオドア・スタージョン、サミュエル・R・ディレイニーなどのSF作家や、天文学者のパトリック・ムーアらに捧げられており、SFへの関心は昔から強くあったのではないかと思われます。

 アルバムのストーリーは、不思議な惑星を舞台に宇宙飛行士のチームが数奇な体験をするというものです。楽曲はそれぞれ10分を越える四つのパートからなり、コーラスとシンフォニックなアレンジをバックに、モノローグや掛け合いが挿入されるという趣向。神秘的な響きのコーラスワークはキモにもなっており、ベッドフォードがアレンジを手がけたエアーズやオールドフィールドの楽曲に通じる雰囲気もやはり感じます。壮大なシンフォニーあり、ジェントリーなロックパートあり、シンセサイザーの華やかなパートあり、そしてそれら全てが渾然一体となった展開ありと、静かなトーンをたたえながらも様々に場面が展開することもあってか、思った以上にプログレ的なエッセンスもたっぷりな印象でした。レコーディングメンバーにも注目で、ウインドオーケストラや学生コーラス隊やサックス、ヴァイオリン奏者、そしてボイスアクターが多数参加しているほか、COLOSSEUM、HUMBLE PIEのギタリストであるクレム・クレムソンや、MADNESSのドラマーであるダニエル・ウッドゲイト、そしてなんと、80年代音楽シーンに一瞬だけ花を咲かせた女性ニューウェイヴ・デュオ STRAWBERRY SWITCHBLADEの名前もみられます。彼女らは第三シーンの終盤でミステリアスなヴォーカル/コーラスを聴かせてくれます。




David Bedford — Works | Universal Edition
David Bedford, Ursula Le Guin ‎– Rigel 9 | discogs
download - STRAWBERRY SWITCHBLADE.NET
STRAWBERRY SWITCHBLADEの参加した"Scene 3"がダウンロードできます。


風の十二方位 (ハヤカワ文庫 SF ル 1-2) (ハヤカワ文庫 SF 399)
アーシュラ・K・ル・グィン
早川書房
売り上げランキング: 44,813


Stars End
Stars End
posted with amazlet at 15.06.10
David Bedford
Esoteric (2012-03-27)
売り上げランキング: 63,028


0 件のコメント:

コメントを投稿