2014年12月15日月曜日

ハンガリアン・プログレッシヴ・ロックの傑作『火星年代記』、三十年目の続編 ― SOLARIS『Marsbéli Krónikák II』(2014)

Marsbeli KronikakMarsbeli Kronikak
Solaris

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1980年に結成された、ハンガリーのプログレッシヴ・ロック・バンド SOLARIS。ポーランドのSF作家 スタニスワフ・レムの代表作『ソラリス』からその名をとり、レイ・ブラッドベリの『火星年代記』をコンセプトとしたデビューアルバム『Marsbéli Krónikák』を'84年にリリース。フロントマンのAttila Kollarの颯爽としたフルートプレイと、スペイシーなエッセンスをふんだんに演出したシンセサイザー、疾走感とエッジの効いたギターを巧みに融合させた壮大なプログレッシヴ・ロック・サウンドで国内外で高い評価を得たバンドで、ここ日本でも、東欧のプログレッシヴ・ロック・シーンに目が向くキッカケとなったバンドのひとつであります。しかし、アルバム発表後にバンドは発展的に解散。女性ヴォーカルをフロントに立てたロック・ポップスバンド Napoleon Boulevardと名を変え、'85年に再デビューします。同バンドは本国で大ヒットを記録。その後、SOLARISを再編し、'90年には未発表音源を中心にした2ndアルバム『1990』をLP二枚組のヴォリュームで発表。'95年にはアメリカのプログレッシヴ・ロック・フェス「Progfest」にハンガリー代表として招聘され、現地のリスナーから熱烈な歓迎を受けたその時のパフォーマンスは『Live in Los Angeles』としてリリースされます。'98年にギタリストのIstván Cziglánが病によりこの世を去るという悲劇を迎えるものの、バンドは'99年にノストラダムスをコンセプトとした3rdアルバム『Nostradamus』を発表。また、これまでのライヴ音源を中心としたオフィシャル・アーカイヴも発表していくのですが、バンドとしての活動はなりを潜め、各メンバーがそれぞれの音楽活動を展開していくことになります。'07年にバンドのリズム隊であるLászló Gömör(ds)、Tamás Pócs(b)の二人がSOLARIS FUSIONというバンドを結成、その後、NOTRADAMUSと名を変え、本隊のSOLARISをよりヘヴィにしたサウンドを展開。さらにその後、Tamas PocsはSOLARISを脱退して自身のリーダーバンドTOMPOXを結成、SOLARISとはまた別の道を歩むことになります。

Martian Chronicles IIMartian Chronicles II
(2014/10/30)
Solaris

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ここ数年の動きを見ていると、SOLARISの活動再開はもうないのではないかと思っていたのですが、水面下で再結成・再始動の動きがあったようで、アルバムのレコーディングが進められていたのですね。しかもそのタイトルが『Marsbéli krónikák II』、バンドのデビューアルバムの30年ぶりの続編というのにもまた驚かされました。亡くなったIstvan Cziglan、脱退したTamas Pocs以外、『Marsbéli krónikák』(以下、前作と表記)に参加していたメンバーは全員参加しています。また、ヴァイオリニストのほか、Napoleon Boulevardの後身的バンドであるCabaretのヴォーカリスト Ullmann Zsuzsaを筆頭に、同バンドのギタリストやサックス奏者がゲストで参加しています。

前作同様、冒頭は数部構成でトータル20分を越える組曲から始まるのですが、サウンドは30年前と比べるとかなり落ち着いています。ヴォーカル曲はAORというか演歌に近い滋味のある仕上がりだし、ソウルフルなスキャット/コーラスや、ストリングス、そして泣きのギターがフィーチャーされる頻度も高く、まるでPINK FLOYDのような叙情性に接近したような印象すら感じます。ハードなエッジの効いたギターや、疾走感を伴ってうねるシンセサイザーによるスリリングな場面はほとんどなりを潜めています。では別物なのかというとそうではなく、Attila Kollarのフルートが入ると、やはりSOLARISのサウンドだとハッキリと認識させてくれるのです。一本の芯を通した、円熟したバンドの姿として立ち上がってきているんですよね。自分は続編アルバムとしてすんなりと受け入れることができました。前作の組曲のメインフレーズの変奏も少しばかり顔を出す、二部構成の"Hangok A Múltból"で聴かせる重心低めの展開は非常に手応えのあるものですし、ド演歌シンフォニック・ロックと形容したくなる"A Világ Nélkülünk"でここぞと表現される枯れた味わいは思わず胸を打ちます。"Lehetelen ("Magunk Vagyunk A Lehetetlenség - Egy Lehetetlen Univerzumban." Ray Bradbury)"は、レイ・ブラッドベリの言葉「私たちは あり得ない宇宙に生まれたあり得ない存在である("We are an impossibility in an impossible Universe")」をタイトルに掲げた1曲。物悲しげなイントロとアウトロの間に一転してグルーヴィーなシンセサイザー/オルガンソロを炸裂させたコンパクトなプログレ・チューン。ラストの"Alien Song"は、思いっきりカスれた口笛や、シンセサイザーによって演出されるエイリアンの交信のような趣向で、乾いたユーモアを感じさせる1曲。バンドとしての余裕を感じさせるというか、肩肘を張らない終わり方もまた好感が持てます。



先日10/26には「Marsbéli krónikák 2014」と題した復活ライヴが本国で行われ、好評をもって迎えられたとのことです。また、発掘音源集『Live Chronicles』のリリースも控えています。István Cziglán在籍時のテイクも含めた80年代から近年までのライヴ音源を収録しているようです。



SOLARIS - Official Site
SOLARIS - Prog Archives
Róbert Erdész ‐ YouTube

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