2015年6月28日日曜日

アルファ・ラルファ大通りのプログレッシヴ・ロック・バンド ― ALPHA RALPHA 『Alpha Ralpha』(1977)




 コードウェイナー・スミスのSF短篇「アルファ・ラルファ大通り」から名をとったフランスのプログレッシヴ・ロック・バンド アルファ・ラルファが'76年に発表した唯一のアルバム。フランスとカナダでのみ流通した、現在も未CD化の作品です。メンバーは60年代末に活動したKamasutra Blues Bandの元ギタリスト Michel MareskaVARIATIONSCharlie Charriras(b)、MALICORNEに一時在籍していたClaude Alvarez-Peryre(g. vln. organ etc)、TAI PHONGJean-Alain Gardet(kbd)、NEMOEmmanuel Lacordaire(ds)と、既にプログレッシヴ・ロック/ハード・ロック・バンドでの活動歴のあるメンバーが名前を連ねておりました。また、ゲストでTAI PHONGのKhanh Mai、Tai Sinh、Jean-Jacques Goldmanがバッキングヴォーカルで参加しています。





 しきつめられたシンセサイザーと、厚いコーラスハーモニー、そしてマリンバ/ヴィブラフォンを交えた質の高いシンフォニック・ロックで、フレンチ・ロック特有の華のあるアレンジに惹かれます。多重コーラスのイントロから、PFMを思わせる祝祭的なムードのアップテンポへと、そして牧歌的なポップ・インストゥルメンタルへと滑らかに展開していく"Nova"や、アンソニー・フィリップス的ギターが柔らかに爪弾かれ、中期GENESISを思わせる叙情的な"Genese"、MAHAVISHNU ORCHESTRAのような熱気を帯びたジャズ・ロック・チューン"Rez"といった、オマージュを感じさせる楽曲もいくつか。さらにスペース・ロックやミニマル・ミュージックめいた展開になったりと、とにかく方向性が定まっていない印象があるのですが、この手探り感は嫌いじゃないですね。フレンチ・ロック人脈的にも興味深いバンドですし、とっくの昔にマーキー/ベル・アンティークから再発されていてもおかしくないアルバムではないかと思うのですが……権利的に難しそうですね。


ALPHA PALPHA - Discogs
ALPHA RALPHA - Prog Archives


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 余談ですが、「アルファ・ラルファ大通り」にちなんだ音楽作品としては、ほかにイタリアのI NUMIというプログレッシヴ・ロック・バンドが'71年に『Alpha Ralpha Boulevard』というアルバムをリリースしております。アート・ロック全盛期ということもあり、こちらはサイケデリック・ポップの趣の強い内容です。