2013年6月13日木曜日

難波弘之 他『バオー来訪者 オリジナル・サウンドトラック』(1989)

バオー来訪者 [DVD]バオー来訪者 [DVD]
(2003/04/02)
堀秀行、日高のり子 他

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「これがッ! これがッ! これが『バオー』だッ
そいつに触れることは 死を意味するッ!」


1980年代半ばに週間少年ジャンプで連載された、荒木飛呂彦による漫画作品『バオー来訪者』(全 2巻)。荒木先生の初期の名作であり、1989年にはOVA版(50分)が製作されております。流石に1時間にも満たない尺で原作分のエピソードを全て収 めるのは無理だったようで、ストーリーのそこかしこを端折っていたり、登場しないキャラクター(六助じいさんとか、殺人マンドリルのマーチンとか)もいる のですが、原作の雰囲気を損なうことはさほどなく、なかなかにクオリティの高い内容でありました(でも、名も無き敵の男が発した「ドッゲェーーマーーチーーン!!」の悲痛なシャウトはできることなら聞きたかったなあ)。



さて、今回ご紹介するのはそのOVA版のサウンドトラック。今となってはそこそこレアなアイテムとなっております。劇伴を担当されたのは、コンポーザー/アレンジャー/キーボーディストであり、SENSE OF WONDERのリーダーである難波弘之氏。主題歌、イメージソングの編曲も全て氏が担当しております(日高のり子さんが歌う「心が話してる」では作曲も担当)。町田義人氏が伸びやかに熱唱する主題歌「永遠のSoldier」は素晴らしいパワーバラードであります。また、「The MUTEKI!」というえらくストレートなタイトルのイメージソングではスティーヴ・ニックスという人が歌っているのですが、フリートウッド・マックの同名の女性ヴォーカリストではなく、全くの別人。しかもこちらは男性です。

本作の2年前に難波氏が劇伴を担当されていたOVA作品『デジタルデビル物語 女神転生』で は、プログレッシヴ・ロックのエッセンスを色濃く反映させたシンセサイザー・サウンドを全編に渡って展開していたため、そちらと比較すると本作はやや大人 しめというか小粒な印象を感じてしまうのですが、シンセサイザーを基調にしつつハードなギターサウンドも随所で効かせた硬質なインストの数々は、やはりど こかプログレっぽさを感じさせるものになっており、その手のリスナーならばピクリと反応する場面もきっとあることでしょう。クリーントーンのギターがペロ ンペロンとアルペジオを奏でる「ドルド」「死闘」、スリットドラムらしき音がポコポコポコポコと鳴っている「ウォーケン」あたりは、80年代のKING CRIMSONを意識したようなフシも伺えます。また、主人公の育朗がバオーによって目覚めた特殊能力を駆使するたびに流れる「武装現象(アームド・フェノメノン)」のテーマは、全部で3パターンのアレンジが展開されています。ストーリーにおいても重要な楽曲であり、サントラの方向性を象徴する楽曲ともいえます。強くオススメはいたしませんが、難波氏のマニアックなファンなら押さえておきたい1枚。



バオー来訪者 - Wikipedia
難波弘之 - Wikipedia