2015年5月27日水曜日

ヘヴィサウンドで健在ぶりを示した、元祖チャイニーズ・プログレメタルバンドの四作目 ― 唐朝楽隊『芒刺』(2013)

唐朝楽隊/タン・ダイナスティー
唐朝
ビクターエンタテインメント (1995-06-21)
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 中国のハード・ロック・シーンを語る上で避けては通れないバンドであり、90年代にシーンを牽引したビッグネーム 黒豹(Heibao)のオリジナルメンバーであった丁武が、80年代末期にバンドを脱退してまもなくアメリカ華僑のKaiser Kuoらと'88年に結成した唐朝(Tang Chao)は、チャイニーズ・プログレッシヴ・メタルの草分け的存在として、現在も活動を続けるバンドです。度重なるメンバーチェンジや種々の事情もあり、二十数年の活動歴でこれまでにリリースしたアルバムは四枚と少ないのですが、いずれも練り込まれたサウンドで存在感を示しています。Kaiserは'89年に帰国のためアルバム制作に関わることなく脱退してしまうものの、'92年に発表されたデビューアルバム『梦回唐朝』は本国のみならずアジア全域でヒットを記録し、日本でも'93年にP-VINEから、'95年にビクターからそれぞれ国内盤がリリースされていました。丁武のラフなハイトーンヴォーカルと浮遊感のあるコーラスハーモニーによる歌謡テイストと、ギターを中心として組み立てられたプログレッシヴ・ハード・ロック色の強いサウンドの絶妙なマッチングもさることながら、"インターナショナル"の仰々しいカヴァーもハマっており、DREAM THEATER『Images And Words』のリリースと同年の作というところも含めて、印象深い作品です。



 '95年にベーシストの張炬が事故死、さらに丁武のドラッグ問題などで活動が危ぶまれたものの、'96年にKaiserの復帰もあり活動を再開、'98年に発表された2ndアルバム『演義』は、三国志演義をコンセプトにしたよりプログレ色の強い大作志向の内容に仕上がり、復活をアピールするに申し分ないものでありました。'99年に意見の相違によりKaiserが再び脱退、'00年に陳磊が新ギタリストとして加入、'02年にオリジナルギタリストの老五が復帰して五人編成になるなどの変動が続き、3rdアルバム『浪漫騎士』が発表されたのは結成20周年目と迎えた'08年と、かなり長いスパンとなりました。音楽性もアジアン/オリエンタル・ポップスの色が強くなり、この手のバンドによくある変容の波からは逃げられなかった模様。


芒刺 (中國版) ~ 唐朝樂隊
芒刺 (中國版) ~ 唐朝樂隊
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唐朝(タン・ダイナスティー)
StarSing Records (2013-11-15)
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 以上、駆け足で活動を追いました。本作『芒刺』は、『浪漫騎士』からさらに五年の歳月を経て発表された、バンドの現行最新作。'09年に老五がバンドを脱退したため、再び四人編成での制作となったわけですが、サウンドは前作の反動なのか、原点回帰しつつもヘヴィ・ロックな味付けが濃くなされております。タイトルチューンや、続く"斑马线"ではどっしりとタメの効いたサウンドで強烈な印象付けに成功しております。8分越えの"睡莲"は丸ごとギターが主役のテクニカル・インストゥルメンタル。豊富な音楽経験を持つ陳磊の本領が発揮された一曲ともいえます。ハードなエッジとフックを持った"大象不抱怨"も秀逸。アルバム終盤は落ち着いたトーンの楽曲が中心となり、『紅楼夢』に登場する歌〈葬花吟〉から詞を引用し、古琴と萧笛の幽玄な響きに彩られたアジアン・ニューエイジ調の"梅花赐"や、環境音を交えたアンビエント"紫叶"、ポスト・ロック・シーンにも目配せをしたかのような"异乡客・岚池"といった楽曲も収められており、完全にヘヴィに振り切ってはいませんが、アルバムのメリハリという意味ではちょうどよくバランスが取れている好作品と感じます。決して順風満帆とはいえない活動を長年続けていながら、これだけのものを生み出せるわけですから、やはり底力のあるバンドであると改めて実感させられます。



唐朝楽隊 TANG DYNASTY - 中国揺滾 DATABASE
唐朝 - Encyclopedia Metallum

 余談ですが、脱退したKaiserはその後、春秋というプログレッシヴ・メタル・バンドを結成し、'06年にアルバムを発表しています。こちらもドラマティックな内容なのです。



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